地理 第8回 流通   基礎編

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交通・流通・通信

1.交通
①交通機関
 ここでは主に長距離移動に必要な交通手段について考えます。具体的には自動車・鉄道・船舶・航空機の4つです。あまり難しく考えないで下さいね。この単元は頭を柔らかくして,ふつーに考えればよろしい。

 まず現代の社会でもっとも多く使われている交通手段は何でしょう?回りを見わたせば自然と答えがでてきますね。では次の問題を解いてみましょう。

【例題1】次のグラフは日本の国内輸送の割合の変化を示している。A・B・Cにあてはまる組み合わせとして正しいものを選び,記号で答えなさい。[グラフ:基礎編8-1 日本国勢図会2023/24ほかより 旅客は自家用車含む]



ア.A:自動車   B:鉄道    C:航空
イ.A:鉄道    B:自動車   C:航空
ウ.A:航空    B:自動車   C:鉄道
エ.A:鉄道    B:航空    C:自動車


 まず現在,貨物輸送・旅客輸送とももっとも多いのがBです。最初の問い「もっとも多く使われている交通機関」を考えればよい。「自動車」ですね。ではなぜ自動車が多く使われるんだろう?それはもちろん便利だからです。人でも荷物でも道路さえあればどこにでも運ぶことができる。建物から建物へ直接移動することができるからです。「宅配便」は(「宅急便」はダメです。クロネコマークの会社だけが使っている名前です)荷物だけでなく,お弁当からピザまでお家に届けてくれます。あとはタクシーもそうですね。玄関先まで人を乗せてくれる。
 その一方で自動車は時間に不正確なところがある。早く着くこともあれば,遅くなることもある。都会では渋滞があったり,地方から地方への長距離移動には時間だけでなく,運転手の疲労も考えなければなりません。また日本ではガソリン代が高いことも問題ですし,自動車の排気ガスは環境にも悪影響を及ぼします。

 旅客輸送で次に多いのが鉄道ですね。通勤・通学に使う人が多い。船や飛行機を使って会社や学校にいく人は少ないはず。Aは鉄道です。自動車が普及する1960年代までは,鉄道は庶民の足でした。
 自動車の弱点は鉄道の長所になります。まず時間が正確であること。(本当は鉄道時刻が正確な国は日本とドイツくらいなものです。それ以外の国の電車は時間通り来ないものと考えてよろしい。)電車渋滞はまずないですから。それに信号もほとんどない一本の線路を走るので多少の長距離移動も苦にならない。電気を使って動きますから,排気ガスをほとんど出さない。鉄道運賃もガソリン代や高速料金に比べれば安いものです。
 逆に鉄道は利便性に欠けます。駅から駅への移動しかできないところです。

 鉄道と同じように利便性に欠ける交通機関は船舶(船)です。人や荷物をどこにでも降ろせるわけではない。港から港への移動に限られます。また他の交通手段と比べてもっともスピードが遅い。輸送手段としては致命的欠陥です。
 しかし船舶ならではの長所もあります。大量に運べるという点です。したがって旅客輸送にはあまり向きませんが,貨物輸送という点ではもっとも優秀な交通手段といえるでしょう。特に日本のような島国では船舶は欠かせない交通機関です。また燃料費(交通費)も安いし,環境に与える影響も少ない。

 スピード重視でいくと航空機はもっとも早い。したがって航空機は長距離輸送にもっとも適した交通機関です。しかし運賃が高いというのが最大の弱点。飛行機代も最近は安くなってきたとはとはいえ,機体も高ければ,燃料費も高いし,燃費も悪い。飛行機って1ℓの燃料で50mぐらいしか進めないんです。
 空港が都市中心部から離れたところにあるというのも不便です。騒音や安全性の問題から都市の真ん中に空港をつくれない。関西国際空港が海上の埋立地に建設されたのもそういうわけですが,関空から大阪市内まで,高速道路や鉄道を使って1時間ぐらいはかかる。
 また空を飛ぶんだから重たいより軽い方がいいですね。だから大量輸送には適さない。飛行機で貨物を運ぶとしたらよほど付加価値の高い高級品でないと採算がとれません。だから半導体(IC)などの電子部品の輸送には向いている。

答え:イ

☆交通手段の長所と短所
・スピードを重視するなら→航空機(利便性・経済性・大量性に欠ける)
・量や安さを重視するなら→船舶(利便性・高速性に欠ける)
・便利さを重視するなら→自動車(大量性・長距離性・高速性に欠ける)


