文章記述問題の対策

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"homines id quod volunt credunt" Julius Caesar

 この章のタイトル(上)は古代ローマの政治家ジュリアス=シーザー(ユリウス=カエサル)の言葉です。(『ガリア戦記』第3巻18)「人は自分の見たい(信じたい)と思うもの(真実・現実)を見る(信じる)ものである。

 特に公立高校の入試対策として避けて通れないのが,文章で記述する問題です。単に「記述」問題とよばれることもありますし,「論述」,「説明」と表現されることもあります。いくら用語を知っていてもなかなか正しく解答を書くことができないのがこの問題。その理由は,
1.用語を正しく理解していない。
2.文章が成立していない。
3.問題の意図を把握していない。
4.答えあわせが自分でできない。
  からです。

1.用語を正しく理解するためには
①一問一答に頼らない
 社会科の勉強では,どの教科よりも用語をおぼえることが重要であるのはいうまでもありません。もっともポピュラーな方法は一問一答ですね。苦手な人ほど取っつきやすい勉強方法です。そしてやる気さえあれば,苦手な人でも自分流のコツをつかむとスラスラおぼえられるようになるものです。しかしこの「自分流のコツ」というのが落とし穴。おぼえるときに問題文中の単語にだけに注意がいってしまうのです。そして自分の都合のよい単語だけを拾ってしまい,本当に大切な語句や文章表現を見落としてしまう。「人は自分の見たい(信じたい)と思うもの(真実・現実)を見る(信じる)ものである。」からです。
②授業を大切に
 一問一答形式の勉強は,おぼえた知識の確認には最適だけれども,おぼえるための勉強には向いていません。用語や語句などは常に文(話)の流れ中で理解すること。そしておぼえるときに注意する(見逃してはいけない)点は何か,これを教えてくれるのが学校や塾の先生です。私もこのサイトをそのような意図のもとに作成しました。「社会なんてあとから言葉をおぼえたらいいや」ではなくて,普段からの授業が大切なんです。成績のよい生徒と成績の悪い生徒の差は授業のあとの勉強量ではなく,初見の授業からついているのだと思って下さい。
③「知識があれば解けるはず」は大まちがい
 知識がなければ解答できないのは当然です。しかし知識があっても解けないのが文章記述の問題です。よく勉強していて豊富に知識をもっている生徒はたくさんいますが,そのほとんどの生徒は公立対策で文章記述をやらせると正しい解答を書くことがでない。それが現場で指導している者がもつ印象です。そのとき用語と同じく「答えをおぼえてしまえ」と言うか,きちんと指導できるか,というところは指導者側の力量にもかかっています。

2.文章が成立しないのは
 日本語の文章を正しく書くことができない。これは社会科だけの話ではなく,どの教科でも同じことですが,その大きな要因は文を書き慣れていないことにあります。もちろん同じ書き慣れていない人でも,きっちりとした文を書くことができる人はいます。しかし正しい文が書けない人が正しく文を書けるようになるためには,ある程度練習をこなし注意力をつければ矯正することが可能です。作家や記者ですら,一度書いた文を何度も読み返して校正していくのです。書くことを恐れず怠らず,20字から40字程度の短い文章づくりをある程度数をこなすことが大切です。
 技術的な注意点は「技術編」を参考にして下さい。

3.問題の意図を把握しないと
 問われている内容を答えないと,どんなに格好のよい文章を書いても得点できません。理由を問われているのに,答えは目的になっている。2つの資料から読み取らなければならないのに,1つの資料のことしか述べていない。あるいは資料を無視している。受験生のみなさんにも主張したいことはたくさんあるとは思いますが,ここは受験校の合否を決めるテスト,きちんと相手の意図を読み取って,問われていることに対して正しく解答するようにしましょう。

