地理 第8回 流通 応用編
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交通
1.世界の交通
①陸上輸送
日本では基礎編に加えて下図の路線をおぼえておきましょう。秋田新幹線・山形新幹線・長野新幹線は目的地や地域がわかればそのままおぼえられますね。注意したいのは上越新幹線と関越自動車道。同じ東京と新潟を結ぶ新幹線と高速道路ですが,名称が異なっています。
また近年では北陸新幹線が長野・金沢間で開業し,北陸地方への首都圏からの観光客増加に関して出題されているのでおさえておきたい。
また本州と九州は関門トンネル(関門海峡)で,本州の北海道は青函トンネル(津軽海峡)で結ばれており(海底トンネル),両方とも鉄道が通っています。
九州・本州・北海道がつながったら,あとは四国です。本州四国とは3ルートの連絡橋によって結ばれています。尾道・今治ルート,児島・坂出ルート,神戸・鳴門ルートです。それぞれ特徴があるので,その特徴をおさえておきましょう。
尾道・今治ルートは間にある複数の島々を複数の橋で結びつけたものです。児島・坂出ルートの瀬戸大橋は,3つのルートの中で最初につくられたもので,自動車とともに鉄道が敷かれているのが特徴です。神戸・鳴門ルートは淡路島を挟んで2つの橋で結ばれていること。
高速道路網の整備は自動車の弱点を補い,国内貨物輸送の面では自動車の役割がますます高まっています。
高速道路では信号がなく,ある程度のスピードを出すことができますし,その範囲は離島を除けば全国的に広がっている。(長距離性と高速性の改善)それと同時にトラックの大型化や特定の貨物を運ぶ専用車の開発も進んできました。(大量性の改善)航空機と同じくICのような小さくて付加価値の高いものなら大量性も問題になりません。(経済性の改善)
高速道路の整備が地方や社会にもたらす影響について,いろんな資料をもとに説明せさる問題が出題されますのでしっかりと理解しておきたい。
地方では高速道路沿い(インターチェンジの近く)に安くて広い土地を求めて工場が進出し,工業団地が建設され,特に組み立て型の機械工業(自動車・ICなど)が発展しました。進出してきた工場は雇用を生み出し,地元の人々の勤め先になります。それと同時に農家の兼業化が進みます。
また農家では輸送が便利になったことや,冷蔵車の開発によってによって大都市向けの野菜づくりへの転換が進みます。
またインターネットの普及とともに通信販売の売上げ高が年々増加しています。通信販売で購入した商品は宅配便で配達されます。近年の自動車による国内貨物輸送の増加はこれに大きく関連しており,高速道路はこの物流を活発かつスピーディーにするのに一役買っている(大いに役立っている)のです。私の自宅は大阪府にありますが,月に2度山形県からインターネットで申し込んだ有機野菜を取り寄せています。野菜は月曜日の朝,農家で採れたものがその日のうちに発送され,水曜日には我が家に届きます。昔は大阪にいながら山形県をこんなに身近に感じることはなかった。(ただし現在,トラックのドライバー不足という深刻な問題に直面しています。)
貨物輸送だけでなく,人もその利便性に引っ張られていきます。余暇を過ごすために大都市から地方へ,逆に地方から大都市へ,高速道路の整備によって多少の長距離も移動しやすくなった。特に地方では観光客が増加して地方活性化につながったところもたくさんあります。(よく例に出されるのが新潟のスキー観光客の増加)
このように自動車が社会で重要な地位を占めていくことをモータリゼーションといいます。
【例題1】高速道路網の整備が地方にもたらした影響について,正しいものを選び,記号で答えなさい。
ア.関越自動車道が開通すると,新潟県湯沢町ではスキーに訪れる観光客数が減少した。
イ.中国自動車道の開通すると,工場が進出したことで農家の兼業化が進み,過疎化が解消された。
ウ.神戸・鳴門ルートが開通してからも,トラックの多くはフェリーを利用している。
エ.東北自動車道が開通すると,半導体電子部品などの機械の工場が進出し,出稼ぎ労働者が減少した。
ア.関越自動車道の開通によって東京・から湯沢町までの車での所要時間は7~8時間が2~3時間に大幅に短縮。長距離性と高速性の改善によって湯沢町への観光客は大幅に増加した。
イ.地方に工業団地がつくられたことで地方の農家の兼業化は進んだが,過疎化が解消されたとはいえず,中国山地の過疎化は現在でも問題となっている。
ウ.神戸・鳴門間は淡路島を挟むため距離が離れており,フェリーを利用すると時間がかかる。
エ.かつては冬期,農業ができない地域では季節労働者として大都市圏へ出稼ぎにいく人が多かったが,現地に工場が進出してきたことで現地での雇用が生まれた。
答え:エ
世界の鉄道交通としておさえておきたいのはイギリス・フランスの間のドーバー海峡の海底に掘られた海峡トンネル。その運営会社の名前からユーロトンネルともよばれます。鉄道専用トンネルです。何と車ごと列車に乗せて海峡をわたるカートレインも走っています。旅客用のユーロスターという高速鉄道はロンドン・パリ間を約2時間で結んでおり,二都市を日帰りで往復することができます。
|
ユーロスター(パリ北駅) |
②海上輸送
海上輸送,つまり船舶による輸送は重くかさばる貨物輸送に適していました。貨物には様々な種類がありますので,貨物の種類によって様々な専用船が発達してきました。
代表的なものがタンカーです。これは石油を専用に運ぶ船です。(石炭・鉄鉱石などを運ぶ船はバルクキャリアという)食料品を運ぶ船は冷凍船です。この19世紀末の冷凍船の発明は南半球の農業の発達に大きな影響を与えました。南半球から北半球への輸送には赤道(熱帯)を通過しなければならないからです。
