地理 第9回 環境   応用編

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地球環境問題

1.地球環境問題
①地球温暖化
 地球温暖化の原因となる温室効果ガス。「温室効果」とは地球を温室にしてしまうことです。ガラス張りの部屋やビニルハウスは太陽の光は通しますが,室内の熱は逃げていかない。地球は太陽から受け取った熱を赤外線という形で放射します。放射する熱を逃がさないようにしているのが温室効果ガスです。だから大気中に温室効果ガスがなかったら,地球は冷えすぎますし,逆に濃度が濃すぎると暖かくなりすぎる。現在の地球は現在の地上の生物にとって絶妙の二酸化炭素濃度なのです。恐竜が生きていたころの地球は今よりずっと暖かかった。つまり二酸化炭素の濃度がずっと濃かった。二酸化炭素以外にはメタンやオゾン層の破壊につながるフロンも温室効果ガスです。メタンは人間も排出します。オナラやゲップです。
 二酸化炭素の排出源が化石燃料の燃焼であることはすでにお話しました。われわれの社会でそれがもっとも多くおこなわれている場所は工場,そして自動車です。日本を例に部門別に排出量の割合を示すと次のようになります。

[グラフ:基礎編9-1 データブック オブ・ザ・ワールド2024より 2021年]
 それはつまり,経済発展や自動車の保有量に比例して二酸化炭素の排出量が増加することを意味します。

【例題1】次の表はヨーロッパ州とアフリカ州の人口・面積・二酸化炭素排出量(産業工程から)・自動車の生産台数を比較したものである。X・Y・Zにあてはまる数字の組み合わせとして正しいものを選び,記号で答えなさい。

人口
(百万人)
面積
(万k㎡)
二酸化炭素排出量
(百万t)
自動車の生産台数
(千台)
ヨーロッパ X 2214
アフリカ 1394 2965 1144 1022
[表:基礎編9-2 データブック オブ・ザ・ワールド2024より2022年   日本自動車工業会 2022年]

4695 18512 50020
4695 845 16216
745 845 6467
745 4632 16216
434 18512 6467
434 4632 50020

 ヨーロッパの人口はアフリカより少ないからウ~カのいずれかである。二酸化炭素排出量・自動車生産台数はアフリカより多いのでは除外してエ・オ・カにしぼる。再び人口に戻って,ヨーロッパはEUだけで人口は約4.5億人。したがって7億4500万人人と読み取れるが正解。

答え:エ

【例題2】近年,人や貨物の輸送手段として鉄道が見直されている。次のグラフは旅客と貨物の輸送量あたりの二酸化炭素排出量を示したものである。地球環境問題の面から考えられる鉄道輸送の利点をグラフを参考にして,簡単に説明しなさい。

[グラフ:基礎編9-3 国土交通省資料より 2022年度]
 「二酸化炭素」から「地球温暖化」を結びつければよい。二酸化炭素排出量を減らす生活レベルの対策として,同様の問題が「太陽光発電」・「ハイブリッドカー」・「パークアンドライド」などで出題されます。答えはほぼ同じになる。
 「太陽光発電」は家庭でも導入可能な発電方式であり,「ハイブッリドカー」も同様です。「ハイブリッド」とは異なる種類のものを組み合わせるという意味で,ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターを組み合わせた自動車
 「パークアンドライド」とは都市郊外に自動車などを駐車し,都市内部では公共交通機関を利用すること。都市の交通渋滞を緩和するとともに,大気汚染や二酸化炭素の排出量削減を目的としたしくみです。

答え:他の輸送手段よりも二酸化炭素排出量が少ないので,地球温暖化対策となる。(地球温暖化への影響が少ない。)

