地理 第1回 地図   基礎編2 時差

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はじめに

 これから解説する「時差」についての問題を感覚的に「解ける人」がいます。「解ける人」はどんな手を使っても解けるのです。だから以下の解説にこだわる必要はまったくありません。どのような方法を使ってもかまいません。自分が解ける方法で解いて下さい。以下は時差の問題を解けるようになりたい人向けです。

☆時差の問題が解けない理由
 「時差の問題が苦手」「全然解けない」ということをよく聞きます。まずなぜ解けないのか。その理由からお話します。解けない要因には次の理由が考えられます。みなさんも必ずどれかにあてはまるはずです。
①面倒くさい
②図を描いて考えない
③計算まちがい
④時計を進めてよいのか,戻せばよいのか
⑤時間の足し算・引き算

①面倒くさい
 身もフタもない言い方ですが。そもそもこのような姿勢では,先に進めません。解けない人のほとんどはこれが原因だと考えて下さい。面倒くさい人は「②図を描かない」「③計算まちがいする」「④適当に考える」「⑤正確に数えない」です。

②図を描いて考えない
 時差の問題を解くには図を描くことが大切です。いや必須です。どのような図を描けばよいかはあとで説明しますが,必ず図を描いて下さい。ただし注意することがあります。
(1)多くの参考書や問題集などで説明している図では絶対に時差を考えることができないし,問題を解けるようにはなりません。無理なのです。それはこのような図です。


(2)図で説明する方法には,大きく2通りあります。「円」を描く方法と「長方形」を描く方法ですが,ここでは「長方形」を描く方法で進めていきます。それは「長方形」を描く方が多くの利点があるからです。その理由もあとで説明します。そのときに「長方形」の方が「解けない人」には分かり易いことが分かってもらえると思います。決して「円」を描くのが悪いのではありません。これまでに「円」を描いた説明を受け,そちらの方が分かりやすいという人もいるのです。繰り返しになりますが,「解ける人」は「円」であろうが,「長方形」であろうが全然かまわないのです。

③計算まちがい
 ①と②をクリアできれば,時差は恐くはありません。ですが安心しないこと。時差は計算問題です。計算自体は簡単ですが,決して計算間違いをしないこと。丁寧に計算する。
 時差を求めるとき「経度差÷15」をすることは実はほとんどの人が知っているのです。よって経度差を求める計算と「÷15」の計算を落ちついてやりましょう。経度差の求め方はこれから説明する図を描けば解決です。

④時計を進めてよいのか,戻せばよいのか
 これも図を描くことができれば,問題は解決だと思って下さい。

⑤時間の足し算・引き算
 落ちついて数えましょう。時計を描くもよし。指折り数えるもよし。

 このように時差の問題は,面倒くさいことをしっかりやる一点にかかっています。そして方法論としてはこれから説明する図をしっかりとマスターすることです。私自身実際現場で授業をしていて,中学3年生に時差の問題を最初に解かせると,ほとんどの生徒は最初からあきらめるか,図を描かずに解くかのいずれかです。一通りの説明を終えると,紙面の余白あるいは解答用紙の裏面などに必ず図を描かせ,計算過程を残すようにさせます。このようにすることで解けなかった人もどこでまちがったかが用意にみつけられ,練習を重ねるごとにできるようになっていきます。みなさんも時差の問題は知識がなくても解ける問題ですので,確実に得点できる得点源と考えて下さい。

時差の問題を解く準備

1.基礎知識
①世界の時刻の基準
 世界の時刻は,イギリスの首都ロンドン郊外の旧グリニッジ天文台を通る経線を基準(世界標準時またはグリニッジ標準時ともいう)にしています。この経線を本初子午線といい,経度を測る基準でもありました。

②日本の時刻の基準
 日本の時刻は,兵庫県明石市を通る東経135度の経線を基準にしています。このように世界各国には自国の時刻の基準になる経度を設けています。これを標準時子午線といいます。
明石市立天文科学館

東経135度線(明石市 天文科学館)

③経度15度で1時間の時差
 地球は球体なので,1回転=24時間で360度。経度どれだけで1時間の時差が生じるのかは,360÷24=15となり,位置が経度で15度ずれると1時間の時差が生まれることになります。二つの地点の経度差がわかれば,15度で割ってやると時差が計算できる。
☆時差の問題を解くときに必要な知識
・経度の基準=0度はイギリスのロンドン。
・日本の標準時子午線は兵庫県明石市を通る東経135度。
・経度15度で1時間の時差。


