地理 第6回 農林水産業   基礎編1 世界の農業

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世界の農業

【例題】次の表は米・小麦・綿花・茶・とうもろこしの生産量上位国と国別生産量の割合を示している。ア~オにあてはまる農作物をあとから選び,記号で答えなさい。

順位
1 中国 27.0 中国 17.8 インド 25.3 中国 48.8 アメリカ 31.7
2 インド 24.8 インド 14.2 中国 24.4 インド 19.4 中国 22.5
3 バングラデシュ 7.2 ロシア 9.3 アメリカ 13.1 ケニア 8.3 ブラジル 7.3
4 インドネシア 6.9 アメリカ 5.8 ブラジル 11.4 トルコ 5.1 アルゼンチン 5.0
5 ベトナム 5.6 フランス 4.7 パキスタン 5.0 スリランカ 4.6 ウクライナ 3.5
6 タイ 4.3 ウクライナ 4.2 ウズベキスタン 3.4 ベトナム 3.8 インド 2.6

[表:基礎編6-1 日本国勢図会2023/24より2021年 綿花は2020年]

A.綿花   B.米   C.とうもろこし   D.小麦   E.茶

1.中国・インドが生産量1位・2位の農産物

 世界の農業の統計の中でも頻出の問題です。 これらの区別は完璧にできるようになり,点を落とすことのないようにしましょう。上の統計はすべて生産量に関する統計で,これが輸出(まれに輸入も出題)になるとまったく話が変わってきます。問われている問題が何に関する統計かを見誤らないようにして下さい。
 農産物の生産量が中国・インドで1位・2位の統計は4つ出題されます。「米」と「小麦」と「綿花」と「茶」です。グラフ(表)中上位2つの「中国」・「インド」に印をしたり○で囲ったりして,この時点で答えとなる選択肢が4つであることをおぼえておきましょう。これからこの4つの農産物の区別の方法を解説しながら,世界の農業の基礎的知識を説明していきます。

2.米と小麦の生産
 米と小麦は,最も多く食されている主食となる農産物です。広く世界で生産されていますが,その地域には特徴があります。
 まずは次のグラフをみてみましょう。

[グラフ:基礎編6-2 デー・ブック オブ・ザ・ワールド2024より 2021年
①米の生産地域
 米はほとんどアジアで生産されているのがわかります。米はアジア的な作物ということができます。
 米を栽培するところを水田というくらいです。米の栽培には大量の水が必要です。適しているのは高温多雨の気候,特に夏に雨が多いことが大切です。だからアジアはアジアでも夏に海からの季節風の影響を受けるところがよい。日本のような東アジアや東南アジア,南アジア。イメージとして「米はアジアの南寄りの地域」としておさえておきましょう。寒いところ,乾燥したところは米に向かない。
 米の原産地もこの地域です。ですからアジアの人々の主食として栽培しつづけられてきました。西アジアやアジア地域以外の人たちは米を主食とする感覚はまったくなく,野菜,サラダ感覚で食べています。西アジアやヨーロッパのレストランで食事をすると,米をおかずにパンを食べるなんてことに出くわすこともあります。

②小麦の生産地域
 一方小麦は米ほど降水量を必要としません。したがって,多少乾燥した地域や涼しい場所でも栽培することが可能です。北緯40度前後が世界的な小麦の生産地域を知る上で大切な基準となっていることは前にもお話しました。
 原産地は西アジアのあたりで,ここから東に西に広がり,ヨーロッパ人によって新大陸にも広められました。したがって米より小麦を主食とする人々の方が,世界的に広がっているのです。代表例はパンです。パンは小麦(別種の麦もありますが)からできていますね。パンといっても世界にはいろんな種類がある。インドのナンやチャパティなどもパンの一種です。パン以外にはスパゲティに代表されるパスタなども小麦。世界中にあるさまざまな麺類も小麦からできています。
 下の地図をみてみてましょう。赤道と北緯40度が引かれており,赤道に近い暖かい地域で米が栽培されています。緑の地域はアジアに集中していますね。また北緯40度付近で小麦が栽培されていることも一目瞭然です。北緯40度はだから大切なんだ。

☆絶対にまちがえてはいけないこと…中国の農業区分(大きく3つの地域にわけて考えよう!)

