地理 第3回 気候   基礎編2 日本の気候

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必要な知識

1.海流と季節風
①海流
・暖流…日本海流(黒潮)・対馬海流
・寒流…千島海流(親潮)・
(リマン海流)
 日本の周辺には以上4つの海流が流れています。日本海流と千島海流は三陸沖でぶつかりますが,リマン海流は対馬海流とは正面切ってぶつかりません。ここが肝心なところで,対馬海流は北上して北海道まで流れていきます。リマン海流は日本海の大陸の沿岸にそって流れています。その意味ではあまり日本に大きな影響を与える海流とはいえない。
 日本海流は別名「黒潮」。栄養分が少ないため透明度が高い。また深い海を流れるためその色が深い青(黒)色していることから黒潮とよばれます。
 千島海流は別名「親潮」,黒潮とは対照的に栄養分が多く,それは魚を育てるため,「親」潮といいます。寒流は海の深い部分を流れる。そのとき海底の沈殿物(栄養)をかき混ぜて流れます。それが魚のエサになるわけです。
 日本海流も千島海流も特に指示がない場合,「黒潮」・「親潮」と答えてもよい。ただし両方おぼえておかないと解けない場合があるので両方おぼえておきましょう。

②季節風
 日本の季節風の方位はよく問われる問題です。できるだけ八方位でおぼえておいた方がよいでしょう。冬は北西,夏は南東。

2.日本の気候の区分
 日本の気候は大きく分けて6つあります。
①北海道の気候
②沖縄の気候
③太平洋側の気候
④日本海側の気候
⑤瀬戸内海の気候
⑥内陸の気候

簡単にその特徴をみていきましょう。

①北海道の気候
 北海道は冷帯気候に入ります。日本の気候の中では唯一温帯ではありません。

②沖縄の気候
 いろんなところでは「南西諸島」の気候と表現されていますが,もっと気楽に「沖縄」としておきましょう。暖かいんですね。

③太平洋側の気候
 夏に雨が多い気候です。

④日本海側の気候
 冬に降水量が多い気候です。冬の降水量には雪も入ります。

⑤瀬戸内海の気候
 降水量が少ない気候です。「晴れた日が多い」という表現がよく用いられます。もちろん瀬戸内海に面した地域の気候ですが,大阪はこの瀬戸内海の気候に入ります

⑥内陸の気候
 海に面していない盆地などにみられる気候です。瀬戸内海の気候と同じく降水量が少ない。違いは後で。

 あまり難しく考えずに,なんとなくでいいからイメージしておきましょう。特徴をとらえるのはこの程度で結構です。次にグラフを読み取ります。

※日本における季節
 気候おける季節は,気象庁が示している通り,6~8月を夏,12~2月までを冬としています。

日本の雨温図

1.日本の気候グラフを読み解く前に
☆最初にみるのはやはり最低気温
 これは雨温図(気候グラフ)を解くときの癖としておこなって下さい。問題がこれによって最終的に解ける解けないは二の次。気候のグラフはまず最低気温をとることからはじめましょう。

☆日本の気候グラフでも最低気温をみる理由
 「世界の気候」でもお話したように,暑いか寒いかという気温の判断は最低気温を比較するのです。特に日本の夏はどこでも暑い。これは北海道でも沖縄でも大差はありません。つまり気温の高さは比較の対象にはならないということです。その地域の気温が温暖か寒冷かは最低気温で判断する。これは曲げてはいけない大原則。

2.グラフを読み取る
 日本の雨温図を使った問題のパターンは大きくは次の2通りです。
 ・グラフが1つ与えられ,そのグラフにあてはまる地域や都市を地図中から選ぶ。
 ・地域や都市(地図など)が与えられ,それにあてはまるグラフを選ぶ。

①最低気温をとる
 最低気温のとり方は世界の気候グラフと同じです。気温グラフの一番低い点に印をして,18℃と-3℃のラインを入れる。

②問題に北海道・沖縄が含まれている場合
・最低気温が最も低いグラフ→北海道
・最低気温が最も高いグラフ→沖縄

 北海道は日本でも冷帯に属します。したがって最低気温が-3度未満になっています。
 沖縄は南西諸島と表現されている場合がほとんどですが,あまり厳格に言葉を重視する必要はありません。もちろん南西諸島という言葉で大丈夫という人はそれでもかまいませんが,わかりにくいなぁと思う人は沖縄で十分です。
 沖縄は温帯ですが,よく亜熱帯と表現されることがあります。あいまいな表現ですが,要するに熱帯に近いということです。ということは最低気温が18℃に近いということでもあります。

