公民 第3回 内閣・裁判所 応用編

公民の部屋に戻る     TOP

内閣

1 内閣総理大臣および国務大臣はすべて〔   〕でなければならない。
文民
 
2 閣議は〔   〕制をとる。
全会一致
   内閣は国民を代表する議員からなる国会に対して連帯責任を負うことから,閣議の決定も連帯責任となります。そのため全会一致をとるのです。全会一致とは全員一致のことです。
   
3 内閣は国会に対して,〔 ① 〕の召集を決定する。〔 ② 〕を決定する。参議院の〔 ③ 〕を要求する。
①国会  ②衆議院の解散  ③緊急集会
   最終的に国会の召集・衆議院の解散天皇の国事行為であり,内閣の助言と承認によっておこなわれます。これらの決定は内閣の仕事です。ちなみに緊急集会の召集は天皇の国事行為にあたりません。なぜなら参議院の緊急集会は国会ではないからです。国会とは衆議院と参議院をあわせたものです。
   
4 1府12省庁には次のものがある。
①行政全体の事務・統括など,内閣総理大臣を中心とする機関。
②郵政・地方自治などの仕事をおこなう。
③法律をまもる仕事をおこなう。
④外国との政治・経済・文化に関する仕事をおこなう。
⑤予算など国の財政関係の仕事をおこなう。
⑥教育・学問・芸術・スポーツなどの仕事をおこなう。
⑦医療・保険・職業の安定・失業対策に関する仕事をおこなう。
⑧農業・林業・水産業をさかんにする仕事をおこなう。
⑨商業・工業・貿易などの経済に関する仕事をおこなう。
⑩国土の開発,交通などの仕事をおこなう。
⑪公害・環境問題などの解決をおこなう。
⑫自衛隊の運営の仕事をおこなう。
⑬警察などの治安に関する仕事をおこなう。
①内閣府  ②総務省  ③法務省  ④外務省  ⑤財務省  ⑥文部科学省  ⑦厚生労働省  ⑧農林水産省  ⑨経済産業省  ⑩国土交通省  ⑪環境省  ⑫防衛省  ⑬国家公安委員会
   基本的には各省の名称からその仕事内容を推測しておぼえるとよい。すべて国務大臣が責任者です。
 注意したいのはまず内閣府。仕事内容は様々で,責任大臣は内閣総理大臣です。この内閣府の下に国家公安委員会という警察の仕事をおこなうところがあります。これが「12省庁」の「庁」にあたりますが,その下に警察庁が設置されていますので,実質「省」あつかいです。したがって国家公安委員長も国務大臣です。(あまり国家公安委員会の問題は出ない)
 仕事内容としては総務省が解りにくい。地方自治・選挙のほか,郵政(郵便)・消防・放送なども総務省の仕事です。
 各府・省のもとにさらに専門的な仕事をする庁が置かれている。知っておきたい庁には次のようなものがある。
・内閣府…警察庁(国家公安委員会の管轄)・公正取引委員会・消費者庁・金融庁(財務省ではない)
・総務省…消防庁
・国土交通省…気象庁(天気予報・地震などの情報)・観光庁・国土地理院(地形図の作成)
 ちなみにこの問題の《①~⑫》の順,実はどの本をみてもたいてい同じ順になっています。実は決まっているんです。上にいくほど格上とされ,新しくできた新米の省ほど下にくる。だから環境省・防衛省なんかは最近できた新しい省です。みなさんがおぼえるときは,順番なんか全く気にしなくてよい。
   
5 公務員は憲法第15条で,「すべて公務員は〔 ① 〕であって,〔 ② 〕ではない」と定められている。
①全体の奉仕者  ②一部の奉仕者
   公務員には国家機関で働く国家公務員と,地方公共団体の職員や地方公共団体が設置した施設(公立学校の教職員など)で働く地方公務員がいます。その数は地方公務員の方が圧倒的に多い

 【第15条】では公務員は「全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない」とされていることから,労働三権の一部またはすべてが認められていないこともおさえておきましょう。

 国家公務員のうち,中央省庁に勤務し,国家の政策立案に直接関わっているものを「官僚」ということがあります(中でも上級の公務員を「キャリア」ということもある)。キャリア官僚は最初に複数人採用され,同時並行に昇進しますが,最終的に一番上のポストには1人しか就けません。すると他のものは仕事がなくなり,退職の道を選ぶしかなくなる。
 こうして定年前に,彼らは別の場所で再就職するわけです。これを「天下り」といいます。不思議なことに再就職先は国家関連の仕事を請け負う公的機関や民間企業・団体だったりする。しかもかなり重要な上位の地位で。(ということはお給料も相当なもの)
 すんなり悠々自適なところに再就職できる理由に,実は省庁の推薦がある。官民(財界との)の癒着・権限の私的流用,そういったものが背景にあります。近年では,このような「天下り」を規制する法律も制定されていますが,その実効性には疑問がもたれています。
   
