地理 第9回 環境 基礎編
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地球環境問題
1.地球環境問題
地球環境問題は人間の生活の営みが原因でおこる問題です。自然災害とは違います。この単元は社会科だけでなく,他の教科においても流行の問題です。おさえておくポイントは「どの環境問題が」,「どのようなことが原因で」,「主にどこで起こっているか」の3点です。
①地球温暖化
大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスが増加し,地球の平均気温が上昇することです。二酸化炭素が代表例ですが,温暖化をもたらす気体はひっくるめて「温室効果ガス」といういい方をします。これもおぼえておきましょう。
大気中の温室効果ガスが増える原因は,主に化石燃料を燃焼させることで発生します。化石燃料とは石油・石炭・天然ガスなどでしたね。これらは生物の化石。生物を構成する元素は炭素と水素と酸素。そして燃焼させるとは酸化させる(酸素を結びつける)ことですから,炭素と酸素が結びつき,二酸化炭素が発生するというわけです。
また森林の減少も二酸化炭素を増やす原因となります。植物は二酸化炭素を吸収して光合成をおこないますから,森林が減少すると吸収される二酸化炭素の量も減る。
温暖化は地球規模の環境問題ですので,「どこで」ということを考える必要はありません。主な現象として「海水面の上昇」というのをおさえておきましょう。
海水面が上昇すると低地に住む人々に大きな被害をもたらします。例えば太平洋にあるサンゴ礁の島国などは水没の危機にあります。
※温暖化と海面上昇
温暖化による海面上昇の原因は南極やグーリンランドの氷床が融けるということもありますが,海水の熱膨張が大きな原因です。物体は温度が上がると体積が大きくなります。ものによってその膨張率は異なりますが,もちろん海水も陸も温暖化によって体積が大きくなる。しかしその膨張率は水の方が高いので海水面が上昇するのです。
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サンゴ礁の島(沖縄県八重山諸島)
標高が低いため,海水面が上昇すると高潮の被害をうけ受けやすく,水没する危険性がある。 |
さらに生態系の変化もおこります。これまで暖かい地域にいた動植物が温暖化とともに高緯度地域にまで進出してくる。絶妙なバランスを保っていた生態系が崩れてくるのです。一度崩れた生態系を元に戻すのは容易ではありません。「想定外」の被害をもたらす異常気象も温暖化が原因ではないかといわれています。このごろの夏,異常に暑いね。それにゲリラ豪雨。
ただしこれらは地球温暖化との因果関係がはっきりしていません。ですから温暖化の影響を問われた場合,はっきりとわかっている「海水面の上昇」を答えられるようにしておけばよいし,もっともよく出される例だと思っておいて下さい。
【例題1】次の地図で色で示された地域にはサンゴ礁の島が多く分布している。これらの島々では将来どんなことが心配されているか。あとのグラフから読み取れる地球環境問題に関連づけて,簡単に説明しなさい。
[グラフ:基礎編9-1 データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
地図で示された地域は太平洋の島国がある地域。サンゴ礁で形成された標高の低い国々が多い。下のグラフから読み取れるのは,世界の平均気温の上昇であり,ここから「地球温暖化」がもたらす影響を考えればよい。つまり「海水面の上昇」がキーワードとなる。
ただし問題は「将来」のことであり,問われ方は「どんなことが心配されているか。」です。海水面の上昇は短期的(現在)には「高潮」の被害をもたらしますが,長期的にみると(将来)「水没の危機」だと考えられます。そして答えは「~が心配されている。」と結ぶのが正しい答え方。
答え:地球温暖化により,海水面が上昇し,水没することが心配されている。
②酸性雨
これも化石燃料を燃やすことが原因です。化石燃料には炭素・酸素・水素のほかに硫黄や窒素が含まれている。これらと酸素が結びついて硫黄酸化物や窒素酸化物が生成される。これらが大気中に排出されると酸性を帯びた雨が降る。酸性の水溶液にはものを溶かす性質がある。
そうすると酸性雨が降りやすいのは,工業が発展した地域ということになります。それはどこかと考えると,北アメリカ・ヨーロッパ・日本です。また近年,工業化が著しい中国も加えておきましょう。中国の大気汚染はひどいもんです。主に北半球の先進国で問題になっていると考えましょう。