 涼しく雨の少ない北部(黄河流域)→小麦うがのむぎ」
 暖かく雨の多い南部(長江流域)→米
 おぼえることも大切ですが,それぞれに適した気候もちゃんと考えて!

インドのナン
モロッコのパン屋
各家庭で作ったパンの種をもって行き,パン屋で焼いてもらう

③とうもろし
 もう1つ世界で多く生産されている穀物にとうもろこしがあります。とうもろこしの原産は南北アメリカ大陸でした。もともと先住民(インディオ)が主食としていました。つまり世界に広がったのは以外と最近のことで,16世紀の大航海時代(コロンブス)以降ということになります。だから上のグラフでもわかるように南北アメリカの割合が米・小麦に比べて高い
 とうもろこしは現在は食用としてよりも家畜の飼料としての利用が多く,牧畜業にはかかせない穀物です。南北アメリカ大陸でとうもろこしの生産がさかんな理由に,これらの地域では大規模な牧畜がさかんだということもあります。

【例題】の解説1
 ここまでの説明で一旦。【例題】に戻りましょう。統計表のア~オの中で,生産量中国・インドで1位が4つあります。ア~エです。このうち中国1位でインド以下アジアの国ばかりが並んでいます。つまりこれが「米」です。(逆にいえば中国が1位でアジア以外の国が上位にあるなら米ではありえない)
 次には偏りがなく,世界中で生産されています。しかしこれだけでは決め手にかけるのでよく出る国をおぼえておきましょう。「フランス」です。フランスは農業国の代表手。そして次の文はフランスを説明するときによく使われる文です。「EU最大の農業国である。」です。中国・インド上位で,統計に「フランス」があれば「小麦」。フランスパン(小麦)」とイメージしておぼえておきましょう。
 または中国が1位ではありません。そして統計表の中に1位のアメリカ以下ブラジル・アルゼンチンという南北アメリカ大陸の国がみられますので「とうもろこし」と答えることができます。

3.アメリカの農業
①農産物の輸出世界1位
 主要な農産物の輸出の統計は,生産に比べて出題率はぐんと下がります。おさえておくべき点はまず出題されるたいていの農産物輸出統計ではアメリカが1位になっているということです。
 なぜ農産物の生産量が多いアジア(中国・インドなど)の輸出量が少ないかというと,アジアは人口が多いからです。つまり作ったら作った分だけ食べる。食べてしまうから輸出に回す余裕がない。こういうアジアの農業の特徴を自給的(農業)と表現したりします。
 一方,アメリカでは広大な土地で企業が農業に参加して大規模な機械化農業をおこなっている。アメリカでは初めから食べることを目的とした農業ではなくて輸出して利益をもうけようという農業をおこなっています。(自給的に対して企業的)そこでアメリカは「世界の食料庫」という一面をもっているのです。(この言葉,けっこうよくいわれるんだけれどもあまり入試には出ない。)
 アメリカというと最先端技術をはじめとする世界でもっとも工業が発達している国というイメージがありますが,農産物の輸出額でもダントツの世界1位なのです。

②アメリカの適地適作…世界の農業の縮図
 アメリカの農業の特徴を表現する言葉に「適地適作」というのがあります。耳にしたことがあるでしょう。広いアメリカの農業区分をした地図,あれおぼえにくいですよねぇ。もちろん何度も白地図で練習するのもよいでしょう。一度しっかりと身につけてしまえば,絶対に忘れません。
 「適地適作」とは文字通り「その作物に適した気候・土地で作物をつくること」です。アメリカでは様々な農作物をその気候・土地に合わせてつくっているので,アメリカの農業とそれに関連することを理解すると世界中の農業も理解でき,応用がききます。

