地理 第5回 国家・都市と人口 基礎編2 人口と都市
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世界の人口
1.世界の人口
①人口の多い国
人口の多い国を並べてみるとこうなります。[表:基礎編5-1 日本国勢図会2024/25より 2023年]
順位 |
国名 |
人口(千人) |
1 |
インド |
1428628 |
2 |
中国 |
1425671 |
3 |
アメリカ合衆国 |
339997 |
4 |
インドネシア |
27534 |
5 |
パキスタン |
240486 |
6 |
ブラジル |
216442 |
7 |
ナイジェリア |
223805 |
8 |
バングラデシュ |
172954 |
9 |
ロシア連邦 |
144444 |
10 |
メキシコ |
128456 |
11 |
エチオピア |
126527 |
12 |
日本 |
124352 |
まちがっても順番どおり,10位までおぼえようとしないで下さい。無駄です。これから順に大切なことをお話します。
まず資料の人口を読み取りましょう。単位は「千人」とありますから一桁目が千の位です,例えば中国は14億2567万1千人と読み取れます。日本は1億2435万2千人。
おぼえておくべき数字は日本の人口です。これは必ずおぼえましょう。約1億2500万人で結構です。1億2000万人でも結構です。どちらにしてもおぼえたら忘れないこと。次に順位ですが,1位・2位だけでよろしい。
日本の人口と1位・2位,正確におぼえるのはここまでよい。2023年に,ついにインドが中国を追い越し人口世界一位の国になりました。
②問題の解くためのポイント
もう一歩,ここからは少し感覚的になりますが次の2点をおさえておくとよいでしょう。
・ある程度の人口を日本(1億2000万人)を基準に考える
日本の人口×2.5=アメリカの人口(日本の人口の2倍以上)
日本の人口×10=中国・インドの人口(日本の人口の約10倍)
アメリカの面積は日本の約25倍でした。アメリカの人口・面積は「2・5」がキーとなる数字です。
・日本より人口の多い国として知っておくと問題が解きやすくなる国(中国・インド・アメリカを除く)
インドネシアとブラジル(順位は必要ない)
【例題1】次の表はアメリカ・フランス・ブラジル・アルゼンチンについての資料である。ブラジルにあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[表:基礎編5-2 データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
国 |
面積(千k㎡) |
土地利用(%) |
人口(万人) |
国民総所得
(億ドル) |
耕地 |
牧場・牧草 |
森林 |
A |
641 |
34.8 |
17.4 |
31.4 |
6688 |
26718 |
B |
9834 |
17.5 |
26.8 |
33.9 |
33700 |
212866 |
C |
8516 |
7.6 |
20.7 |
59.7 |
21433 |
14103 |
D |
2796 |
12.3 |
27.3 |
10.5 |
4528 |
3794 |
例えばこの問題,人口だけすべての国をみわけることができます。あとの項目は無視して結構です。まずはB国の人口は約3億4千万人です。日本の人口の2倍以上(約2.5倍)ですから,アメリカです。C国は日本より人口が多い約2億人ですから,ブラジル。〔A国は日本の約半分の約6500万人。これは応用・発展レベルですが,イギリス・フランスは日本の人口の半分というのを知っておれば,何かと役立つ知識です。よってA国はフランス〕
ブラジルを答えなさいという問題ですから,基礎レベルの知識で答えることができます。
答え:C
③人口の多い地域
もう一度世界の人口トップ10をみてみましょう。このうちアメリカ・ブラジル・ナイジェリア・ロシアを除いた6ヶ国はアジア州ですね。地域別にみれば,アジアが世界でもっとも人口の多い地域といえます。そしてアジア地域の共通点の1つは,日本を除けばそのほとんどが「発展途上国」であるという点です。