コンテナを運ぶ船はコンテナ船。コンテナとは箱型の容器です。サイズが国際的に決まっているので,効率よく品物を運ぶことができます。港で荷降ろしするとそのまま貨物列車やトラックに積んで輸送することもできます。
世界の海上輸送路としておさえておいてほしいのが,スエズ運河とパナマ運河です。スエズ運河は地中海と紅海(インド洋)を結びます。パナマ運河は太平洋と大西洋。これらの運河がなければ世界の海上輸送にとんでもない時間と燃料費がかかるところです。
また日本のタンカーの航路をかつてのシルクロードになぞらえて「オイルロード」とよんでいます。このオイルロードの要所であり難所でもあるのがマラッカ海峡。マレー半島とスマトラ島の狭い海峡です。太平洋(南シナ海)とインド洋を結ぶ世界でもっとも重要な航路の1つ。
|
|
スエズ運河を通過するタンカー(エジプト) |
③航空輸送
・貨物輸送
重たいものを大量輸送するには向いてませんが,軽量で高価なものを運ぶのに適していたのが航空輸送でした。半導体などの電子部品が貨物の代表例です。機械以外では,医薬品,生鮮食料品のような鮮度が大切なもの(果物など),花き(花)といったものも航空輸送に適していることもおさえておきましょう。
|
成田空港を飛び立つ貨物専用機
旅客機にはある窓がないのが特徴 |
【例題2】次の表は,2021年の成田国際空港・名古屋港・千葉港のそれぞれの貿易額(輸出額と輸入額の合計)と取扱貨物量を示したものである。成田国際空港にあてはまるものを選び,記号で答えなさい。またこの表から読み取れる船舶貨物と比べたときの航空貨物の特徴を簡単に説明しなさい。
空港・港 |
A |
B |
C |
貿易額(億円) |
178466 |
289360 |
38029 |
取扱貨物量(万t) |
17779 |
259 |
13455 |
[表:応用編8-1 国土交通省・東京税関統計情報より 2021年]
貿易額日本最大が成田空港であるということで考えてもよいが,ここのポイントは取扱貨物量。Bの貨物量が圧倒的に小さい。よってBが空港を示している。
しかし航空貨物の特徴を答えるときは「取扱貨物量」だけに注目して,「小さい」あるいは「軽量」であることだけを述べてはいけません。この問題は「表から読み取れる」とあるので,量と金額の両方について述べること。
答え:B 特徴…重さのわりに高価である。(取扱貨物量1トンあたりの貿易額が船舶貨物に比べて高い。)
・旅客輸送
【例題3】次の表は日本人の海外旅行者数と訪日外国人数の国別順位を示している。表中のA・Bは中国・アメリカ(ハワイ・グアムなどを除く)のいずれかである。中国を示しているのはどちらか,記号で答えなさい。
日本人の海外旅行者数【2018】 |
千人 |
|
訪日外国人数(観光)【2019】 |
千人 |
韓国 |
2949 |
A |
6775 |
A |
2690 |
韓国 |
4896 |
台湾 |
1969 |
台湾 |
4355 |
タイ |
1656 |
香港 |
2116 |
B |
1410 |
B |
1248 |
[表:応用編8-2 データブック オブ・ザ・ワールド2021より]
国内外を問わず日本人の旅行の傾向として安くて近い,そして滞在日数が少ないというのがあります。(「安・近・短」)すると上位に来るのがアジアの国だとわかります。選択肢からするとAが中国ですね。
ところで海外に旅行するとき必ず必要なものは何でしょうか?「パスポート」。正解。実はもう1つあります。「査証(ビザ)」というものです。簡単にいうと入国許可証です。パスポートがその人の国籍がある政府が発行するものに対して,ビザはその人の渡航先の政府が発行するものです。この許可証をもらうためには(国によって)様々な条件があります。お金だけ支払えばよい場合もありますし,渡航目的・滞在場所・職業・収入・犯罪歴など,その人物がある国に入国してもよい人物がどうかのさまざま審査をクリアーしなければならない場合もあります。(そういった場合,ビザの発行には何日もかかる)。日本人が海外に行く場合,日本人としての信用からか,たいていの国ではこのビザが免除されています。だからパスポートだけあれば海外旅行に行けると思ってしまう。(ビザが要る国もありますよ)逆に外国人が日本に入国するとき,ビザの発行には厳しい条件がつけられる場合がある。
さて韓国人に対して日本はこのビザを免除しています。しかし中国に関してはまだ結構収入のある一部の富裕層に対してしか許可されていません(特に自由度の高い個人旅行)。しかし2015年,中国人へのビザ発効要件を緩和しました。これによって今後中国人観光客がこれまで以上に伸びていくと考えられます。
※新型コロナ感染症による旅行者数への影響は発展編へ
答え:A
航空旅客輸送に関して,いくつか語句をおさえておきましょう。まずはハブ空港。(この説明は発展編で)
近年の動きとしてはLCC(ロー・コスト・キャリア)とよばれる格安航空会社が旅客数をのばしています。
2.商業・サービス業
①商業・サービス業
【例題4】次の表は北海道・新潟県・大阪府・沖縄県のコンビニエンスストア店舗数,旅館・ホテル数,JR営業キロ数,年間小売販売額を示している。大阪府にあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[表:応用編8-3 県勢より 【 】内は年]
|
コンビニエンスストア店舗数
【2018】 |
旅館・ホテル数
【2021(年度)】 |
JR営業キロ(km)
【2011】 |
年間小売販売額(十億円)
【2019】 |
ア |
2990 |
2951 |
2500 |
6132 |
イ |
3936 |
1588 |
246 |
9045 |
ウ |
530 |
2781 |
0 |
1301 |
エ |
931 |
1984 |
899 |
2310 |
