公民 第3回 内閣・裁判所 基礎編

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内閣

1 内閣のもつ国家権力は〔 ① 〕権であり,内閣総理大臣=〔 ② 〕と各省庁の責任者である〔 ③ 〕で構成される。
①行政  ②首相  ③国務大臣
   「内閣」とは,行政権をもつ組織,「内閣総理大臣」とは内閣の長。2つの言葉をしっかりと区別したい。
 「相」というのは,もともと古代中国の「大臣」にあたる言葉でした。「木」と「目」を合わせた文字で,「木の上から見る」→「監督する・管理する」という意味。そこで総理大臣は略して「首相」,また「~大臣」は「~相(しょう)」とよぶことがあります。(例えば外務大臣のことを「外相(がいしょう),法務大臣のことを「法相(ほうしょう)」)
   
2 内閣総理大臣は〔 ① 〕の中から国会によって〔 ② 〕され,〔 ③ 〕によって任命される。
①国会議員  ②指名  天皇
 
3 国務大臣の〔 ① 〕は国会議員の中から〔 ② 〕が任命する。
①過半数  ②内閣総理大臣
 
4 内閣が国会の信任によって成り立つ制度を〔 ① 〕といい,内閣は行政権の行使について,国会に対して〔 ② 〕して責任を負う。
①議院内閣制  ②連帯
   内閣の単元が出題されたら,必ず問われる問題だと思って下さい。「内閣」の最重要事項。まずは議院内閣制を説明できるようにしましょう。【説明】内閣が国会の信任によって成立し,行政権の行使について国会に対して連帯責任を負う制度。
 「国会の信任によって成立」とは,《1・2・3》でみたように,内閣を構成する内閣総理大臣と国務大臣(過半数)は国会議員の中から選ばれるという点。「信任」という語句がキーワード。行政を国会から信用して任されるのです。
 そしてその信用を失うようなことをしたら,だれに対して「ごめんなさい」というか?当然,信用して任せてくれた相手:「国会に対して」です。「責任を負う」とは「責任をとる」。「責任をとる」のとり方は「辞職(やめる)」ということです。
 ここでこの説明の最重要語句「連帯(して)」という語句。「責任」の前には必ずこの言葉を挿入しましょう。「内閣が連帯して責任を負う」とは,責任者である内閣総理大臣1人が辞めるのでなくて,国務大臣も全員やめるという意味なんです。だから内閣の辞職は必ず「総辞職」という表現になる。
 議院内閣制については,典型的な図を使った問題が出題されるので,《図表の整理~内閣~》で練習しておきましょう。
   
5 内閣の開く会議は〔   〕とよばれる。
閣議
 
6 内閣の権能は,〔 ① 〕の執行,〔 ② 〕関係の処理,〔 ③ 〕の締結,公務員に対する事務,〔 ④ 〕の作成,〔 ⑤ 〕の制定,〔 ⑥ 〕の決定などである。
①法律  ②外交  ③条約  ④予算案  ⑤政令  ⑥恩赦
   国会の仕事が「決定」することであったのに対し,内閣の仕事は「実行」することにあります。国会の決定事項と【比較】して【セット】でおぼえるとよい。
 国会  内閣
 法律の制定  法律案の作成・法律の執行
 条約の承認  条約の締結
 予算の議決  予算案の作成

 次に内閣独自の決定事項をおさえる。まずは政令の制定。これは国会が唯一の立法機関であったことの例外の1つです。まず大前提として最高法規である憲法があります。この憲法に基づいて国会で法律がつくられます。この法律をきちんと運用(施行)していくための細かい取り決めをまとめたものが政令です。法律を「~法」とよぶのに対して政令は「~令」といいます。
 法律を制定・改正するためには,国会の審議が必要です。少しでも内容を変えようものなら,改正案の提出から委員会の開催,本会議の採決と膨大な時間と費用がかかります。だから法律の中には大雑把なことしか書かれていません。
 例えば「車を運転するには運転免許証が必要。」(道路交通法第84条)では「運転免許証を申請するためにはどんな書類が必要か?申請用紙にはどのようなことを記入すればよいか?」政令にはこのような細かい規定が定められています。今はこれだけの書類が必要だけど,将来もっと簡略化されて少なくなるかもしれない。そんなときわざわざ国会で話し合うより,内閣にはたくさんの官僚(公務員)がいてその人たちに任せておけばよいというわけです。もちろん政令は法律を逸脱してはいけないし,閣議決定も必要です。
 恩赦については《公民:第1回応用編》参照。