4.自分の解答を添削してもらうことが大切
 文章記述の問題の解答は,あくまでも解答例であり,「同意可」となっています。この「同意」というのが曲者。本当に「同意」かどうかはどんなに自分に厳しい人でも,採点者が自分である限りあやしいものだと思って下さい。なぜなら「人は自分の見たい(信じたい)と思うもの(真実・現実)を見る(信じる)ものである。」からです。
 最近流行りの公正な第三者がみてはじめて,それが「同意」かどうかを判断してもらって下さい。そうして正しい指導を受ければ,問題を正しく読み取って,正しく用語を使用して,正しい日本語の文章を書くことができるようになります。学校の先生でも塾の先生でも構いません。信頼できる先生と信頼関係をつくって質問にいけば絶対にその先生は断りません。喜んで添削してくれます。そのためにも日頃の授業をしっかりと聞く姿勢が大切になるのです。
 もし身近に添削してもらえる先生がいなければ,私宛てに連絡を下さっても結構です。

 公立の上位校を目指す方は,最終的には知識問題で差は大きくつきません。文章記述問題こそ配点も大きく,〇をもらうのか,△をもらうのか,×をもらうのかで差がつくところです。これから述べる「技術編」があなたの勉強に少しでも役立てば幸いです。

技術編

1.作文の基本
①主語と述語の一致
(1)文法的一致

 社会科の問題に限らず,文章記述の問題では当然,主語と述語を正しく一致させなければなりません。文を書くときの基本中の基本。日本語として正しい文を書く。
 このときつい常用しがちな要注意助動詞が使役の「せる(させる)」,受身の「れる(られる)」です。英語など西洋の言葉は動詞が主語に支配されますが,日本語は述語が支配的な地位をもつ言語です。自分が書いた文章の述語を見直し,その述語に合う適切な主語かどうかを確かめましょう。また文を訂正する場合,主語ではなく,述語を改める方が手間がかからず簡単です。
〔誤答例1〕『源頼朝が,全国に守護・地頭が設置された。』
 「設置された。」が述語の短文ですが,「源頼朝」と「守護・地頭」の2つに「が」が付き,日本語としておかしくなっています。
〔正答例1〕『源頼朝が全国に守護・地頭を設置した。』
 「源頼朝が」を主語とした場合の正しい文はこうなります。
〔正答例2〕『源頼朝によって全国に守護・地頭が設置された。』
 「守護・地頭が」を主語とした場合はこうなります。またすでに解答用紙に書いた誤文を改めるとき,〔正答例2〕の方が速くて簡単です。

〔誤答例2〕『土地所有者が地価の3%を現金で納めさせられた。』
 「納めさせられた」という部分が「させる」・「られる」の二重使用になっているため,わかりにくい文になっています。さらに「納めさせ」ているのが一体だれなのかがかわらない。正確に書くならば,「土地所有者は政府によって地価の3%を現金で納めされられた。」ということになるけれども,これでも「させる」・「られる」の重用による読みにくさは解消されません。
 ついつい作文で使ってしまう。使役・受身の助動詞は,できるだけ重用はさけましょう。次のように書けばよい。
〔正答例3〕『政府は土地所有者に地価の3%を現金で納めさせた。』
〔正答例4〕『土地所有者が地価の3%を現金で納めなければならなかった。』

 また後者の方が,後半部分だけを直せばよいので,訂正が簡単です。

(2)適切な言葉の使い方
 文法的には正しくても意味内容しとて文を正しく書いていないときがあります。次のような言葉を使用するとき,それに対応する正しい表現を選びましょう。
・気温,緯度,~率⇒「高い」・「低い」
・量,数⇒「多い」・「少ない」
・割合⇒「大きい」・「小さい」


②文の終わり方
(1)内容を問う問題
・「~とはどのようなこと(もの)ですか。」

 この場合,基本的な終わり方は「~こと。」,「~もの。」です。問題によっては「~名詞。」の形(体言止め)でもOK。例えば「~する制度(法令)。」,「20歳以上の男女。」,「日本独自の貴族文化。」など。
・「どのようになりましたか。」
 この場合,「~になった(なっている)。」と最後は動詞や動詞に準じる形で終わる。
・資料(グラフなど)から読み取れること
 この場合も,最後は動詞や形容詞,またはそれに準じる形で終わってもよい。「~となっている。」,「~は高い(大きい・多いなど)。」
(2)理由(原因・目的)
 理由(原因・なぜ)の場合は文末は「~から。」で終わる。同じ理由でも目的を問われた場合は「~ため。」で文を閉めるようにしましょう。
 ただ原因を答えるときにも「~ため。」を使用することはできますが,目的と区別するためあらかじめ自分の中のルールとして使い方を決めておいた方がようでしょう。
(3)〔   〕内にあてはまる文を書く場合
 注意すべき点は,文末の「。」は必要ないということです。文を書くと「。」で終わることが癖になってしまっていますから,ついつい「。」を書いてしまう。多くの人が引っかかってしまう,不注意が招く落とし穴です。