2.図を描く
ではいよいよ図を描いてみます。図はとても簡単です。
・長方形を描きます
・真ん中に一本線を入れます
・上部両端に「西180」「東180」を描きます。
・下部両端に「+」「-」の記号を入れておきます。
 下図のようになります。

 真ん中の線は経度0度線,イギリスのロンドンを通る本初子午線です。両端の線は実際は同じ線を示していて,経度180度線,つまり日付変更線を示しています。日付変更線は各国の領域をまたがないように凸凹に引かれていますが,時差の問題を解くにあたってはそれは無視して結構です。最後に「+」「-」の記号をふっておくのも忘れないようにしましょう。これは東にいくほど時間は進んでいるという意味の符号ですが,最後に絶大な威力を発揮します。符号を書かない説明をよく目にしたり耳にしたりしますが,この符号こそ時差を解く魔法です。あまり深く考えずに,最初は単なる記号だと思って必ず書いておいて下さい。数直線感覚で結構です。

☆なぜ真ん中を0度として図を描くのか?
①理由の第一は,時差の問題はつきつめると経度差を測る問題なのです。経度はどのように引かれているか。それはイギリスのロンドンを基準に引かれているのです。基準なのですから真ん中して描くのは当然です。
②またイギリスのロンドンを基準に描かないと,経度差を求めることが困難です。特に試験問題で与えられている地図はたいてい日本(東経135度)を真ん中にして描かれている。これでは東経間の経度差を求めることはできても,東経と西経,西経と西経の問題が出題されたとたんに,経度差をまちがって求めてしまう可能性が高まります。
③なぜなら,経度差を求めるときの最大の敵,日付変更線が待ち構えているからです。例えば,日本(東経135度)とロサンゼルス(西経120度)の時差を求める問題があったとします。日付変更線が図の中に描かれている図で考えると,「差」だから135度-120度=15度と安易に考えてしまうまちがい。あるいは日付変更線が180度であることに気づき,経度差は(180-135)+(180-120)=105,105÷15=7で7時間の時差まで答えを出したあと,日付には気がつかない,または日付をどうしてよいのかわからない。というワナがつぎつぎと待ち構えています。答えにたどり着くまでに複雑な計算と思考が求められるのです。

 真ん中を0にして,両端を180度にするというのは,解く過程に日付変更線を持ち込まないという利点があるのです。混乱を避けるため「日付変更線を考えない。」これが時差の問題を解く鉄則です。すなわち真ん中を0とする図を描くのが時差の問題を解く鉄則となるのです。
 ちなみに応用編で説明しますが,日付変更線の問題が出たって,この図で簡単に解くことができるのです。

☆なぜ多くの参考書などで時差の説明に日本中心の図が描かれているのか?

 日本中心の図を描く利点は,この図にすることで必要な知識が一望できるからです。経度0度の本初子午線,経度180度の日付変更線,兵庫県明石市を通る東経135度線,時差を解くときに必要な3本の線が,図の中に収まり,目で確認することができるからです。ところが基礎知識を知っているということと時差の問題を解くということはまったく別ものと考えて下さい。日本中心の図をいくらながめたって,いくらその図で考えたって問題は解けません。時差の問題を解けるようになりたいと思っている人にとって必要な説明は,その本の中では得られないのです。
※参考書の中で掲載している図
  ・日本中心の図…『自由自在』,『パーフェクトコース』,『地理辞典』,『やさしくまるごと中学社会』など。
  ・イギリス中心の図…『地理の発展的学習』,『くわしい地理(円を使っての説明も有)』など。
  ・図なし…『中学総合的研究』,『チャート式』など。

☆なぜ円形の図を描かないのか?
 結論をいうと円形の図を描いて考えてももちろん構いません。大学受験の地理を専門に教える先生の中には専ら円を描いて教える先生もいる。ただし描き方には注意というか,違和感なるものが生じます。
 まず円を描き,当然経度0度線と180度線を入れるわけですね。円の中心を北極点としたとき,0度線はどこに入れるかというと,まっすぐ下に引っ張った半径ということになります。そして上に引く半径が180度線。こうしないと図の右手が東経,左手が西経にならないのです。(図1)またあるいは中には左横に0度線となる半径を入れ,円の上部を西経,下部を東経として説明するものもあります。(図2)