パリ市内の張り紙

「お知らせ:大気汚染警報のため,すべての公共交通機関は2014年3月14日金曜日から16日日曜日まで無料とする。」

 いたずらではなく,本当に実施されていました。


②酸性雨と大気汚染
 酸性雨の原因となるのは化石燃料を燃やす際に発生する窒素酸化物や硫黄酸化物でした。窒素酸化物はNOx(ノックス),硫黄酸化物はSOx(ソックス)と表現されることがあります。Nは窒素,Sは硫黄ですね。そしてOは酸素,xは他の物質のくっつき方次第で数字が変わるという意味です。二酸化窒素ならNO2です。
 硫黄酸化物は火力発電所が,窒素酸化物は自動車が多く排出しています。しかし化石燃料のうち,天然ガスは液化して日本に輸入されます。この液化の過程で硫黄を取り除くことができるため,天然ガスはクリーンエネルギーとよばれるのです。ただし燃焼時,温室効果ガスは排出されます。
 火力発電所では発電所に硫黄除去装置を設置して硫黄酸化物を除去します。自動車の場合は一台一台にそのような装置を取り付けるとコストがかかるという問題点があります。そこで最近注目されているのが,電気自動車や天然ガス車,そしてハイブリッドカーです。
 酸性雨の大きな問題点は風に運ばれるということです。その風とは偏西風です。ちょうど工業先進国があるのが,偏西風の通り道。被害は西から東へと広がっていく。
 戦後冷戦下のヨーロッパはドイツを中心に東西に分裂していました。西ドイツから西側は資本主義諸国,東ドイツ以東は社会主義国です。工業発展していたのは西ヨーロッパです。偏西風は西ヨーロッパで排出された硫黄・窒素酸化物を東ヨーロッパに運び,そこで酸性雨を降らせます。
 次に東ヨーロッパだけで考えてみます。まず東ヨーロッパは西ヨーロッパにくらべて工業が遅れていますから,環境技術についても発達していません。さらに東ヨーロッパでとれる石炭は硫黄分を多く含んだ質の悪い石炭です。東ヨーロッパで工業国といわれたのがチェコやポーランド。これらの国は東ヨーロッパの中でも西よりの国です。チェコやポーランドで発生した大気汚染はさらに東の国々に大きな影響を与えることになった。
 冷戦崩壊後,西ヨーロッパの環境技術が東ヨーロッパにも浸透し,現在はかなり改善されてきていますが,同じようなことが東アジアでもおこっています。中国です。
 中国は石炭火力発電が中心の国です。そして中国で産出する石炭は質が悪く,環境技術も遅れている。経済発展とともに自動車に乗る人も増え,その結果起こる大気汚染は実にひどいものです。さらに汚染された大気は風に乗って日本にも達している。
 中国では内陸部の砂漠地方から東の沿岸部に細かい砂粒が風で運ばれます。そして工場の多い沿岸部上空で砂粒と汚染物質が結合します。その微粒子が中国国内だけでなく,日本にもやってくる。この砂粒を「黄砂」とよんだり,汚染物質が付着した微粒子を「PM2.5」とよんだりしています。

【例題3】次の地図はヨーロッパの代表的な工業地帯と特に降雨中の酸性度が高い地点を示している。酸性度が高い地点が工業地帯よりも東側に多い理由を簡単に説明しなさい。


答え:工業地帯から排出された汚染物質が,偏西風によって東に運ばれるから。

③砂漠化
 砂漠化が進んでいるサハラ砂漠の南側サヘル(地帯)といいます。「サヘル」とは「縁(ふち)」という意味です。

2.日本の公害問題
①日本の公害問題のおこり
 「公害」というのは産業革命前にはなかったものです。逆にいえば産業革命以後におこった社会問題です。では日本の産業革命がいつかというと,明治時代,日清・日露戦争ごろのことです。日本で最初の公害問題もこのころおこった。歴史上「足尾銅山鉱毒事件(問題)」として知られます。
 これについてはいくつか出題されます。まずは足尾銅山は現在の何県か?「栃木県」です。栃木と群馬の位置がはっきりしない人はしっかりと答えられるようにしておきましょう。もう少し詳しくいうと利根川支流の渡良瀬川流域ですが,「渡良瀬川」は発展編を学ぶ人ぐらいでいいでしょう。
 次にこの問題に取り組んだ人。田中正造という人物です。彼は衆議院議員です。そして彼が天皇に直訴した年は1901年。20世紀はじめの年ですね。1901年というと日清戦争と日露戦争の間のことです。またこの年には八幡製鉄所が操業開始していますから日本の産業革命真っ只中といった時期。できればこの年はおぼえておきたい
 ちなみに田中がもっていた直訴状は幸徳秋水が書いたもので,幸徳秋水といえば明治期を代表する社会主義者産業革命がおこれば資本主義が生まれる。資本主義が生まれれば,社会主義が生まれる。これが歴史の原則です。日清日露戦争・日本の産業革命・社会問題(田中正造・幸徳秋水)。これらは別々におぼえるのではなくて,関連づけておぼえておくべきことです。
 日本の産業革命のころ公害問題が始まったように,高度経済成長のころ公害問題が深刻化します。これも関連づけて!

