地理 第7回 鉱工業 基礎編1 資源・エネルギー
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頻出資源を確実におさえる
1.資源とは
①鉱産資源
資源とは,人間の生活に必要な原材料をいいます。広い意味ではあらゆるものが資源といってもいいんだけれども,社会科では「鉱産資源」についていうことが多い。「鉱産資源」とは地下にある鉱物や岩石のことです。液体や気体状になっている石油や天然ガスも鉱産資源です。主にエネルギーとして利用されるエネルギー資源や金属として利用される金属資源,金属以外に使われる非金属資源があります。
難しい説明はいくらでもできるんだけど,基礎編を学ぶ君たちに必要な鉱産資源はたった3つ。この3つが確実にできるかどうか。それだけで全然点数がかわってきます。その3つとは,「石油」・「石炭」・「鉄鉱石」です。
②石油(原油)・石炭・鉄鉱石の分布
まずは下の地図をみてみましょう。主な石油(原油)・石炭・鉄鉱石の産出地を示しています。●は油田(石油が採掘されるところ),■は炭田(石炭が採掘されるところ),▲が鉄山(鉄鉱石が採掘されるところ)です。
まだこれではポイントがわかりませんね。次に示す地図は,上の地図に新期造山帯(赤)と古期造山帯(緑)を示した地図です。新期造山帯とは,アルプス・ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯の2つでした。新しく形成され,現在も造山活動中。高く険しいのが特徴でした。古期造山帯とは,新期造山帯以外の山脈。現在はまとまった連なりがありません。新期造山帯よりずっと昔に形成された古い山脈。低くなだらかなのが特徴です。
重ねてみると奇妙なことに気がつきませんか?油田の多くは新期造山帯とその周辺に,炭田の多くは古期造山帯に,山脈がないところに鉄山がある。もちろん例外もありますが,例外はここでは無視して結構。要は山が新しいか古いかが石油・石炭・鉄鉱石の分布に大きく関わっていること。もう少し言えば,アルプス・ヒマラヤと環太平洋の2つの造山帯をおぼえておくことによって,石油・石炭・鉄鉱石の分布をおおまかに理解することができるのです。
③石油
石油は液体状のいわゆる「油」です。「石」がつくのは石炭と同じく,こいつらは「化石」なのです。動物や植物が化石化したものが石炭・石油です。
「原油」と表現されることもありますが,油田からそのまま出た状態の石油が「原油」です。しかしそんな定義はあまり重要ではありませんので「原油」=「石油」だと,テストでも同じに考えて結構です。テストでは選択肢で「石油」もしくは「原油」と書かれているか,直接答えを書く場合でもどちらかを書けば○になります。厳密に区別して答えを求めることはありません。
さて石油は,われわれの生活の様々なところで利用されます。まずはエネルギーですね。石油を燃やして電気をつくる。自動車もバイクも飛行機も船も石油で動きます。目に見える形としてはプラスチック,合成繊維,化学薬品なんかも石油でできています。石油がなければ現代社会が成り立たないくらい,われわれは石油のお世話になっています。
しかし石油はいつまでも採れるわけではありません。どの資源もそうですが,採り尽くしてしまったらなくなってしまいます。重要な資源だけに将来の枯渇(こかつ)が大問題になるのです。
石油の分布は先ほどお話したように新期造山帯に沿いますが,特に集中している場所は西アジアのペルシャ湾沿岸とその周囲,アメリカ南部のメキシコ湾沿岸(メキシコ湾岸油田)が重要となります。この2つの地名は是非おぼえておきましょう。いずれも海沿いで採れるのが共通。「油」のさんずい(ヘン)と「海」のさんずい(へん)を頭の中で結びつける。石油は新しい山と海。重要国はのちほど統計でみることにします。
④石炭
石炭は見た目はカチカチの石です。もっと圧力をかけてギュッとかためたらダイヤモンドになります。両方とも炭素でできているのです。
石油と同様にエネルギーとして利用されるほかに,現代社会になくてはならない鉄鋼をつくるための製鉄に重要な役割を果たします。主な利用法はこの2つだと思って下さい。