大阪府は人口の多い大都市。コンビニもホテルも多そうですが,決め手は年間小売販売額。売り上げを一番出しているものを選びましょう。
アはJR営業距離が圧倒的に長いので,面積が一番大きい北海道。面積が広いし,人口も多いので,この中ではコンビニエンスストアも多いグループに入る。小売販売額も大きい。北海道が誇る御当地コンビニ「セイコーマート」,大手コンビニも舌を巻く。
面積の点でいえば,JR営業キロ数がアに次いで長いエが新潟。ウは逆にJR営業キロが0。沖縄にはJRだけでなく鉄道が走っていないことは知っておいてもよい。あるのはモノレール。
答え:イ
②レジャー
【例題5】次の表は大阪県・千葉県・新潟県・岐阜県のスキー場,海水浴場,テーマパーク・レジャーランドの数を示している。千葉県にあてはまるものを選び,記号で答えなさい。 [表:応用編8-4 県勢2024より 2022年]
|
スキー場 |
海水浴場 |
テーマパーク・
レジャーランド |
ア |
0 |
58 |
19 |
イ |
13 |
0 |
7 |
ウ |
0 |
4 |
22 |
エ |
20 |
60 |
9 |
スキー場には冬の積雪が,海水浴場には自然の砂浜海岸が必要です。またテーマパーク・レジャーランドは人が集まりやすい大都市やその周辺に建設されます。
海水浴場が0のイは内陸県の岐阜県であることがわかります。またスキー場が0で,海水浴場が少ないウは,積雪・自然の海岸線が少なくテーマパークが多いことから大阪。
冬の積雪が少ないという点では太平洋側にある千葉県もスキー場が少ないはずです。また千葉県は太平洋側に広い海岸線(九十九里浜)をもち,首都圏であることから海水浴場とテーマパーク数が多いはず。したがってアが千葉県。
新潟は冬の積雪も多く,海岸線も広いのでエにあるようにスキー場も海水浴場も多くなっています。
テーマパークとして東京ディズニーランド(ディズニーリゾート)は東京都にはなく,千葉県(浦安市)にあること。そしてユニバーサル・スタジオ・ジャパンは大阪府(大阪市)にあることをおぼえておきましょう。君たちはこういうことになるとよく知っているようですね。
答え:ア
③通信
インターネットや携帯電話・衛星放送など現在の通信技術を支えるのが人工衛星や海底ケーブルです。人工衛星には画像や音声を送る通信衛星,地球の様々な様子を観測する観測衛星(気象衛星や偵察衛星など)があります。
海底ケーブルは19世紀末にはすでにヨーロッパで広まりつつありました。現在では光ファイバーケーブルを用いることで情報を大量に高速でやり取りできるようになっています。
貿易
1.現在の貿易
①自由貿易
自由貿易とは国が関税や数量によって貿易に制限をかけない貿易です。反対語は保護貿易といい,逆に関税や数量によって貿易を制限することです。なぜそんなことをするのかというと,自国内の産業を保護するためです。自国で生産・販売するより安い商品が外国から無制限に入ってくると国内の商品が売れなくなる。するとその商品を生産している国内の農家や企業は成り立たなくなる。だから海外から輸入した商品に関税というハンディをつけてやって国内の商品との値段差を小さくしてやる。そうすると国民は自国の商品を買いやすくなるでしょ。これが保護貿易です。
現在のグローバル化した世界では保護貿易はやめて自由貿易にしようという動きが活発です。グローバル化とは簡単にいうと世界を1つの市場として考えることです。経済的に世界が1つになると世界的規模で競争の原理が働き,世界の消費者はより安い製品を購入することが可能になり,生産・販売する企業はより大きな利益を得ることができる。
しかし実際には地球(グローブ)にはたくさんの国境があり,国家がある。国家は国益を考えなければならない。自分たちの国より安い商品が自由に国境を越えて流入するとその国の国内だけを考えれば損をする場合もある。だからお互いの国が国内外の問題をテーブルに出して共に利益を得られる方法はないかと交渉をするんです。この交渉をうまく進めていくために設立された国際機関が世界貿易機関(WTO)という組織です。
②貿易摩擦
ある製品の輸入が国産品と競合する場合におこる二国間の問題を「貿易摩擦」といいます。例えば日本やアメリカ,EU主要国では生産される工業製品がよく似ています。自動車や機械製品ですね。よく例に出されるのが1980年代からおこった日米の自動車の貿易摩擦です。
日本はアメリカに主力製品である自動車を輸出したい。同じくアメリカも日本に主力製品である自動車を輸出したい。同じように両国が自動車を輸出入したとしましょう。日本とアメリカでどちらの国の自動車がよく売れるでしょうか。それは性能のいい方です。性能のよい方とは,この場合日本車の方です。
その結果,日本の貿易黒字(アメリカの貿易赤字)が増え,アメリカの自動車会社の業績が悪くなり,アメリカで失業者が増加した。
自動車でいう性能とは例えば「燃費」のことです。どれだけ少ない燃料で長い距離走れるか。日本車はアメリカ車とくらべて小型・軽量で燃料効率もよい。1970年代に石油危機がおこると自動車の燃料であるガソリン代も高騰します。すると80年代,自動車が日常の足であるアメリカで燃費のいい日本の小型車が,そりゃーよく売れたこと。それとともにアメリカの対日貿易赤字もどんどんふくらんでいきます。30年以上,初めてアメリカを訪れた私は,ハイウェーを走る車の多くがトヨタ・ニッサン・ホンダであることに驚き,日米貿易摩擦の現場を体験しました。
さすがの自由貿易国アメリカにも保護貿易の空気が一気に盛り上がる。「このままではアメリカの自動車産業,しいてはアメリカ経済が破綻する。」アメリカの自動車業界,労働組合はアメリカ政府に,そしてアメリカ政府は日本政府に改善を迫る。日本には日本の事情があり,問題がこじれる。(摩擦がおこる)
ではこの場合,どのような改善策があるのでしょう?