 アメリカの適地適作の図とはこんな図(下図)ですね。これは問題の図によって多少のずれはありますし,もっと簡略化した図もあります。私の下の図も正確かといわれる完璧と言い切れるほど自信はありません。がだいたいの並びは同じです。また細かく区別するときりがないので,重要な場所を6つにしぼってみていきましょう。6つもあるの?そうなんです。少しがまんして下さい。ここでいろんなことを一気に説明を聞いておくと,後が楽ですよ。

 テストではこのような地図の中に記号がふってあって,「次の作物を栽培している場所を選べ」や「この地域で栽培されている農作物を選べ」といった問題が出る。もちろんおぼえられるなら力技を使って,強引におぼえるのも構いません。教えている先生の中にも「ここはコレ,あそこはソレ,ここのコイツが大事」とただただ物の本に載ってあることだけをしゃべっている先生も多いはず。本に載ってあることをおぼえればいいんだという安直な丸暗記は体力・脳力の無駄遣い。どうせならもっと得する知識を身につけましょう。

 では始めます。上の図の読み取り,どこから始めたらよいでしょうか。たいていの説明は「西経100度」の経線から始まります。西経100度の経線(縦)の線が意味するのは,降水量の多さです。何mmというのはここではたいして重要ではないので,このラインより西側は雨が少ない,東側は雨が多いと考えてもらって結構です。植物にとって雨は重要なものですから,だいたいこのラインより東側の方が作物を栽培するのに適していると考えて下さい。「この西経100度線,どのあたりを通るのか」,「この経度は何度か」という問題もよく見かけます。西経100度線はアメリカ合衆国をちょうど東西に二等分する縦の線です。
 西経100度線は多くの教科書,参考書,先生の授業で説明される。私はここにもう一本,線を引きます。もう何度も登場しました北緯40度線です。北緯40度はみなさんもう自分でも描けるようになっていますか?アメリカ合衆国ならちょうどこの国を南北に二等分する気持ちで描けばそれが北緯40度線です。北緯40度線は小麦の生産に適したラインでした。世界的な小麦の産地はこのラインを目印にしました。
 この二本のラインを上の図に入れてみるとこうなります。だいたいアメリカという国を縦横に4等分するつもりで引きます。

 さらに6つの農業地帯を色わけするとこんな感じ。

 まずは二本の線が目印です。この二本の線を目印として小麦地帯がわかります。小麦は比較的雨の少ないところで栽培されていました。かといって雨が少なすぎても困ります。そんな場所がちょうど北緯40度線を基準に北側でしたね。さらに西経100度線上も多すぎず少なすぎずといえるでしょう。つまりアメリカでもっとも小麦栽培に向いている場所は二本の線が交わる周辺であるといえます。もちろん誤差はありますが交点はアメリカの中心。交点を目印にしてアメリカの中央部・ど真ん中が小麦地帯。グレーの場所ですその北部,西経100度線上をカナダにかけても小麦地帯はありますが,その理由は応用編でやります。基礎レベルの問題では,2つの小麦地帯の区別はしなくても結構です。テストでも記号は同じ記号にしてありますから,まずはど真ん中に焦点をあてて下さい。

