地理 第1回 地図 基礎編3 地形図
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地形図で問われること
☆地形図を読み取る問題で問われることは4点です。
・方位
・地図記号
・標高
・縮尺
1.方位
地形図は特に断りがない限り地図の上を北として方位を読み取ります。「東・西・南・北」の四方位に加え「北東・北西・南東・南西」の八方位は必須です。公立高校の入試でもさらに十六方位で問われる問題もありますので,方位に関する問題は確実に点数を採るようにしましょう。
方位を問う問題では必ず「AからみたBの方位」や「AのC(例:北)側」というように起点Aが示されています。この起点Aから→を引いて,矢印に向かう方位が答える(見る)べき方位です。地図全体のどこにあるのかを聞かれているわけではありません。(「地図の~側」という場合は地図全体で考えます。)落ち着いて問題を解きましょう。
2.地図記号
地図記号をおぼえるのはそれほど難しいことではありません。地図記号は自分のレベルにあわせておぼえましょう。《地理 要点整理 基礎編》
地図記号は,道のり,土地利用,作図など問題の出題形式はさまざまです。以下は基礎編の注意事項です。
・小中学校と高等学校
なぜか地図記号を描かせると収まりがわるいのか,記号に○をつけてしまいがちになるようです。地図記号は○がつくと大きくなる。小中学校に○がついて,高等学校。交番に○がついて警察署。町役場に○がついて市役所。実際に地図記号を描かせる問題も出ます。私は毎年,道のりを目印となる地図記号を使って作図する地図作成問題をやらせますが,そのとき必ず小中学校を入れる。そうするとほとんどの生徒が○つきの文を描いてしまうのです。非常によくまちがえる問題です。
・「署」と「所」
地図記号の意味を直接書かせる問題は,入試問題には少ないようです(定期テストなどに多い)。しかしおぼえるとなったらしっかり漢字で書けるようにしましょう。そこで「署」・「所」は特に誤字が多い。「署」は具体的な任務(権限)を与えられているところ。「所」はその任務をおこなう場所です。
「警察署」・「消防署」・「税務署」に対して「市役所」・「裁判所」・「保健所」。圧倒的に「署」を「所」とまちがう方が多い。「消防署」が「消防所」なら「消防しょ」が燃えています。(笑)
・茶畑と史跡
茶畑はある一定の一帯が茶の畑となっているので,∴が複数まとまって出現します。史跡はそのポイント(一点)にあるので,記号は単独で出現します。(しかも茶畑に比べて記号は大きく描かれている)
・近年よくでるようになった記号
図書館・美術館(博物館)・風車・老人ホームなどが頻繁に出題されるようになりました。要注意です。
・三角点と水準点
この地図記号は必ず記号の周囲に数字をともなって出現します。この数字はその地点の標高を示していることを知っておいて下さい。
日本水準原点(国会議事堂近く) |
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日本三角点原点(ロシア大使館裏) |
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3.縮尺
テストに出題される地形図は2種類です。25000分の1と50000分の1。それ以外は出ないといっていいでしょう。
☆25000分の1か50000分の1か?
・問題に書いてある
「次の地形図は25000分の1である。~」 「50000分の1の次の地形図をみて,~」
・地図中あるいは地図の周囲に書いてある
代表的な例は「1:50000」と書いてあると,50000分の1の地形図です。
・問題を解く中で割り出せるようにしてある
「この地形図では,1kmの実際の距離が4cmになっている。」
→100000cm÷4cm=25000→25000分の1の地形図。
・等高線を読み取る→次の説明へ
4.等高線の読み取り
基本的にはじっくり数を数えて,読み取りましょう。ただし以下のことを知っておかなければ等高線の読み取りは絶対にできません。私の授業でもなかなか定着してもらえない事項です。地形図一番の難関だといってもよい。
・等高線にも種類があるが
細かくいうと計曲線・主曲線・補助曲線など等高線にもいろいろな種類があります。しかしはっきりいってこんな名前をおぼえる必要はまったくありません。専門家でないんだから。
注目すべきは一番基本的な線:主曲線だけです。もちろん名前は結構,なんてことない地形図の中の一番一般的に用いられる実線です。
・25000分の1か50000分の1か
この等高線,地形図の縮尺によって間隔が異なります。よって2つの縮尺の主曲線の間隔を知っておかないともうお話になりません。地形図の読み取りの最難関はこれをはっきりと区別しておぼえることにあります。あとは根気だけ。
☆等高線の間隔
25000分の1→10m間隔
50000分の1→20m間隔
例えば,地形図の中の数字が書かれている等高線がいくつかあったとします。(この等高線は普通,計曲線)この数字が50の倍数(150・250・1050など)があれば,それは25000分の1の地形図となります。もし50000分の1の地形図ならば,等高線の間隔が20mなので「50」という数字が現れることはないからです。