古い山脈(古期造山帯)でよく採れますが,おぼえておかなければならないのは,アメリカ東部とオーストラリア東部の2つだけで結構。アメリカ東部の山脈はアパラチア山脈。これは重要です。よく環太平洋造山帯のロッキー山脈との比較でも出題されます。オーストラリアは名前をおぼえる必要はありません。ただ東に低くてなだらかな古い山脈があることだけしっかりとおぼえておきましょう。「炭」という字をよくみてごらん。文字の中に「山」が隠れているでしょう。石炭は「山」で採れるんだ。しかも古い山で。
⑤鉄鉱石
鉄鉱石は鉄(鉄鋼)の原料です。鉄鉱石の採れるところを「鉄山」ともいいますが,山脈がないところで鉄鉱石でしたね。でも本当は昔,昔は山があったんだ。石油や石炭ができるもっともっとも前。いまは風化して(削れて)しまってもう山が残っていない。だから割と平らな大地が広がっているところで鉄鉱石は採れる。
⑥統計を読み取る…重要
さあ,ここからが重要です。テストで問われる第一級品です。確実にマスターして下さい。まずは次の統計をみます。
原油の生産【2022】 |
% |
|
石炭の産出【2022】 |
% |
|
鉄鉱石の産出【2021】 |
% |
アメリカ |
18.9 |
中国 |
51.8 |
オーストラリア |
34.2 |
サウジアラビア |
12.9 |
インド |
10.3 |
ブラジル |
16.5 |
ロシア |
11.9 |
インドネシア |
7.8 |
中国 |
14.9 |
カナダ |
5.9 |
アメリカ |
6.1 |
インド |
10.2 |
その他 |
30.5 |
オーストラリア |
5.0 |
ロシア |
4.0 |
[表:基礎編7-1 日本国勢図会2024/25より]
上の統計は産出量が多い順の統計です。「何を」,「どこを」注目するかがカギです。今までも「統計」は順位をおぼえるのではないことを繰り返してきました。そんな労力に意味はありません。ポイントをおさえておかないと応用がききません。
ではこの統計の重要なポイントはどこでしょう。第1に順位は無視するところから始めます。まずは原油(石油)。原油(石油)の統計では「サウジアラビア」1国をおぼえておくだけで十分です。「原油」といえば「サウジアラビア」,「サウジアラビア」といえば「原油」というぐらい。
サウジアラビアはまず世界最大の油田地帯である「ペルシャ湾」に面しているということ。そしてこの国はイスラム教の国として出題される最有力候補であるということ。なぜならサウジアラビアにはイスラム教の聖地メッカがあるからです。「石油」と「イスラム教」この両面から問題が出題される。
「原油(石油)の統計」となるとサウジアラビアにだけ集中し,他の国が問われたらしかたないぐらいの気持ちでいて結構。
次に石炭と鉄鉱石です。この2つの読み取りは「原油(石油)」より重要です。ポイントは2つあります。1つは共通して2つの資源が採れる国は「オーストラリア」であること。(中国・インドなど無視しなさい)問題が「鉱産資源」についての問題であるとわかった瞬間,「オーストラリア」が出てくるか出てこないかをまず見極めましょう。「オーストラリア」が見えたら(まだあわてないことが肝要),「石炭」か「鉄鉱石」のいずれかであると選択肢を2つにしぼります。
2つにしぼったら,次に「ブラジル」が出現するかしないかを確認します。「ブラジル」がある方が「鉄鉱石」,「ブラジル」がない方が「石炭」です。ポイントの2つ目は「ブラジル」と「鉄鉱石」を強く結びつけておくことです。ただしポイント1→ポイント2の順を必ず守ること。ここが肝心なところです。
オーストラリアには東に山脈がありました。この山脈は古い山脈(古期)です。古い山脈では石炭が採れました。一方オーストラリア西部には山脈がありません。山脈がない西部で鉄鉱石が採れる。
ブラジルはどうでしょうか?ブラジルには実は山脈がないのです。アンデス山脈が通っているように見えますがそうではないのです。これが意味するところは,ブラジルは国土面積が広い国なのに,石油・石炭といった重要資源が採れない珍しい国なのです(正確にいうと採れないわけではなく,採れにくい)。山脈がないので,鉄鉱石がブラジルにとって重要な資源となるわけです。
☆石油・石炭・鉄鉱石の統計を確実に見わける方法
・サウジアラビア→石油(原油)
・オーストラリア→石炭or鉄鉱石→ブラジルがある(ない)→鉄鉱石(石炭)
石炭と鉄鉱石はブラジルでみわける!