2.出題パターン
 文章記述問題にもいくつかのパターンがありますが,答えるときに共通しているのは,「要求されていることに答える」ということです。それと同時に要求されていること以外は書かないということ。「理由」を問われているのに「目的」を答える。「変化」を問われているのに,「結果」を答える。資料を読み取る問題なのに自分の意見を書く。これらは問題の要求に答えていない例です。
 「問われているのは何か?」これをはっきりさせることがまず大切。そのためには問題文をしっかりと読み込むことです。

①内容…「~とは何か。簡単に説明しなさい。」

 問われているのは,「~」の内容,中身,意味です。この場合,問われている語句の説明をすればよい。語句の説明なので,文末は「…ということ(もの)。」や「名詞。」などの体言止めでよい。

②原因(理由)…「~はなぜか。」
 「理由」を問う問題には2通りあります。1つは「原因」,もう1つは「目的」です。「原因」は,ある現象・物事がおこる前にすでに生じていることです。地理ならその状態になる前に生じること(もの),歴史なら問題の出来事の前(過去)におこった出来事を答える。そして文末は「~から。」でしっかりと閉じる。よくある解答例に「~なので。」というのがある。「なので」は文頭にも文末にも使用できない言葉です。
 また「背景」という問われ方も「理由(原因)」を意味することをおさえておきましょう。(「~の背景」とは「~の原因」を問われている。)

③目的(理由)…「~する(した)目的を簡単に説明しなさい。」
 「原因」が前(過去)を答えるのに対して,「目的」は後(未来)を答える問題です。ある現象や物事のあとにおこることを考えましょう。そして文末は「~するため。」と答えるのが一般的です。「目的」は「ねらい」という語で問うこともあります。(「~のねらい」とは「~の目的」を問われている。)
〔例題1〕地租改正の目的を簡単に説明しなさい。
〔誤答例〕『農作物などによる物納では,政府の収入が不安定になるから。』
 これは原因を答えているので,まちがい。農作物(米)による物納は,地租改正がおこなわれる前の段階でおこなわれていたことです。「目的」は地租改正の後,どうなるかを説明しなければならない。
〔正答例〕『政府の財政収入を安定させるため。』

〔例題2〕参勤交代の目的を簡単に説明しなさい。
〔誤答例〕『大名の妻子を江戸に置き,大名に江戸と領地を一年ごとに往復させた。』
 これは参勤交代の内容です。
〔正答例〕『大名に経済的負担を課すことで,反乱の余裕をなくさせるため。』

 理由・原因・目的の区別があいまいな問題。(どれにもとれる。)この場合,文末はどちらにも使用できる「~ため。」を使用するのがよい。
〔例題3〕三審制をおこなう理由を簡単に説明しなさい。(二院制の場合も同様の答えとなる)
〔正答例〕『裁判を慎重におこなうため(裁判を慎重におこない,冤罪を防ぐため)。』

〔例題4〕三権分立をとる理由を簡単に説明しなさい。
〔正答例1〕『権力が1つに集中すると,国民の人権が侵害されるから。』
 「理由」を「原因」としてとらえたときの答え。
〔正答例2〕『権力の抑制と均衡を図ることで,国民の人権を守るため。』
 「理由」を「目的」としてとらえたときの答え。