③牧畜
 次は牧畜です。これもアメリカを代表する農業です。牧畜はその方法によっていくつかの種類があります。代表的なものをいくつかおぼえておきましょう。
・酪農
 酪農の「酪」。この漢字しっかりと書けるようにしましょう。「酪」とい漢字,これはバターやチーズを意味する漢字です。牛乳からつくったものを「酪」といい,これからさらにできるものを「蘇」または「醍醐」といいます。醍醐の味は最高であるとされ,最高のものを味わうことを「醍醐味」というのはここからきています。余談になりましたが,すなわち「酪農」とは,乳牛を飼育して乳製品を生産する牧畜業をいうのです。
 乳牛は牛の中でも特に体温が高く,暑い気候を好みません。涼しく湿潤な気候を好みます。そうすると適地適作図でいうとどこになるでしょうか。涼しいということは北部,湿潤ということは西経100度の東側ということですね。アメリカではブルーが酪農地帯
 また酪農では牛乳を加工・販売することがこの産業の中心です。牛乳は新鮮であることが大事。牛乳を飲むのは人間ですから,大消費地に近いところでやるのが一番よい。ですから酪農という産業の立地条件の1つは大消費地に近いことです。ヨーロッパでは北部(ロンドン・パリ・アムステルダム近郊),日本では関東地方の周辺県(栃木・群馬)。
・放牧
 「放牧」は文字通り家畜の放し飼いです。これには何といっても広い土地が必要です。この広い土地は牧場です。牧場には持ち主がいます。したがって一定の敷地内での放し飼いです。とはいってもアメリカなんかはこの敷地がとてつもなく広く,甲子園球場とか東京ドームで換算できるかどうかあやしいくらいです。
 飼育される家畜は様々です。肉牛・豚・羊・馬・鶏などなど。アメリカではカウボーイがいるぐらいですから,肉牛の飼育が群を抜いています。
 ではアメリカの適地適作図でいうと,もっとも広大な地域は西部ですね。西経100度線より西側。西経100度線より西側は乾燥帯で,作物を栽培するには雨が少なすぎる。作物を育てないなら広い土地を使って家畜(肉牛など)を飼えばいいじゃないかというわけです。茶色は放牧地帯
 しかしちょっとまって下さい。牛は草食動物ですよね。餌の牧草はどうなる。牧草が育たないじゃないか。餌はどうするんだ?ここがアメリカの適地適作のよくできたところです。アメリカの牧畜は上の図でいうとブルーと茶色ですね。この2つの地域に共通して接している色は何色ですか。黄色ですね。この黄色,とうもろこし地帯です。ここで作られるとうもろこしが家畜の餌になっている。
 とうもろこしの栽培には雨がある程度必要ですが,ムチャクチャ必要かといえばそうでもない。乳牛は涼しいところがよいから一番北側は乳牛に場所を譲っているし,後で出てくる綿花(赤色)ほど雨も必要ない。雨は基本的に気温が下がれば少なくなっていきます。つまり緯度が高いほど降水量は少なくなっていく。赤でもなければブルーでもない場所で,ブルーにも茶色にも役立つ場所,黄色はまさにとうもろこし栽培にとって絶妙の場所に位置しているのです。特に大きく接している酪農地帯(ブルー)ととうもろこし地帯(黄色)はセットにしておぼえないといけません。個々別々にしては意味がありません。
・遊牧
 ついでにといっては何ですが,アメリカには関係がありませんが,「遊牧」もよく出る牧畜ですのでやっておきましょう。放牧との決定的な違いは,牧場ではないということです。自然の草木・水を求めて家畜を連れて移動するのです。今でこそ国境というものが人間の暮らしを縛るものの1つになっていますが,本来遊牧民は草木や水があるところなら国境なんて気にしない。移動するのは家畜と家族全員です。したがって人間は一ヶ所に定住しません。家も移動に便利なようにテント式です。住居がテント式である理由を問われる問題が多いので答えられるようにしておきましょう。
 地域的には西アジアや中央アジアといった乾燥帯や北極圏でおこなわれ,乾燥帯では羊北極圏ではトナカイ(カリブーともいう)が主な家畜です。
 われわれは普通,名前に名字があります。名字というのは土地(「名」みょう)から来るもので,世界中で土地(を所有すること)を大切にしてきた農耕民族の特徴です。しかし遊牧民は土地に執着しません。財産は土地ではなく家畜そのものなのです。したがって遊牧民には名字はありません。それにあたるものとして部族名や父の名前(だれだれの息子)というものです。遊牧民(またはテント式住居)の代表例として,モンゴルがありますが,モンゴルというのも土地の名前ではなく部族名ですし,モンゴル人もつい最近まで名字という概念を持ちませんでした。「ムンフバト・ダワードャルガル」,だれの名前かというとモンゴル出身の大相撲横綱:白鳳の本名です。ムンフバトは家名ではなく,お父さんの名前です。アラブ人の「イブン」とか「ビン」(テロリストのビン=ラディンが有名)なんかも「~の息子」の意味です。