ではなぜアメリカ・中国・ロシア・インドといった国を無視するのでしょうか?その理由は次の2つの統計にあります。最初は原油・石炭・鉄鉱石の輸出の統計です。
原油の輸出【2021】 |
% |
|
石炭の輸出【2021】 |
% |
|
鉄鉱石の輸出【2022】 |
% |
サウジアラビア |
15.4 |
インドネシア |
31.2 |
オーストラリア |
56.0 |
ロシア |
11.6 |
オーストラリア |
28.0 |
ブラジル |
21.8 |
イラク |
8.4 |
ロシア |
15.7 |
南アフリカ |
3.7 |
カナダ |
7.9 |
アメリカ |
6.0 |
カナダ |
3.4 |
アメリカ |
7.3 |
コロンビア |
4.8 |
ウクライナ |
1.5 |
[表:基礎編7-2 原油・石炭…日本国勢図会2024/25より 鉄鉱石…データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
「輸出」になったとたんアメリカ・中国・インド・ロシアといった国の姿が全く,あるいは一部消えてしまいます。その代わり上位にランクするのが,サウジアラビア・オーストラリア・ブラジルの3国。この3国は産出・貿易(輸出)の区別なく上位に現れるのです。だから問題が変わっても,解法のポイントさえおさえておけば,なんなく解けるのです。
さらに次の統計もみてみましょう。
日本の原油の輸入先 |
% |
|
日本の石炭の輸入先 |
% |
|
日本の鉄鉱石輸入先 |
% |
サウジアラビア |
39.5 |
オーストラリア |
67.4 |
オーストラリア |
60.2 |
アラブ首長国連邦 |
37.7 |
インドネシア |
13.8 |
ブラジル |
28.0 |
クウェート |
8.2 |
カナダ |
6.1 |
カナダ |
5.9 |
カタール |
7.2 |
ロシア |
6.1 |
南アフリカ共和国 |
2.9 |
エクアドル |
1.8 |
アメリカ |
4.4 |
アメリカ |
1.0 |
[表:基礎編7-3 日本国勢図会2024/25より 2022年]
何を隠そう,石油・石炭・鉄鉱石に関して,最もよく出題される統計は,この「日本の輸入先」の統計(グラフ)なのです。しかし解き方はまったく同じ。原油ならサウジアラビア,石炭・鉄鉱石はオーストラリアが1位で共通,ブラジルがある方が鉄鉱石。
なーんとなく正解したりまちがったりじゃなく,これは確実に点のとれる問題ですので,是非マスターしてほしい。
【例題1】次のグラフ①はある鉱産資源の国別生産割合を,グラフ②は同じ鉱産資源の日本の輸入相手国を示している。この鉱産物を下から選び,記号で答えなさい。
[グラフ:基礎編7-4 日本国勢図会2024/25より 2022年]
ア.石炭 イ.鉄鉱石 ウ.原油 エ.銅鉱