(1)日本の輸出を減らす(輸出規制)
輸出を減らすと単純にいっても,それでは日本の企業の業績が悪化します。それなら貿易という形をとらなければいいんだ。アメリカに日本の会社の工場を建てて,そのままアメリカに売り込んだらどうだ(現地生産)というわけ。頭を使いましたねぇ。これなら現地でアメリカ人の労働者を雇うことができますから,失業対策にもなります。
(2)輸入を増やす(農産物の輸入自由化)
「日本はもっとアメリカの商品を買うべきだ」というのがアメリカの主張。しかし工業製品は日本の方が優れています(国際競争力が強い)から,日本人はわざわざアメリカの工業製品を買いません。
※例外的に航空機はアメリカから買うしかなかったから,貿易摩擦解消の1つとしてJAL(日本航空)が馬鹿デカイ飛行機をたくさん買わされる羽目になったんだ。そんでもってそいつの維持費がたいへんだから,挙句の果てにJALは一度は経営破綻に追い込まれた。
では工業製品以外の別のものになる。別のものとは何か?それはアメリカの安い農産物です。農業でもみてきましたが,日本の農産物は手間がかかっていて価格が高いため国際競争力が弱い。対してアメリカの農産物は安くて国際競争力が強い。「日本が自動車をアメリカに売るのなら,日本もアメリカの農産物をもっと買うべきだ」というのです。
ところがここに大きな問題が立ちはだかる。日本は農家を保護するために農産物の輸入には高い関税をかけたり,輸入量も厳しく制限していた。日本は農産物に関しては名だたる保護貿易国家だったのです。アメリカの立場からすれば,「日本が農産物だけ自由化しないのは不公平だ。市場開放しろよ。」となりますし,日本の立場からすれば「日本の農業を守るためにはしかたない。」となるわけで,なかなか交渉がまとまとりません。
アメリカは日本にとって政治上,非常に重要なパートナーです。これらアメリカの日本に対する要求を無視しつづけることはできません。世界の貿易の流れも自由貿易です。そんなわけで特に貿易摩擦がひどかった1980年代,日本は徐々に農産物の輸入制限を緩め,1991年には牛肉・オレンジの輸入自由化に踏み切ったのです。
※このような貿易摩擦は,一方的な貿易赤字からおこるのではなく,同じ商品が競合する場合におこるのです。例えば日本とサウジアラビアとの貿易では日本が一方的にに貿易赤字ですが,サウジとの間に貿易摩擦はおこっていません。サウジアラビアから日本は石油を輸入していますから,これはいわば納得済みの貿易赤字なのです。
日本とアメリカまたはEU(特にドイツ)は産業構造が似ており,自動車だげなく半導体やその他の電気機械でも貿易摩擦はおこりました。また中国との間では農産物において貿易摩擦がおこりました。中国産の安い野菜(ネギ・シイタケなど)が大量に日本に輸入されたからです。このとき日本は緊急輸入制限(セーフガード)を実施しています。「セーフガード」は最近,出題が減りましたが,過去はよく出題されました。
【例題6】次の文は日米間の経済問題に関するものである。資料Ⅰ・Ⅱを参考にして( )にあてはまる内容を答えなさい。①はア・イから選び,記号で,②は10字程度で,③は20字程度で,④は漢字3字でそれぞれ答えること。
[グラフ:応用編8-5 日本国勢図会2024/25より]
[グラフ:応用編8-6 日本自動車工業会ホームページより]
資料Ⅰから1980年代になって日本のアメリカに対する貿易(①ア.黒字 イ.赤字)が大幅に増えてきた。そのため資料Ⅱのように推移したのは,日本とアメリカは交渉によって( ② )ことを目的に,日本政府が日本の企業に対して( ③ )ことを働きかけたからである。
それと同時にアメリカは市場開放を強く要求したため,日本は農産物輸入の( ④ )を段階的に進めることになった。そのため食料自給率の低下や農業の衰退が問題となってきている。今後,農家の保護・育成とともに国内産農産物の国際競争力を高めることが大きな課題となっている。
答え:①ア ②貿易摩擦を解消する ③アメリカへの自動車輸出台数を(自主的)に減らす
④自由化
2.世界の貿易
①貿易相手国
日本の貿易相手国は長らくアメリカが1位でした。それが最近になって輸入相手国1位が中国になり,輸出と輸入ともに貿易相手国1位は中国になりました。
日本の貿易相手国
[表:応用編8-7 日本国勢図会2024/25より 2022年]
輸出 |
% |
|
輸入 |
% |
中国 |
19.4 |
中国 |
21.0 |
アメリカ |
18.6 |
アメリカ |
9.9 |
韓国 |
7.2 |
オーストラリア |
9.8 |
台湾 |
7.0 |
台湾 |
4.3 |
タイ |
4.3 |
韓国 |
3.7 |
計 |
1008738億円 |
計 |
1101956億円 |
それではアメリカの貿易相手国1位はどうでしょう?輸入相手はやはり中国です。輸出相手は?答えはカナダです。ちなみに2位はメキシコ。カナダ・メキシコは輸入相手としても2位・3位となっていて,アメリカにとって日本は貿易相手国として上位国ではないのです。
その理由はもちろんアメリカ・カナダ・メキシコは地理的に隣同士の国ということもありますが,この3国間でNAFTA(北米自由貿易協定)という自由貿易協定を結んでいたからです。このNAFTAはアメリカのトランプ政権は貿易赤字解消のため,協定内容の再交渉をおこなった結果,アメリカ・メキシコ・カナダ協定という新たな自由貿易協定にかわりました。略称はUSMCAといいますが,これはアメリカ側からみた略称だからUSが最初にきている。したがって各国によって表記が異なります。新NAFTA(ニュー・ナフタ)ともいいますが,NAFTAの出題は徐々に減っていくと思われます。
次にオーストラリアを考えてみます。オーストラリア最大の輸出相手国は?中国です。近年の中国の経済成長を背景に鉄鉱石・石炭の需要が高まった。ではその前は?日本です。中国にとってかわられる前,日本はオーストラリア最大のお得意様でした。
それではその前は?イギリスです。オーストラリアはイギリスの植民地で,独立後も本国イギリスとの関係が続いていた。しかーし,1970年代イギリスはEC(EUの前身)に加盟したのです。イギリスに捨てられた形となったオーストラリアは交際相手をアジア太平洋方面に求めた。
ではEUの国々はどうでしょう。EUの国々は当然,貿易相手国の上位には近隣のEU加盟国が入る。そしてその中にポツンとアジアの国,中国が割り込んでくるという形。