次は降水量
 北海道と沖縄を区別した後,または北海道と沖縄が最初から問題に含まれていない場合,注目するのは降水量です。
 ここで注意しておきたいのは,グラフの見方はあくまでも最低気温→降水量です。「そんなことしなくても解けるじゃん」という考えは捨てて下さい。最初に最低気温をとるのは,問題を解くための準備であり,姿勢であり,癖です。この順番を無視すると「必要なとき」に解けなくなる。

 では降水量の判断ですが,ここはおおよその判断になります。おおよそというのは見た目です。1月~12月の降水量を全部足してもいいですが,たいてい複数のグラフが選択肢として与えられている場合,「これは多いな」,「これは少ないな」と判断できると思います。
 一番よいのは「年間降水量」というのが,グラフの中に書かれている場合です。これは数値をみて判断すればよい。日本の平均降水量はだいたい1500mm~1700mmです。この最低値である「1500mm」を基準にし,この数値にあてはめれば,瞬時に「多い」・「少ない」と判断できます。しかしグラフにいつも書いてあるとは限りません。

④降水量が多いと判断したら(年間降水量1500mm以上なら)
・夏多い→太平洋側の気候
・冬多い→日本海側の気候

 太平洋側に夏雨が多いのは,夏の南東季節風が太平洋の湿気を含んで山地にあたり,太平洋沿岸に雨を降らすからです。逆に冬は北西季節風が日本海の湿気を含んで山地にあたり,日本海沿岸に雨(雪)を降らすからです。
 大切なのは,日本海側は対馬海流という暖流が流れていたことです。対馬海流は暖流ですので冬でも海上の空気に水蒸気を供給します。またこの暖流は勢力を弱めながらも北海道まで北上しています。このため,日本海側ならば北海道から九州まで冬に雨や雪が多くなる。九州は北海道より暖かいから雪なんて降らない。また北海道は寒いから太平洋側でも冬に雪が多い。そういう勝手な想像で問題を解かないこと。「日本海側は寒い(地域だ)から雪が降る」なんて説明している人もいる。全く説明になっていません。
 日本海側の冬に雪や雨が多いのは暖流と季節風が関係しているということ。また夏多い,冬多いというのは,あくまで他の地域(都市)に比べて夏多い,他のグラフに比べて冬多いということです。
 もっと注意するなら春多いとか秋多いとか,判断基準として春・秋を決して用いない。

⑤降水量が少ないと判断したら(年間降水量1500mm以下なら)
 考えられるのは瀬戸内海と内陸(盆地)の気候です。少雨の理由は季節風がさえぎられるからです。少雨と判断した時点で,降水量による区別はあきらめましょう。ということは気温です。気温は最低気温の一点だけを比べる。これが最初に最低気温をとった理由です。
 瀬戸内海は海ですので内陸よりも標高が低い,標高が低い分だけ温暖な気候になります。逆に標高が高くなるにつれて気温は冷涼になる。
・降水量少(年間降水量1500mm以下)で最低気温が高い方→瀬戸内海の気候
・降水量少(年間降水量1500mm以下)で最低気温が低い方→内陸(盆地)の気候

 もう少しわかり易く判断しようとすれば,内陸の気候の最低気温は0℃を下回っていることが多い。ここに注目すると問題が解き易くなります。そこで内陸の気候の説明文には「気温の年較差(年間の一番高いときの気温と一番低いときの気温の差)が大きい」と書かれていることがあります。(無理におぼえる必要はありません。)

 以上の方法と順序を守れば日本の気候グラフの基本的な問題はほとんど解けます。要はきちんとした方法と順序を守ること。

【例題】次のグラフは,あとのア~カのどの地域のグラフですか。記号で答えなさい。

 ア.南西諸島  イ.太平洋沿岸  ウ.日本海沿岸  エ.内陸  オ.瀬戸内海  カ.北海道


上の解説と同じ手順で進めていきます。
①最低気温をとる

②最低気温を比べて
 もっとも低いのが北海道→A(最低気温が-3℃未満で冷帯)
 もっとも高いのが沖縄→E(最低気温が18℃に近い)
選択肢アの「南西諸島」と書かれているのは「沖縄」のことだと思えばよい。
《グラフAとEは次の段階では削除》

③降水量をみる
 降水量が多いものと少ないものにわけると,B・C・D・Fのグラフ中,降水量が多いグラフはBとDと考えられる。
 または各年間降水量を「1500mm」の基準に照らし合わせてもB・Dは多く,C・Fは少ないと判断できる。

