地理 第1回 地図   基礎編1 地図

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はじめに

 この単元は特に公立高校の入試問題でもっともよく出題される単元です。そのつもりで確実に得点できるようにしましょう。

最初に必要となる知識

・六大陸と三大洋は完璧におぼえているか。
・緯度(緯線)と経度(経線)をまちがえないか。
・イギリスとその首都ロンドンを知っているか。
・赤道を引けるか。
 以上の点を知っていないと,世界地図の問題は解けません。


1.六大陸と三大洋
 六大陸とはユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・オーストラリア大陸・南極大陸を,三大洋とは太平洋・大西洋・インド洋をいいます。場所は自分で確認しましょう。中には北極大陸や南アフリカ大陸なんていう人もいます。(笑)
 問題で問われているのは,名称はもちろんのこと,その位置関係がわかっているかということ。(どの大陸とどの大陸が隣りあって位置しているか。)
 問題に出題される地図は,素直な日本を中心とした長方形型とは限りません。時には円形になったり,形がゆがんでいたり,地球をいろんな方向からみた地図(北極点中心・南極点中心など),逆さまになっている地図などが出題されます。
 また公立高校の入試問題では,大陸の正しい位置を問う,またはおおよその形を描いて配置する問題がこれまで多く出題されています。(ただしユーラシア大陸と南極大陸の作図問題は,形が複雑すぎるためかこれまで出題されたことはありません。)
 おぼえるときに意識すべきことは,位置関係であると思って下さい。日本中心の世界地図だけで,位置関係を意識せずに練習を重ねてもダメです。それはちょっとかわった習字の練習です。「意識すること」が大切です。さまざまな地図で練習しましょう。ポイントは次の3点です。
☆六大陸,意識するのは
・ユーラシア大陸とアフリカ大陸は地続き
・北アメリカ大陸と南アメリカ大陸は地続き
・ユーラシア大陸と北アメリカ大陸は北半球のみ。


2.緯度と経度
 緯度と経度をまちがえると致命的です。すべてが逆になってしまいます。以後すべてに影響する大問題です。
 ここでは難しい説明を省きます。経線の「経」は「縦」を意味します。そして緯線の「緯」とは「横」の意味です。したがって経線とは地図上のたての線緯線とは地図上のよこの線です。迷ったら「横=緯・経=た(て)」で「ヨコイ ケイタ」と男の子の名前をつけておぼえておきましょう。
 経線の基準は北極点と南極点を結んだたて線のうち,イギリスのロンドン(旧グリニッジ国立天文台)を通過する線です。本初子午線ともいいます。「本初」とは「もとの・はじめの」という意味です。この線を基準にして西を西経,東を東経とし地球を半分に分ける。東西ともその位置を角度であらわして,限界は180度
 緯線は赤道を基準にして,赤道が緯度0度。赤道に平行になるように南北に引いた線が緯線です。赤道面から真上が北極点,真下が南極点ですから,緯度の限界は90度

3.イギリスと首都ロンドン
 案外,イギリスがどこにあるのか知らない人が多い。イギリスのロンドンは経度の基点です。経度の問題だけではありません。テストで問われる国の中で,もっとも出題率の高い国の1つです。イギリスは地図上の経度の基準となっているだけでなく,われわれの現代社会の基礎である議会制民主主義のお手本であるし,世界で最初に産業革命をおこした現在の物質文明の発祥の地でもある。またみなさんが習っている英語とは「イギリス語」です。英語がどこの国の言葉か知らないまま,英語を習っている人がほんとうに多いのです。

4.赤道
 赤道は当然,緯度の基準であり,もっともよく出題される緯線です。赤道が陸上のどの位置を通るかを知ることは,気候の問題でも重要になってきます。赤道を書き込んだり,大陸の形と位置を書かせる作図問題もよく出る問題です。どのような問題かによらず世界地図をみたら,赤道を書き込む習慣をつけておくのがよいでしょう。実際のわたしの授業では,問題に世界地図が与えられたら必ず地図上に赤道を引かせるようにしています。

おぼえておきたい緯度・経度

1.赤道・本初子午線
①赤道
 赤道と本初子午線の位置は最もよく出題される緯度と経度です。まず赤道は陸上を3ヵ所通過しています。まずはアフリカ。目印とするのはアフリカ西部を東西に延びる海岸線(ギニア湾)。この海岸線の少し南側を海岸線と平行に走り(海岸線と重なってはダメ),アフリカ大陸をほぼ南北半分に分断します。ビクトリア湖という湖の北部を通過するとおぼえてもよいのですが,地図によってはビクトリア湖が描かれていないものもあるので,やはり海岸線を基準におぼえておくのがよいでしょう。