 円を描いて基準となる半径を描くとき,人は無意識にどこに線を入れるでしょうか。これは私の生徒で試した実験ですが,多い順に,
 右に基準線…37.7%
 上に基準…26.2%
 左に基準線…19.8%
 下に基準線…3.2%
 その他(ななめ)に基準線…13.1%  (合計300人にアンケート)
となっています。下に基準線となる線を引いた人はもっとも少なく。左と合わせても23%です。
 逆に長方形を描いて,どこでもいいから一本縦に線を引いてみなさいというと,真ん中に縦線を引いた生徒は78.8%いました。まず図を描くにあたって,長方形を描き真ん中に線を一本入れる方が,図は違和感なく描きやすいのです。
 また円の図は上に引いた線を0度線の基準としてもかまいません。ただしそのとき東経は左手・西経は右手になってしまいます。これでは位置関係に混乱が生じます。
 本来地球は球体なのだから,円を描いて考えることは大変大事なことだし,そもそも経度とは角度なのだからそれが当然というのは私自身も認めます。しかし考慮に入れなければならない約束事が多すぎる。ルールが複雑になればなるほど,まちがう可能性も高くなるのです。

時差の問題を解く  その1

☆時差の問題のパターン
1.A地点が~月~日の~時のとき,B地点の時刻は?
2.1を地図上で考える。
3.A地点を~月~日の~時に出発した飛行機がX時間後にB地点に到着した。B地点に到着した時刻は?
4.A地点の時刻は~日の~時,そのときのB地点の時刻は~日の~時。A(またはB)の位置を求めよ。
5.日付変更線を西から東(東から西)に越えたとき,日付はどうする?
基礎編ではパターン1・2を,パターン3~5は応用編で説明します。まずは基本的な問題を解けるようになりましょう。では実際に問題を解いてみます。

1.パターン1 もっとも一般的な時差の問題
問題を解く過程
①図を描く。
②2つの国(都市)の標準時子午線(経度)を図に入れる。
③2つの国(都市)の経度差を求める。
④経度差÷15°の計算をして,時差を求める。
⑤時間を進める,あるいは戻す。
⑥時刻を求める。
⑦答えを書く,あるいは選ぶ。

【例題1】日本が3月2日の午後8時のとき,イギリスは何月何日の何時ですか。午前・午後をつけて答えなさい。
最初の図を描く


②2つの国(都市)の標準時子午線(経度)を図に入れる。
 日本の標準時子午線は東経135度。だいたいでよいので東経の部分に135度線を入れましょう。ロンドンは0度なので改めて入れる必要はありません。


③2つの国(都市)の経度差を求める。
 2つの国(都市)の経度差を図のように矢印で書き込み,目で確認できるようにしましょう。そして計算して2点の経度差を求める。〔経度差とは,2点が経度にしてどれだけ離れているかです。〕

☆ここで注意
 この図をみて,「こんなのあたりまえだろう。なにをわざわざ」と思った人は要注意です。この当たり前の作業をきちんとする癖をつけないと,これから先もできるようになりません。これは癖の問題です。時差の問題を解くとき,きちんと図を描き,経線を入れ,経度差を目で確認して計算する。

④経度差÷15°の計算をして,時差を求める。
 135°÷15°=9〔時間〕

⑤時間を進める(足す)のか,戻す(引く)のかを考える。
 最後にみなさんの前に立ちはだかる悪魔がこれです。でもみなさん安心して下さい。ちゃんと最初に図を描いておけば,そのときに悪魔を打ち払う魔法がかけられてのです。下の「+」と「-」の符号です。今,問題では日本の時刻がわかっていて,イギリスの時刻を知りたいのですね。では知りたい側の符号をみて下さい。「-」ですね。そう引けばいいのです。逆に日本の時間を知りたければ,知りたい側の符号は「+」になっている。そのときは時差を足せばよい。
☆時差を足せばよいのか,引けばよいのかは,知りたい側の符号を見る!

⑥時刻を求める。
 時差を引いて,イギリスの時刻を求める。午後8時-9時間=午前11時
 計算するなり,指折り数えるなり,時計を描いてみるなり,どのような手を使ってもかまいません。落ち着いて答えを出して下さい。3回ぐらいやり直して同じ結果になったら正解です。もっとも注意しなければならないのは,午前と午後・日付でしょう。そこで数えるときに12時を通過したら,そのことをどこかにチェックしておきましょう。

⑦答えを書く,あるいは選ぶ。
 最後にもう一度,午前・午後・日付を確認して答えを書く。または選択肢から選ぶ。
答え:3月2日午前11時

【例題2】ロンドンが2月1日午前6時のとき,東京は何月何日の何時ですか。午前・午後をつけて答えなさい。
 この問題,【例題1】とは逆に日本の時間を求める問題になっているだけでなく,もう1つ重要な点が隠されています。それは国の時刻ではなく,都市の時刻を求める点です。
 ここでもう一度基本に戻ると,日本の時刻は兵庫県明石市を通る東経135度を標準時子午線として設定しています。だから北海道であろうが,沖縄であろうが日本全国時刻がかわることはありません。東京はほぼ東経140度のところに位置しますが,まちがっても140度で計算はしない。日本であれば,東経135度を使って経度差を求めて下さい。
 ①~④は【例題1】とまったく同じなので解説は省略しますが,みなさんはきちんと図を描いてください。下の図ができあがり,時差は9時間ですね。

