地理 第4回 民族と文化   基礎編

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人種と民族

 いよいよここから人間の営みをみていくことになりますが,最初に少しだけ言葉の定義をしておきます。あまり難しく考えないで結構です。

1.人種
 現在の人類(人間)を一番大きく区別する方法で,身体的な特徴でわけます。古くからある区別の仕方は肌の色でわける方法です。これにはさまざまな問題もありますが,次のような人種が代表例になります。
①白色人種(白人)
 ヨーロッパ系という表現もあり,文字通りヨーロッパから世界中に広がっていきました。肌が白いだけでなく,目が青く,金色の髪をもつ人々もいます。

②黒色人種(黒人)
 肌の色が黒い人々です。アフリカ系といわれ,もともとアフリカ大陸に居住し,かつて主に奴隷として世界中に連行され,世界中に広がっていったという歴史があります。

③黄色人種
 アジア系ともよばれ,日本人をふくめアジアに居住している人種です。
 すべての人種(人類)はアフリカが起源であり,生物学的にはさほど差異はなく,人種による優劣は存在しないことは頭に入れておきましょう。

2.民族
 人類を言葉・宗教・生活・文化などによって区分する方法,または区分した集団です。この単元は「民族」のお話が中心になるわけですが,そこで最も重要になってくるのが,「宗教」です。民族のお話に入る前に宗教についてしっかりと勉強しておきましょう。

世界三大宗教

1.世界三大宗教とヒンドゥー教
 世界三大宗教とは,仏教・キリスト教・イスラム教の三つです。この順におぼえましょう。理由は成立した順に並んでいます。これに加えてインドのヒンドゥー教までが最重要事項。
 インドは世界第2位の人口をもっているので世界の人口に占めるヒンドゥー教徒の割合も相当なものですが,信仰されている範囲が限定的なので四大宗教とはしません。
 ところが世界の宗教をおぼえるとき,このヒンドゥー教がポイントとなってきます。とにかくインドだけはヒンドゥー教としっかりおぼえて下さい。「インド」・「ヒンドゥー」,言葉の音が非常によく似ていますね。音の感覚でつかんで下さい。
 インドがヒンドゥー教であることをおさえると,次のことが容易になってきます。三大宗教の分布はインドが境になっている。インドより西はイスラム教,東(つまり日本寄り)が仏教です。ヨーロッパ,(南北)アメリカ,オセアニアはキリスト教。細かいことは後回しにしてよいから,大きくインドを境にしておぼえることが大切です。


 「仏教・キリスト・イスラム教。ヒンドゥー教はインドだけ」と念仏のように唱えましょう。それではみんなでハイッ。「仏教・キリスト・イスラム教。ヒンドゥー教はインドだけ」「仏教・キリスト・イスラム教。ヒンドゥー教はインドだけ」ゆっくりでいいよー。「仏教・キリスト・イスラム教。ヒンドゥー教はインドだけ」ハイもう一度「仏教・キリスト・イスラム教。ヒンドゥー教はインドだけ」

 以上4つの宗教については,分布,開祖(開いた人物),開かれた順(時期),簡単な特徴をおさえておきましょう。

2.仏教
 紀元前5世紀ごろ(異説もあり),シャカ(釈迦)によって開かれました。インドで生まれ,一時はインドに広まりましたが,インドにはもともとあった信仰が根強く,やがてその信仰がヒンドゥー教という形で発展したため,仏教はインド以外の地で根付くことになります。
 日本へは6世紀に朝鮮の百済を通じて伝わりました。これができると点数が上がるよ。

3.キリスト教
 紀元1世紀イエスが開きます。イエスはイエス=キリストでも結構ですが,キリストはダメです。キリストとは「救世主」を意味する言葉で,キリスト教を開いた人名ではありません。
 クリスマスは「キリスト(救世主)のミサ(祭り・儀式)」の意味です。教会でお祈りするのもキリスト教徒の習慣。イエスが処刑されたときにはりつけられた十字架は,キリスト教徒にとって大切な象徴です。
 日本には1549年,スペインの宣教師フランシスコ=ザビエルが鹿児島に伝えました。宣教師とは宗教を伝え,広める人のことです。ザビエルはイエズス会というカトリックの組織に属していたこと。そして彼はスペイン人であったことが点数を上げるポイントです。