④綿花と【例題】の解説2
 わたしたちの着る服。せんいも農作物からできています。化学繊維もありますが,ここでは無視します。大別して3つあると思って下さい。綿織物・毛織物・絹織物です。
 綿織物の原料が綿花です。綿(ワタ)という植物の実がはじけると真っ白いフワフワの綿花がでてきます。(これは花ではありません)。綿花を摘み取って繊維にしたものを木綿といいます。綿花の摘み取りには今でも人手を使っているところが多く,アメリカ南部の綿花栽培では,かつては黒人奴隷がその作業を担わされていました。
 そこで関連しておぼえておかなければならないのが,アメリカの「南北戦争」です。南北戦争の原因の1つが黒人奴隷の賛否でした。北部が反対,南部は賛成。その理由は北部は工業化が進んでおり,奴隷を必要としなくなってきたのに対し,南部では綿花栽培に黒人奴隷が重要な役割を果たしていたからでした。
 アメリカ南部の綿花栽培と黒人奴隷,そして南北戦争とリンカーン大統領の奴隷解放宣言。これらは関連づけて頭に入れておくこと。
 綿花の栽培には高温多雨のところがよい。しかし綿花がはじけ出るころにはある程度乾燥していた方がよい。だから灌漑(水を引く)設備さえ整っておれば,乾燥帯でも栽培可能です。アメリカの適地適作図で高温多雨なところは西経100度より東,北緯40度より南,つまり赤色が綿花地帯

白いのが綿花

 【例題】の統計に戻りましょう。の統計が綿花の統計です。特徴的な国はパキスタンという国です。どちらかといえば乾燥した気候の国であることが特徴ですが,これらの国々は綿花の統計ぐらいでしかお目にかかりません。国名を特にしっかりおぼえる必要はありません。「~スタン」がつく国が出てきたら「綿花」の統計だと頭に入れておけばよいでしょう。「スタ・メン(綿)」(団体競技のレギュラー=スターティングメンバーのこと)とおぼえればよいでしょう。

 毛織物の原料は羊毛です。「羊の毛」。羊を飼育するのは牧畜ですが,牧畜は農業の一種です。意外ですか?解っていない人が結構多いみたいです。
 羊毛の生産も中国が1位ですが,これは中国よりもオーストラリア・ニュージーランドの方が重要。オーストラリア・ニュージーランドでは人よりも羊の数の方が多い。

 では絹織物は?原料は生糸ですが,生糸は何からつくられる?(蛾の幼虫)の繭(まゆ)からです。動物を飼育するのが農業なら,虫を飼うのも農業です。蚕(かいこ)を飼うことを養蚕(ようさん)といいます。絹織物・生糸については別の単元で詳しくお話します。結構大事なんです。

⑤地中海式農業
 地中海はヨーロッパとアフリカを隔てる海域ですね。主にこの沿岸にみられる気候を地中海性気候といいました。地中海性気候は温帯(月の最低気温が-3℃~18℃の間)で夏に乾燥する気候です。この気候の特徴をいかした農業を地中海式農業といいます。
 その特徴は夏の乾燥時期に作る作物です。乾燥に強い樹木を育てて,その果実を収穫します。地中海を代表する果実といえば,オリーブとぶどうです。オリーブは食用油にぶどうはワインに加工されます。この2つの果実名はおぼえておきましょう。その他,柑橘系とよばれるもの。オレンジ・レモン・グレープフルーツなどです。

 地中海性気候の重要な点は地中海以外にもこの気候があるということです。そしてもっともよく出題されるのが,アメリカの西海岸。ここは地中海以外の地中海性気候の代表選手です。というわけで,適地適作図最後のピースは西海岸の緑色,ここが地中海式農業