・三角点と水準点はヒントになる
地図記号の三角点・水準点はともに標高を示す数値(m)をともなって出現しました。等高線と等高線の間に三角点や水準点があった場合,縮尺をもとにそのすぐ隣の等高線が何mの等高線か読み取ることができます。
実際の距離を求める
【例題1】25000分の1の地形図上で4cmの長さは,実際の距離にすると何kmですか。
このような問題が出題されたらどのように求めたらよいのでしょうか。ほとんどの人は
4×25000(あるいはは25000×4)=
という計算式を立てて答えを出します。この求め方がまちがう原因なのです。えっ,どこがまちがっているの?と思うでしょ。正解は
4cm×25000(あるいは25000×4cm)=
とするのです。実際の距離を求める問題が解けない理由は次の要因によるものです。
①式のたてまちがい。
②計算まちがい。
③単位まちがい。
このうち③によるまちがいが圧倒的に多い。①・②によるまちがいはもっと根本的なものです。算数からやり直す必要があります。
ところがたいていの人はだいたい判っていて,ある程度式がたてられて,ある程度計算できるのです。しかしそこに大きなワナがある。あともう少し丁寧に取り組めばこんな問題で点数を落とすことはないんです。テッパンの問題です。ここは確実に点数をとらなければなりません。③のまちがいを防ぐためには,単位をつけて計算式をたてて,答えを求めること。私の授業では答えだけでなく,その過程がすべてあっていてはじめて○をあげることにしています。ではつづき,
4cm×25000(25000×4cm)=100000cm
=1000m
=1km(答え)
式はcmに25000をかけただけですから,最初の答えは「cm」です。これを問われている単位になるまで直していく。この問題はkmで問われているので「cm」→「m」→「km」と答えを導いていく。ここで大切なのは必ず「m」→「km」の順に直すということです。いきなり「cm」から「km」に直そうとしない。そのようなやり方は決して近道ではありません。
【例題2】50000分の1の地形図上で3cmの長さは,実際の距離にすると何mですか。
3cm×50000=150000cm
=1500m(答え)
※スケール(ものさし)
実際の距離を求める問題の大半は地図上の距離と縮尺を使って,計算で求める問題です。しかしまれにこの2つ(あるいは1つ)がいくら問題を読んでもわからない問題が出題されます。「どうしたらよいのか?」と質問に来る生徒もいますが,たいていの生徒は地形図とともに与えられている「スケール」という道具を見落としています。そのような問題には必ず地図の中や地図の周囲(たいていは下)に「スケール」という「ものさし」が付いているのです。
これは「この地図上ではこの長さ(例2cm)が,実際の距離にしてこれだけの距離(例㎞)だよ」ということを教えてくれているのです。テストには筆箱に定規を入れておくことをおすすめします。
地形の読み取り
1.三角州
河川が運んだ土砂が河口に堆積して形成された地形です。河口は海でも湖でもOKです。テストでは「河口」という語句がキーワード。河口=河川の下流ですから土砂の粒が小さい。ということは水はけが悪い=水もちがよいので,水田に適しています(地図記号を確認)。主に平野に見られる地形です。
※三角州の例→三重県雲出川河口(伊勢湾)
雲出川は河口で二手にわかれて大きな三角形の州を形成しています。これが三角州。水田の地図記号が目立ちます。
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三角州(飛行機から撮影) |
2.扇状地
河川が山地から平地に出るところに土砂を堆積してできた地形。主に盆地に見られる地形です。三角州と迷ったら「扇状地」には「山地」「盆地」など「地」と「扇状地」の「地」がキーワード。堆積した土砂は荒いので水はけがよい=水もちが悪いので水田には適しません。
日本ではこのような水はけがよい土地で昔は桑の木を栽培していました(桑畑の地図記号を確認)。
桑の木を育てる理由はわかりますか?桑はその葉が重要なのです。桑の葉は蚕という虫(蛾の幼虫)のえさになります。ではなぜ蚕を育てるかというと蚕はサナギになるために繭(まゆ)をつくります。この繭を加工して生糸をつくるのです。これを製糸業といい,蚕を育て繭を生産することを養蚕業といいます。日本では江戸時代末から明治時代までこの養蚕業が日本の国を支えていたといっても過言ではありりませんでした。
現在は桑を栽培する農家が少なくなって,その土地は果樹園(地図記号を確認)として利用しています。果物は水が少ないところでは,子孫を残すための実に栄養を多く回そうとします。だから果実の出来がよくなる。
扇状地の等高線は谷の出口を頂点に同心円状に広がっています。
※入試によく出る扇状地→山梨県甲州市
この地図をみると等高線が谷の出口を中心に同心円状に広がっていることがわかります。扇状地は果樹園に利用されている。