②公害の種類
 公害にはどのようなものがあるか?挙げていくと大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・地盤沈下・騒音・悪臭・振動などがあります。
[グラフ:基礎編9-4 日本国勢図会2024/25より 2022年]

大気汚染
 「スモッグ」という言葉があります。「スモーク(煙)」と「フォッグ(霧)」が合わさった造語です。大気が汚れて霧状に視界をさえぎる。当然体によいわけありません。環境技術がまだ未熟だったころ,産業革命がおこってエネルギー革命がおこるまでの間,工業は専ら石炭を燃やすことで成り立っていました。エネルギーしかり,動力しかり,鉄鋼業しかりです。石炭を燃やして出てくる煤煙が都市の空気を黒くしたので黒いスモッグとよばれました。工場から排出される硫黄酸化物は酸性雨の原因だけでなく,ぜんそくなどの呼吸器系の病気の原因にもなります。二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が原因となった四日市ぜんそくはその代表例です。
 エネルギー革命によって石炭の消費量が減り,加えて硫黄酸化物を取り除く技術が進歩すると工場からの黒いスモッグは減少しましたが,今度は車社会(モータリゼーション)が進展し自動車の排気ガス(窒素酸化物)が原因でおこる「白いスモッグ」が増加しました。光化学スモッグともいわれます。窒素酸化物と太陽の光(紫外線)が反応して発生するから「光化学」です。東京や大阪といった大都市の人たちは「光化学スモッグ注意報」というのを知っているでしょ。これが発令されると外での体育の授業とかが取りやめになる。
水質汚濁
 水が汚れることですが大きく二種類ある。1つは単純に有害物質が川や海に排水されておこる場合。これには水俣病イタイイタイ病がありますね。もう1つは「富栄養化」です。
 富栄養化は水中に含まれる窒素やリンが増えることです。これらの物質はプランクトンの栄養となりますので(だから「富栄養化」),増加するとプランクトンも増加する。結果的に生態系に大きな影響を与える。海では赤潮,湖沼ではアオコといった現象としてあらわれます。窒素やリンが増える原因は,結局工場や生活排水・肥料を多く含んだ農業排水といった人間の営みです。1979年,琵琶湖をもつ滋賀県では「富栄養化防止条例」を制定し,リンを含む合成洗剤の販売・使用を禁止しました。
土壌汚染
 土壌が汚染されることをいいますが,土壌の汚染は水質汚濁とも密接な関係にあります。イタイイタイ病や新潟水俣病は汚染された河川水が土壌を汚染し,汚染された土壌で育った作物を体内に取り込んで発病しました。逆に農薬などによって汚染された土壌が地下水を汚染することもあります。いずれにせよ土壌汚染は食べ物として形を変えて人間に悪影響を与えることが大きな問題です。
地盤沈下
 工業用水や農業用水として地下水をくみ上げすぎによって地盤が沈みこむ現象です。京浜工業地帯阪神工業地帯で深刻となった公害です。
騒音 振動 悪臭
 交通機関がその原因となることが多い公害です。高速道路や新幹線・空港周辺でおこる騒音・振動です。関西国際空港大阪府泉佐野市沖の海上に建設された理由の1つに大阪空港(伊丹空港)騒音問題があった。
 騒音や悪臭が公害として日本で法的に定められた背景には畜産業があります。都市化が進む前は現在の大都市でも畜産業はおこなわれていました。しかし住宅地が増えてくると家畜の鳴声や悪臭が問題となってきたのです。こうして畜産業は大都市ではやりにくくなった。

