地理 第6回 農林水産業   基礎編3 水産業・林業

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日本の水産業・林業

※文中に出てくる魚介類・樹木の名前はすべてカタカナ表記してあります。
1.漁業の種類
【例題1】次のグラフは日本の漁業種類別漁獲量の推移を示している。グラフ中のA・B・Cはそれぞれどの漁業を示していますか。それぞれ記号で答えなさい。

[グラフ:基礎編6-20 農林水産省 漁業・養殖業生産統計調査より 令和4年]
 ア.遠洋漁業   イ.沖合漁業   ウ.沿岸漁業   エ.栽培漁業

 漁業に関する問題のほとんどは日本の漁業についてです。中でも上のグラフはもっともよく出題されるグラフだと思って下さい。そこでこのグラフを中心に漁業の基礎を学びましょう。

①漁業の種類
 漁業で獲れる魚や貝類・海草などを魚介類(「魚類」ではない)といいます。魚介類をどこで獲るか,漁師さんの仕事場所によって,漁業の種類を区別します。海岸から近い順に「沿岸漁業」・「沖合漁業」・「遠洋漁業」といいます。養殖は沿岸漁業の1つですが,独立して漁獲量を示します。これに加えて川や湖での漁業「内水面漁業」がありますが,これが問われることはまずないと考えて結構。基礎編では以後全く無視します。「沿岸」・「沖合」・「遠洋」をきっちり区別できればよい。いずれも文字通り考えれば簡単です。
 グラフをみてみましょう。グラフは推移を示しており複雑に推移していますが,まずみるべきところはグラフの右端です。このグラフでは2015年(現在と考える)の漁獲量のみを比べてやればよい。すると最も多いのはA,最も少ないのはCですね。Aが沖合漁業,Cが遠洋漁業です。したがって自動的にBが沿岸漁業になります。ポイントは現在最も多い漁業と少ない漁業をおさえておくことです。
 「沿岸」は陸地が見える範囲での漁業です。「沖合」とは沿岸から離れたところ,日数的には二日以上かかり,距離的には日本の領海内で漁をする漁業です。一方遠洋漁業とは1ヶ月以上もの間,魚を追いかけ,距離的には領海を出ての漁となります。船の大きさも漁場の距離に応じて大きくなります。
☆日本の漁業
 沖合漁業→沿岸漁業→遠洋漁業の順に漁獲量が多い。

②獲れる魚の種類
 漁獲量がもっとも多い沖合漁業で獲る魚は,すなわちもっとも安い魚だと思って下さい。一番みなさんがよく食べる魚ということです。ただし一尾あたりですよ。切り身で考えない。イワシ・サバ・アジ・イカが代表例。季節的にはサンマなどです。
 漁獲量が少ない遠洋漁業は,一尾あたりの値が高くなります。代表例はマグロ・カツオです。
 沿岸漁業では沿岸に集まるすべて魚のほか,貝類・海草などが対象です。季節によって獲れる魚も異なります。また小規模な漁家が多いため,それほど漁獲量は多くなく,一尾あたりの値段が安い。その一方で同じ沿岸漁業でも人気のあるおいしいタイ・ブリ(ハマチ)・カキなどは養殖され,コストをかけた分高値で売られます。

③遠洋漁業が衰えた理由
 グラフをよくみてみましょう。1970年~1975年の間です。このころ遠洋漁業は沖合漁業を上回るぐらいさかんでした。それが1973年をピークに漁獲量が下がり続け,現在もっとも少ない漁業となっている。この理由についてよく問われます。理由は2つあります。
 1つは200海里水域が設定されたこと。(経済水域のことと考えもかまいませんが,正確にはこのころは経済水域とはいいませんでしたので,こここでは200海里としておきます。)200海里(経済水域)は沿岸国が水産資源を優先的に利用できる範囲です。逆にいえば200海里をこえて他国の魚を獲ることができなくなったのです。他国の海域に入る場合はちゃんと漁業協定を結んで,それを守らなければなりません。相手国の許可をもらって,入漁料を払わなければならないのです。
 さらに1973年に石油危機がおこります。漁船の燃料の値上がりは魚の値段が上がることを意味します。魚の値上がりは消費者の魚ばなれを引きおこしました。「1973年,石油危機」は,高校入試の最重要事項の1つです。年代もおぼえておきたいところです。

