地理 第3回 気候 応用編2 日本の気候
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太平洋側の気候
1.梅雨
梅雨とは何か台風とは何かの説明はここでは省きます。梅雨は6月ごろから7月上旬ごろに日本に断続的に雨をもたらします。したがって梅雨は日本の気候を地域的に区別する特徴にはなりにくい。なるとしたら梅雨の時期の降水量が極端に多いか,極端に少ないかの二通りになるでしょう。
①九州型…梅雨時期の降水量が極端に多いパターン
他の地域や他の時期に比べて6月(梅雨時期)の降水量が飛びぬけて多い。これは梅雨前線は南から北上するため,九州が梅雨の影響を最も早く受けるからです。
②北海道…梅雨時期の降水量が極端に少ないパターン
グラフ(下)の読み取りは最低気温だけで判断できますが,冷帯である北海道には梅雨がありません。札幌の6月の降水量が非常に少ないことでわかります。逆に九州地方は6月の降水量が飛びぬけて多い。
※線状降水帯
梅雨や台風の時期,雨雲が数時間同じ場所を通過または停滞し,非常に強い雨が特定の地域で長時間にわたって降り続く現象。これにともなって山や谷では土砂が崩れて泥状になり,ふもとに向かって勢いよく流れてく土石流とよばれる災害が各地で発生している。
2.台風
台風も日本に大雨をもたらす要因です。台風は9月に入ってから多発して,日本に上陸します。1日あたりの降水量が多いため,雨温図の降水量も9月には非常に多く描かれます。このため「このグラフいつ雨が多い?」と聞くと「秋」と自身満々に答える生徒がいます。日本の気候グラフを読み解く問題で「秋多雨」と答えたところで何もでてきません。これも6月の梅雨と同様9月に降水量が多くなるのは当然のことだと考えて下さい。降水量の多い・少ないは,夏・冬を比べて初めて意味があるものです。
特に台風の通過が多い地域は9月に突出した降水量が見られます。それは南四国・南近畿・東海です。
3.紀伊山地
紀伊山地の南側,奈良県南部(大台ケ原)・三重県(尾鷲市)は日本最多雨地域として知られます。日本の年間降水量の平均が1500mm~1700mmならば,この地域は4000mmを越えることがあります。これは夏の南東季節風と紀伊山地の位置取りが原因です。
紀伊山地は南東季節風に対しほぼ直角に対峙しています。どの地域も夏の南東季節風は陸上に上がり山地にぶつかって上昇気流が発生し,雨となりますが,三重県の尾鷲市では季節風は陸上に上がったとたんこの高い紀伊山地にまともにぶつかり,急激な上昇気流となります。
また台風の影響も大きく受けます。台風は反時計回りに渦をまきながら,東へ(日本に近づく,あるいは上陸する場合)移動います。そのためたとえ日本に上陸しないまでも台風の風は東よりから湿った空気をもたらし,それを紀伊山地が受け止めます。
このように紀伊山地南部は大量に雨を降らす条件が整い過ぎているのです。
4.東北地方
【例題】次の表は地図中の都市の月別の平均気温と降水量を示している。宮古市にあてはまるものを表から選び,記号で答えなさい。
|
|
月 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
全年 |
ア |
気温(℃)
降水量(mm) |
-1.9
53.1 |
-1.2
48.7 |
2.2
80.5 |
8.6
87.5 |
14.0
102.7 |
18.3
110.1 |
21.8
185.5 |
23.4
183.8 |
18.7
160.3 |
12.1
93.0 |
5.9
90.2 |
1.0
70.8 |
10.2
1266.0 |
イ |
気温
降水量 |
0.3
60.6 |
0.4
60.1 |
3.3
82.1 |
8.7
100.6 |
13.0
93.9 |
16.0
116.4 |
19.8
159.0 |
22.2
171.3 |
18.8
213.7 |
13.3
125.7 |
7.8
80.1 |
3.1
64.8 |
10.6
1328.0 |
ウ |
気温
降水量 |
0.1
119.2 |
0.5
89.1 |
3.6
96.5 |
9.6
112.8 |
14.6
122.8 |
19.2
117.7 |
22.9
188.2 |