③現在の公害
 上に挙げた公害以外にも現在では大きな問題としてとりあげられるものがあります。現在そのもっとも大きなものが放射性廃棄物の問題です。きっかけは東日本大震災であることはいうまでもありません。
 福島第一原発の事故によって放射性物質が拡散。周辺地域は汚染され現在でも帰宅困難な地域があります。この事故によって原子力発電所の安全性が日本国中で問題視され,安全性が確保されたとしても長期間放射線を出し続ける放射性廃棄物の処理はどうするのか。現在の科学技術では地下深くで放っておくしかないのです。
 またダイオキシンという猛毒があります。これも発生すると放射性物質と同じく分解が難しい物質です。ベトナム戦争のころにアメリカ軍がベトナムのジャングルを裸にするため枯葉剤として用いたことがありますが,現在ではもっと身近なところにあります。生活ゴミです。ゴミを焼却(燃焼)と発生する。(特に塩素を含んだプラスチックなど)したがって設備が整ったところで適切な方法でゴミ処理はおこなわれなければなりません。そのために我々ができるのはゴミを減らすこと分別収集の協力,リサイクルです。
 ダイオキシンは自然分解しませんから,食物連鎖の過程でどんどん蓄積されていきます。目に見える形であらわれたときには,魚の性別が偏っていたり,人間の胎児に異常が認められたりします。

【例題4】環境にやさいし町づくりのための具体的な例としてふさわしくないものを選び,記号で答えなさい。
ア.生ゴミを腐敗させることによってメタンガスを発生させ,燃料として利用する。
イ.ゴミの減量化のために各家庭にゴミ焼却炉を設置する。
ウ.ガラス製ビン類を分別して回収する。
エ.都市中心部への自動車の流入を制限し,公共交通機関の利用をすすめる。


.生ゴミからつくるメタンガスはバイオ燃料の一種。強力な温室効果ガスの1つではあるが,生ゴミとなる植物は成長する過程で二酸化炭素を吸収しているので環境負荷は±で0であるという考え方もできる。(カーボンニュートラル)
.プラスチックなどを設備の整っていないところで焼却処理するとダイオキシンが発生する危険があるので×。これがよくひっかかる問題。家庭での焼却処理はやめましょう。
.ガラス製のビンだけでなく,プラスチック容器・紙類・缶・ペットボルトなどの分別回収循環型社会には必須。環境への負担も少ない。
パークアンドライドの考え方。都市の渋滞解消二酸化酸素排出量の削減につながる。

答え:イ

3.環境保全
①持続可能な開発
 産業を優先させると環境が悪化する。環境を優先させると産業がおとろえる。現代の世界は「産業」と「環境」を両立させる道を模索してきました。1992年,ブラジルのリオデジャネイロ国連環境開発会議が開かれます。別名「地球サミット」。この会議で出されたリオ宣言の中の言葉が「持続可能な開発」です。地球環境の保全と経済発展を両立させ,将来の世代の経済的,社会的な利益を損なうことなく,現代の世代の必要を満たす社会(「持続可能な社会)をつくりあげていこうというのです。
 この中で結ばれた条約が気候変動枠組み条約です。簡単にいうと地球温暖化防止条約でした。そして締約国(条約を結んだ国)は毎年,締約国会議を開き,国際的な枠組みづくりを話し合います。締約国会議は「COP(コップ)」とよばれます。稀に出題されることがありますが,「COP」とは温暖化防止会議に限らず,単にその条約を結んだ「締約国会議」のことを指します。第三回(COP3)が重要でしたね。京都議定書が出された京都会議です。
SDGs
 SDGs(Sustainable Development Goals)は「エス・ディー・ジーズ」と読み,日本語で「持続可能な開発目標」と訳します。2015年,国連で持続可能な開発サミットが開催され,「われわれの世界を変革する,持続可能な開発のための2030アジェンダ(行動計画)」が採択されました。2030年までに先進国と途上国が一丸となって達成すべき17の目標をSDGsとしてまとめました。今後頻繁に出題が予想される略称です。