④特色(特徴)…「~の特色を説明しなさい。」
 「特色」とは何でしょう?他と比べてきわだっているところをいいます。そこで「~の特色」を一生懸命考えて,きわだっているところを書こうとします。その結果,説明したことは結局「~の内容」であったことに気づきます。そう「特色」を問われたら,内容を答えればよいのです。
 「特色」あるいは「特徴」という形式で問われる問題の代表例に,「気候」や「文化」の問題があります。
〔例題5〕地中海性気候の特色を簡単に説明しなさい。
 気候とは「気温」と「降水量」を意味する言葉です。したがって原則としてこの2つの説明をする。まず気温は温帯に属することから,その説明をしてやる。このときよく使われる文句が「冬でも温暖」といういい方。
 次に降水量の特徴。地中海性気候は夏に乾燥する気候であることから,
〔正答例〕『冬でも温暖で,夏に乾燥する気候。
 結局,地中海性気候の特色の説明は,地中海性気候の内容の説明になるのです。

〔例題6〕鎌倉文化の特色を簡単に説明しなさい。
 文化を説明するときに重要になるのが,「文化の担い手」,あるいはその「文化に影響を与えたことがら」です。文化の特色を一言書くのに添えて,前にこの2点(あるいはどちらか1点)を書くようにしましょう。
〔正答例〕『武士の気風を反映した,簡素で力強い文化。』

⑤変化・比較…「どのように変化したか」・「~と比較して説明しなさい。」
 「変化」・「比較」の問題に共通しているのは,「変化後」や「比較の一方」だけを書いても正解にならないという点です。
 「変化」の場合,「~から…へと変化した(なっていった)。」と変化前と変化後の両方を書くこと。「~したことで,…するようになった。」という書き方もあります。
 そして「比較」では,両方の特色を書くか,もしくは「共通点」と「相違点」について述べるようにします。
〔例題7〕1945年末,衆議院議員選挙法が改正され,わが国の有権者数が増加した。その理由は有権者の資格がどのように改められたことによるか。改正前と比較して簡潔に答えなさい。
〔誤答例〕『20歳以上の男女に選挙権が与えられたから。』
 この解答例は理由にはなっていますが,改正前との比較ができていないので,問題に対する答えとして成立しません。
〔正答例1〕『改正前は25歳以上の男子であったが,改正後は20歳以上の男女に選挙権が与えられたから。』
〔正答例2〕『改正後,選挙権をもつ者の年齢が25歳以上から20歳に引き下げられ,女性にも選挙権が与えられたから。』

※選挙権の問題 年齢の前に「満」は要るか?「歳」は「才」でよいか?
 選挙権の問題では年齢の前に「満」という接頭語がついていますね。「満~歳」の「満」です。この「満」は書かなければいけない語か?よく質問されます。
 結論からいうと「書く方がよい」ということになります。普段の生活で年齢は誕生日が来てはじめて1つ加算していくものですが,法律上では誕生日の一日前に歳をとることになっています。これが満年齢です。例えば4月1日生まれ(誕生日)の人は3月31日に歳をとることになるので,前の学年(上の学年)に入ります。
 このように考えると選挙日の翌日が誕生日の人は,選挙日(誕生日はまだ)には法律上満18歳を満たしているので投票にいけるのです。したがって一般的な18歳と満18歳は微妙に異なるわけです。
 だから選挙権の年齢もきちんと「満~歳以上」と書くのが正しい。ただしわたしは「書く方がよい」といいました。それは入試問題の模範解答などをみても,「満」を書いている解答と書いていない解答の両方がみられます。したがって書かなかったからといって,「×」あつかいする程度のものではないと考えられるからです。
 ただし年齢を表す「歳」の字は「才」の字になってはいけません。この文字が「才」と書かれている模範解答は1つもありません。理由はそもそも「才」の字は「歳」の字とは意味が異なり,略字ではないからです。