②これだけはおぼえておきたい交通網
・新幹線
 基礎編でおぼえておきたいよく出る新幹線は以下の通り。本州を端から端まで。注意しておきたいのは,山陽新幹線の終着駅。「博多駅」です。「福岡駅」ではありません。「博多駅」は「福岡市博多区」にある駅名です。
・高速道路
 新幹線と重なる形で本州を端から端まで。注意するのは東海道高速道路」はないことです。「東名」+「名神」が「東海道」にあたる高速道路ですが,名神高速道路は兵庫県まで通っています。
・空港
 4つの国際空港をおぼえておきましょう。大切なのはこれらの位置です。関西国際空港と中部国際空港は海上の人工島にあります。沖合いつくった理由は,用地確保と離着陸にともなう騒音対策です。また成田国際空港は千葉県にあります。東京にあるのは羽田国際空港(東京国際空港)です。


2.流通・通信
①第3次産業
 人口のところでもお話しましたが,産業は第1次産業・第2次産業,そして第3次産業に区別できます。第3次産業には,ものの流通やサービスにたずさわる産業が入ります。商業・運輸業・金融業,そして情報通信業もこれに入ることをおぼえておいて下さい。
②商業
 モノを売る仕事を商業といいます。商業には大きく2つの業種がある。生産者から商品を仕入れて小売業に売る卸売業と,消費者に商品を売る小売業です。卸売業者は問屋ともいいます。こんなところで「へぇー」と思ってもらっても困る。こんなことは常識の範囲内です。さっさと次にいきます。ここからがテストに出ること。
 1点目。第3次産業のうち,もっとも従業者数の多く,売上高が大きいのが商業であること。

[グラフ:基礎編8-2 日本国勢図会2023/24 2021年]
 2点目。卸売業者数・小売業者数ともに全国1位・2位はどこか?1位が東京都で,2位が大阪府です。ここまでは予想通りですか?理由は人口,つまり消費者数が多いからでしょう。ところが人口の2位はどこだったかおぼえていますか?神奈川県です。商業に関しては大阪府の方がさかんであることがわかります。

 3点目。次の例題をやってみましょう。
【例題2】次のグラフは小売業の販売額の推移を示している。A~Cにあてはまる組み合わせとして正しいものを選び,記号で答えなさい。

[グラフ:基礎編8-3 日本国勢図会2023/24 2022年]
ア.A 百貨店   B 大型スーパー   C コンビニエンスストア
イ.A 大型スーパー   B 百貨店   C コンビニエンスストア
ウ.A 大型スーパー  B コンビニエンスストア  C 百貨店
エ.A コンビニエンスストア    B百貨店   C 大型スーパー


 君たちがもっともお世話になっているのはコンビニかな?コンビニは「コンビニエンス」=「便利な」という意味。何でもあるもんね。しかも24時間。ただし商品の価格というと定価に近く,スーパーに比べれば割高です。コンビニは成長産業ではあるけれども,一般家庭レベルではやっぱりスーパーでの買い物が一番多い。毎日のおかず,朝昼晩全部コンビニって訳にはいかないよね。大都市駅前の百貨店・デパートは週末には大混雑するけれど,平日は結構ガラガラってところもある。置いている品物や価格そして便利さを考えると,現在はスーパー,コンビニ,デパートという順になるかな。

答え:ア

【例題3】大型スーパーの立地しとしてもっとも適当なものを次から選び,記号で答えなさい。またそれを選んだ理由を交通機関に注目して簡単に説明しなさい。
 ア.駅前    イ.官公署周辺    ウ.郊外の幹線道路沿い   エ.商品製造工場


 【例題2】のグラフから大型スーパーの販売額がもっとも多い。これは広い土地が得られる郊外に建設することで駐車スペースを確保して,現代の車社会に対応しているからです。これに対応できない駅前の百貨店や商店街は売り上げを減らし,中にはシャッター通りとよばれるシャッターをおろしたままの店が連なるところもみられます。

答え:ウ 車社会に対応し,広い駐車場を備えているから。

③情報(化)社会
 情報技術これをITといいます。「Information(情報) technogy(技術)」の略ですね。情報通信業は「情報」という形のないものを商品として提供するサービス業の1つです。「情報」そのものは古くから価値あるものとしてあつかわれていましたが,パソコンの普及がこの産業を革命的に飛躍させました。特に1990年代は情報革命とまでいわれた時期です。きっかけは1995年。あのマイクロソフト社が「WINDOWS95」というソフトを世に売り出して以来,急速に普及していきます。