まず2つのグラフの中にオーストラリアがみられます。しかも日本の輸入相手国(グラフ②)としては1位。この時点でア・イのいずれかに答えをしぼりましょう。次にブラジルがあるか,ないかを確認します。ありませんね。したがって石炭の統計であることがわかります。(ブラジルが統計中にみられれば鉄鉱石です。あとは無視。)
答え:ア
【例題2】次のグラフは原油と「ある資源」の日本の輸入先を示している。グラフ中Xの国名と「ある資源」名を答えなさい。
[グラフ:基礎編7-5 日本国勢図会2024/25より 2022年]
「原油」の統計には肝心な国が1つ登場していません。サウジアラビアでした。したがってXはサウジアラビアと答えればよい。「ある資源」の輸入先は1位がオーストラリアになっている。石炭か鉄鉱石のいずれかです。統計の中にブラジルが入っているので鉄鉱石。
答え:X:サウジアラビア ある資源:鉄鉱石
【例題3】地図とグラフをみて,あとの問いに答えなさい。
1.次の地図中のの国々は,ある鉱産資源の産出量上位10ヶ国中の5ヶ国(2020年)を示している。この鉱産資源は何ですか。下から選び,記号で答えなさい。
ア.石油 イ.鉄鉱石 ウ.石炭 エ.ボーキサイト
2.上のグラフは地図中A国で生産量が多い「ある鉱産資源」の国別輸出量の割合(2020年)を示している。「ある鉱産資源」とは何ですか。下から選び,記号で答えなさい。
ア.石油 イ.鉄鉱石 ウ.石炭 エ.ボーキサイト
与えられた地図は見慣れた世界地図とは少し違っていますが,サウジアラビアが含まれているのがわかれば,1は石油と答えられる。またA国がオーストラリアであることがわかりますか?いつも地図の中央下側に描かれているのがオーストラリア大陸とは限りません。Aがオーストラリアであることがわかれば,統計にオーストラリアとブラジルが登場するので,この統計は鉄鉱石です。統計が「輸出量」であっても考え方は同じ。
答え:1.ア 2.イ
エネルギー
1.発電
①発電の方法
電力(電気)をつくりだすことを発電といいます。この発電に必要な力がエネルギーです。どのようなエネルギーを利用して電力をつくりだすかによって発電方法が変わります。主な発電方法として水力発電・火力発電・原子力発電があり,近年ではその他さまざま発電方法が開発・実用化されています。
しかし発電の根本的なしくみはどの発電も基本的に同じです。身近な例を挙げると自転車のライトを思い浮かべて下さい。自転車をこぐと電気がつきますね。あれです。(最近はこがなくてもつくものもありますが・・・)
自転車をこぐことで車輪が回る。前輪のタイヤの回転は歯車を使ってライトの発電機に伝わる。発電機の中には磁石とコイルがつまっています。歯車の回転によって発電機の中の磁石が回る。磁石がつくりだす磁力によって電流が流れるというわけ。ファラデーの法則(電磁誘導)とか,フレミング右手だか左手だかの法則を理科で習ったかな?