⑥資料の読み取り
 主にグラフや図を読み取って言葉にする問題です。注意することはいくつかあります。
(1)問題に指示されている資料はすべてについて書くこと。
 「資料1と資料2から読み取れることを」と書かれた問題なら,「資料1」と「資料2」について意地でも書くこと。資料が3つなら3つについて書かなければなりません。1つでも抜けてはダメ。
(2)読み取れることだけを書く
 「読み取れることを書きなさい。」という問題は,単純に数字を言葉にすればよいだけです。そこからどういう問題点につながっていくかを考える問いではありません。かっこいいことを書こうとせず,素直に「読み取れることだけ」を文字にすればよい。
(3)グラフ・資料の欄外の用語の説明もよくみる!
 グラフや資料に使用している語句の説明が資料の欄外に書かれている場合があります。この場合,その説明が読み取りのヒントとなっていることが多い。グラフや資料だけでなく,細かいところまで目を配るようにしましょう。
〔例題8〕次の資料中のⅠ~Ⅴは,東京都と京都府・大阪府・愛知県・奈良県・三重県の6都府県についてまとめたものである。東京都とⅡ・Ⅴの府県の昼夜人口比率が100より大きい理由を,資料を参考にして簡潔に書きなさい。

都府県 使用電力量
(百万kwwh)
製造品出荷額
(億円)
企業数
(従業者数300人以上)
大学数 昼夜間人口比率
(%)
3169 68604 142 7 96.2
20214 168799 1036 55 105.5
3191 23562 70 10 88.7
4169 108226 182 8 97.8
15773 439112 863 50 101.7
東京 29579 106198 2625 134 120.6
※昼夜人口比率とは,夜間の人口を100としたときの昼間の人口の割合。

 ここで重要になるのは,昼夜人口比率の意味です。これがわからないと問題が解けない。資料の下に小さい文字ではありますが,その意味が書かれています。これを参考にする。
 ※印の内容を式にすると,「昼間人口÷夜間人口×100」となります。つまり昼間人口>夜間人口なら昼夜人口比率は100より大きくなる。
 昼間人口が多くなるのは,大都市の特徴で,周辺地域からの通勤・通学が原因です。資料から読み解くと東京都・Ⅱ・Ⅴに共通しているのは,企業数や大学が多いことです。またその他の項目から総合的に考えて,Ⅱは大阪府,Ⅴは愛知県を示していることもわかります。
〔正答例〕『企業数や大学数が多く,他県から通勤・通学してくる人が多いから。』

(4)複数のグラフ・資料から関連性を読み取る
 単純に2つの資料(仮にA・B)をそのまま読み取って文にした場合,「Aは~であり,Bは…である。」となりますが,これではあまりに「そのまま」に過ぎます。読み取り方のまちがいがない限り,「×」あつかいにはならないはずですので,まずは書くことが大事。
 しかしもう少し文に工夫ができないでしょうか?問題の作り手の意図としては2つの資料の関連性(関係性)を求めているはずです。統計における関連性(関係性)には大きく2つあり,比例と反比例の関係です。
 比例関係の場合,「Aの割合が大きいほど,Bの割合も大きくなる。」・「Aの量が少なくなるにつれて,Bの量も少なくなる。」
 反比例関係の場合,「「Aの割合が大きいほど(対して),Bの割合は小さくなる。」・「Aの量が少ない割りに,Bの量は多い。」
⇒《地理 第7回 応用編1 例題7》・《地理 第8回 応用編 例題2》

⑦意義(影響)…「~の歴史的意義(影響)を答えなさい。」
 特に歴史分野で問われる問題ですが,その出来事の「意義」や「影響」を問う問題。「~の結果,どのようになったか。」影響の問題は答え方は「変化」の問題に近い。「(~したことで,)…となった。」という書き方が一般的。
 また「影響(結果)」以外に「意義」として考慮しなければないらいのが,「最初の~」,「最後の~」というパターン。「最初の~であった。」や「最後の~となった。(~が終結した。)」という書き方になる。
〔例題9〕五・一五事件の歴史的意義を簡単に説明しなさい。
〔誤答例〕『海軍青年将校によって犬養毅首相らが暗殺された。』
 これは「五・一五事件」という事件の意味内容です。
〔正答例〕『政党政治が終結した。』