【例題4】次のグラフは主要耐久消費財の世帯普及率の推移を示している。グラフ中のA~Eは白黒テレビ・カラーテレビ・薄型テレビ・パソコン・携帯電話のいずれかである。パソコンにあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[グラフ:基礎編8-4 内閣府消費動向調査より]

 1960年代の高度経済成長期に普及しはじめたAが白黒テレビ,それにかわって伸びているBがカラーテレビ。薄型テレビは結構最近。普及の背景にはアナログ放送から地上デジタル放送への切り替えという国の政策があったからです。テレビのリモコンにまだ地上アナログのボタンがついているおうちもあるでしょ。あれがアナログ放送というやつ。それを2011年からやめるってことになって,みんな大慌てで地上デジタルチューナーがついた薄型テレビに買い換えた。その慌てぶりがCのグラフにみられますね。うちの薄型テレビも2010年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会をきっかけに購入しました。結構遅かったかも。
 パソコンはマイクロソフト社のWINDOWSが売り出された1990年代から勢いよく伸びているのでD。そしてテレビ同様普及率が高いのがEの携帯電話。

答え:D

 パソコンの普及と共にインタネットの利用も増加していきます。近年では情報を得るのにパソコンすら必要なくなり,携帯電話・スマートフォン・タブレット端末が急速に普及してきました。そのうちスマートフォンの普及率なんて問題も出題されそうです。
[グラフ:基礎編8-12 総務相情報通信白書より]
スマートフォンの普及にともなって,固定電話とパソコンの普及率が徐々に減少していくのがわかります。

【例題5】次のグラフは固定電話・公衆電話・携帯電話の契約者数の推移を示している携帯電話にあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[グラフ:基礎編8-5 日本国勢図会2022/23より]

 この問題もそんなに難しく考えず,常識的に考えればよい。固定電話は家庭にある電話線でつながった電話のことです。公衆電話,みなくなったねぇ。昔は公衆電話(B)で使えるテレフォンカードというのがありました。

答え:C

貿易

1.日本の貿易
①加工貿易
 日本は資源の乏しい国ですので,原材料の多くを輸入に頼っています。原材料を輸入し,工業製品を輸出する形の貿易を「加工貿易」といい,日本の貿易の基本形です。
 次のグラフは1960年の日本の輸出入品です。[グラフ:基礎編8-6 日本国勢図会2023/24より]


 これまで何度もみてきたように「1960年(代)」といえばすぐに「高度経済成長(期)」という言葉を思い出しましょう。グラフの1960年は高度経済成長期初期ということです。加工貿易の形となっているか確認しましょう。
 高度経済成長期の初期,グラフから日本の最大の輸入品は繊維原料です。だから輸出品も繊維品となっている。また鉱産資源の輸入も多い。工業に不可欠な資源,石油・鉄鉱石・石炭の割合を合計すると繊維原料の割合を上回ります。また鉄鉱石と石炭は輸出品鉄鋼の原料ですね。これこそ加工貿易という形になっています。
 過去(高度経済成長期)のグラフでは「繊維原料」を輸入し,「繊維製品」を輸出する加工貿易の形。「繊維」がキーワードです。

 次のグラフは現在(2021)年の日本の輸出入品です。[グラフ:基礎編8-7 日本国勢図会2023/24より]


 輸入品では石油・液化ガス・石炭など鉱産資源の輸入は相変わらず多いようです。この点は当然のことと理解しておけば特におぼえることでもないでしょう。資源では「石油」の割合が大きいことだけおぼえておけばよい。
 一方,輸出はというと,1960年と大きく変わったのが「機械類」の輸出が多くなり,現在輸出品でもっとも多い品目となっている。また「自動車」は機械の1つであるけれども,貿易の統計上機械類とは別の項目としてあつかわれていることにも注目しておいて下さい。そこで現在日本の輸出品は「機械類・自動車」の順に2つおぼえておくことが大事です。貿易の統計では機械と自動車は別にカウントする。
 また現在は輸入品においても機械類の割合が高くなっている。機械を輸入して,機械を輸出するという本来の加工貿易の形とは少しずれた形になってきている。これは輸出する機械と輸入する機械に違いがあることと,日本の工場が海外に進出したことでそこからの輸入が増加したことが原因です。