その点で考えれば,人口の多い地域の第2位はどこになるでしょう。答えは「アフリカ(州)」です。次の2つの統計をみてみましょう。[グラフ:基礎編5-3 データブック オブ・ザ・ワールド2024より 2021年]
グラフからもわかるように人口の多い地域はアジア・アフリカです。2つの地域を合わせて75%ほどになりますから,世界の人口の4分の3を占めています。また右のグラフから世界の人口の80%以上が発展途上国で占められています。一方,先進国が多い地域はヨーロッパ・北アメリカです。
次の例題をやってみましょう。よく出る統計グラフの一つです。
【例題2】次のグラフは1900年から2100年までの大陸別人口の推移と将来人口を示しています。グラフ中ア~カはアジア・アフリカ・北アメリカ・南アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアのいずれかです。アフリカとヨーロッパにあてはまるものをそれぞれ選び,記号で答えなさい。[グラフ:基礎編5-4 データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
このグラフから読み取れることを挙げていきましょう。
まず現在の世界人口がだいたいどれぐらいか読み取ることができます。現在はグラフ中では2020年あたりを基準にすればよい。現在はついに80億人を突破しました。
そのまま2015年ラインの幅に注目して,カはもっとも多いのでアジアです。2番目に多いのがオです。よってオはアフリカです。イ・ウ・エは微妙ですね。後回しにしましょう。もっとも人口が少ないのはアです。アはオセアニアです。オセアニアは人口がもっとも少ない地域として頭に入れておきましょう。
さてここまで人口の多い・少ないという数で話を進めてきましたが,人口の単元ではもう1つ理解しておかなければならないことがあります。それは「増加率」です。
「増加率」とはどのくらい増えたかの割合で,たくさん増えたら「増加率が高い」といい,少ししか増えなかったら「増加率が低い」といいます。また「増加率が低い」とは「減少した」ということではありません。例えば「増加率0.01%」とあったとしましょう。これでも0.01%だけ増加しているのです。(具体的には10000人が10001人になったということ)減少を示すときは増加率は「-」で表現します。
グラフをみてみましょう。オ(アフリカ)に注目して下さい。1900年から2100年まで人口の幅が大きく広がっています。この幅の広がり具合がこのグラフでは増加率にあたります。これはアフリカの人口の増加率が高いことを示しています。
一方,エに注目しましょう。1900年から2100年にかけてその幅は大きく変わっていません。これは「増加率が低い」といえます。人口の増加率が低いのが特徴で,もともと(1900年時点)でアジアに次ぐ人口があるような地域はどこでしょう。それはヨーロッパです。(イとウの区別は基礎編ではおいておきます。)
答え:アフリカ…オ ヨーロッパ…エ
例題のグラフでみたように世界の人口は今後発展途上国を中心にさらなる急増化が予想されます。このような急激な人口増加を「人口爆発」といいます。このまま人口が増加していくとさまざまな問題がおきます。食糧・水・エネルギーなどの不足とそれらを求める競争や紛争,地球環境の破壊などなど。
一方,先進国では増加率は低下する傾向にあり,さらには減少していく国もあらわれます。日本はもうすでに人口減少へと向かっています。このような国はこのような国でさまざまな問題を抱えています。次に人口の増減とその問題を人口構成の面からみていくことにします。
2.人口ピラミッドの読み取り
人口ピラミッドというのをみたことがあるでしょう。縦軸に年齢,横軸に人口をとる。横軸の人口は左右あって男女にわけているグラフのこと(年齢別人口構成)。こんなやつ。
[グラフ:基礎編5-5 総務省統計局 世界の統計2024より作成 2020年]
①発展途上国の特徴と人口爆発
グラフA:発展途上国の例:エチオピア(アフリカ)
上のグラフはきれいな階段状のピラミッドの形をしています。このグラフから読み取れるのは,生まれてくる子どもの数が多く,年齢が上がるごとにその数が少なくなり,高齢者の数が最も少ない。この形は発展途上国にみられる形です。教科書や参考書などでは「富士山型」(「ピラミッド型」)という説明があり,太字になっていることもありますが,こんな言葉をおぼえることに何の意味もないです。無視して結構です。グラフが読み取れて,その背景を理解することが大切です。