3.熱帯の作物
 年中高温・多雨の熱帯では,この地域でしか栽培することができない独特の作物が栽培されます。農業のスタイルとしては2通り。原始的で自給的な農業とプランテーションとよばれる大農園でおこなわれる企業的な農業です。
 未開発な熱帯地域や太平洋などの島々での主食はイモ類です。このイモ類は現地の人たちの栄養源となるのみです。
 一方,プランテーションとよばれる大農園の経営者は,かつて熱帯地域を植民地としていた国々の企業で,現地の安い労働力を雇って大規模に栽培します。目的は輸出,加工・販売による利益です。作物は地域ごとに偏りがありますので,代表的な作物を地域ごとに1つずつおぼえておくとよいでしょう。

天然ゴムの生産 カカオ豆の生産 コーヒー豆の生産 茶の生産
タイ 33.1 コートジボワール 39.4 ブラジル 30.1 中国 42.2
インドネシア 21.7 ガーナ 14.7 ベトナム 18.6 インド 20.2
ベトナム 9.1 インドネシア 13.0 インドネシア 7.7 ケニア 8.1
中国 4.9 ブラジル 5.4 コロンビア 5.6 アルゼンチン 4.8
インド 4.9 エクアドル 5.4 エチオピア 4.6 スリランカ 3.6

[表:基礎編6-3 日本国勢図会2022/24より 2021年]
①天然ゴム…東南アジア(縦のライン)
 天然ゴムは,化学工業で生産される合成ゴムと区別するための呼び名です。ゴムの木の樹液を採取して工業原料とします。身近な用途としてはタイヤがあります。タイ・インドネシア・マレーシアと東南アジアの縦ラインで生産されています。

②カカオ豆…アフリカ(ギニア湾沿岸)
 カカオ豆は何の材料でしょう?みんな大好きチョコレートの原料ですね。カカオ豆はカカオの木の実の種子の部分です。そのほとんどがアフリカのギニア湾沿岸国で生産されています。(基礎編では国名は重要ではありません)

カカオの実(この種がカカオ豆)
天然ゴム園

③コーヒー豆…南アメリカ(ブラジル)
 コーヒー豆もカカオ豆と同様,コーヒーの木の種子です。南アメリカの代表的作物。南アメリカの熱帯といえばブラジルですから,ブラジル1国をしっかりおぼえておけばよい。

④茶…???
 茶の生産国の地域的共通点は何でしょう?まずは夏に雨が多いこと。生産量最大の中国でも北部ではありません。暖かく雨が多いところは南部です。さらにイギリスの植民地であったところ。イギリスでは他のヨーロッパ諸国よりお茶(紅茶)を飲む習慣が強く,独特の紅茶文化を持つ国です。本国イギリスは茶の栽培に適してはいないので植民地にした国で栽培させました。(茶については発展編でもう少し詳しく説明します)統計の中でケニア・スリランカという国(イギリスの植民地)は茶の統計でしか出てこない国です。またインドはイギリスの(さまざまな意味で)最大の植民地です。このことは最重要事項の一つです。

茶のプランテーション(マレーシア)


【例題】の解説3
 解説に戻ります。の統計が茶の生産を示しています。中国が1位でイギリスの植民地が上位を占める。

 それでは【例題】の統計の読み取りを整理しておきましょう。
☆生産量中国・インドが1位・2位の作物
 ・米…中国・インド+アジアの国々(アメリカなどが入っていたら米ではない)
 ・小麦…中国・インド+世界的(フランスがあれば小麦)
 ・綿花…中国・インド+「スタン」がつく国(「スタメン」とおぼえる)
 ・茶…中国・インド+イギリスの植民地(ケニア・スリランカ)
☆生産量アメリカ1位…とうもろこしの生産量(アメリカ大陸が多い),農産物の輸出量

【例題】の答え:ア.B  イ.D  ウ.A  エ.E  オ.C

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