   
7 内閣は天皇の〔 ① 〕に対して,〔 ② 〕を与える。
①国事行為  ②助言と承認
   すでに説明済み。《公民:第1回基礎編》参照。
   
8 内閣は裁判所に対して,〔   〕を指名する。〔   〕以外の最高裁判所裁判官および下級裁判所裁判官を任命する。
最高裁判所長官
   三権分立における内閣の裁判所に対する権限最高裁判所長官だけ特別で,内閣の指名,天皇の任命です。あとの裁判官はすべて内閣の任命
   
9 衆議院が〔 ① 〕を可決した場合,内閣は〔 ② 〕日以内に衆議院を〔 ③ 〕しない限り,〔 ④ 〕しなければならない。
①内閣不信任決議  ②10  ③解散  ④総辞職
   内閣は,国会が満足する政治をおこなわなかった場合,衆議院によって内閣不信任決議を受けることがあります。文字通り「内閣」を信用して任せることができない」という「決定」です。
 「内閣不信任決議が可決された場合,内閣はどうしなければならないか?」という【説明】問題がよく問われます。この問題文通り「10日以内に衆議院を解散しない限り,総辞職しなければならない。」と答える。答えを書くときの注意ですが,この文が逆になってはいけません。「総辞職しない限り,衆議院を解散しなければならない。」これは同じことをいっているようですが,憲法(法律)に書かれている条文は,条文通りに書くことが求められます。そして「10日以内」という日数も必ず書くこと。
 内閣は10日以内に2つの道を迫られます。1つは「お前が悪い」といわれているのだから,素直に謝る。「ごめんなさい。わたしたちが悪かったです。だから責任とって辞めさせてもらいます。」これが内閣総辞職です。わかりやすいですね。総辞職した場合,また国会(同じメンバー)によって内閣総理大臣指名選挙がおこなわれます。
 もう1つの道が,衆議院の解散。そもそもこの内閣を最初に信任したのは国会ですね。では「本当に悪いのはオレたち(内閣)か?」・「オレたちを選んだのは君たち(国会)じゃないか!」そして「君たち(国会)を選ぶところからやり直すのが筋じゃないか!」というわけです。これはこれで筋が通っています。
 つまり内閣は衆議院を解散させることで国会ではなく,国民の信(意思)を問うのです。その方法は選挙しかありません。そしてその意味(解散がある)で衆議院は参議院より国民の意思を反映しやすいといわれるのです。
 内閣の辞職も衆議院の選挙にも「総」が付くことにも注意して下さい。「総辞職」・「総選挙」です。
   
10 衆議院の解散後,衆議院の総選挙は〔 ① 〕日以内に行われ,その後〔 ② 〕日以内に〔 ③ 〕が開かれる。
①40  ②30  ③特別会(特別国会)
   解散後の日程も重要。⇒《図表の整理~内閣~》解散後の総選挙のあとの内閣総理大臣指名のための国会は特別会です。「解散後」であることに注意。解散後でなければ「特別会」とはいいません。
   
11 内閣には〔 ① 〕と〔 ② 〕の省庁があり,行政を担当する職員:〔 ③ 〕が勤務している。
①内閣府  ②12  ③国家公務員
   12省庁については《応用編》でおぼえましょう。
   

裁判所

1 裁判所のもつ権限を〔 ① 〕権といい,憲法第76条では「裁判官は,その〔 ② 〕に従い,〔 ③ 〕して裁判を行い,〔 ④ 〕にのみ拘束される」とされ,〔 ① 〕権はいかなる権力からも独立している〔 ⑤ 〕が定められている。
①司法  ②良心  ③独立  ④憲法と法律  ⑤司法権の独立
   三権分立のうち,司法権をもつのが裁判所です。「司法」とは裁判だと考えればよい。「裁判」とは,法に基づいて争いを調整したり,問題を解決したりすることです。そのため裁判官は「良心,そして憲法と法律にのみ」拘束されると憲法に定められています。他の一切の権力(国会や内閣など)から干渉や圧力を受けず,公正と中立を保つ。【説明】これを「司法権の独立」といいます。【第76条】「憲法と法律」という部分は一語でおぼえましょう。(逆になると×)
   