※富士山型・釣鐘型・つぼ型は,人口ピラミッドの形状から名づけられた名称で,人口ピラミッドが示す本質をついていません。また日本でしか通用しない用語です。例えば英語ではそれぞれ「拡張型」・「維持型」・「収縮型」となっており,形状に意味を加えています。人口の問題は意味を理解せずに名称にこだわらないことが大切です。しかし実際には,公立高校の入試では極めて稀ですが日本式の名称が問われることがあります。心配な人は内容を理解した上でおぼえておきましょう。
発展途上国で生まれる子ども数が多い理由は2つあります。まず医療技術が未熟であること。発展途上国では生まれた子どもが順調に育つ確率が低い。病気や栄養状態の悪さから幼くして亡くなることが多いのです。家族は子孫を残すためには次々と子どもを生んでいく必要があるのです。
ではなぜ子どもが必要かというと,発展途上国では子どもは働き手としての役割があるからです。発展途上国の多くは経済的に貧しい国ですから,生活していくためには家族全員が協力して働かなければならない。労働力として子どもが必要なのです。
高齢者の割合が少ないのも医療や栄養状態の悪さが関係しているでしょう。長生きできる環境にない。
このような発展途上国に対して先進国や国際機関が援助に乗りだします。「UNICEF」のCMなどみたことがあるでしょう。病気のワクチンが提供され,栄養状態も改善されていくと乳幼児の死亡率が下がっていきます。経済援助も受けますが,産業構造が変化するには時間がかかります。働き手としての子どもの役割は変わりません。したがって死亡率は下がっても出生率は下がりませんので人口が増加していく。
そうすると今度は別の問題がおこってきます。食糧不足です。ただでさえ貧しい国で,人口が増加する。それに食糧生産が追いつかないのです。
次に食糧生産を伸ばそうとすれば,耕地を増やそうとする。耕地を増やそうとすると,森林の伐採が進む。または家畜の放牧を増やしたり,燃料として樹木を使用すると緑が減少し,砂漠化が進む。このような環境問題も起こります。
このように人口の急激な増加だけでなく,それにともなう様々な問題を含めて「人口爆発」というのです。人口爆発は決して発展途上国だけの問題でなく,地球全体で考えていかなければならない問題です。
人口増加に対する対策として有名なものを1つおぼえておきましょう。中国の「一人っ子政策」です。勘違いしないで下さい。人口を減らす政策ではありません。人口の増加を抑制する政策です。しかしこの結果中国では少子化が進み,やがて労働人口が減少,そして超高齢化社会が現実味を帯びてくると,2016年に一人っ子政策は撤廃されました。
②先進国の特徴と少子高齢化
国が発展していくとともに産業構造が変化していきます。子どもは働き手ではなくなります。医療技術も発達すると子どもの死亡率がさらに下がり,女性は多くの子ども生む必要はなくります。高齢者も長生きできる環境が整っていきます。
発展した社会では教育が重要になってきます。高度な教育を受ける人が多くなるにつれ,社会における権利や義務にも目覚めます。特に女性の社会進出やそれにともなう晩婚化は少子化を加速させます。
したがって先進国になればなるほど人口ピラミッドの底辺が狭くなり,上部が広がっていく。そのように考えて下さい。
[グラフ:基礎編5-6 データブック オブ・ザ・ワールド2024より 2021年]
グラフB:発展段階の例:ブラジル(南アメリカ)
出生率の低下から子どもの数(割合)が減っていく。グラフでは底辺の幅が狭くなっていきます。「つりがね型」と表現されますが,言葉はおぼえる必要はありません。
グラフC:先進国の例:スウェーデン(ヨーロッパ)
さらに少子化が進み,それとともに高齢者の割合が増加していきます(少子高齢化)。グラフでは底辺がさらに狭くなり,上部が広くなっていきます。「つぼ型」などといわれますが,これも言葉をおぼえることに意味はありません。
☆年齢別人口構成(人口ピラミッド)はA→B→Cの順に変化する。(注目するのは下部と上部)
【例題3】次の2種類のグラフは,日本とエチオピアを比較したものである。エチオピアを示すグラフの組み合わせとして正しいものを選び,番号で答えなさい。[グラフ:基礎編5-7 データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