 次に東南アジアです。スマトラ島とカリマンタン島のどちらを基準にしても結構です。ほぼ2つの島を真っ二つにする。ここで肝心なのはシンガポールが北半球・南半球のいずれに属するかです。ぎりぎりシンガポールは北半球になります。
 3ヶ所目は南アメリカ大陸です。赤道は南アメリカ大陸の北部を通過しています。大西洋側はちょうどアマゾン川の河口部。太平洋側はエクアドルという国を通っています。エクアドルの国名は「赤道」を意味する。


②本初子午線
 本初子午線に移りましょう。本初子午線はイギリスのロンドンを通過しましたね。だいたいイギリスを目印にすればよい。ここまではどこにでも書いてあるし,教えてもらうね。私が注意したいのは,もし与えられた地図にイギリスが描かれていなかったらということです。例えばアフリカだけが描かれた地図が出たらどうする?そこで大切なのは,赤道(緯度0°線)と本初子午線(経度0°線)がどこで交わっているかおおよその位置をしっかりと頭に入れておくこと。(ギニア湾海上です=陸上ではない)「本初子午線がイギリスのロンドンを通る。」というのは大切な知識だけど,そんなことを100回おぼえても点数には結びつかないんだよ。


③日付変更線
 本初子午線の裏側の線は何というか,日付変更線ですね。ほんとうは経度180°のはずなんだけれども,この線がそのまま国を通過してしまうとちょいとやっかいなことになってしまうので,わざとデコボコに引いてある。文字通りこの線を境に日付を変えなくていけない。同じ国の中に日付の違う場所があるといろいろと困るからね。


2.北緯40°東経135°
 上の基準線のほかによく出る緯線・経線は何といっても北緯40°東経135°
①北緯40°
 日本では秋田県。秋田県に日本海に突き出た半島がありますね。この半島の北端あたり。秋田県を通るということは岩手県も通りますね。
 日本を基準に西へ西へと延ばしていきましょう。中国ではペキンあたり,中国の北部を通ります。ヨーロッパではイタリアの半島南部(ハイヒールに似ていてそのかかと部分),ヨーロッパでは全体的に南部。地中海沿いに通過する感じです。次は東へ東へと回っていくと,アメリカ合衆国を横切ります。アメリカでは中央部を通過する。
 この北緯40°に関して次の2点を理解しておく必要があります。まずよくいわれることですが,日本では東京・大阪のような大都市がこの線より南側に位置するのに対し,世界の大都市はこの線付近あるいはこの線より北方に位置するということです。日本では北海道にあたる緯度にヨーロッパの主要国が位置している。
 ではなぜこのようなことになるのかということをたいていは教えてくれません。ここが大切なところ。この北緯40°という線は,ほぼ小麦の生産ラインなのです。40°周辺またはこの線より北方が小麦の大産地になっている。小麦は米より雨の少ないところで生産されます。日本は米を食べる民族です。米は暖かく雨の多いところで生産されます。(のちに品種改良によって寒い地域でも生産されることになった)だから北緯40°より南側(北緯35°付近)に人が集まり大都市を形成してきました。これに対して世界は,小麦を主食にしています。小麦を栽培しやすい地域こそが北緯40°付近からそれより北側なのです。
 ヨーロッパではもともと小麦は地中海沿岸の地域でさかんでした。地中海沿岸を支配した古代ローマ帝国が勢力を北に伸ばすにしたがって狩猟民族に農耕(=小麦栽培)を伝えていったのです。食糧は人口を支えるためにもっとも必要なものです。だから世界の大都市は日本の大都市よりも高緯度の北緯40°付近にあるのです。


②東経135°
 この線は兵庫県明石市を通過します。この線の別名は日本標準時子午線。つまり日本の時間の基準線ですね。
 またこの線を南に延ばすとオーストラリア大陸を真っ二つにします。オーストラリア大陸を正しい位置に配置するなんて問題もでますので,このこともおさえておきましょう。


3.国境
 世界地図をみると国境が直線となっているところがあります。これは緯度経度をもとに引いたためです。特にアフリカに多いのは,かつてアフリカ諸国を植民地としていたヨーロッパの国々が自分たちの都合のよいように分割したためです。