酸性雨がもたらす被害は,まず湖や川の生物が死んでいくということです。さらに森林が枯れていき(森林破壊)ます。枯れていくのは樹木だけではありません。もっとひどくなると石や金属まで溶け出します。つまり人間のつくりだした建物まで溶けるのです。ヨーロッパの歴史的建造物や彫刻には大理石とよばれる石灰岩を使用したものが多く,石灰岩は硬いんですが,酸と反応するととけてしまう。大理石に掘られたレリーフの顔がのっぺらぼーになってしまったり,ブロンズ像(銅像)は青く変色したりする。
【例題2】次の写真のようにヨーロッパでは各地で,形がくずれたり変色する大理石や青銅でつくられた建造物や彫像がみられる。また同様の原因で,森林の木々が変色したり枯れることもある。これらに共通する原因は何か。答えなさい。
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パルテノン神殿(ギリシャ アテネ) |
チェコ プラハ旧市街 |
酸性雨の主な被害は,森林が枯れる・水生生物が死ぬのほかに,建物が傷むなどがあることに注意したい。たいていは写真を使用した問題となっている。
答え:酸性雨
③オゾン層の破壊
地上上空20㎞ぐらいのところに,オゾン層という気体(構成元素は酸素)のたまり場があります。このオゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収してくれているのです。紫外線を浴びるとどうなるかというと軽度には日焼けで済みますが,ひどくなると肌にシミが残ります。これがもっと進むと皮膚ガンになることもある。だから日焼けには注意しなければなりません。日焼け止めクリームなんかに「UVカット」と書いてあるでしょ。「UV」とは「ウルトラ・バイオレット」のこと。つまり「紫外線」のことです。
原因となるのはフロンという物質。どこに使われているかというとエアコンや冷蔵庫です。つまり冷やすための物質です。あとは各種スプレー。このフロンが長い年月をかけて上昇し,オゾン層に達したところで層を破壊します。現在はフロンに代わる物質が開発され,フロンは全面的に禁止されています。
オゾン層が破壊され,ぽっかりと穴が開いた場所をオゾンホールといいます。オゾンホールが確認されている場所は北極や南極といった両極地方の上空ですが,規模としては南極の方が大きい。したがってこの環境問題に一番敏感な国は南極に近い,オーストラリアやニュージーランドです。
【例題3】オーストラリアでは,子どもたちの健康指導で「スリップ・スロップ・スラップ・ラップ」というスローガンを合言葉に徹底した対策がとられています。その理由を「紫外線」・「フロンガス」の語句を使用して説明しなさい。
答え:フロンガスの影響によってオゾン層が破壊され,有害な紫外線が健康被害をもたらすため。
④砂漠化
砂漠化は砂漠が広がることです。砂漠はすでに砂漠ですので砂漠化しません。あたりまえのことです。では砂漠化が進んでいるのは砂漠の周辺ということになります。砂漠といえばサハラ砂漠をしっかりとおぼえておけばよいし,たいてい例に出されるのはサハラ砂漠の南部です。
サハラ砂漠の南部は世界でもっとも人口増加が激しい地域の1つです。この人口増加が砂漠化の原因となっています。人口を養うためには食料が必要です。食料をつくるためには畑や家畜が必要です。つまり耕作のしすぎ(過耕作)が土の栄養をうばい,家畜の飼いすぎ(過放牧)が根こそぎ植物を枯らしてしまうのです。またこの地域では草木を燃料(過採取)として使うこともあります。
⑤熱帯林の破壊
熱帯林は「熱帯」だけに赤道周辺の熱帯地域ということになります。具体的にはアフリカ・東南アジア・南アメリカということです。熱帯林の破壊は即,生態系の破壊につながります。土砂崩れや洪水が起こりやすくなるのも熱帯林の破壊が原因です。また二酸化炭素を吸収して酸素をつくりだす場を失うことにもなり,温暖化の原因にもなります。
この原因の第1は鉱山や耕地の開発,それとともにそこに人が入り込む(入植)ことです。また輸出向けの木材が増加したことも原因です。特にブラジル,アマゾン川流域の開発が近年著しく,森林の減少に歯止めがかかりません。
【例題4】次の地図は地球環境問題がおこっている地域を示している。地図をみて,あとの問いに答えなさい。
1.次の環境問題がおっている地域を,地図中の②~⑤から選び,記号で答えなさい。
ア.熱帯林の破壊 イ.砂漠化 ウ.オゾン層の破壊 エ.酸性雨
2.地図中の①~⑤の環境問題がおこる原因を次のア~オから選び,記号で答えなさい。
ア.自動車の排気ガスなどから出される窒素酸化物。