②循環型社会
 「持続可能な開発」とともに最近よく出るようになってきた言葉が「循環型社会」です。これはセットでおぼえておきましょう。持続可能な開発・社会の実現には循環型社会をつくりあげることが必要なのです。
 循環型社会とは具体的に「3R」という言葉でまとめられます。「リデュース(reduce),リユース(reuse)リサイクル(recycle)」で3つのR。リデュースとは「減らす」の意味。環境負荷や廃棄物をできるたけ減らしていこう。リユースは「再利用」。使えるものは何度でも再利用しよう。リサイクルは生産された製品を「再資源化・再生」してもう一度製品をつくろう。リユースは製品の部品をもう一度使うこと。リサイクルは資源段階に戻してもう一度製品化することです。
 循環型社会をめざして日本では「循環型社会形成推進基本法」(2000年)に制定されました。長い法律名ですね。でも問われるのは「循環型社会」の部分だけなので安心して下さい。

【例題5】「循環型社会」とはどのような社会か,説明しなさい。

 「循環型社会」の説明には,3R:「リユース(再使用)」・「リサイクル(再資源化)」・「リデュース(廃棄物の抑制)」について述べるようにしましょう。そして最後は「環境負荷を少なくすること(社会)」で結べばよい。特に「リデュース(廃棄物の抑制)」について述べることを忘れることが多いようですが,大量生産・大量消費・大量リサイクルでは環境負荷を減らし,「持続可能な社会」にはならないからです。

答え:生産されたものの再使用再資源化(再生)により資源を効率的に活用し,廃棄物を減らすことによって環境への負担(負荷)を少なくする社会。



③環境アセスメント
 環境影響評価ともいいます。これも法律になっています。大規模な開発事業にともなう環境への影響を事前に予測・評価をおこなう制度です。大規模な事業とは主に国が関連しているの事業です。道路・鉄道・空港・ダム・河川など。もちろん悪影響を及ぼすとなるとその事業は中止になるということですが,実際に中止になるかというと日本ではあまりない。あくまでも評価だけに留まってしまっているのが現状です。それもこれも国主導で評価がなされ,住民の意見が反映されなていないからです。

【例題6】次の文をよみ,あとの問いに答えなさい。
 1992年,ブラジルの①〔ア.ヨハネスブルク   イ.リオデジャネイロ〕で,環境問題を取り上げた②〔ア.国連人間環境会議   イ.国連環境開発会議〕が開催された。この会議は( ③ )ともよばれており,環境を保全しながら( ④ )な開発を進めるためにはどうすればよいかを討議した。その結果,⑤〔ア.気候変動枠組み条約   イ.世界遺産条約〕が結ばれ,1997年に開かれた( ⑥ )会議では,先進国に温室効果ガス削減のための具体的な数値目標が設定された。

1.文中の①・②・⑤の〔  〕にあてはまる適当な語句をア・イから選び,それぞれ記号で答えなさい。
2.文中の( ③ )にあてはまる語句を答えなさい。
3.文中の( ④ )にあてはまる語句を漢字4字で答えなさい。
4.文中の( ⑥ )にあてはまる都市名を答えなさい。
5.この会議を受けて,日本では公害対策基本法にかわり,幅広い環境問題に対応するための法律が制 定された。この法律を何といいますか。
6.次の条文は5で答えた法律の内容である。下線部の事業者の義務を何といいますか。
 第20条 国は,土地の形状の変更,工作物の新設その他これらに類する事業を行なう事業者が,その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため,必要な措置を講ずるものとする。


 1992年に開かれた国連環境開発会議(地球サミット)は,非常によく問われる問題です。会議の名称(正確に)・別名・開催地(国名と都市名)・主旨(「持続可能な開発」)・気候変動枠組み条約(温暖化防止)の締結をすべてセットでおぼえるとともに,派生事項として1997年の地球温暖化防止京都会議(京都議定書)・環境基本法もしっかりとおさえる。語句を問う問題が多いこと。そして「持続可能な開発(または社会)」について説明させる問題が多いことをおさえておきましょう。