〔例題10〕応仁の乱の歴史的意義を答えなさい。
〔正答例〕『将軍や天皇の権威が衰え,下剋上の世の中となった。』


⑧意見…「あなたの考えを書きなさい。」
 この場合,社会の知識だけでなく,どれだけの常識力があるかが問われています。特に公民分野での問いが多く,政治・生活・少子高齢化・環境など日頃の生活で磨いていくことが大切です。答えはそれほど難しくはなく,解答の数も複数あります。
 ではどうすればこのような感覚を磨けるのか?何事に限らず,積極的に生活することです。学校・塾などではどのような教科に限らず,積極的に受ける。「聞いている」ではなく,「聴こうとする」態度が大切。
 ある程度よく出る問題については,あらかじめいくつかの解答を用意しておくことも大切です。備えあれば,憂いなし。《練習問題》ではいくつかのパターンの問題を用意してあります。

3.解答用紙に書く前に
①簡単(簡潔)に説明しないさいとは
 問題にはよく「簡単(簡潔)に説明しなさい。」とあります。何が簡単なのか?どのように書くのが正しいのか?この意味には2つあります。
 1つは限られた字数内で答えなさいという意味。もう1つは制限字数が設定されている場合はその字数で,そして設定されていない場合も,可能な限り「一文」で書くという意味です。

②キーワード
 解答文をつくるためには,その文の中心となるキーワードが必要になります。キーワードはあらかじめ問題で与えられている場合もありますが,与えられていない,つまり自分で引っ張り出してくる必要がある場合もあります。
 キーワードが与えられていない場合は,いくつかキーワード候補をしぼりだすことからはじめましょう。問題に関連が深いと思われる語句をいくつか列挙する。そしてその中から一番適切な語句を1~2個選んで使用する。

③与えられた語句はそのまま使う。(変化させない)
 問題に与えられたキーワードや問題文中で使用されている語句はすべて,そのままの形で使用するようにします。勝手に類義語や省略,変形をしないようにしましょう。例えば,受験生を悩ます大問題に『文章記述問題における「 」問題』という難事があります。
〔例題11〕鎌倉幕府では将軍と御家人は御恩と奉公の主従関係で結ばれていた。奉公とは何か,「将軍」・「御家人」の語を使用して,簡単に説明しなさい。

 まずは与えられたキーワードの使い方を考えましょう。御恩が将軍が御家人に対して領地(土地)を与えたりすることを意味するのに対し,奉公は御家人が将軍に対しておこなうことです。したがって,「御家人」を主語にして書くとよいでしょう。
 「御家人は(が),将軍に対し(のために)~する。」そして内容(意味)を問われているので最後は,「~こと。」で終わる。⇒「御家人が将軍に対して~すること。」これで答えの形ができました。
 次に「~」にあてはまる語句(キーワード)を自分で探してこなければなりません。思いつくことをいくつか挙げてみましょう。「将軍を守る」,「戦に参加する」,「鎌倉を守る」,「戦う」,「忠誠を誓う」などなど。思いついた言葉の中から,答えに使えそうな語を選び出します。ここでは「戦う」ぐらいが簡単でよいでしょう。
 最後に文を完成させます。〔正答例1〕『御家人が将軍のために戦うこと。』となります。もう少し言葉のレベルを上げてみて〔正答例2〕『御家人が将軍に対して軍役を果たすこと。』と書いても結構です。

 さてここで重要なのは,答えの作り方だけではありません。キーワードの使い方です。キーワードとなっている二つの語句はいずれも「 」でくくられています。この場合の「 」は「 」の中の語句を強調するためのもので,答えに使用するときはわざわざ「将軍」・「御家人」としなくてもよい。もちろんちゃんと問題文に「 」をつけて書いたあるのだから,「 」付きで解答をつくっても「×」にする理由はありません。
 したがって〔正答例3〕『「御家人」が「将軍」のために戦うこと。』こう書いてもかまわない。
※問題によっては,『語句を使用するときは「 」を使わなくてもよい(使わないこと)』と書かれている場合があるので注意!