イ.家畜の過放牧やいきすぎた森林の伐採。
ウ.焼畑農業やいきすぎた森林の伐採。
エ.スプレーや冷蔵庫,エアコンに使用されたフロンガス。
オ.化石燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素。
3.地図中の①~⑤の環境問題が進むと,どのようなことが起こりますか。次のア~オから選び,記号で答えなさい。
ア.紫外線の量が増え,皮膚ガンにかかる人が出る。
イ.森林が枯れたり,大理石の建造物や銅像がとけたりする。
ウ.極地の氷がとけて海面が上昇し,水没する国も出る。
エ.大雨が降ると洪水が起こりやすくなる。
オ.住む場所や耕地面積が減る。
答え:1.ア ⑤ イ ④ ウ ③ エ ② 2.① オ ② ア ③ エ ④ イ ⑤ ウ 3.① ウ ② イ ③ ア ④ オ ⑤ エ
2.環境保全
①地球温暖化防止
国際的な温暖化対策として気候変動枠組条約締約国会議というのがあります。長すぎておぼえる気になりませんね。おぼえなくて結構です。簡単にいうと地球温暖化防止の会議です。毎年開かれていますが,有名なのが1997年に開かれた第3回の会議。場所が日本の京都であったことから地球温暖化防止京都会議として知られます。この中では京都議定書というのが発表され,はじめて国際的な温暖化防止のための温室効果ガス削減目標が決められました。
ポイントはまず先進国に義務づけられたということ。逆にいえば中国・インドなどの発展途上国には課せられなかった。次に当時最大の二酸化炭素排出国であったアメリカが入らなかったということ。これで中国・アメリカという二大二酸化炭素排出国が削減努力をしないことになりました。
これがどういうことかというと「あまり意味がない」といってはいいすぎかもしれませんが,つまりはそういうことです。しかし世界が温暖化防止に向けてなんらかの第一歩を踏み出した会議としては重要な出来事です。今後,アメリカや中国,そして発展途上国をも含めた削減目標の設定が必要となってきます。
[グラフ:基礎編9-2 日本国勢図会2024/25より 2021年]
【例題5】次の表は,日本・アメリカ・中国・インドの1人あたりの二酸化炭素排出量・世界全体に占める二酸化炭素排出量の割合・1人あたりの国民総所得を示している。日本にあたるものを選び,記号で答えなさい。[表:基礎編9-3 データブック オブ・ザ・ワールド2024より]
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統計年 |
ア |
イ |
ウ |
エ |
1人あたりの二酸化炭素排出量(t) |
2020 |
7.12 |
7.88 |
1.49 |
12.89 |
世界全体に占める二酸化炭素排出量の割合(%) |
1990 |
10.9 |
5.1 |
2.8 |
23.2 |
2020 |
31.7 |
3.1 |
6.5 |
13.4 |
1人あたりの国民総所得(ドル) |
2021 |
11930 |
43450 |
2150 |
70900 |
国民総所得とは,簡単にいうと国民やその国の企業が1年間でどれだけ収入があったかという数字です。その国の経済をはかる数値になります。額が高ければ経済発展した先進国。低ければ発展途上国だと判断することができるでしょう。発展途上国でも人口の多い国はそれだけ総所得が増えるので,1人あたりで換算した方が,より比較しやすくなります。そして経済発展は,その国の工業力に,工業力は二酸化炭素の排出量につながっていきます。
まず問題の4ヶ国を先進国と発展途上国にわけると,先進国は日本とアメリカ,発展途上国は中国とインドです。このことから「1人あたりの国民総所得」を比較して,イ・エが日本もしくはアメリカ,ア・ウが中国もしくはインドであることがわかります。
エは「1人あたりの国民総所得」が4ヶ国中最大で,「世界に占める二酸化炭素排出量の割合」が,かつて(1990年)最大で,現在はアに次いで大きい。したがってアメリカです。つまりイは日本。
アは1990年から2020年にかけて「世界に占める二酸化炭素排出量の割合」が,エを追い越している。現在アメリカより割合が高い国は中国です。この背景には近年の中国の経済(工業)発展があります。人口が多いため,「1人あたりの国民総所得」はまだ低いものの,インド(残りのウ)に比べれば約5倍になっています。
このように中国を先頭に,インドやその他の発展途上国にとって二酸化炭素排出量を規制することは,その国の経済発展にとって重荷になってしまうのです。
答え:イ
【例題6】1997年,地球温暖化防止京都会議で決められた主な内容を,「先進工業国」という語句を使用して,簡単に説明しなさい。