②貿易相手国

日本の貿易相手国 [表:基礎編8-8 日本国勢図会2023/24より 2021年]
輸出 輸入
中国 21.6 中国 24.0
アメリカ 17.8 アメリカ 10.5
台湾 7.2 オーストラリア 6.8
韓国 6.9 台湾 4.3
オーストラリア 2.0 韓国 4.1
830914億円 848750億円

 今度は貿易相手国です。近年,中国の経済成長とともに貿易額も伸びてきて,輸入相手国としては圧倒的な存在となっています。輸出はまだアメリカと競り合っていますが,輸出入あわせると中国が日本の最大の貿易相手国といってもよいでしょう。そしてその次がアメリカ。そしてアメリカ以降は輸出入ともアジアの国が目立ちます。

【例題6】次のグラフは日本の地域別輸出入先を示している。グラフ中A~Cにあてはまる組み合わせとして正しいものを選び,記号で答えなさい。[グラフ:基礎編8-9 日本国勢図会2023/24より 2021年]

ア.A:北アメリカ  B:オセアニア  C:アジア
イ.A:北アメリカ  B:アジア     C:オセアニア
ウ.A:アジア    B:北アメリカ   C:オセアニア
エ.A:アジア    B:オセアニア   C:北アメリカ


 国別にみると日本の貿易相手国は1位が中国,2位がアメリカでした。そしてそれ以降はアジアの国々が多かった。それを地域にあてはめればいいだけの応用。

答え:ウ

2.輸出入品[表:基礎編8-10 日本国勢図会2023/24より 2021年]
①貿易相手国別
 それではよく出る貿易相手国とその品目の特徴についてみていきましょう。
 これからみていくのはすべて日本の貿易相手国ですから,その国が日本に対して何を輸出しているのかが問題になります。逆にいえば日本がその国から何を輸入しているか,その輸入品に注目する。そして注目する品目は必ずしも一番多い1位の品目ではありません。統計の見方,注目点をおさえて下さい。

中国との貿易
 貿易額が他国との貿易に比べて断トツの大きい。輸入品目は一見捉えどころがありませんが,「衣類」がアジア諸国との貿易を示しており,その他工業製品が連なっている。逆にその国を特徴づけるような農産物や鉱産資源がありません。「世界の工場」と呼ばれる中国との貿易の特徴。この中国との貿易の傾向は日本だけに限りません。

輸出 輸入
機械類 44.6 機械類 49.0
プラスチック 6.1 衣類 7.8
自動車 5.2 金属製品 3.6
科学光学機器 3.9 織物類 2.9
自動車部品 3.8 家具 2.6
鉄鋼 3.5 有機化合物 2.3
計(百万円) 17984372 計(百万円) 20381814

サウジアラビアとの貿易
 サウジアラビアといえば石油(原油)でした。石油といえばサウジアラビア。超必須。必ず解けるように。

輸出 輸入
自動車 61.8 原油 91.7
機械類 13.6 石油製品 3.7
鉄鋼 4.9 有機化合物 1.5
計(百万円) 488938 計(百万円) 3019351

ドイツとの貿易
 ドイツはEU最大の工業国。代表的な工業製品は「自動車」でした。日本でも高級外車の代名詞,「ベンツ」に「BMW」。

輸出 輸入
機械類 46.7 機械類 25.9
自動車 7.1 医薬品 20.7
有機化合物 5.4 自動車 17.7
科学光学機器 5.2 有機化合物 5.3
遊戯用具 4.2 科学光学機器 4.9
計(百万円) 2279053 計(百万円) 2602954

アメリカとの貿易
 アメリカは世界最先端技術の国。その代表的工業製品は「航空機」です。

輸出 輸入
機械類 39.7 機械類 22.7
自動車 24.2 医薬品 9.7
自動車部品 6.1 液化石油ガス 5.6
科学光学機器 2.6 液化天然化ガス 5.3
医薬品 1.9 肉類 5.1
金属製品 1.6 とうもろこし 4.2
 プラスチック 1.4  有機化合物  3.4
 鉄鋼 1.3   航空機類 2.8
計(百万円) 14831507 計(百万円) 8915629

カナダとの貿易
 カナダは2つがセットになっていることがポイント。1つだけでは他とまちがう可能性がありますので注意。
「石炭」・「鉄鉱石」のペアに「木材」のセットです。「石炭」・「鉄鉱石」だけで,次のオーストラリアと間違えないように。

輸出 輸入
自動車 40.2 肉類 11.3
機械類 26.5 なたね 10.4
自動車部品 12.1 鉄鉱石 9.1
鉄鋼 2.2 銅鉱 8.1
2.0 石炭 8.1
金属製品  1.8 木材 8.0
計(百万円) 916910 計(百万円) 1506506