6 行政の仕事が多くなるにしたがって,権限や費用,人員など行政の規模が大きく複雑になっていくことを〔   〕という。
行政の肥大化
   このように官僚が大きな力をもつ原因に,現代の社会や国際関係が非常に複雑化してきたことがあります。本来政治は国民の代表者である国会が主導しておこなわれるべきですが,国会議員とはいえすべてのことに専門的な知識があるわけではありません。時代や社会の変化によって日々求められる法律はますます複雑に,そして細かくなってくる。1つの法律を作るのにも,ものすごい労力と時間がかかってしまう。
 そこで政治における行政の役割がますます大きくなってくるのです。行政機関には専門的な知識をもったしかも優秀な人材が集まっている。行政権は法律の単なる執行に留まらず,法律案の作成などに深く関わってくる。現在日本で制定されている法律のほとんどが議員立法ではなく,内閣立法なのです。
 行政権の拡大とともに,官僚や国家公務員の数も多くなり,人件費などの費用も大きくなる。このような状況を「行政権の肥大化」といいます。肥大化した行政組織では官僚がますます発言力を増し,官僚を中心に政治がコントロールされていく。政治家がトップダウン(上から下へ)で官僚に政策立案を命じるのではなく,官僚がボトムアップ(下から上へ)で政治家に政策提言をしていくのです。しかも官僚は選挙などによって責任を問われることもありません。これを官僚主義といい,企業との癒着・汚職・税金の無駄遣いにつながっていきます。
   
7  市場介入を強化し,社会の平等・高福祉国家をめざす政府を〔 ① 〕といい,行政の権限・機能を可能な限り小さくしようする政府を〔 ② 〕という。
  ①大きな政府  ②小さな政府 
   「大きな政府(国家)」は,社会の平等・高福祉国家をめざし,経済にも政府が積極的に介入します。簡単にいえば,「政府が何でもやってあげるから,心配しなさんな!まかせなさい」です。ものすごく聞こえはいい。しかし政府とは,何でもやってくれる超お金持ちのことではありません。お金の出所は,もちろん国民=税金です。高福祉とは,=高負担でもあるんです。
 高負担しただけ国民が幸せになれば,別に文句もありません。このような「大きな政府」の究極が社会主義国です。また資本主義国の中でも社会主義的要素を取り入れ,それに成功した国も確かにあります。スウェーデンなどの北欧の国々がそうです,高福祉・高負担を政府と国民が互いに納得しています。
 しかし「大きな政府」を目指そうとしすると,「行政権の肥大化」を招き,「官僚主義」が強化される。いつの世も権力を握ったものは,その権力を自らの利益のために使いたくなるものです。つまりそれは政治家や官僚の腐敗・汚職につながっていく。社会主義国が次々と崩壊していった原因の1つもそれです。大きな政府に成功した北欧の国々では,腐敗・汚職が発覚した議員は2度と当選することはありません。社会的に許されない。
 日本もかつては好調な経済を背景に,「大きな政府」を目指していました。「日本はもっとも成功した社会主義国」と皮肉られたこともあります。しかしやがて政治家や官僚の腐敗や汚職が次々と発覚し,バブルの崩壊後,景気も停滞しました。そこへ少子高齢化という問題も深刻になってくる。
 膨らむ財政赤字と政府への信頼を回復するためには徹底的な行政改革が必要となりました。2001年,小泉純一郎内閣が発足すると,これまでの行政のあり方を見直し,「小さな政府」を目指す行政改革に着手しました。
   
8 小泉純一郎内閣は「聖域なき〔 ① 〕」を行政改革のスローガンとし,「官から民へ」・「中央から地方へ」を政策の中心として,〔 ② 〕の民営化を実行し,政府の規制を少なくし自由な競争を進めようとする〔 ③ 〕をおこなった。
①構造改革  ②郵政  ③規制緩和
   小泉内閣が掲げた「小さな政府」を目指す行政改革が「聖域なき構造改革」でした。これまでの古い政治構造を根本的に見直す。「聖域なき」とは,どんな場所にでも切り込むという意気込みです。自民党総裁であった小泉純一郎は選挙で「自民党をぶっつぶす!」とさけんだのです。
公務員制度改革
 公務員の数を減らし,天下りも規制する。
・「官から民へ」(民営化)
 民間ができることは民間へと公営の事業を民営化する。これまで国営であった郵便事業を民営化した郵政民営化がその代表例です。
・「中央から地方へ」(地方分権)
 民営化と同様,「地方にできることは地方へ」ということで地方分権を進めました。そのため地方分権一括法を制定し,地方の自立のため地方公共団体への権限や財源を委譲することにしました。
規制緩和
 市場の競争原理を重視するため,産業や事業に対する政府の規制を縮小していくことにしました。