答え:A.イ   B.ウ   C.ア

④養殖漁業と栽培漁業
 みなさんがよくまちがう言葉の中に「養殖漁業(養殖業)」と「栽培漁業」があります。この区別は上でみた漁業の種類とは異なります。まずは問題文の違いに注目してみましょう。
【例題2】次の説明にあてはまる語句を答えなさい。
1.魚を卵や稚魚から育て,いけすで大きく成長させてから出荷する漁業を何といいますか。
2.魚の卵を孵化させ,稚魚を育てて放流し,自然の海で成長したものを獲る漁業を何といいますか。


 いずれも魚介類を人工的に増やすため,「育てる漁業」とよばれています。は人工的な設備(いけす)で大きくすることに重点が置かれています。一方は人間の手が入るのは稚魚まで。育てるのは自然の海です。この自然の海を畑と見たてて,は「栽培漁業」とよばれています。
 2つを見わけるポイントは「養殖漁業」の場合は「いけす」という語句,「栽培漁業」の場合は「放流」という語句がキーワードとなります。

答え:1.養殖漁業(養殖業)  2.栽培漁業

2.漁場
①海流と海域
 特に新しいことはありません。基本的な地形名だと思っておぼえておきましょう。日本周辺の4つの海流と海です。オホーツク海やさらに北のベーリング海でおこなう遠洋漁業を特に北洋漁業ということもおぼえておいたほうがよいでしょう。
 また東シナ海や日本海は水深200m以内の浅い海で,このような場所を大陸棚といいます。


②世界的な漁場三陸沖
 東北地方の太平洋側,青森県・岩手県・宮城県にかけての海岸を三陸海岸といいます。この沖合いで暖流の日本海流寒流の千島海流がぶつかり合います。このような暖流と寒流の合流点は潮目とよばれ,暖流の魚と寒流の魚の両方が集まるため好漁場となります。
 日本海流の別名は「黒潮」。文字通り黒っぽい海の色から名づけられました。暖流は海の上部を流れます。暖かい流れが海面を流れるので海水面の蒸発量が多く,塩分濃度が高い。また大陸から離れたところを流れるので河川から流れ込む栄養分が少なく透明度が高い。その上深い海を流れるためその色が黒く見えるのです。
 千島海流の別名は「親潮」。シベリアの河川が運んだ栄養分を(寒いため)そのまま運びます。寒流は海の深い部分を流れるため海底の沈殿物(栄養)もかきまぜながら流れます。つまりこの海流は栄養価が高く,魚はこの流れにそって栄養を摂取し,育ちます。まさに魚にとっては親のような存在なのです。
 潮目では寒流は暖流の下にもぐり込み,栄養やプランクトンのたまり場となります。このプランクトンをねらって小さい魚が群がり,大きい魚は小さい魚をねらって集まるのです。
対馬海流とリマン海流
 対馬海流は日本海流の分流です。九州北部と朝鮮半島の間の対馬海峡を通過してくることから名づけられました。リマン海流は「川の河口」を意味するロシア語で,シベリアの大河の河口付近から流れてくることからついた名前です。リマン海流はそのまま大陸の沿岸を南下するため,あまり日本には大きな影響はありません。大切なのは,
対馬海流とリマン海流は太平洋側のように合流して潮目をつくらないということです。対馬海流は北海道まで暖かい流れを保つので,日本海側に大量の雪を降らせる原因となっているのだ。

 また三陸海岸はリアス海岸です。リアス海岸は入り江が深く,その入り江は波が穏やかなため天然の良港となる。このことも三陸沖で漁業がさかんな理由です。しかし大地震が沖合いでおこると,津波の被害を大きく受ける。2011年の東日本大震災でわたしたちは身をもって経験したことでもあります。
☆三陸海岸で漁業がさかんな理由
・日本海流(黒潮)と千島海流(親潮)が合流する潮目がある。
・沿岸はリアス海岸となっており,天然の良港となっている。


3.林業
 林業そのものが問題に出ることは非常に少なく,たいていは山地などの地形や環境問題などの面から問われることが多い。ここでは基礎的な知識をおぼえておきましょう。

①非常によく問われる日本の山地・山脈


グラフ:基礎編6-21 日本国勢図会2023/24より 2016年・2020年]
 上のグラフからわかるように日本の国土の半分以上は山です。森林面積は国土の66%,つまり3分の2は森林です。この数字は問われることがあるのでおぼえておきましょう。

②木材の貿易

日本の木材輸入先
カナダ 29.8
アメリカ 17.0
ロシア 13.1

表:基礎編6-22 日本国勢図会2023/24より 2021年]
 「貿易」のところでも出てきますが,木材の輸入先,カナダは必須です。

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