①ア・ウ ②ア・エ ③イ・ウ ④イ・エ
エチオピアはアフリカの国です。アフリカはほとんどが発展途上国です。発展途上国では生まれてくる子どもの数が多く,高齢者の割合は低い(ア)。その一方で医療・栄養・衛生面が未発達なため,乳幼児の死亡率は高い(エ)。その逆が日本です。
答え:②
3.産業別人口構成
先ほどの説明にもあったように先進国と発展途上国では産業構造に違いがあります。産業構造とは「農業中心」とか「工業中心」とか。これを人口でみていくとどのような違いがあるのでしょうか。
まず頭に入れておかなければならないのが次の分類方法です。
・第一次産業…農牧業・林業・水産業
・第二次産業…鉱業・工業(製造業)・建設業
・第三次産業…商業・サービス業・公務員・金融業・情報通信業など
産業を細かく分類していくとキリがないのでだいたいのイメージとしてとらえておきましょう。第一次産業は生物をあつかう産業(育てる)。第二次産業は加工する産業(つくる)。第三次産業は商品・サービスを分配する産業(利用する)。
まずは日本という国を考えてみましょう。もちろんみなさんが現在,どのような場所に住んでいるかということでイメージは変わってくると思いますが,日本という国全体として考えて下さい。日本には「農家」が多いと思いますか,「工場で働く人」が多いと思いますか,「お店で働く人」が多いと思いますか。数で考えて見ましょう。
「お店」が多いですね。つまり第三次産業に携わる人が多いのです。日本は先進国ですから,次のことがいえます。先進国ほど第三次産業の割合が高い。
逆に発展途上国はどうでしょうか。発展途上国の多くでは農業が国の経済を支えています。したがって発展途上国ほど第一次産業の割合が高い。
下のグラフで代表的な国を見ててみましょう。第三次産業(赤)と第一次産業(青)を比べてみます。第三次産業は左にいくほど高く,第一次産業は右にいくほど高くなっています。グラフは左側に先進国の代表,右側に発展途上国の代表を並べています。
[グラフ:基礎編5-8 データブック オブ・ザ・ワールド2024より 2021年]
これはあくまでも傾向ですから,必ずしもすべての国がこのような法則で先進国・発展途上国の区別ができるとは限りません。しかしこのことから一般的に次のことも理解しておきましょう。
☆国(社会)の経済が発展していくにつれて,第一次産業→第二次産業→第三次産業へと産業の中心が変化していく。
これまでみたように世界の人口は先進国と発展途上国に分けて理解するようにして下さい。まとめると
☆発展途上国
アジア・アフリカ地域…世界の人口のほとんどが集中。
人口の増加率も高い…出生率が高い。
第一次産業人口が多い(割合が大きい)…農業従事者が多い。
☆先進国
北アメリカ・ヨーロッパ・日本
人口の増加率が低い…少子高齢化が進んでいる。
第三次産業人口が多い(割合が大きい)…商業・サービス業従事者が多い。
4.人口密度
人口密度の計算式は立てられますか。「人口÷面積」です。単位は「人/k㎡」で表します。人口密度を計算してそれをそのまま答えにするというような問題はあまりみませんが,問題を解くために必要になることがあります。練習として次の例題をやってみましょう。
【例題4】日本の人口密度を求め,もっとも近い数字を次から選びなさい。
ア.3300 イ.330 ウ.33 エ.30 オ.300
まずは基本的な知識。必ずおぼえておこうとお話した日本の人口と面積。これがわからないと計算ができない。人口は1億2500万人,面積は38万k㎡。
次に計算式にあてはめる。計算式をまちがうと全然違う答えが出てくる。そうするとエやオのような答えが出てきます。エ・オの答えは面積÷人口で求めようとして,なおかつ0の数が混乱している答えです。
正しくは1億2500万÷38万。0を書いて計算しても構いませんが0の数が多くて計算しにくい。どうせ両方とも万の桁は約分できるので,万を消して12500÷38を計算すればよいことになります。このように社会科での計算では万・億などの桁数の多い計算が必要なときがあります。このような場合の割り算では桁(0)をいかに消して計算するかが,ちょっとしたコツになります。もちろん地道に丁寧に計算してもかまわないですよ。