④降水量の多い季節は
 Bは1・12月の降水量(雪)が多い=日本海側
 Dは6・7・8月の降水量が多い=太平洋側
これらはすべて他のグラフと比べてということ。またDのグラフをみて,「9月の降水量が最も多い」と考えて悩まない。9月は秋。秋は判断材料にしない。夏と冬を比べること。(ちなみにこのグラフの9月は台風の影響)

⑤降水量の少ないグラフ
 再び最低気温を比べて
 最低気温が高いのが瀬戸内海→F
 最低気温が低いのが内陸→C
内陸の気候を示すCの最低気温は0℃を少し下回っていることに注目してもよい。

答え:A,カ  B,ウ  C,エ  D,イ  E,ア  F,オ

自然災害

1.気象に関する自然災害
①冷害
 冷害は夏に気温が上がらないことです。夏に涼しくて困るのは農業です。農作物の生育が悪くなる。このことも含めて冷害というのです。
 日本で起こりやすいのは,東北地方の太平洋岸。「やませ」という北東風が原因です。北海道でも太平洋岸は夏の気温が低い。いずれも寒流の千島海流が原因です。

②干ばつ(干害)
 降水量が極端に少ない,つまり「水不足」です。この水不足は農業などにも影響を与えると干害といいます。まぁ,そこまで細かく区別する必要はないと思いますので,干ばつ=干害でおぼえてもかまいません。
 降水量が少ない気候である瀬戸内海沿岸でよくみられます。瀬戸内海沿岸では古くからため池をつくって干害に備えました。
※沖縄は雨水を蓄える山地が少なく,大きな河川も発達していないため,年間降水量は全国平均をはるかに上回りますが,水不足に悩むことが多い。そのため家屋の屋根にタンクなどを設置して水不足からくる断水に備えています。

③高潮
 高潮は台風と関係が深いことをおぼえておきましょう。台風などの低気圧は上昇気流を発生させます。それとともに海面も上昇し,満潮と重なると潮位がさらに高くなります。津波と同様に沿岸地域の住宅・耕地への浸水の被害をもたらします。

④水害
 梅雨・台風などによる集中豪雨,それにともなって河川が氾濫し洪水となることもあります。大都市では河川の護岸がコンクリートで,道路はアスファルトでおおわれています。そのため雨水は地中にしみ込まず,大洪水をおこしやすい。
 そこで東京都(例:環状7号線)の地下には大きなトンネルが設けられ,ここに水を流し込み水量を調節して洪水を防いでいます。(トンネル河川の写真から,その目的を問う問題が増えてきています)

2.地質による災害
①地震
 日本は地震大国なので地震の数を数えるときりがないのですが,次の3つの地震はしっかりとおぼえておきたい。
1923年 関東大震災(大正時代)
1995年 阪神淡路大震災
2011年 東日本大震災
 東日本大震災では地震にともなう津波の被害のおそろしさをわたしたちは身をもって体験しました。
 また地盤が緩く,地下水位が浅いところでは,大きな地震が起こるとその影響で地層が液状化し,比重の重い構造物が倒れたり,地盤に亀裂が走ったりします。これを液状化現象といいます。かつて川や沼池であった場所の干拓地・埋立地,河川の近く,河口付近,砂丘地帯などが起こりやすい場所の代表例です。新旧の地形図を比べて,液状化の起こりやすさについて言及する問題が出題されます。

②火山
 噴火による火山灰や溶岩の被害。


3.防災対策
 近年,出題が多くなっています。まずは地震に対しては気象庁が出す緊急地震速報。同じく気象庁が出す特別警報。これまでの警報より大きな災害が予想されるとき発表されます。いずれも携帯電話での受信が可能になっています。
 東日本大震災のときの津波の被害から,次のようなマークが目立つようになってきました。これらも今後,出題が増えてくると思われます。

【津波避難場所】
津波に対しての安全な避難場所(高台)の情報を表示。

【津波避難ビル】
津波に対しての安全な避難場所(津波避難ビル)の情報を表示。

【津波注意】
地震が起きた場合、津波が来襲する危険のある地域を表示。


 自然災害がおこった場合,その被害を予想した地図をハザードマップ(防災マップ)といいます。大切なのは,被害予想だけでなく,避難場所や避難経路なども示している点です。
 この分野の問題は,近年非常によく出題されるようになってきました。それほど難しくない身近な問題なので確実に得点できるようになっておきましょう。

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