オーストラリアとの貿易
 さぁ,鉱工業の単元で何度も出てきましたね。オーストラリアは「石炭」と「鉄鉱石」がセットになっていること。最頻出問題の1つ。カナダとの大きな違いは「木材」です。オーストラリアは国土が全体的に乾燥帯であるのに対し,カナダは冷帯で針葉樹林帯が形成されている。この点が二国の大きな違いです。カナダと木材は強く結びつけておく。

輸出 輸入
自動車 58.8 石炭 32.7
機械類 15.5 液化天然ガス 26.8
石油製品 7.3 鉄鉱石 18.8
タイヤ・チューブ 1.8 銅鉱 4.5
計(百万円) 1674531 計(百万円) 5753335

ブラジルとの貿易
 オーストラリアとともに最頻出問題の1つ。ブラジルは資源として「鉄鉱石」だけをおぼえておけばよかった。他の資源とセットになっていない。それだけ「ブラジル」と「鉄鉱石」は強く結びつけておくこと。また農産物ではコーヒー豆も重要でした。どちらで答えてもいいんだけれども。他の資源国との貿易としっかりと区別するためにもここでは「鉄鉱石」に注目する必要があります。

輸出 輸入
機械類 37.9 鉄鉱石 51.2
自動車部品 22.7 肉類 9.0
有機化合物 8.8 とうもろこし 8.2
 鉄鋼 5.6 有機化合物  6.8
金属製品 2.9 コーヒー 4.6
計(百万円) 459618 計(百万円) 1082533

 以上の国が出題されたとき,確実に得点できるようにしましょう。

②品目別
 今度は逆に,品目別に日本がどの国からたくさん輸入しているかを見ていきます。
【例題7】次の表は日本の主要品目の輸入先の順位を示している。A~Fにあてはまる品目をあとから選び,記号で答えなさい。

オーストラリア オーストラリア サウジアラビア
ブラジル インドネシア アラブ首長国連邦
カナダ ロシア クウェート
南アフリカ共和国 アメリカ カタール
アメリカ カナダ ドイツ
カナダ アメリカ タイ
オーストラリア ロシア アメリカ

ア.自動車   イ.鉄鉱石   ウ.小麦   エ.原油   オ.石炭   カ.木材

 AとBはともにオーストラリアが1位。この時点で石炭か鉄鉱石のいずれかにしぼられます。このことは資源の単元の復習です。「ブラジルがあるか,ないか」が判断の決め手でした。ブラジルがある方が「鉄鉱石」,ない方が「石炭」。Cはサウジアラビアがあるので「原油」と即答してもよい。
 Dの統計が重要です。これは「小麦の輸入先」を示していますが,アメリカ・カナダ・オーストラリアの3国でほぼ100%です。そしてこれはこの順でおぼえることが大切です。こればかりは丸暗記して下さい。ちなみに「アメリカ・カナダ」の部分はしりとりになっています。必ず三つを順番に。
 Eはカナダがあるので木材。木材はカナダとの貿易で確認しました。しかし「小麦の輸入先(D)」とよく似ている。このとき小麦の方をしっかりとおぼえているかが大切になります。貿易の統計で「カナダ」と「木材」の関係は他との関係もしっかりとおさえておかなければダメです。国別では「木材と石炭」がセットになってはじめて→「カナダ」。「アメリカ・カナダ・オーストラリアの順で100%」→小麦。(違うと木材)
 Fはドイツが1位なので「自動車」と即答してもよい。

答え:A イ   B オ   C エ   D ウ   E カ   F ア

3.貿易港[表:基礎編8-11 日本国勢図会2023/24より 2021年]
 貿易港の特徴をとらえて,その貿易港がどこであるかを見極めます。そのとき輸出に注目する貿易港と輸入に注目する貿易港があります。このポイントをまちがえないようにしましょう。

①輸出
 輸出に注目する貿易港は成田・関西の国際空港,そして横浜・名古屋港の4つです。
成田国際空港 関西国際空港
 この2つは空港です。つまり航空輸送ですね。航空(貨物)輸送では小型・軽量・高価なものを運ぶのがよかった。統計表では集積回路(IC)ですね。これがポイント。