では12500÷38=328.9…なので
答え:イ
日本の人口
1.人口の多いところ少ないところ
日本の人口を約1億3000万人でおぼえておくことはお話しました。次に日本では人口の多い都市をおぼえておきましょう。
①日本の人口の多い都市はベスト5まで順に
日本で人口の多い都市を順に挙げられますか?1位は東京ですね。といっても少し注意。東京市は存在しません。都市東京といった場合,東京23区を意味します。人口が最も多い「市」と問われると正確なところ東京23区ではありませんが,あまり難しく考えず東京(23区)が人口が最も多い都市で結構です。
では2位はわかりますか。ここが第1のポイントです。悩むところですね。大阪市と横浜市。これは横浜市の方が多いのです。2位が横浜市,3位が大阪市。
4位はだいたい予想できますね。そう名古屋市です。では5位は?授業をしているとさまざまな答えがでてくる。でも正解はめったにでてこない。ここが第2のポイント。正解は札幌市です。意外。これはおぼえておかないと出てきませんね。
以上2つのポイントに注意しながら人口の多い都市を順に5位までおぼえておきましょう。「東京(23区)・横浜・大阪・名古屋・札幌」。頭文字をとって「東の横綱,大きな名札」と一気におぼえましょう。(相撲の横綱には東と西の横綱がいて,東の横綱の方が格上だとされることから)
②人口の多いところは
今度は人口の多い都市&都道府県ベスト10をみてみましょう。しっかりと正確におぼえておくのは都市の5位までで結構です。また人口上位ベスト4の都市は、そのまま人口上位ベスト4の都道府県の庁所在地になっています。
順位 |
都市 |
都道府県 |
1 |
東京23区(東京都) |
東京都 |
2 |
横浜(神奈川県) |
神奈川県 |
3 |
大阪(大阪府) |
大阪府 |
4 |
名古屋(愛知県) |
愛知県 |
5 |
札幌(北海道) |
埼玉県 |
6 |
福岡(福岡県) |
千葉県 |
7 |
川崎(神奈川県) |
兵庫県 |
8 |
神戸(兵庫県) |
福岡県 |
9 |
京都(京都府) |
北海道 |
10 |
さいたま(埼玉県) |
静岡県 |
[表:基礎編5-9 日本国勢図会2024/25より 2023年]
これを都市は点で示し,都道府県を色で塗ってみたらこんな地図になります。
さらに上の地図はある帯状に並んでいることがわかります。(北海道は例外)
この帯を太平洋ベルトといいます。ベルトは「帯」の意味です。日本の人口はこの太平洋ベルトに集中しているのです。太平洋に面していないところもありますから注意して下さい。この帯がどのように連なっているかを頭に入れておくこと。
③人口の少ないところは
逆に人口の少ないところは太平洋ベルトから外れるところということになりますね。例えば南九州・南四国・南近畿・山陰・北陸・東北地方。これらも太平洋ベルトの位置をしっかりおぼえておくことで自然と理解できるでしょう。
ただし注意が必要なところがあります。太平洋ベルトから外れるが,人口の多い都市・都道府県の代表例。それが北海道・札幌市と宮城県・仙台市です。
特に宮城県を含む統計を使った問題で宮城県を当てるとき,「宮城は人口で解け」というぐらい大切な知識です。
2.日本の人口構成
日本の現在・過去の人口構成をみていきますが,何も難しいことはありません。基本的に世界でみた考え方をそのまま適応させればいいだけです。新しい知識はほとんど必要ない。
①人口ピラミッド(年齢別人口構成)
日本は現在,先進国の1つであり,「少子高齢化」が進んでいることは大丈夫ですか。それがわかっておれば日本の人口ピラミッドに関しても世界と同じように考えればよい。つまり日本の現在の人口ピラミッドは先進国型の形となります。
[グラフ:基礎編5-10 日本国勢図会2024/25より 2023年]
また日本も最初からこの形になったわけではなく,昔は発展途上国型であったのが,時を経るごとに現在の形になったのだから,時の経過ごとに人口ピラミッドを並べると次のようになる。
[グラフ:基礎編5-11 総務省統計局より]
はじめは生まれてくる子どもの数が多く(1930年),時が過ぎるごとに子どもの数が減り(1960年),さらに高齢者の数が多くなる(2015年)。という訳です。おじいちゃん・おばあちゃんに聞いてみなさい。兄弟が3人以上というのが多いはずです。お父さん・お母さんは2人ぐらい。今や一人っ子は珍しくない。