これをそのままバカデカくしたものが発電所だと思って下さい。発電所にはデッカい発電機がある。発電機に回転を伝える歯車をタービンといいます。タービンに回転を与えるのが水や水蒸気や風などの力です。それらの力をどのように得るのかというのが発電の種類によって違うだけです。
②水力発電
水は高いところから低いところに流れます。この流れを利用してタービンを回して発電する方法です。昔の水車の原理です。簡単に水の流れを得られるところは川です。大きい川であるほど水量が豊富なので大きな電力を得られます。
ところで川の水量はいつも同じとは限りません。そこで常に一定の水量が得られるようにするため,水のあるときに水を貯めておく必要があります。この施設がダムです。日本のように河川の水量が乏しく(河川が狭い),高低差がある(山がち)なところでもダムは有効です。したがって水力発電所は内陸(日本では山間部)に建設・立地するのがよい。
しかしダムなどの水力発電の設備をつくるには,大規模な工事が必要です。ときには村の1つや2つは簡単に飲み込むほどですから,建設費用・時間は膨大なものになります。さらに発電所だけをつくればよいというものではありません。電気はつくったら消費者に届ける必要があります。これを送電といいますが,山間部から電力を大量に消費する大都市まで距離がある。送電設備にも多額の費用がかかるし,送電距離は長くなればなるほど電力は弱くなるのです。環境に与える影響(森林・生態系の破壊)もはなはだしい。こういったことがマイナス面です。
一方で水力発電は原料が水なので,原料費はタダといってもいい。また二酸化炭素を排出しません。当然原子力発電のような放射線の心配もありません。発電所をつくるまでは問題があっても,起動してからはクリーンなエネルギーといえるでしょう。これらが水力発電のプラス面です。
③火力発電
「火力」とは「燃やす」ということです。何を燃やすかというと石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を燃やします。ボイラーというところで化石燃料を燃やして水を温めます。温めるられた水は水蒸気に変わります。その水蒸気がタービンを回すのです。例えばやかん(ボイラー)でお湯を沸かすと注ぎ口から勢いよく水蒸気が噴き出しますね。その力でタービンが回るのです。水蒸気は再び冷やされて水となり,これがまたボイラーに送られて,水蒸気となる。これが火力発電です。
火力発電の燃料は石油・石炭・天然ガスですから,日本にはほとんどありません。これらのエネルギー資源は海外から輸入する必要があります。また熱した水蒸気は冷却して水に戻す必要もあります。日本では大きな川がありませんから,冷却水として海水を利用します。こういったことを考え合わせると火力発電所は臨海部に建設・立地するのです。
石炭や石油などの原料を調節することで火力の調節がしやすいのが特徴で,必要に応じて発電量を変えることが出来るのが大きな利点です。
火力発電の最大の弱点は,その原料です。石油・石炭・天然ガスは化石燃料です。化石燃料は燃やすと二酸化炭素を排出します。つまり地球温暖化につながる。
④原子力発電
原子力発電のしくみは火力発電とほとんど同じです。水蒸気によってタービンを回して発電する。水蒸気は(海水で)冷却して再利用する。ただしそのエネルギー源がまったく違います。詳しい説明はここでは省きますが,ウランという物質を使います。このウランを原子炉というところで核分裂させ,そのときに発するエネルギー(熱)によって水を水蒸気に変えます。
原子力発電のよいところは,少ない原料(ウラン)で大量の電力をつくりだすことができる点です。また二酸化炭素を出さない点も長所です。しかし別のものが発生します。核分裂のときに発生する放射線です。万一発電所で事故がおこった場合,放射線が外に漏れ出し取り返しがつかない被害を広範囲にしかも長期間わたってもたらします。このことは東日本大震災のとき,福島県の原子力発電所で発生した事故でわれわれは思い知らされました。
また発電によって使用済みとなった燃料も放射線を出しつづけています。これを核燃料廃棄物といいますが,この廃棄物は現在の人類の技術では処理しきれない代物で,安全に地下に埋めておくしかない。その場所をどこにするのかも大問題です。
⑤再生可能エネルギー
「再生可能」とありますから,枯渇(なくなってしまう)することのない資源を利用します。石油や石炭・天然ガスなど採りつくしてしまうとなくなってしまう(枯渇)資源を利用するエネルギーに対する言葉です。