答え:先進工業国の二酸化炭素排出量を削減すること。
②世界遺産条約
人類の共通の財産として重要な自然・歴史遺産を保護しようという目的で,国連のUNESCO(ユネスコ,国連教育科学文化機関)が登録します。登録されたらその管理は住民が自らの努力で管理しなければなりません。日本の世界遺産登録地はすべて場所とともにおぼえておきましょう。
世界遺産には自然遺産と文化遺産があります。日本では知床半島・白神山地・屋久島・小笠原諸島が自然遺産に登録されており,2021年に「奄美大島(あまみおおしま),徳之島,沖縄本島北部及び西表島(いりおもてじま)」が日本で5番目の自然遺産として登録されました。紀伊山地・富士山は自然遺産ではなく,文化遺産としての登録です。また白神山地は「ブナ」,屋久島は「スギ」という樹木名も大事です。
歴史遺産は当然歴史との関係で出題されることが多いので歴史的事項を頭に入れておかなくてはなりません。 ・北海道・北東北の縄文遺跡群
2021年に登録された歴史遺産です。この地域に点在する縄文時代の複数の遺跡で構成されています。三内丸山遺跡(青森)もこの中に入っています。
・平泉(岩手県)
平泉は平安時代後期,奥州藤原氏が拠点とした地。
・日光(栃木県)
日光にある日光東照宮は江戸幕府を開いた徳川家康を祭っています。
・富岡製糸場(群馬県)
明治初期に設立された官営工場の代表格。日光の栃木とともに群馬の位置をまちがえないこと。
・佐渡島の金山(新潟県)
16世紀半ばから開発がはじまり,江戸時代には幕府直轄の金山となり,幕府の財政を支えました。
・富士山(山梨県・静岡県)
日本の最高峰富士は,山梨県と静岡県の県境にあります。(県境は未確定)登録されたのは信仰の対象であることと芸術の題材としての文化的価値からです。『日本百名山』という本を書いた深田久弥は,その中でこのように語っています。「この日本一の山について今さら何をいう必要があろう。かつて私は『富士山』という本を編むために文献をあさって,それが後から後から幾らでも出てくるのにサジを投げた。おそらくこれほど多く語られ,歌われ,描かれた山は,世界にもないだろう。」
・白川郷(岐阜県)
合掌造りとは茅葺(かやぶき)の屋根が急角度になっている住居。冬の積雪対策です。
・古都奈良,古都京都
もちろん古代の都,平城京と平安京があったところ。神社・仏閣・町並みなどを総合して登録されています。京都府ではありませんが,平安時代初期の最澄が開いた比叡山延暦寺も古都京都の文化財として登録されています。 ・紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県・奈良県・三重県)
紀伊山地ではなく,そこにある神社やお寺,その他古くから民衆の信仰となっていた山や道などが登録対象です。たくさんありますが特に平安時代初期,空海が開いた高野山金剛峰寺はおぼえておきましょう。
・法隆寺(奈良県)
よく出ますね。はい飛鳥時代の聖徳太子ですよ。
・百舌鳥・古市古墳群(大阪府)
2019年に登録された「古代日本の墳墓群」です。巨大な前方後円墳をはじめ大和朝廷全盛期の古墳が密集している地域です。「百舌鳥」なんて難読ですね。「もず」と読みます。堺市にある最大の大山(仙)古墳もここにあります。
・姫路城(兵庫県)
安土桃山時代の天守閣を代表する城。最近修復作業が終了し,真白なもとの姿に復元されました。別名は「白鷺(しらさぎ)城」。
・石見銀山(島根県)
戦国時代から江戸時代にかけて銀の採掘がおこなわれていました。当時世界的な産出地でした。読み方は「いわみ」です。
・厳島神社(広島県)
平安時代後期,日宋貿易をはじめた平清盛が海上交通の安全祈願をおこない,平家と関係の深い神社です。
・原爆ドーム(広島平和記念碑)
原子爆弾が投下された当時の様子を今に伝える記念碑。 ・「神宿る島」宗像(むなかた)・沖ノ島(福岡県)
福岡県宗像市に属する沖ノ島などの離島。ここには日本でもっとも古い神社の一つがあり,日本固有の自然崇拝が現在でも継承されています。沖ノ島の位置だけで十分でしょう。 ・長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
長崎,天草地方といえば,島原・天草一揆(1637)がおこった場所ですね。天草は熊本県。位置が重要な世界遺産です。今後は「潜伏キリシタン」という語句も問われるようになるかもしれません。江戸幕府のキリスト教禁教のもと,信仰を密かに守り続けたこの地の人々をよびます。これまでは「隠れキリシタン」という表現もありました。(厳密には二つは違う)いずれにせよ「キリシタン」という歴史用語をおさえておきましょう。