またいくつかの等高線には「450」・「550」のように「50」という数字がみられます。これはこの等高線の標高を示しており,等高線に「50」という数字が現れるのはその間隔が10m間隔でないといけません。そこでこの地形図が25000分の1か50000分の1かを判断すると,等高線が10m間隔で引かれている25000分の1の地形図であることがわかります。逆に50000分の1の地形図であるなら等高線の間隔は20mごとですから,等高線に書かれた数字に「50」という数字は絶対に出てくることはないのです。
3.リアス式海岸
リアス式海岸(リアス海岸)の詳しい説明は地形の単元でします。出入りが激しい複雑な海岸線ですね。
こんな感じ→三重県志摩市
4.谷と尾根
等高線が高い方に張り出しているのを谷,低い方に張り出しているのを尾根。
5.河川の流水方向
河川の流れる方向です。いうまでもなく,川は高いところから低いところに流れます。この当たり前のことがわからないのか,考えたくないのか,案外できない人もいるようです。とにかく等高線をきっちり読み取ればできる。
といいたいところですが,中にはほとんど等高線がないところでこんな問題が出たりするのです。その場合,土地の高低を知るための目印は三角点や水準点です。特に水準点は国道や地方の主要道沿いに設置されていることが多く,大きな道路をたどっていけば見つかるはず。
※等高線のない河川の流水方向→新潟県信濃川
地図上部(北)の神社の下に三角点があります。標高は0.9m。河川の中洲に標高2mを示す数字があります。また地図を南の方へスクロールしてみると,河川沿いの道路(黄色)に水準点(3.8m)をみつけることができます。これらの標高からこの辺りは南が高く,北が低いことになります。したがってこの河川はこの場所では,南から北へと流れていることがわかります。
【例題3】次の地形図をみて,あとの問いに答えなさい。
1.A山からみて,工場はどの方向にありますか。8方位で答えなさい。
2.B川は方向からどの方向に流れていますか。4方位で答えなさい。
3.C点からD点までは,地図上で4cmあります。実際の距離は何mですか。(標高差は考えないこととする)
1.方位は起点から→を引いて,矢印に向かう方位を答える。
2.川は標高の高い方から低い方へ流れる。地形図では北の方が高い。(図の上部に500m,下部に450m)
3.地図上の長さから実際の距離を求めます。そのためにはこの地形図の縮尺がわからないと解けません。しかも問題には縮尺が書かれていませんから,地形図を読み取って縮尺を求める必要があります。求める方法は等高線を読み取ることです。
この地形図の中には「500m」と「450m」の等高線がみられます。このことから等高線と等高線の間隔が10mであることがわかります。等高線の間隔が10mである地形図は25000分の1の地形図です。
このことがわかってはじめて計算式を立てることができます。
4cm×25000=100000㎝=1000m
答え:1.南西 2.北から南 3.1000m
【例題4】次の地形図をみて,あとの問いに答えなさい。
1.地形図中の地図記号が示す建物のうち,2番目に標高が高い場所にあるものを次から選び,記号で答えなさい。
ア.神社 イ.工場 ウ.警察署 エ.小学校 オ.市役所 カ.高等学校
2.警察署と工場の距離は地図上で6cmあります。実際の距離は何kmですか。
地図記号と縮尺の計算の問題のようにみえますが,実は両方とも等高線を読み取らなくては解けない問題です。【例題3】と違って,今度は数字が書かれた等高線は1本だけ。「100m」の等高線ですね。しかしこれだけでは読み取れません。もう1つ何か標高のわかるものが必要です。
そこで注目しなければならないのが「水準点」・「三角点」です。この2つの地図記号の横に添えられた数字はその地点の高さを示していたことを思い出して下さい。
この地図の場合,水準点も三角点も両方登場しますので,どちらに注目してもかまいせんが,まずは三角点に注目しましょう。
三角点が示している標高は「155.0m」です。この三角点よりも高い等高線はありません。すると三角点に一番近い等高線が示す標高は何mでしょうか?
2通り考えられます。もしこの地形図が25000分の1の地形図なら,「150m」です。もし50000分の1の地形図なら,「140m」となるはずです。(等高線の間隔は10m間隔か20m間隔のどちらか)
では「140m」(50000分の1)と仮定して,等高線を読み取っていくと,下図のようになり,「100m」の等高線と数値が合いません。
では「150m」(25000分の1)と仮定したらどうでしょう?等高線を順に読み取ってみると,ぴったり「100m」の等高線と合います。
したがって,この地形図は25000分の1の地形図であり,等高線の間隔は10mごとに引かれていることになります。ここではじめて問題が解けます。
1.それぞれの標高は次の通り。ア.神社は130m~140mの間。イ・ウ.工場と警察署は100m未満(90m以上)。エ・オ.小学校と市役所は100m~110mの間。カ.高等学校110m~120mの間。
また小学校と高等学校の地図記号をまちがえないのもポイント。
2.6cm×25000=150000cm=1500m=1.5㎞
答え:1.カ 2.1.5㎞
応用編
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