このようにその国の貿易相手国は,まず近隣地域(地域の経済共同体)が上位を占め,世界共通して中国の占める割合が高くなっているということをおさえておきましょう。それゆえ現在の中国は産業革命当時のイギリスと同様「世界の工場」とよばれているのです。次のグラフは世界の輸出貿易に占める主要国の割合を示しています。ポイントは中国の成長(現在1位)であること。そしてドイツの占める地位が高いことです。ドイツは難問ですが,このあたりが点差がつくところかも。
[グラフ:応用編8-8 UN COMTRADE DATABASEより]
【例題7】次の表は日本・カナダ・ニュージーランド・フランスの輸出入額とその相手国上位5ヶ国を示している。カナダにあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[表:応用編8-9 データブック オブ・ザ・ワールド2024より 2022年]
|
輸出入額(百万ドル) |
金額による輸出入相手国(%) |
ア |
輸出:597480 |
アメリカ 76.9 |
中国 3.7 |
イギリス 2.4 |
日本 2.3 |
メキシコ 1.2 |
輸入:581669 |
アメリカ 49.2 |
中国 13.5 |
メキシコ 5.5 |
ドイツ 3.0 |
日本 2.3 |
イ |
輸出:617817 |
ドイツ 13.7 |
イタリア 9.2 |
アメリカ 7.9 |
ベルギー 7.9 |
スペイン 7.6 |
輸入:817994 |
ドイツ 14.6 |
ベルギー 11.3 |
オランダ 8.2 |
スペイン 7.7 |
イタリア 7.4 |
ウ |
輸出:746920 |
中国 19.4 |
アメリカ 18.7 |
韓国 7.2 |
香港 4.4 |
タイ 4.3 |
輸入:897242 |
中国 21.0 |
アメリカ 10.1 |
オーストラリア 9.8 |
アラブ首長国 5.1 |
サウジアラビア 4.7 |
エ |
輸出:45652 |
中国 28.0 |
オーストラリア 12.1 |
アメリカ10.8 |
日本 5.8 |
韓国 3.7 |
輸入:54256 |
中国 23.1 |
オーストラリア 11.1 |
アメリカ 8.9 |
韓国 6.4 |
日本 6.3
|
イは貿易相手国の多くがEU諸国であるのでフランス。ウは輸出入額が4ヶ国中もっとも大きく,相手国が中国をはじめアジアの国が多いので日本。エは貿易相手国の上位にオーストラリアがいるのでニュージーランド。アがカナダで,アメリカやメキシコとの貿易がさかん。貿易相手国をみて,地域的な関係をみつけるのがポイント。
答え:ア
【例題8】次の表はオーストラリアの貿易相手国(輸出額に占める割合)の変化を示している。A・Bにあてはまる国をそれぞれ答えなさい。[表:応用編8-10 UN COMTRADE DATABASEより]
1963年 |
% |
|
1973年 |
% |
|
2003年 |
% |
|
2021年 |
% |
A |
18.0 |
日本 |
32.2 |
日本 |
18.2 |
B |
24.9 |
日本 |
17.4 |
アメリカ |
12.5 |
アメリカ |
8.8 |
日本 |
12.8 |
アメリカ |
11.5 |
A |
8.2 |
B |
8.4 |
韓国 |
6.0 |
B |
7.3 |
ニュージーランド |
6.1 |
ニュージーランド |
7.6 |
インド |
4.7 |
ニュージーランド |
6.4 |
フランス |
3.0 |
韓国 |
7.5 |
アメリカ |
3.0 |
オーストラリアの貿易相手国(輸出)の過去と現在を問う問題。オーストラリアの歴史的背景から考えて,もと宗主国であったイギリスがA。イギリスがEC(現EU)に加盟したことで,イギリスとの関係が薄くなっていった。(現在イギリスははEUから脱退)現在はアジア諸国との関係が強く,表中に日本がすでに現れているので,Bは中国と考えるとよい。
答え:A イギリス B 中国
【例題9】次の図のA~Cは日本・中国・アメリカのいずれかの国を示している。矢印は貿易品の移動,数値はその額である。A~Cの国の組み合わせとして適するものをあとのア~カから選び,記号で答えなさい。
[図:応用編8-11 日本国勢図会2023/24より 2021年]
|
A |
B |
C |
ア |
日本 |
中国 |
アメリカ |
イ |
日本 |
アメリカ |
中国 |
ウ |
中国 |
日本 |
アメリカ |
エ |
中国 |
アメリカ |
日本 |
オ |
アメリカ |
日本 |
中国 |
カ |
アメリカ |
中国 |
日本 |
日本の対米・対中貿易で知っておかなければならない知識は,アメリカに対して貿易黒字であることと,中国は最大の貿易相手国であることです。これを念頭において問題を解くことにしましょう。
次に問題の矢印は貿易品の移動方向を示しており,数字は額を示している。自分の国から他国への矢印は輸出額となり収入になるので「+」,自分の国への矢印は受け取った商品の額なので支出(支払い)になり「-」と考えます。
A国はB国に対して赤字であり,C国に対しても赤字です。したがってA国は日本ではありません。日本はアメリカに対して貿易黒字であるからです。(選択肢ア・イは消える)
次に全体の貿易規模を考えるとA・C国間の取引が最も大きい。このことからA・C国がアメリカか中国のいずれかであると予測できます。するとBが日本であることが決定です。(選択肢エ・カは消える)さらに日本がアメリカに対して貿易黒字であることを考えると,B→A間で黒字になっていることからAはアメリカです。
答え:オ
③日本の貿易[表:応用編8-12 日本国勢図会2024/25より 2022年]
基礎編に追加しておぼえておいてほしい統計を挙げておきます。
(1)貿易相手国別
・韓国との貿易
輸出 |
% |
輸入 |
% |
機械類 |
35.1 |
機械類 |
25.2 |
鉄鋼 |
9.4 |
石油製品 |
14.8 |
プラスチック |
4.8 |
鉄鋼 |
9.7 |
有機化合物 |
4.6 |
医薬品 |
4.9 |
石油製品 |
4.2 |
有機化合物 |
4.6 |
科学光学機器 |
3.9 |
プラスチック |
4.4 |
計(百万円) |
7106165 |
計(百万円) |