 では次の場合はどうでしょうか。
〔例題12〕次の文中の〔   〕にあてはまる内容を「将軍」・「御家人」という語句を使用して答えなさい。
 鎌倉時代,「将軍」と「御家人」は土地を仲立ちとして御恩と奉公の主従関係で結ばれていた。御恩とは,「将軍」が「御家人」に対して領地を与え,それを保証することを意味し,これに対し奉公とは〔   〕ことを意味した。


 この問題の場合,「将軍」・「御家人」という語句は問題文中に「 」付きで使用されていることに気づきます。明らかにこの文は将軍・御家人という語は「 」をつけることになんらかの意味があるのです。御恩の説明にある「将軍」・「御家人」という使い方を無視して,〔   〕の中だけ「 」なしで書くわけにはいかないのです。
 したがって〔   〕にあてはまる内容は「 」を付けて,〔正答例〕『「御家人」が「将軍」のために戦う(「御家人」が「将軍」に対して軍役を果たす)』が正しい答えになる。

 このように与えられたキーワードや問題に使用されている語句は,その問題全体の中で使用されている通りに使うというのが大原則なのです。自分勝手に言葉は使わないこと。

④キーワードの使い方を考える
 キーワードを中心に文を作ります。
〔例題13〕第二次世界大戦後,農地改革が実施された結果,小作地が減少し自作地が増加した。農地改革ではどのようなことがおこなわれたか。「政府」・「地主」・「小作人」の語を用いて簡潔に説明しなさい。
 キーワードは文をつくるときの骨組みになります。与えられた語をどのように使用するかを考えましょう。
 まず「政府」。農地改革はGHQの指示のもと政府が実施した改革ですから,これは主語になりそうです。「政府は(が)~」と文がはじめられそうです。
 「地主」・「小作人」は「土地」を介した関係ですから,与えられたキーワード以外に「土地」という言葉が必要になりそうです。土地を持っているのが「地主」,土地を借りているのが「小作人」。そしてこの関係を壊したのが農地改革。
 では「政府は」,「地主」に対してどのようなことをしたかを考えて,述語を作ってみましょう。「政府は地主から,土地を取り上げる。」そして「小作人」に対して,「その土地を小作人に与えた。」となります。つづけて「政府は地主の土地を取り上げ,小作人にその土地を与えた。」
 これで十分文章として成立しています。満点の答え(○)ではありませんが,減点(△)の答えにはなるでしょう。あとは歴史的認識を少し変更すれば,正しい答えになります。
〔正答例〕政府は地主の土地を買い上げ,小作人に安く売り渡した。

 このように与えられたキーワードから,主語・述語をどのように組み立てるかを考えてみましょう。

⑤資料を1つずつ検討する
 2つ以上の資料を分析する場合は,一度に1つにまとめようとはせず。資料1つにつき,1つの分析結果を出し,出来上がった複数の文を1つにまとめるようにします。
〔例題14〕表1・表2をもとに,1970年から2005年の期間におけるわが国の大豆の主な輸入先の国の数の変化と自給率の変化について,読み取れる内容を簡潔に答えなさい。
表1 大豆の輸入量及び主な輸入先

1970 1980 1990 2000 2005
輸入量(千トン) 3244 4401 4681 4829 4181
輸入量に占める国別の割合(%) アメリカ 91.0 96.0 73.8 74.7 74.8
中国 9.0 2.3 6.1 2.9 4.4
ブラジル 0.0 0.8 18.3 15.6 13.5
カナダ 0.0 0.5 0.9 4.9 7.3
その他 0.0 0.4 0.9 1.9 0.1

表2 大豆の自給率

年度 1970 1980 1990 2000 2005
自給率(%) 4 4 5 5 5


 《2.⑤(1)》より,与えられた資料はすべてについて言及する。また《2.⑤(2)》より,読み取れることだけを書く。そして資料は一度に1つにまとめようとはせず,1つずつ分析していく。
 この場合,表1から読み取れるのは,「大豆の主な輸入先の国の数の変化」。そして表2から「大豆の自給率の変化」です。
表1…「大豆の輸入先の国の数」は増えていると読み取れます。問題は「大豆の主な輸入先の国の数」と問われているので,正確に「大豆の主な輸入先の国の数は~である。」の形で答えるようにします。《3.③》から,問題に与えられた言葉はそのまま使用するのが原則です。「大豆の輸入先は多様化している。」と答えると何となくかっこいいんですが,問われている形で(要求どおり)答えることが大切。
表2…大豆の自給率は4%から5%に若干増加していますが,100%中の1%の伸びですから,ほとんど変化はないと考えるのが正しい読み取り方。したがって,「大豆の自給率の変化はない。」