24.9
176.9 |
20.4
160.3 |
14.0
157.2 |
7.9
185.8 |
2.9
160.1 |
11.7
1686.2 |
|
まずはこれまで通り問題を解いていきましょう。
最初に最低気温をとっておきます。ア・イ・ウとも最低気温は1月になっています。1月の気温を○で囲んでおきましょう。問題には北海道・沖縄は含まれていませんので,年間降水量の比較にいきます。1500mmを超えているのはウだけです。ウは日本海側か太平洋側かどちらかです。そしてウの冬の降水量がア・イの冬の降水量に比べて多いので日本海側の気候であることがわかります。したがってウは秋田市。
残りア・イは盛岡市か宮古市のいずれかになりますが,2つの年間降水量をみてもどちらか判別することは難しい。そうなると気温で勝負をつけるしかありません。
(1)消去法で解くと
アの最低気温は0℃未満で内陸型の気候の特徴を示しているため,アは盛岡市。残るイが宮古市。
(2)東北地方の太平洋側をいきなり当てる
この問題で学んでほしいのは夏の気温です。これまで気温は最低気温をみることが気候の問題の原則でしたが,世界の気候の冷帯と寒帯のときのように,これは日本における例外事項です。
秋田市の沖合いは暖流の対馬海流が流れていますが,宮古市の沖合いは寒流の千島海流が流れています。この違いが気候に大きな影響を与えます。
春から夏にかけて北方でオホーツク気団が勢力を強めると,この高気圧から南に向かって風が吹く。そのうち千島海流の上を通ってくる風は南に下っても温かくならず,冷たいまま北海道や東北地方の太平洋側に吹きつけます。
この風を東北地方では「やませ」とよんでいるのです。濃い霧(濃霧)を発生させることもあります。やませが長く続くと冷害となり,作物の順調な生育を妨げます。冷害とは夏に気温が上がらない現象をいうのです。(冬に気温が上がらないのは当たり前)
したがって夏の最高気温がもっとも低いものが宮古市です。ア・イ・ウとも8月の気温が最高気温を記録しています。3つを比べて最も低いのはイ,これが宮古市。
答え:イ
太平洋側の気候をグラフを使って解く問題は,「夏多雨」であることを理解しているかどうかを問うことがほとんどです。したがってその意図で東北地方の太平洋側の気候が出題されることはありません。
逆に東北地方の太平洋側の気候の問題が出題されたら,夏の気温が低いことに注目する問題であると思って下さい。
5.北海道
北海道の気候は全体としては冷帯の気候でした。他の地域との比較は最低気温が-3℃未満になること。しかし北海道の中での区別はどうでしょうか?
札幌は日本海に面しています。対馬暖流と北西季節風の影響で冬の降水量が多くなるのは,冷帯といえども日本海側の気候と同じ特徴をもちます。
釧路は太平洋に面しています。北海道の太平洋側では夏に濃霧が発生します。濃霧は夏の気温を下げ,東北地方の太平洋岸と同じく冷害の原因となります。したがって最高気温が最も低いのが釧路(北海道の太平洋側)のグラフとなります。この考え方は東北地方の太平洋側と同じです。
旭川は内陸(上川盆地)に位置しています。内陸の気候は本州と同じく,沿岸地域より最低気温が低くなるため「気温の年較差が大きく」なります。したがって最低気温が最も低いのが旭川(内陸)のグラフ。
※濃霧の発生原因
濃霧の発生原因は一様ではありません。濃霧は海上で発生した海霧が上陸したものです。考えられる原因としては,
①オホーツク気団の湿った空気が南下するとともに暖められ,海面から水蒸気の補給を受ける。これが千島海流上に乗ると再び冷やされ海上で霧となります。そして北東風やませがその霧を陸上に運ぶ。
②太平洋高気圧の暖かい湿った空気が南より風(季節風)によって運ばれます。この風(空気)は黒潮の上空を吹いているときは暖められますが,千島海流上空に出ると冷やされ始めます。冷やされた空気は海上で霧となり,そのまま南風によって上陸します。
いずれにしても北海道太平洋岸の霧には寒流の千島海流が影響していることはおさえておきましょう。
気象現象としてはオホーツク海の流氷というのもおぼえておきましょう。1月~3月にオホーツク海沿岸でみられます。
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