②産業別人口
これもまずは世界と同じ傾向にあることを理解しましょう。まず日本は先進国ですから,例にもれず日本としては第三次産業人口がもっとも多い。逆に第一次産業の割合は低くなっています。
その推移はというと,過去ほど第一次産業の割合が高く,現在ほど第三次産業人口の割合が高い。
[グラフ:基礎編5-12 総務省統計局 労働力調査 長期時系列データより 2018年はデータブック オブ・ザ・ワールド2024より]
さらにこれを日本国内で考えましょう。すると東京・大阪などの大都圏ほど第三次産業の割合が高く,太平洋ベルトから外れる地方では第一次産業の割合が高くなっています。まずは大きくこのように区分すれば何も難しくはありません。下のグラフをみてみましょう。
[グラフ:基礎編5-13 データブック オブ・ザ・ワールド2024より 2022年]
全体的に第三次産業の割合が高いのが,日本の特徴でした。その上で太平洋ベルトから遠い青森県(東北)・高知県(南四国)・宮崎県(南九州)は,他の都府県に比べて第一次産業の割合が高いことがわかります。
一方,大都市圏である東京都・神奈川県・大阪府は第三次産業の割合が非常に高い。特に東京都が突出しているのは,大消費地であるだけでなく,政府機関をはじめさまざまな行政機関が集まっているので公務員の数が多いからです。公務員はサービス業,つまり第三次産業にあてはまります。
大都市圏でも愛知県はまた違う様相をみせています。愛知県・静岡県は製造業のさかんな県です。このような県では第二次産業の割合が高い。愛知県は第二次産業で見わけるのが問題を解くときのポイントです。
もう1つテストによく出る県は沖縄県です。沖縄県では第三次産業の割合が非常に高くなっています。これは沖縄では観光業が発達しているからです。観光業は商業・サービス業の第三次産業です。
【例題5】次の表は,沖縄県・高知県・大阪府・愛知県のものです。表をみて,あとの問いに答えなさい。
府県 |
面積(k㎡) |
人口密度(人/k㎡) |
第一次産業(%) |
第二次産業(%) |
第三次産業(%) |
A |
7102 |
96 |
9.0 |
17.6 |
73.3 |
B |
2282 |
642 |
3.4 |
14.7 |
81.9 |
C |
5173 |
1398 |
1.7 |
31.7 |
67.2 |
D |
1905 |
4470 |
0.3 |
21.1 |
78.6 |
[表:基礎編5-14 データブックオブ・ザ・ワールド2024年より 面積・人口密度は2023年 その他2022年]
1.表中のA~Dのうち,沖縄県にあてはまるものを選び,記号で答えなさい。
2.次の人口ピラミッドは,表中のA~Dのいずれかにあてはまります。Aにあてはまるものを選び,記号で答えなさい。(横軸は全人口に占める割合%を示している)
[表:基礎編5-15 令和2年国勢調査より]
1.「沖縄県」を選ぶ問題であることがわかったら,すぐに目を第三次産業に向けましょう。この手の問題はそういう問題なのです。沖縄は観光業が発達しており,第三次産業人口の割合が高い。したがってBが沖縄。Aは面積の大きさ・人口密度の低さ・第一次産業の割合の高さから「高知県」。Cは第二次産業の割合が高いので,製造業がさかんな「愛知県」。Dは面積の狭さ・人口密度の高さから「大阪府」。
2.1からAは「高知県」であることがわかりました。高知県は太平洋ベルト外の県ですので,人口が少なく若者の都市への流出が目立ちます。県に残るのは高齢者が多く,県の農業・漁業・林業を支えるのはこの高齢者です。これは高知県だけの傾向ではなく,南四国・山陰・東北などの太平洋ベルト外の地方の特徴だと理解しておいて下さい。したがってエが正解。
最後にアはどこでしょうか?15歳未満の年少人口の割合が他のグラフより高くなっています。これは沖縄県のグラフです。沖縄県は生まれてくる子どもの数が多いのが特徴です。《応用編》
ではイ・ウ(大阪・愛知)の区別は?これは無理です。だから大阪または愛知を答えさせる問題にはなっていません。できなくてあたりまえです。
答え:1.B 2.エ
応用編へ
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