4416703 |
うーん。最初から困った。何が困ったかというとお隣の韓国なんだけれども,これ実は発展編で紹介してもいいくらいの難問。いきなりこの表が出されて,「これ韓国だよ」って答えられるのは発展レベル。応用編では消去法で残ったのが「韓国」と答えるのが正しい解き方とだけはいっておきます。
それではイヤだという人のためにあえて韓国の特徴を挙げておくと。まず日本から韓国への輸出品と韓国から輸入品,くらべてみても同じような品目が並んでいますね。これは日本と韓国が同じような産業構造をしているということ。つまり伝統的に加工貿易国。発電エネルギーの割合も日本と韓国は非常によく似ていました。(ただし日本は現在原子力発電の割合は低下。)その上で,韓国を特徴づけるのは「鉄鋼」です。実は日本の鉄鋼の輸入先1位はこれまで韓国なのです。(近年は中国)韓国の鉄鋼生産量は世界有数なんです。これはあくまでもマイナーな知識で,おぼえていないといけない。おぼえていないといけないようなマイナーな知識は発展レベルです。やはり消去法で答えるのが応用レベルだとベストかと・・・。
・東南アジア
タイとの貿易 |
|
インドネシアとの貿易 |
|
マレーシアとの貿易 |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
機械類 |
36.5 |
機械類 |
37.3 |
機械類 |
32.0 |
石炭 |
28.6 |
機械類 |
41.8 |
液化天然ガス |
37.4 |
鉄鋼 |
15.7 |
肉類 |
7.9 |
鉄鋼 |
15.8 |
機械類 |
9.2 |
自動車 |
9.4 |
機械類 |
25.7 |
自動車部品 |
7.6 |
プラスチック |
4.0 |
自動車部品 |
12.5 |
液化天然ガス |
8.9 |
石油製品 |
4.8 |
石油製品 |
3.7 |
銅・同合金 |
4.3 |
科学光学機器 |
3.7 |
自動車 |
6.1 |
銅鉱 |
7.7 |
鉄鋼 |
4.7 |
パーム油 |
2.7 |
プラスチック |
3.2 |
魚介類 |
3.5 |
無機化合物 |
3.4 |
天然ゴム |
3.3 |
自動車部品 |
4.3 |
合板 |
2.2 |
計(億円) |
4268021 |
計(億円) |
3503441 |
計(億円) |
1979147 |
計(億円) |
3772007 |
計(億円) |
2166289 |
計(億円) |
3431202 |
タイ・インドネシア・マレーシア。まずこの3つが同時に区別する問題はめったに出題されませんので安心して下さい。これまでの農業・鉱工業の知識がしっかりしておれば大丈夫です。
タイでは肉類・魚介類をチェック。そして鉱産資源がないのが特徴です。それに対しインドネシア・マレーシアは資源国でした。ともに重要なのが天然ガスです。天然ガスは日本に運ぶとき船舶で運びますから液化して体積を小さくします。それゆえ「液化天然ガス」となっているのです。そしてマレーシアは木材の輸入先として重要でした。現在,日本に輸入される熱帯林の多くはマレーシアからのものです。上の貿易表では「合板」という木材を加工した形で登場します。
フィリピンとの貿易 |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
機械類 |
38.3 |
機械類 |
47.1 |
石油製品 |
9.0 |
木製建具 |
9.0 |
自動車 |
7.0 |
バナナ |
6.4 |
鉄鋼 |
5.5 |
プラスチック製品 |
2.0 |
計(百万円) |
1597465 |
計(百万円) |
1428015 |
もう1つ。フィリピンです。特徴は「果実」。具体的に思い出すものがあるでしょ。そう「バナナ」です。「フィリピンバナナ」をおぼえておけばよい。
・インドとの貿易
輸出 |
% |
輸入 |
% |
機械類 |
31.4 |
機械類 |
17.2 |
無機化合物 |
10.2 |
有機化合物 |
16.3 |
鉄鋼 |
9.1 |
魚介類 |
7.3 |
プラスチック |
7.3 |
石油製品 |
5.7 |
銅・同合金 |
6.6 |
ダイヤモンド |
3.9 |
計(百万円) |
1831444 |
計(百万円) |
852470 |
これは鉱工業でもお話しましたが,出題されれば点差がつくところです。思い出して下さい。インドの「ダイヤモンド」。
・ヨーロッパ諸国(ヨーロッパ型の特徴は「医薬品」)
フランスとの貿易 |
|
イギリスとの貿易 |
|
イタリアとの貿易 |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
機械類 |
39.8 |
機械 |
14.8 |
機械類 |
31.7 |
機械類 |
32.8 |
機械類 |
32.7 |
医薬品 |
13.9 |
自動車 |
12.9 |
医薬品 |
11.0 |
自動車 |
21.1 |
医薬品 |
15.8 |
自動車 |
18.8 |
機械類 |
11.2 |
二輪自動車 |
6.8 |
ぶどう酒 |
10.6 |
金(非貨幣) |
6.5 |
自動車 |
11.2 |
二輪自動車 |
6.3 |
たばこ |
10.5 |
医薬品 |
2.3 |
航空機類 |
8.2 |
自動車部品 |
3.2 |
ウィスキー |
4.7 |
鉄鋼 |
6.0 |
バッグ類 |
10.0 |
自動車部品 |
2.2 |
バッグ類 |
7.7 |
石油製品 |
2.6 |
科学光学機器 |
4.0 |
有機化合物 |
4.5 |
衣類 |
7.2 |
計(百万円) |
839941 |
計(百万円) |
1339801 |
計(百万円) |
1449819 |
計(百万円) |
903674 |
計(百万円) |
549215 |
計(百万円) |
1564859 |
ヨーロッパ型(特に西ヨーロッパ)の貿易の特徴は,輸出品(この場合は日本の輸入品)の上位に「医薬品」があることをおさえておきましょう。そしてフランスはアメリカに次ぐ航空機産業のさかんな国ですから「航空機」が特徴的。そして決定打は「ぶどう酒」。わかりやすくいうと「ワイン」を思い浮かべればよい。同じくお酒でいうとイギリスの名産は「ウィスキー」。「ウィスキー」はイギリスが本場です。