町の教会(オランダ)

4.イスラム教
 イスラム教はもっともわれわれ日本人から縁とおい宗教なので,その分よく問われます。
 まず開いた人物はムハンマド(マホメット),7世紀の人物です。キリスト教とは同じ唯一の神を信仰しますが,キリスト教徒は神の教えをちゃんと守っていないと批判し,自ら神と交信して正しい教えを授かった(預言者)として,その教えを広めます。その地がメッカイスラム教の聖地です。現在のサウジアラビアです。メッカだけではダメです。サウジアラビアのメッカとおぼえてはじめて点が採れるようになる。サウジアラビアは非常に出題率の高い国です。イスラム教の聖地メッカと石油の国。
 イスラム教ではその教えとして独特の習慣をいくつかおぼえておきましょう。
 ・1日5回,メッカに向かって礼拝をする。
 ・一年に一度断食をする月がある。
 ・,酒を口にしてはいけない。(豚は汚らわしい動物とされる)

メッカに向かっての礼拝(トルコ)

5.ヒンドゥー教
 ヒンドゥー教は自然崇拝の信仰です。ですから自然の数だけ神様がいる。山の神様,海の神様,風の神様,火の神様などなど。その意味では日本の神道や古代ギリシャによく似ています。
 ヒンドゥー教は民間信仰ですから,地域によってその教義もさまざまですが,おさえておきたいのは,「牛を神聖な動物」として大切に扱い,食しません。これがイスラム教と比較されてよく出る問題。インドにもマクドナルドがありますが,もちろん牛肉を使ったメニューはありません。チキンがメインです。インド版ビッグマック「チキンマハラジャマック」。これはいける。(マハラジャとは「王様」ぐらいの意味)

ヒンドゥー寺院(インド)

世界の民族

1.中国
 多数民族は漢民族。国民全体の90%以上を占めます。残りは50以上の少数民族です。

2.ヨーロッパの主要民族
 下の図を見てみましょう。ヨーロッパを大きく長方形でとらえ,大きく東西に分割します。西ヨーロッパはさらに北部と南部にわけて,その境界はアルプス山脈だと考えて下さい。
そうすると,西ヨーロッパの北部にはゲルマン民族。西ヨーロッパの南部にはラテン民族,東ヨーロッパにはスラブ民族と大別できます。


3.アメリカ合衆国の人種構成
 アメリカ人の大半を占めるのはヨーロッパ系(白人)です。そのほかアフリカ系(黒人)の割合も多く,アフリカ系の住民には過去に奴隷として連行された人々の子孫とその後アメリカに移民した人々がいます。いずれももともとアメリカ大陸に住んでいたのではありません。先住民はネイティブ・アメリカンとよばれ,彼らは日本人と同じ黄色人種です。
 注目すべき点は,近年メキシコ以南のスペイン語圏からの移民が増加し,英語を話せない人がいることです。彼らはヒスパニックとよばれています。

[グラフ:基礎編4-1 US CENSUSより 2020年]
※ヒスパニックは人種ではなく,ラテンアメリカに出自をもつ人々。白人・黒人・先住民の中にさまざまな割合で混じっている。

4.ラテンアメリカ
 ラテンアメリカとはメキシコ以南のアメリカ大陸を指します。メキシコより南だから,南アメリカ大陸も全部含めます。これらの地域はかつてスペイン・ポルトガルの植民地となったことから,彼らの民族であるラテン民族の名前をとってラテンアメリカとよばれます。
 したがってラテンアメリカではスペイン語が公用語(その国の言葉)となっています。唯一ブラジルだけがポルトガルの植民地だったので,ブラジルではポルトガル語が公用語です。これが確実にできるようになれば点数も上がってくるよ。ブラジル語なんて存在しない。