地図の読み取り

 地球は球体ですから,球の表面を平面に完璧に映すことはできません。したがって何かを犠牲にして平面に描く必要があります。何かとは「距離」・「方位」・「角度」・「面積」・「形」などです。テストに出題される地図は大きく三種類ですが,中でも二種類の地図をしっかりおさえておけばよろしい。

1.正距方位図法
 文字通り,「距離」と「方位」が正しい地図で円形の地図です。この図は名前もおぼえておきましょう。ただし勘違いしてはいけないことがあります。正しいく表しているのはあくまでも「中心からの距離と方位」です。円の中の中心以外の点を適当に2つとって,それを結んだところでまったく無意味です。下の図1をみてみましょう。


 この図法は中心からの距離と方位が正しく表せるので,東京(中心)からロサンゼルス,またはハワイを結ぶ直線は最短距離を示しています。それはすなわち中心から目的地までの最短コース(大圏コースともいいます)ということになります。
 またロサンゼルスやハワイが東京(中心)からみて,どちらの方位にあるかも示しています。ロサンゼルスはおよそ北東,ハワイはおよそ東の方向にあるということができます。このようにある方向に,最短コース(距離)をとってまっすぐ進むことができる輸送手段は飛行機ですね。よって正距方位図法は航空図に利用される。
 ただし図中の中心以外の都市(点)であるロサンゼルスとハワイを直線で結んだとします。これには何の意味もありません。ロサンゼルスとハワイを結ぶ最短距離でもないし,ハワイからみたロサンゼルスは北にあるはずがない。
 さらにハワイからみた東京はどうでしょう。距離に関しては中心である東京と結ばれているので最短コースといえるでしょう。ところがハワイからみた東京はほぼ西にあるということができるでしょうか。


 図2は,ハワイの州都ホノルルを中心とした正距方位図法です。直線はホノルルから東京への最短コースです。この図からわかるようにハワイからみた東京の方位は,ほぼ北西だとわかります。
 このように正距方位図法は,文字通り「距離」と「方位」が正しいのだけれども,それはあくまで「中心からの」であることを頭に入れておいて下さい。

 図3は再び東京を中心とした正距方位図法です。地図中のX・Yの大陸はわかりますか。Xは南アメリカ大陸,Yはアフリカ大陸です。これがなかなかすぐにわかってもらえないのです。それは大陸を日本中心の長方形で描かれた地図のまま,大陸の名前と位置・形をおぼえてしまっているからです。日本・ユーラシア・オーストラリア・北アメリカと順に納得し,北アメリカの位置から判断してXは南アメリカ大陸,ユーラシア大陸との位置から判断してYがアフリカ大陸と読み解けます。
 このように正距方位図法は最短距離(最短コース)方位さえわかればよいという地図ですので,形はほぼ無視した図といっていいでしょう。南アメリカゆがみすぎ。(大陸の位置は他の大陸との位置関係でおぼえましょう)

正距方位図法のおさらいを例題で確認しましょう。
【例題1】下の地図は東京を中心とした正距方位図法です。
 (1)東京・ニューヨーク間の最短コースを書き込んでみましょう。
 (2)東京からみたニューヨークの方位を八方位で答えなさい。
 (3)東京から真東に進むと最初にたどりつく大陸はどこですか。

 (4)ケープタウンとブエノスアイレスではどちらが東京から近いですか。
 (5)Xの大陸名を答えなさい。


答え:
(1)東京・ニューヨークを直線で結ぶ  (2)北東  (3)南アメリカ大陸(真東に進むとは地図中のブエノスアイレスの方向に進むということ)  (4)ケープタウン(ブエノスアイレスとケープタウンそれぞれ東京と直線で結び,その長さを比べればよい)  (5)南極大陸


【例題2】次の地図は,東京を中心とする正距方位図法である。赤道を示す線をA~Cから,本初子午線を示す線をD~Fからそれぞれ選び,記号で答えなさい。


 まず赤道を探しましょう。赤道はアフリカ大陸・東南アジア・南アメリカ大陸の3ヶ所を通過しました。もっとも形が整っているのは東南アジアですね。目印となる2つの島を通過しているのはBです。またこれまでの説明からA~Cの記号が書かれているあたりの陸地はアフリカ大陸であることからもわかります。
 そして本初子午線はイギリス(ロンドン)を通過しました。イギリスを探してもいいですし,赤道がわかれば,本初子午線と赤道が交わる地点がどこであったか思い出してもよい。
 正距方位図法における大陸・大洋・赤道・本初子午線はよく出るパターンの問題の1つです。