従来からある水力発電に加え,新エネルギーとされる太陽光,風力,地熱発電がよく例に挙げられます。その他,波力・潮力・バイオマスなどがあり,特に「バイオマス」という語句は最近出題率が上がってきています。
「バイオマス」とは生物(植物・動物)を原料とした資源全般を指す言葉で,バイオマスを使った発電を「バイオマス発電」,その燃料を「バイオ燃料」といい,バイオ燃料には木くずや廃材,家畜のし尿などがあります。またとうもろこしやさとうきびからつくられたバイオ燃料は「バイオエタノール」とよばれ,石油からつくられるガソリンにかわって自動車などの燃料になるとして近年注目を浴びています。
再生可能エネルギーの利点は何といってもクリーンなことです。二酸化炭素や困った有害物質を排出しません。地球に優しいエネルギーです。資源はタダ同然ですし,尽きる心配がないのもメリットです。
しかし同時に自然相手ですから,すべては自然次第ということになってしまいます。太陽光発電は曇っていてはできません。風力は風が吹かなければ意味なし。またその設備には広大な面積が必要で,コストがかかる。現時点では水力・火力・原子力を勝るほどの安くて効率のよい電力を生み出すことができないでいます。
2.日本の発電
①日本の発電総発電量のエネルギー源別割合
【例題4】次のグラフはわが国の総発電量に占めるエネルギー源別割合の変化を示している。グラフ中A~Cにあてはまる組み合わせとして正しいものをあとから選び,記号で答えなさい。
[グラフ:基礎編7-6 データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
|
A |
B |
C |
ア |
水力 |
火力 |
原子力 |
イ |
水力 |
原子力 |
火力 |
ウ |
火力 |
原子力 |
水力 |
エ |
火力 |
水力 |
原子力 |
オ |
原子力 |
火力 |
水力 |
カ |
原子力 |
水力 |
火力 |
まずおさえておくべき点は,日本は火力発電が中心の国であるということ。したがってBは火力発電です。次に大切なのは原子力発電です。原子力発電は過去ほとんどみられない発電でした。次第にその割合を増やし,ピークは2000年から2010年ごろで,約25~30%ありました。そしてあの大事件がおこります。2011年,東日本大震災による福島県の原子力発電所の事故。これを境に原子力発電が見直され,次々と発電を停止。2014年時点では発電量は0となりました。今後,発電を再開する原子力発電所もあるかとは思いますが,かつてのレベルまで上がるかどうかはわかりません。したがってCは原子力で,Aが水力ということになる。
答え:ア
②日本の発電所の分布
・水力発電所
水力発電はダムを建設する必要がありますから,山間部に分布することがわかります。
・火力発電所
まず資源は輸入しなければなりません。輸送は船でおこないますから臨海部がよい。そして運びこんだところで発電するのが一番コストがかかりませんから,最も必要とされる場所に発電所をつくればよい。それは消費地であり工業の発達しているところ。いわゆる太平洋ベルトとよばれる一帯の臨海部が立地に最適です。
・原子力発電所
臨海部が適しているのは火力発電と同じです。大量の冷却水が必要になるからです。しかし原子力発電は一旦事故を起こすととんでもない被害をもたらすことから,大都市から距離のあるところに建設されます。日本で最も原子力発電所が集中している場所は2つ。福井県と福島県です。この2つは必ずおぼえておきましょう。「福」の字がキーワード。
【例題5】次の地図をみて,あとの問いに答えなさい。
1.上の地図中の●○▲はそれぞれ,主な火力・水力・原子力発電所のいずれかの分布を示している。●○▲の組み合わせとして正しいものを選び,記号で答えなさい。
ア.●火力 ○水力 ▲原子力
イ.●水力 ○原子力 ▲火力
ウ.●原子力 ○火力 ▲水力
エ.●火力 ○原子力 ▲水力
2.1において判断した火力発電所の立地の特徴を,燃料の輸入と電力の消費の面から考えて簡単に説明しなさい。
●と▲はすべて臨海部に立地しています。臨海部に立地する大きな理由は燃料となる資源の輸入に便利だからです。しかし●は大都市の近くに▲は大都市から比較的離れたところにあるのが大きく違う。▲が福井県・福島県にあるところから▲は原子力発電所,●は火力発電所ということになります。一方○は内陸山間部に位置するため,水力発電所の分布を示している。
答え:1.ア 2.燃料を輸入するのに便利な臨海部で,電力消費量が多い大都市の近くに立地している。
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