成田国際空港 関西国際空港
輸出 輸入 輸出 輸入
半導体製造装置 9.1 医薬品 15.9 集積回路 20.4 医薬品 25.5
科学光学機器 5.8 通信機 13.8 電気回路機器 6.4 通信機 13.4
金(非貨幣) 5.6 集積回路 9.0 科学光学機器 6.2 集積回路 7.9
電気回路用品 3.8 コンピューター 8.0 半導体製造装置 5.2 科学光学機器 4.3
集積回路 3.9 科学光学機器 5.6 遊戯用具 4.8 有機化合物 2.9
計(百万円) 12821497 計(百万円) 16114544 計(百万円) 5736248 計(百万円) 418801

名古屋 横浜
 名古屋港・横浜港はともに近くに日本屈指の自動車企業があります。(トヨタやニッサン)そのため「自動車」の輸出量が多い。

名古屋 横浜
輸出 輸入 輸出 輸入
自動車 23.1 液化ガス 7.7 自動車 16.8 石油 9.0
自動車部品 16.8 石油 6.9 自動車部品 5.2 アルミニウム 4.0
内燃機関 4.1 衣類 5.8 プラスチック 4.5 有機化合物 3.3
電気計測機器 3.4 アルミニウム 5.5 内燃機関 4.4 液化ガス 3.0
金属加工機械 3.3 絶縁電線 5.0 金属加工機械 2.7 金属製品 2.9
計(百万円) 12484640 計(百万円) 5289173 計(百万円) 7225474 計(百万円) 4986990

②輸入
 輸入に注目する貿易港は東京・大阪の2つです。ともに大都市(=大消費地)であることから,食料品(肉類・魚介類)の輸入が特徴です。

東京 大阪
輸出 輸入 輸出 輸入
半導体製造装置 7.6 衣類 7.5 集積回路 11.1 衣類 12.4
プラスチック 4.8 コンピューター 5.3 コンデンサー 8.4 肉類 6.3
自動車部品 4.7 集積回路 4.6 プラスチック 5.4 織物類 4.3
コンピューター部品 4.5 肉類 4.3 個別半導体 3.8 音響・映像機器 3.5
内燃機関 3.9 魚介類 4.0 電気回路用品 3.6 家庭用電気機器 3.5
計(百万円) 6493775 計(百万円) 12228072 計(百万円) 4698073 計(百万円) 5096679


4.世界の経済連携
EU
 非常によく出題される地域連合です。日本語では「ヨーロッパ連合」といいます。これは略称と正式名称,どちらでもいえるようにはなっておく必要があります。現在ヨーロッパ27ヶ国が加盟しています。逆にヨーロッパで加盟していない国の代表例がスイスであることをおぼえておきましょう。また2020年,イギリスが正式に離脱したこともおさえておきましょう。
 EUの特徴は原則域内の「人・物・金」の移動が自由な点です。
・「人」の移動が自由
 域内の移動にパスポートが要りません。域内であればどこ国の学校に入学してもいいし,仕事についてもいい。医者・弁護士などの資格も共通です。域内なら好きなところで働けばよい。
・「物」の移動が自由
 本来,国と国との商品の取引は貿易という形をとります。これには様々な手続き・規制がつきものです。そんなややこしいことはすべて取り払ってしまう。流通をスムーズにする。一番めんどうなのが「関税」です。「関税」とは輸出入にかかる税金。域内の商品取引には「関税」がかからない。そのかわりEU以外の国との取引には「関税」をかけます。
・「金」の移動が自由
 商品と同様に「お金」も自由に移動できます。これも商品と同じでバラバラの国どうしでは通貨単位も違うし,通貨価値も違う。計算も面倒だし,交換手続きや手数料もかかってしまう。
 どうせならおんなじにしてしまえば簡単だ。ということで通貨も統一してしまいました。EUの共通通貨をユーロといいます。ユーロに関しては比較的新しく加盟した国(東ヨーロッパに多い)ではまだ使用していない国もあります。
 ちなみにユーロのお札は各国共通のものを使っていますが,硬貨のデザイン(形は同じ)は国ごとに異なっています。

ASEAN
 これも略称としては非常によく問われる語句です。「東南アジア諸国連合」。東南アジアの政治・経済・文化・安全保障に関する地域協力機構で,EUのように経済統合はまだ達成されていませんが,いずれはEUのような共同体になることをめざしています。

APEC
 「アジア太平洋経済協力会議」。OPEC(石油輸出国機構)とよく似ているので注意しましょう。最初の「A」は「アジア」の「A」です。文字通りアジア地域,そして太平洋をとりまく諸国の経済協力のための会議です。毎年一回,参加国が集まり多国間の経済協力を進めるための会議を開いています。

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