答え:赤道.B   本初子午線.D

2.正角図法
 代表的な地図としてはメルカトル図法というのがあります。しかし正距方位図法とちがって名前そのものを問う問題はあまりありませんので,その点は安心して下さい。こんなやつです。世界地図といえば,こんな地図という地図の代表選手。
 
 うーん,美しい。何がいいって,まず長方形。四角い壁に貼りやすいですね。中身は緯線と経線が直角に交わっていて,整然としている。形も私たちがイメージしている世界そのもの。世界の理想像。
 しかーし,みなさんだまされてはいけません。この地図,モノを見かけで判断してはいけない代表例でもあるのです。「かっこいいからといって,よい人ではない」。こいつの本性をあらわにしてやりましょう。

①メルカトル図法は欠点だらけ
・緯線と経線
 本来,地球は球体なので,赤道以外の場所で緯線と経線は,垂直に交わる場所はありません。
・方位
 経線は北極と南極を結ぶ線です。したがって南北の方位は,どこであっても正しく表されていますが,東西はどうでしょう。例えば,日本から真東に進むとどの大陸にたどりついたでしょうか。そうです。南アメリカ大陸でしたね。方位に関しては正距方位図法のおっしゃることが正しかった。
 メルカトル図法で右方向(東?)にまっすぐ進むと北アメリカ大陸にたどりついてしまう。これは世界を正しく映し出していない証拠です。そもそも東西とは緯線の方向ではありません。東西とは南北に対して垂直な方位をいいます。(図5)
 また図6のようななぞの説明がされることがありますが,このような説明はまったく無意味なのです。



・距離
 赤道周囲は40000kmを正しく縮尺していますが,赤道以外の緯線は赤道周囲より短いはずですね。それがすべて赤道周囲を同じ長さになっているのだから,緯度が高くなればなるほど距離が引きのばされている。当然この地図上で直線を引いても赤道上以外は最短コースを表しません。この地図の中の世界は赤道を離れたとたん距離が信用できない世界となるのです。

・形・面積
 距離が高緯度ほど引きのばされているのだから,形・面積も高緯度ほど引きのばされていることになります。オーストラリアとグリーンランドではどちらの面積が大きいでしょうか。オーストラリアは大陸です。グリーンランドは島です。大陸と島の違いはオーストラリアより小さければ島と定義しています。本来はオーストラリアの方が大きい。でもメルカトル図法の中ではグリーンランドの方が大きく見えてしまう。メルカトル図法の形と面積(大きさ)は事実とは異なる世界なのです。

②メルカトル図法の長所
 何にでもよいところを探せば1つくらいは見つかるものです。メルカトル図法の長所とは何でしょうか。
よーく見てみましょう。先ほどもお話した通り,緯線と経線が直角に交わっていますね。そうすると緯線どうし,経線どうしはすべて平行になっています。これは何を意味するのかというと,地図上にどこにでもいいから,2点(起点A・終点B)をとって直線を引いてみましょう。そうすると経線とその線とで形成された角度は,どこも等しくなりますね。同位角というやつです。同じく球体である地球上に同じ2点をとり,起点Aから経線に対して地図上の角度と同じ角度で進んでいきましょう。あら不思議,まっすぐな直線でもないのに終点Bにたどり着いてしまう。この道筋を等角航路といいます。(おぼえる必要はありません)そこでメルカトル図法は角度が正しい地図(正角図法)といわれ,この地図の長所は等角航路が直線で描かれることにあります。(地球儀上では曲線になってしまう)
 昔,長距離移動に船を使っていたとき,北極星や羅針盤を使って北の方位を探ります。北の方位(北極点)がわかれば自分の位置とを結ぶとそれが経線となります。メルカトル図法を使って,目的地まで直線を引くと,目的地に向かうための角度が分かるのです。大洋をゆく船はこの角度(舵角)を保って進んだのです。


 しかしこの航路,決して最短コースではありません。思い出して下さい。メルカトル図法は距離(長さ)が信用できない地図ですので,直線が最短距離を示さない。一方最短コースを示す地図は正距方位図法でしたね。ここでメルカトル図上で最短コースがどのように表されるかみてみましょう。東京・ニューヨーク間の最短コースを【例題】で確認しました。あれが最短コースです。ではメルカトル図法で東京・ニューヨーク間の最短コースを描いてみましょう。
 ハイ,定規をもった人はアウトです。何度もいったようにメルカトル図法では直線は最短距離ではない。ではどうするのかというと,正距方位図法で引いた直線がたどったコースをそのままメルカトル図法に移すのです。するとこうなります。(図8)




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