・琉球王国(沖縄県)のグスク
グスクとは沖縄で「城」を意味します。沖縄各地にある城跡が世界遺産の対象です。中でも那覇市にある首里城は琉球王国の都として知られます。
・ル=コルビュジエの建築作品(東京都)
日本では東京国立西洋美術館が登録されていますが,歴史・地理的な価値より設計した人物に重点が置かれているので入試的には大きく取り上げにくいと考えてよいでしょう。彼の建築はヨーロッパを中心に世界中にあります。
国立西洋美術館(東京都)
・明治の産業革命遺産(九州を中心に8県)
江戸時代末期から明治時代にかけて,欧米の技術を導入して日本の発展に貢献した製鉄所・造船所・炭鉱などに関する世界遺産。たくさんあるのでここでは福岡県の八幡製鉄所だけ頭にいれておきましょう。
③ラムサール条約
水鳥の生息地として重要な湿地・湖沼を保護する条約です。まちがえてはいけないのが,水鳥を保護する条約ではなく,生息地の保護であるという点。日本には数多くの登録地がありますが,琵琶湖と釧路湿原だけはおぼえておきましょう。
【例題7】次の文は日本の世界遺産登録地を説明したものであり,地図はその位置を示している。A~J文にあてはまる世界遺産がある場所を地図中から選び,番号で答えなさい。またそれぞれの文の( )にあてはまる語句も答えなさい。
A この地方の最高峰である宮之浦岳には,樹齢数千年といわれる( )の原生林が広がっている。
B 2つの県にまたがる( )山地には,ブナの原生林が広がっている。
C ( )が建立した平等院鳳凰堂や金閣・銀閣などの寺社がまとめて登録されている。
D ( )を祭った東照宮など,付近の寺社が登録されている。
E 手のひらを合わせたような三角形の屋根をもつ( )とよばれる家屋が立ち並ぶ。
F 平安時代,( )がこの付近の海上交通の安全を願って整備した神社がある。
G この城の中心となる高い部分は( )とよばれ,桃山文化を代表する城郭建築である。
H 飛鳥時代,( )によって建立された寺院が登録されている。
I 明治時代の( )工場として設立され,日本の近代化を支えた。
J 平安時代末期の( )氏がここ拠点とし,栄華を極めたことが松尾芭蕉の『奥の細道』にも書かれている。
答え:〔場所 語句の順〕A.⑯,杉(すぎ・スギ) B.②,白神 C.⑧,藤原頼通 D.④,徳川家康 E.⑦,合掌造(り) F.⑭,平清盛 G.⑫,天守閣 H.⑪,聖徳太子 I.⑤,官営 J.③,奥州藤原
3.日本の公害と公害対策
①四大公害病
さあ四大公害病は完璧に答えられるようにしておきましょう。点数をとるところであり,やっている人とやっていない人の差が出るところです。
四大公害病が発生したのはいずれも1960年代のことです。「1960年代」といえばすぐに「高度経済成長(期)」というのを思い出しましょう。これも問題を解くために反射的に連想できるようにすること。
では四大公害病の何をおぼえておけばよいのか?「名前」・「場所」・「原因」の3点です。「場所」は最低限,都道府県だけでも十分です。「原因」となる物質は選択肢から選ぶパターンがほとんどですので,あまり心配しなくて結構。まとめると以下のようになる。
公害病 |
場所 |
原因 |
水俣病 |
熊本県 |
有機水銀 |
四日市ぜんそく |
三重県 |
亜硫酸ガス |
イタイイタイ病 |
富山県神通川 |
カドミウム |
新潟水俣病 |
新潟県阿賀野川 |
有機水銀 |
4つのうち,四日市ぜんそくだけが大気汚染,あとの3つは水質汚濁(おだく)です。水俣病の原因は「有機水銀」とありますが,「水銀化合物」・「メチル水銀」となっていることもある。とにかく「水銀」という言葉をおぼえておいて下さい。「神通川」は「ジンツウ・ジンズウ・ジンヅウ」といった読み方がありますが,国土交通省では「ジンズウ」としていますのでここでは「じんずうがわ」と読むことにします。また「神通川」・「阿賀野川」の河川名は応用編まで学ぼうという人は必ずおぼえておいて下さい。
②公害対策
1960年代,工業・経済の発展とともに公害問題も発生した日本では,1967年に公害対策基本法を制定します。しかし近年では地球環境問題もあわせて総合的に取り組むため,環境基本法という法律を制定して対策にあたっています。また環境問題を取り扱う行政機関は環境省です。
近年は「環境基本法」の出題が非常に多くなっています。公害対策基本法はさしおいても環境基本法は必ずおぼえておきましょう。
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