イタリアはファッションの国,日本が買う(輸入)するのも高級ブランドのファッション(服やカバン・靴)。よって「衣類」・「バッグ」・「はきもの」ということになる。衣類・はきものだけみればアジアの国(中国など)を考えそうですが,「医薬品」が上位にあるのでヨーロッパではないかと予測し,その上で「衣類」などに注目して総合的に判断しましょう。
・スイスとの貿易
輸出 |
% |
輸入 |
% |
医薬品 |
26.6 |
医薬品 |
37.8 |
金(非貨幣用) |
19.6 |
時計・同部品 |
27.3 |
自動車 |
7.5 |
機械類 |
10.7 |
機械類 |
7.3 |
科学光学機器 |
7.2 |
白金族の金属 |
4.4 |
有機化合物 |
3.2 |
計(百万円) |
544741 |
計(百万円) |
1060597 |
スイスもやはりヨーロッパ型の特徴を示しており,「医薬品」が上位を占める。そしてその特徴は「時計」です。時計は精密機械。日本の長野県と同様,スイスは世界的な時計の国として知られる。長野は「東洋のスイス」とも呼ばれていた。
・ロシアとの貿易
輸出 |
% |
輸入 |
% |
自動車 |
53.8 |
液化天然ガス |
34.4 |
機械類 |
22.1 |
石炭 |
24.1 |
自動車部品 |
4.7 |
原油 |
88 |
石油製品 |
1.8 |
魚介類 |
7.9 |
タイヤ・チューブ |
1.7 |
アルミニウム |
7.6 |
計(百万円) |
603961 |
計(百万円) |
1971805 |
原油・天然ガス・石炭の3つのエネルギー資源を日本が輸入していること。加えて「魚介類」。ロシアでは日本人の大好きな魚がたくさんとれます。サケやカニですね。
注意しておいてほしいのは,これは2022年の統計。ウクライナ侵攻が長期化した2023年以降の統計は少し変わったものになっているかも知れません。来年度以降。
・南アフリカ共和国との貿易
輸出 |
% |
輸入 |
% |
自動車 |
40.8 |
ロジウム |
31.7 |
機械類 |
24.9 |
パラジウム |
18.9 |
自動車部品 |
9.6 |
白金 |
12.1 |
鉄鋼 |
5.9 |
自動車 |
5.3 |
タイヤ・チューブ |
3.0 |
鉄鉱石 |
4.7 |
計(百万円) |
308997 |
計(百万円) |
1315184 |
アフリカの国が日本との貿易で出題されるとしたら,たいていは南アフリカ共和国です。アフリカといえばレアメタル。「白金」・「パラジウム」・「ロジウム」といった品目がそれで,アフリカの国であることを示しています。
☆BRICS
近年,経済成長が著しく国際社会において大きな発言力と影響力をもつようになった5ヶ国をその頭文字をとって「BRICS」(ブリックス)といいます。ブラジル(Brazil),ロシア(Russia),インド(India),中国(China),南アフリカ共和国(South Africa)。これらの国との貿易は今後よく出題される傾向にありますのでしっかりとみわけられるようにしたい。
※本来は最後の「S」は小文字で表記し,単に複数形を表していましたが,いつのまにか南アフリカ共和国を加えて大文字表記するようになりました。BRICsという言葉の提唱者ジム=オニール自身も「S」を南アフリカ共和国としていません。
☆グローバルサウス
アジア・アフリカ・中南米などの新興国や発展途上国の総称。近年,国際政治・経済・社会において発言力を増してきた勢力です。グローバルサウスの多くが南(south)半球に位置していることが由来です。とはいえこのグループのとらえ方に明確な定義はなく,数ヶ国とするものから100ヶ国以上とするものまで多岐にわたります。これまで貿易(基礎編含む)みたアジア・アフリカ・中南米諸国はおおむねこれにあたると考えてよいでしょう。
(2)輸入品目別
・鉱産資源
液化天然ガス |
% |
|
銅鉱 |
% |
オーストラリア |
43.0 |
チリ |
28.5 |
マレーシア |
15.2 |
オーストラリア |
18.0 |
ロシア |
8.0 |
インドネシア |
16.7 |
アメリカ |
6.8 |
|
|
パプアニューパニア |
5.8 |
|
|
計(億円) |
84614 |
計(億円) |
17293 |
天然ガスの輸入先としてはマレーシアが重要。また表中には現れていませんが,インドネシアもあわせておさえておきたい。こんなところでまちがってもオーストラリアを重要視しないこと。銅鉱は鉱工業でみたようにチリ。チリといえば銅とサケでした。
・農水産物
肉類 |
% |
|
魚介類 |
% |
アメリカ |
26.8 |
中国 |
17.6 |
タイ |
14.5 |
チリ |
9.7 |
オーストラリア |
12.4 |
アメリカ |
8.6 |
カナダ |
9.5 |
ロシア |
8.0 |
ブラジル |
8.2 |
ベトナム |
7.8 |
中国 |
6.9 |
ノルウェー |
6.7 |
計(億円) |
19254 |
計(億円) |
19453 |
肉類はタイを除けば国土が広い大規模な放牧国が並んでいることから予測。魚介類の輸入先中国は漁獲高でも世界1位。そしてチリのサケを思い出しましょう。ロシアとの貿易における魚介類も重要でした。またタイとの貿易でみたように,近年タイからの魚介類・肉類・野菜など食品の輸入が増加していることもおさえておきたい。ノルウェーは漁業大国。サバ・さけなどが多い。ベトナムからはエビ。
とうもろこし |
% |
|
大豆 |
% |
|
果実 |
% |
アメリカ |
64.4 |
アメリカ |
71.4 |
アメリカ |
18.5 |
ブラジル |
22.8 |
ブラジル |
16.8 |
フィリピン |
18.1 |
アルゼンチン |
6.9 |
カナダ |
10.8 |
中国 |
15.0 |
計(億円) |
7644 |
計(億円) |
3391 |
計(億円) |
6369 |
とうもろこし・大豆・果実いずれもアメリカが輸入先第1位。小麦とあわせて農産物の輸入先が基本的にアメリカからの輸入が多いことをおさえておきましょう。とうもろこしと大豆を区別したいときは,生産量の見分け方と同じく,量(ここでは金額)を比べて大きい方がとうもろこしです。果実は国別でみたようにフィリピンのバナナを思い出せばよい。
(3)貿易港
神戸港 |
|