 各資料についての分析が終わったあとに,2つの内容をあわせます。表1では大きく変化したのに対して,表2ではあまり変化がないので,2つの内容をまとめるためには「逆接の接続詞(助詞)」を使用する。
〔正答例〕大豆の主な輸入先の国の数は増えているが,自給率は変わらない。

⑥具体例は一般化できないか
 問題(資料中も含める)に与えられた具体的な例を,一般的な語句にまとめることが必要な場合もある。
・乳用牛,肉用牛,鶏,豚,羊⇒家畜,畜産業など。
・農産物,鉱産資源⇒一次産品
・農業,林業,漁業⇒第一次産業
・工業,鉱業,建設業など⇒第二次産業
・商業,サービス業など⇒第三次産業


〔例題15〕次の資料は,ドイツ,オランダ,カメルーン,ボツワナの主要な輸出品およびそれらの総輸出額に占める割合(%)をあらわしたものである。ドイツ,オランダと比べて,カメルーンとボツワナ両国の輸出の特徴を説明しなさい。

主要輸出品の輸出額に占める割合(%)
ドイツ 機械類 26.6 自動車 17.8 医薬品 5.7 精密機械 4.1 航空機 3.3
オランダ 機械類 23.0 石油製品 8.9 医薬品 5.6 化学薬品 4.4 自動車 3.6
カメルーン 原油 40.1 カカオ豆 18.9 木材 11.2 石油製品 4.3 綿花 4.1
ボツワナ ダイヤモンド 87.8 ニッケル鉱 3.2 機械類 2.6 牛肉 1.4 化学薬品 0.5

[表:データブックオブ・ザ・ワールド2018より 2016年] 

ドイツ,オランダといったヨーロッパ先進国の輸出品が機械,自動車,薬品などの「工業製品」の割合が大きいのに対して,カメルーンやボツワナといったアフリカの発展途上国の輸出は,「農産物」・「鉱産資源」に大きく頼っていることがこの表から読み取れることです。
 いくつかの例から「工業製品」や「農産物」,「鉱産資源」といった一般名詞にまとめてしまうのが,この問題のポイント。また「農産物」や「鉱産資源」など自然から採取された状態(加工されていない)のものをまとめて「一次産品」といういい方もします。
〔正答例〕工業製品の輸出が中心のドイツ・オランダに比べて,特定の一次産品(農産物や鉱産資源)に偏っている。

⑦文末を決める
 問われ方によって,「~こと(もの)。」・「~から。」・「~ため。」・「~ている。」など文末表現が適切かどうかを確認しましょう。

4.解答用紙の使い方
①解答用紙は原稿用紙ではない
 与えられた解答用紙(枠)は原稿用紙ではありませんので原稿用紙のルールにのっとって書く必要はありません
・最初の一マスをあける必要はなし
・行頭に「っ」・「ゃ,ゅ,ょ」・「,」・「。」などを書いてもOK。
・行末に二文字を入れてはいけません。「~た。」最後の1マスに「た」と「。」を入れてはいけない。

②数字・記号の使い方
 数字は1字を0.5文字と考えます。1925年は「19」・「25」・「年」とマスに入れる。「25歳」も同様「25」・「歳」と書く。
 「=」,「・」,「%」などの記号は一文字としてあつかいます。「バスコ=(・)ダ=(・)ガマ」の「=(・)」はすべて一字です。

③アルファベット
 アルファベットは大文字は1マスに1字,小文字は1マスに2字を書き入れます。社会では使用するとしても大文字の略称なので,小文字を気にする必要はありません。

④略字を用いない

 漢字,部首など略した文字は使用しない。また「世紀」を「C」,「紀元前」を「B.C.」といった略語も用いない。EU・ASEANなど略称はかまわない。

⑤最後に「。」はあるか,必要ないか。
 句点(「。」)が必要な問題かそうでないかを必ず最後に確認しましょう。