答え:1.①イ  ②イ  ⑤ア   2.地球サミット   3.持続可能   4.京都   5.環境基本法   6.環境アセスメント

【例題7】地球環境問題を解決するための基本的な考えとして「持続可能な開発」という言葉がある。この考え方を「将来の世代」という語句を使って,簡単に説明しなさい。

 「持続可能な開発」または「持続可能な社会」を説明するときのキーワードとして「将来(将来世代・将来の世代)」という語句を使えるようにしておきましょう。またここでは(地球)環境を守るという意味で「保護」ではなく「保全」という言葉が使えればよい。人間の手を加えず,そのままの自然を維持することが「保護」,人間がある程度手をを加えて維持していくのが「保全」というぐらいの意味の違いです。「持続可能な開発」は開発しながらも地球環境を維持することから「保全」が使えれるようにしておきましょう。

答え:(例) 環境を保全しながら,将来の世代に受け継ぐことができるように開発すること。

【例題8】環境アセスメントとは何か,簡単に説明しなさい。

 環境アセスメントのポイントは,まず「だれがこれをするのか?」という点。市民や住民ではなく,開発「事業者」であるということ。そして「開発前(事前)調査」であるということを注意しましょう。またこの制度は「公害対策基本法」ではなく,「環境基本法」に書かれていることにも注意。
 現在地理・公民の単元では公害対策基本法より環境基本法の方が出題されることが多くなりましたが,歴史に関連してはまだ公害対策基本法が出されることがあります。公害対策基本法が制定された背景には,1960年代の高度経済成長とそれにともなう公害問題(四大公害病など)があることもおさえておきましょう。

答え:事業者が開発にあたって事前に環境への影響を調査すること。

【例題9】1960年代の出来事として正しいものを選び,記号で答えなさい。
ア.地球環境の保全・公害対策などを任務とする環境省が設置された。
イ.複雑化・地球規模化する環境問題に適応するために環境基本法が制定された。
ウ.多発する公害を防止するため公害対策基本法が制定された。
エ.消費者保護政策をおこなう消費庁が設置された。


 前の例題の解説から考えましょう。の環境省は2001年になって設置された比較的新しい省。もちろん環境問題全般をあつかう行政機関ですが,もとは1971年に設置された環境庁(総理府)が格上げされたものです。公害対策基本法のあとに環境庁,環境基本法のあとに環境省です。

答え:ウ

4.世界遺産
①負の歴史遺産
 世界遺産の中に「負の歴史遺産」というものがあるわけではありません。平和への願いから歴史的悲劇に関する世界遺産を日本で勝手にそうよんでいるだけです。そうよんでいるたげですが,テスト問題でもこういう表現で問題文がつくられています。おぼえておきたいのは2つ。広島の原爆ドームポーランドのアウシュビッツ強制収容所。アウシュビッツはナチスドイツがユダヤ人を虐殺するために収容した施設です。別名「絶滅収容所」。

②おぼえておきたい世界の世界遺産
 世界遺産は挙げていくとほんとキリがないので,よく資料で使われる世界遺産を紹介します。わたしの手元に写真がないものは資料集・インターネット等で確認しておいて下さい。

ウェストミンスター宮殿 エッフェル塔 アウシュビッツ収容所 サンピエトロ寺院 コロセウム(闘技場)
イギリス(ロンドン) フランス(パリ) ポーランド バチカン(ローマ) ローマ(イタリア)

※ウェストミンスター宮殿は右手の時計台(通称ビッグベン)が有名。現在は国会議事堂として使用されている。
 アウシュビッツ強制収容所跡は,
第2次世界大戦中のナチスドイツの非人道的行為を後世に伝えることを目的としており,原爆ドームと同じく日本では「負の世界遺産」とよばれている。写真は収容所内部。引込み線とよばれる線路が内部に引かれており,ユダヤ民族を各地から運びこんで,そのまま収容所内で大量虐殺した。
 ローマのコロセウム(コロッセオ)は
ローマ帝国時代,剣闘士とよばれる奴隷が戦わされた闘技場。闘技場はローの帝国の支配下にあったヨーロッパ中の都市にみられる。

エルサレム タージマハル アンコールワット 自由の女神像
イスラエル インド カンボジア ニューヨーク(アメリカ)

※エルサレム旧市街には,ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の3つ宗教の聖地があり,写真に見える金色のドームはイスラム教のモスク(寺院)であり,エルサレムを象徴する建造物。
 タージマハルは,ムガル帝国第5代皇帝シャー=ジャハーンが妻のために建てた墓。アンコールワットはカンボジアのヒンドゥー教建築。

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