 次は⑤⑥の時間の計算です。問題ではロンドンの時間がわかっています。求めたいのは日本の時間です。求めたい側の符号は「+」です。したがって9時間足してやればよい。
答え:2月1日午後3時

【例題3】大阪が12月31日午後11時のとき,カイロ(東経30度)は何月何日の何時ですか。午前・午後をつけて答えなさい。
 このようにイギリス(ロンドン)と日本以外の都市が問題に出てくるとき,必ずその国あるいは都市の標準時子午線の経度が書かれています。やはりきちんと図を描いて考えてみましょう。
①~④ 最初に描くべき図を描いて,2点の経度を入れる。東経30度と東経135度ですね。2点の経度差を矢印で入れて,目で確認する。経度差は105度となります。

⑤⑥ 105°÷15°=7。時差は7時間です。今わかっている時刻は大阪です。求めたい時刻はカイロの時刻。求めたい側の符号は「-」。時差7時間を引けば,答えが得られます。
答え:12月31日午後4時

【例題4】ロサンゼルス(西経120度)が5月15日午後3時のとき,日本は何月何日の何時ですか。午前・午後をつけて答えなさい。
 今度の問題は,東経と西経にまたがっています。でも大丈夫,図を描きましょう。

①~④ 最初に描くべき図を描いて,2点の経度を入れる。東経135度と西経120度ですね。2点の経度差を矢印で入れて,目で確認する。120°+135°=255°ですね。〔経度差とは,2点が経度にしてどれだけ離れているかです。〕
⑤⑥ 255°÷15°=17。時差は17時間です。今わかっている時刻はロサンゼルスです。求めたい時刻は日本の時刻。求めたい側の符号は「+」。時差17時間を足せば,答えが得られます。
答え 5月16日午前8時

▲時差の問題の解説の中には,このようにおぼえなさいとまとめているものがあります。
  ・経度差の求め方  東経と東経 西経と西経→引き算
               東経と西経 西経と東経→足し算
  ・時間を戻すか進めるか 東の方が時間が早い
もちろん,こんな風にまとめられておぼえられる人はこれをおぼえて下さい。しかし私はすすめません。こんなことまで丸暗記する時間と記憶容量があるなら,もっと大切なことをおぼえましょう。


2.パターン2 地図で出題された場合
【例題5】下の地図をみて,日本が1月1日の午前11時のとき,地図中a~cの都市は何月何日の何時か,答えなさい。答えには午前・午後を必ずつけること。なお地図の緯線・経線は15度間隔で引かれている。

 さてこのような地図が与えられ,時差の問題を考えるとき,どうしたらよいのでしょう。はっきりいいましょう。この地図をいつまでながめても答えは求められません。この地図は問題の地図です。答えを求める地図ではありません。問題を解くためにはこれまで通りの図を描きましょう。解く順はこれまでとまったく同じです。
①最初の図を描く

②③2つの地点の経度を地図に入れましょう。
 しかしこの地図は日本が中心に描かれた地図です。このままでは時差の問題は解けないので,上の時差用の地図に位置を入れなおす必要があります。そのために各地の経度を読み取らなければなりません。
経線の間隔は15度なのでaは東経45度ですね。上の地図では東経・西経の範囲は下図のようになる。

 bの経度は0度線から左に数えて西経15度。さらに15度ずつ進めていくと,地図の左端は西経45度。これは地図右端の経度と重なるので,右端の経度も西経45度。右端から左に左に進めていくとcは西経120度と読み取れます。これを時差の図に入れて答えを求めるのです。
☆問題で与えられた地図は0度線中心の図とは限らない。地図を正確に読み取って,問題に出てくる国や都市の経度を時差の図に描き直す必要がある。
aの場合の図

bの場合の図

cの場合の図

④時差を計算しましょう。
aの場合 90度÷15度=6時間
bの場合 150度÷15度=10時間
cの場合 255度÷15度=17時間
⑤⑥問題はいずれも日本を基準にしているので,求める側の符号は「-」。それぞれ時差を引きましょう。
答え:a 1月1日午前5時  b1月1日午前1時  c12月31日午後6時

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