5.アフリカ
 サハラ砂漠を境界として,サハラ砂漠より南側に黒色人種が多く居住していました。ヨーロッパ人がこの地域を植民地化すると,黒人は現地やアメリカ大陸で奴隷としてあつかわれました。
 南アフリカ共和国では黒人を法的に差別するアパルトヘイト政策(人種隔離政策)がとられていましたが,現在は撤廃され法の下の平等が保障されています。南アフリカ共和国の説明文によく使われます。

6.おぼえておきたい先住民
・ネイティブアメリカン…アメリカ合衆国・カナダ
・インディオ…ラテンアメリカの先住民。
・イヌイット…カナダ北部(北極海沿岸)
・アボリジニ…オーストラリア
・アイヌ…北海道

生活

 世界の衣食住に関する問題は特に公立高校の入試問題では非常に多く,気候との関連とともに写真資料をよくみておく必要があります。

1.衣(伝統衣装)
 下に載せていない衣装の写真もよくみておきまょう。(衣装の名前はおぼえられる人だけで結構です。)
・韓国…チョゴリ(女性:チマ・チョゴリ)
・南アジア(インドなど)…サリー(細長い布をさまざまなスタイルで体に巻きつける)
・イスラム教徒…女性用チャドル(頭から全身を覆う黒色が主流)
  ※イスラム教徒の女性は他人に肌を見せてはいけないという教えがある。
・乾燥地帯…長袖・たけの長い衣服(強い日差しや砂ぼこりをさけるため。)
・冷帯,寒帯…毛皮のコートや帽子(北極圏のイヌイットカリブーやアザラシの毛皮)。
・アンデス地方…ポンチョ(マント)

サリー チャドル(目だけが・・・) 砂漠の民

2.食
イモ類
 熱帯地域や太平洋の島々の主食(タロイモ・ヤムイモ・キャッサバ)。

ヤムイモ

里芋を大きくした感じ


キャッサバ(写真は光ってしまった。実際は茶色い山芋のような根菜。根を挿すだけで育つ。)
皮をむいて茹で,砂糖をつけて食べるだけでおやつになる。

②小麦
 世界中で主食として食される。パン(南アジアではナン)のほか,うどん・ラーメン・パスタなどの麺類に加工。

③米
 アジア地域の主食

④アメリカ大陸が原産の食物
とうもろこし
 インディオの主食。メキシコでは「トルティーヤ」という料理に加工されます。トルティーヤに様々な材料を巻いて食べる料理がタコス。
・その他…じゃがいもさつまいも,トマト,とうがらし,カカオ豆など。

⑤乳製品
 家畜から取れる乳脂肪を加工。遊牧民やヨーロッパ,アメリカ大陸,オーストラリアなどでさかん。チーズ,ヨーグルト,バターなどが代表例。

3.住
①熱帯
 高床式の住居(湿気が高く,風通しをよくするため。また雨季の洪水に備えるため。)水上生活,舟上生活をしているところもあります。

雨季に備えた高床式の住居(カンボジア トンレサップ湖)

②乾燥帯
・テント式…遊牧生活のため,移動に便利。モンゴルではゲル,中国で包(パオ)
・日干しレンガ…土を固めて乾燥させる。窓が小さいのも強い日差しを避けるため

日干しレンガの住居群(モロッコ アイト・ベン・ハッドゥ 世界遺産)

③温帯
・ヨーロッパ石造りの家(地中海沿岸では日差しが強いため壁を白く塗ったり,窓を小さくしている。)

白壁の町並み(ギリシャ ミコノス島)
白壁の教会(ギリシャ ミコノス島)

・日本
 書院造…畳・障子・襖など日本式建築様式の基礎。

書院造

 合掌造積雪の多い地域で屋根の角度を急にしている。

合掌造(岐阜県白川郷)

④寒冷地
・ロシア
 コンクリートの高床式(建物の熱で永久凍土を溶かさないようにするため)。窓は冷気を防ぐため,二重・三重に。
・イヌイット
 イグルーとよばれる氷でつくったドーム型の住居

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