2 裁判所には〔 ① 〕裁判所と〔 ② 〕裁判所があり,〔 ② 〕裁判所には〔 ③ 〕裁判所・〔 ④ 〕裁判所・〔 ⑤ 〕裁判所・〔 ⑥ 〕裁判所がある。
①最高  ②下級  ③高等  ④地方  ⑤簡易  ⑥家庭(③~⑥は順不同)
   裁判所は大きく最高裁判所下級裁判所の2つに分類され,下級裁判所の中に高等・地方・簡易・家庭裁判所がある。「下級」の中に「高等」があるというのは名称だけみると変な感じがしますが,一気におぼえてしまいます。
 下級裁判所は高等裁判所・地方裁判所の順に上位の裁判所で,簡易裁判所・家庭裁判所は地方裁判所の下位に置かれます。簡易裁判所では軽犯罪や金額の低い訴訟をあつかい,家庭裁判所は家庭内の争いや未成年者の事件をあつかいます。
   
3 最高裁判所は〔 ① 〕人の裁判官で構成され,長官は〔 ② 〕が指名し,〔 ③ 〕が任命する。その裁判官は〔 ② 〕が任命する。
①15  ②内閣  ③天皇
   最高裁判所のトップを長官といいます。裁判長ではありません。もちろん裁判に関わるときは裁判裁判長の役割を果たしますが,最高裁判所の裁判のすべてに長官が関わるとは限りません。日本の裁判(司法)を事務的にも統括する存在で,司法権全体の長です。
 最高裁判所の長官は,行政権の長たる内閣総理大臣と同じく,指名・任命の手続きを経てその任に就きます。内閣が指名し,天皇が任命する(国事行為)。内閣総理大臣と【比較】しておぼえましょう。
 その他の裁判官は最高裁判所・下級裁判所の区別なく,内閣が任命します。
   
4 裁判官が罷免されるのは心身の故障のため仕事ができないと決定された場合,〔 ① 〕により決定された場合,最高裁判所裁判官については〔 ② 〕で決定された場合のみである。
①弾劾裁判  ②国民審査
   すべての裁判官に共通して罷免される(辞めさせられる)条件は,2つだけです。1つは心身に故障があった場合。これは当たり前の話なので,おさえる必要はありません。大事なのが2点目。国会による弾劾裁判です。⇒《公民:第2回基礎編》
 ただし,最高裁判所の裁判官だけ国民審査という場で,罷免されることがありますが,これで罷免されることはまずありませんから,これまで通り「国民審査」という名前と,国民の裁判所に対する権限であるということだけおさえておきましょう。
 なお国民審査は衆議院議員総選挙のタイミングでおこなわれることになっています。
   
5 裁判の当事者は3回まで裁判を受ける権利があり,これを〔 ① 〕という。第一審判決に不服なときは〔 ② 〕でき,第二審判決に不服なときは〔 ③ 〕できる。
①三審制  ②控訴  ③上告
   裁判はどんな裁判でも,必ず3回までチャンスがあります。これを三審制といいます。「公正・慎重な裁判をおこなうため。」です。【説明(目的)】
 1度目の判決が不服で2度目を要求することを「控訴」,2度目の判決に不服で3度目を要求することを「上告」といいます。
   
6 〔 ① 〕裁判は個人間で争われる。訴えたものを〔 ② 〕,訴えられたものを〔 ③ 〕という。
①民事  ②原告  ③被告
   民事裁判個人同士の利害関係を裁く裁判です。個人というのは「企業(法人)」であっても特定の組織・団体であってもかまいません。利害関係とはお金(相続・借金・賠償など)についてや家族関係(離婚・親権・養子縁組など)についてが多い。最近は知的財産権についての訴訟も多くなっています。
 裁判所に訴える側を原告訴えらる側を被告といい,それぞれの主張を法律に照らし合わせて裁判官が判断します。
 裁判の結果は勝敗の形でつきます。勝訴・敗訴といいます。必ずしも原告が勝訴するとはかぎらない。
   