千葉港 |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
輸出 |
% |
輸入 |
% |
建設・鉱山用機械 |
7.0 |
無機化合物 |
7.4 |
石油製品 |
48.5 |
原油 |
50.1 |
プラスチック |
6.5 |
衣類 |
7.1 |
鉄鋼 |
14.5 |
液化天然ガス |
13.5 |
無機化合物 |
5.3 |
たばこ |
4.7 |
有機化合物 |
12.1 |
石油製品 |
10.6 |
織物類 |
4.3 |
石炭 |
4.6 |
プラスチック |
5.2 |
自動車 |
4.6 |
化粧品類 |
3.5 |
有機化合物 |
4.4 |
鉱物性タール |
5.1 |
鉄鋼 |
3.4 |
計(百万円) |
7187977 |
計(百万円) |
4875305 |
計(百万円) |
1156535 |
計(百万円) |
5810398 |
神戸港・千葉港はいずれも輸入品目でみわける貿易港。神戸港は衣類,千葉港は石油です。特に千葉港は重要。京葉工業地域を思い出して下さい。化学工業がその特徴でしたね。そこから考える。
神戸港に衣類が多いのは,阪神工業地帯がもともと繊維工業で発達した工業地帯だからです。衣類・繊維をあつかう企業が多かった。しかし一方で,海外からの安い繊維品の輸入は阪神工業地帯の地位を下げる要因にもなりました。
3.EUに関する問題
①EU
EUに関する知識をもう少し増やしておきましょう。点差をつけることができるところです。まずEUの前身は,「EC(ヨーロッパ共同体)」です。この時点ではまだ冷戦の状況下でしたので,西ヨーロッパの国々で構成されていました。ユーロはまだ使用されていません。
本部はベルギーの首都ブリュッセルです。このブリュッセルにはNATO(北大西洋条約機構)の本部もあります。
|
ブリュッセル EU本部 |
②加盟国・非加盟国
非加盟国の代表国としてスイスはすでに挙げましたが,ノルウェーも加盟していません。スイスはもともと他国に対して関税をかけていない国です。またスイスフランという通貨は世界でもっとも安定した通貨だといわれています。そもそもEUに加盟するメリットがこの国にはないのです。ノルウェーは住民投票でEU加盟を拒否した国です。
またロシアは加盟していませんのでひっかからないようにして下さい。ロシアは旧ソ連を構成していた国々との結びつきが強く,経済的にはEUに対抗してCIS(独立国家共同体)という組織をつくっています。
同じ旧ソ連国でもバルト三国(リトアニア・ラトビア・エストニア)はいち早くソ連から脱退した国で,西側との結びつきが強く現在EUに加盟しています。
もっとも新しいEU加盟国はクロアチアという国。現在加盟交渉中の国としてトルコをおさえておきましょう。初のイスラム教加盟国をめざしています。
加盟国中,最小の国はどこでしょうか?マルタという国です。どこにあるかわかりますか?地中海に浮かぶ小さな島国。シチリア島のすぐ下。かつてイギリス領であったこともあります。このマルタという国。かつてマルタ騎士団というキリスト教の宗教騎士団であり医療騎士団の国として有名でしたが,現代史では冷戦終結宣言が出された「マルタ会談(1989)」があった場所として大切です。
もう一つ,2020年2月をもってイギリスが正式にEUを離脱しました。加盟国の離脱ははじめてのことです。
③ユーロ
ユーロを使用していない国の代表例がイギリスでしたが,離脱にともなってこの種の問題が問われることはなくなるでしょう。ただし,イギリスの通貨がポンドであることは知っておいた方がよいでしょう。
ユーロを使用していない国の代表例としておさえておきたいのは,スウェーデンとデンマークです。この2国はしりとりでおぼえるのがよいでしょう。「スウェーデン・デンマーク」。「スウェーデンマーク」。
また比較的加盟が遅く,もともと社会主義圏であった東ヨーロッパの国々は経済状態が西ヨーロッパに比べて遅れていますので一部の例外を除いてユーロは使用していません。(この一部の例外国が問われることはないでしょう。)
それではEUに関する統計問題をいくつかやっておきましょう。
【例題10】次のグラフは日本・アメリカ・EUのGDP(国内総生産)・人口・面積を比較したものである。EUにあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[グラフ:応用編8-13 日本国勢図会2024/25より 2022年]
アは人口(1.2億人)・面積(38万k㎡)から日本。同じく人口・面積からイがアメリカ。EUの人口が約4.5億人(イギリスを入れて約5億人)というのは知っておいて損はしない数字。
答え:ウ
【例題11】次の表は,日本がドイツ・フランス・イタリア・イギリスから輸入している上位5品目を示している。フランスにあてはまるものを選び,記号で答えなさい。[表:応用編8-14 日本国勢図会2024/25より 2022年]
ア |
|
イ |
|
ウ |
|
エ |
輸入品 |
輸入品 |
輸入品 |
輸入品 |
機械類 |
機械類 |
医薬品 |
機械類 |
医薬品 |
医薬品 |
機械類 |
医薬品 |
自動車 |
ぶどう酒 |
たばこ |
自動車 |
ウィスキー |
航空機類 |
バッグ類 |
有機化合物 |
科学光学機器 |
バッグ類 |
衣類 |
科学光学機器 |
アはウィスキーからイギリス。イはぶどう酒・航空機類からフランス。ウは衣類・バッグ・はきものからイタリア。エは自動車からドイツ。
答え:イ
【例題11】次の中からすべての国がEUに加盟しているものを選び,記号で答えなさい。
ア.フランス・ドイツ・スイス・イタリア・スペイン
イ.イギリス・ドイツ・アイスランド・ノルウェー・ポーランド
ウ.ドイツ・フランス・イタリア・スウェーデン・デンマーク
エ.スイス・イギリス・スペイン・ポーランド・ノルウェー
オ.ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア・アイルランド
スイス・ノルウェー・ロシアそしてイギリスが入っているものを削除すると答えが出ます。(ちなみにイのアイスランドも加盟していません。アイルランドは加盟しています。)
答え:ウ
基礎編へ
発展編へ
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