7 〔 ① 〕裁判は犯罪についての裁判で,〔 ② 〕が罪を犯した疑いがある〔 ③ 〕を〔 ④ 〕として〔 ⑤ 〕する。〔 ④ 〕には必ず〔 ⑥ 〕がつけられることになっている。
①刑事  ②検察官  ③被疑者  ④被告人  ⑤起訴  ⑥弁護人
   刑事裁判は犯罪を裁く裁判です。犯罪が発生すると,警察が捜査して被疑者を逮捕します。よく容疑者,ドラマなんかでは「星」とよぶこともあります(笑)が,これはマスコミ用語で法的には「被疑者」といいます。
 逮捕された被疑者は取調べの記録や証拠などとともに検察官に引き渡されます。そして検察官が裁判所に起訴するかどうかを決定します。警察・検察は犯罪捜査については同じような権限をもっていますが,裁判所に起訴する権利は検察官だけがもっています。また刑事裁判では裁判所に訴える行為を「起訴」ということもおぼえておきましょう。
 そしていよいよ裁判です。訴えられた被疑者は裁判所においては「被告人」とよばれます。逆に訴えたのはそのまま検察官です。だから刑事裁判では原告は必ず検察官になる。被告人には弁護人をつける権利があり,裁判では検察官と弁護人がそれぞれの証拠品・証言を裁判所に提出して,裁判官の判決を求めます。
 判決は有罪か無罪か。有罪なら刑罰の重さもいい渡されます。無罪なら被告人は国に対して賠償を求めることもできます。
   
8 被告人は自分の不利になる証言はしなくてもよい〔   〕権をもっている。
黙秘
   被告人は逮捕された瞬間から黙秘権をもっています。しかし黙秘権をもっているにもかかわらず,発言するとその内容は立派な証拠としてあつかわれることになります。
   
9 2009年からはじまった,国民が裁判官といっしょに裁判の審理・評決に加わる制度を〔 ① 〕制度といい,〔 ② 〕裁判で実施されている。
①裁判員  ②刑事
   司法(裁判)に国民感覚を取り入れようとしてはじまった制度です。【説明(目的)】裁判員となる人は有権者から無作為に選ばれます。基礎編でのポイントは3点。
 まず裁判員裁判は,刑事裁判だけであること。(しかも殺人などの重大事件です)民事裁判ではおこなわれません。次に必ず第一審だということ。三審制の1回目の裁判です。控訴・上告したあとの裁判(第二審・第三審)では採用されていません。最後に有罪・無罪の判決だけでなく,量刑(刑罰の重さ)も決めるということ。
   
10 裁判所がもつ権限で,法律や法令が憲法に違反していないかどうか審査する権限を〔   〕という。 
違憲(立法)審査権 
   裁判では,裁判所は法律に照らし合わせて,判決を下します。しかしその法律そのものが憲法違反だったらどうでしょうか?判決は大きく変わってきますね。このように裁判所はその審理の中で,その裁判であつかう法律の条文(国会が制定)や行政機関の法令・行為,それ自体が憲法に違反していないかをはっきりさせる必要があります。そうでないと裁判の公正・公平(平等権),国民の自由(自由権)や生活(社会権)が国家権力によって抑圧されてしまうからです。
 このような裁判所がもつ権限を違憲(立法)審査権といい,基本的人権を守るため裁判所(司法権)が国家権力(立法権・行政権)に対してもつ重要な権限です。長くて難しそうな名前ですが,文字通りおぼえれば大丈夫です。法律が憲法に違反していないかどうかを審査することです。
 「立法」という語句を挿入するときは,特に国会(立法権)に対するときに使いますが,行政や地方公共団体に対しても,その法令や行為が憲法違反かどうかを審査することができます。その際は単に違憲審査権や法令審査権ということもあります。 

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