 しかし「大きな政府」にも長所と短所があったように,「小さな政府」もよいところばかりではありません。例えば,民営化すると利益の上がらない地域の営業を縮小したり,事業から撤退したりする可能性がある。公営の企業の利点は,過疎地域でも都市でも全国一律同じサービスが受けられるという点です。
 また市場経済では勝者(儲かった人)と敗者(儲からない人)が生れる。さらに競争原理を加速させると,勝者同様に敗者の数も増えるのです。つまり経済格差が大きくなる
   
9 行政官庁の仕事がそれぞれの部門の利益を重視され,国民への対応が柔軟におこなわれないことが多い。このような政治を〔   〕という。
たてわり行政
   これも官僚主義の欠点です。仕事が細分化され専門家された行政組織では,官僚は担当するのその仕事に秀でています。当然,その部門の利益優先に仕事がおこなわれる。複雑化している社会であるからこそ「たて」ではなく「よこ」の連携が必要なのです。
 身近な例では,日本は少子化に対して国全体で問題解決していかなければならないのに,保育所は厚生労働省の担当で,幼稚園は文部科学省の管轄なのです。2つの省がそれぞれの思惑で政策をおこなっている。
10 行政の民主化のために,行政監察官(〔 ① 〕)制度や〔 ② 〕制度が導入されている。
①オンブズマン  ②情報公開
   「オンブズマン」は「オンブズパーソン」制度とも表記されることがあります。「マン」だと女性もいるのだから失礼だと批判を受けての別表記ですが,そもそも「オンブズマン」は英語ではなく,スウェーデン語で,スウェーデン語でのこの「マン」は男女両方でも使われる言葉ですので,「オンブズマン」で結構です。どちらを書いたから×になるということでもありません。
   

裁判所

1 下級裁判所の裁判官は最高裁判所が作成した名簿に基づき,〔   〕が任命する。
内閣
 
2 最高裁判所の裁判官は〔 ① 〕の対象となり,〔 ① 〕は〔 ② 〕議員総選挙の際に実施される。
①国民審査  ②衆議院
   衆議院議員選挙では投票所で用紙を合計3枚もらいます。一枚は小選挙区に立候補した人の名前。次に比例代表制の投票用紙をもらって政党名を記入。最後に最高裁判所裁判官の国民審査。ここにはすでに審査対象の裁判官の指名が書かれており,やめさせたいと思う裁判官の名前の上に「×」を書き込みます。(やめせさたい裁判官がいない場合は,何も書かずに紙を箱に投入します。)
   
3 民事裁判では,原告が被告を訴えることを〔 ① 〕といい,原告・被告とも〔 ② 〕を通じて争うことができる。
①提訴  ②弁護人(代理人)
   同じ裁判所に訴えることですが,刑事裁判では「起訴」という言葉を使用し,民事裁判では「提訴」という言葉を用います。【比較】「起訴」は必ず検察官がおこないます。「提訴」は原則だれでもできます。
 また民事裁判では,原告・被告とも弁護人をつけることができます。民事裁判の場合,これを「代理人」ともよんでいます。刑事裁判では被告人には必ず弁護人がつけられ,被告人にその費用がない場合でも国費で弁護人がつけられます。これを「国選弁護人」といいます。
 よく「弁護人」と「弁護士」はどう違うか?という質問を受けます。「弁護士」とは職業名あるいはその資格名です。「弁護人」は実際,その裁判において刑事裁判なら被告人の弁護をする人,民事裁判なら原告・被告の代理をする役割をいいます。
 また簡易裁判所における刑事裁判では弁護士としての資格をもっていない人でも弁護人を務めることができますので,弁護人=弁護士ではありません。問題はたいてい裁判における役割を問われているので,「弁護人」と書くのが正解です。

 もう1つ,刑事裁判と民事裁判の違いを説明しておきます。注目するのは簡易裁判所です。簡易裁判所は下級裁判所の中で最下級に位置します。あつかう訴訟内容も軽微なものです。もしこの裁判所から始まった民事裁判の控訴審は,その上の地方裁判所になります。そして上告審は高等裁判所です。つまりこの裁判は高等裁判所が最終(終審)裁判所となるんです。
 一方,簡易裁判所から始まった刑事裁判の控訴審は,地方裁判所ではなく高等裁判所になります。そして上告審はその上の最高裁判所。刑事裁判では必ず最終(終審)は最高裁判所になる。
 このことは詳しくおぼえる必要はありません。ただ日本の三審制において刑事裁判では最後(上告審=終審)は最高裁判所民事裁判の最後は必ずしも最高裁判所ではないということだけ,頭に入れておきましょう。
   
4 最高裁判所は,法律・命令などの合憲・違憲を決定する〔 ① 〕裁判所であり,「〔 ② 〕」とよばれる。下級裁判所も〔 ③ 〕を有する。
①終審  ②憲法の番人  ③違憲審査権
   裁判所は法律や命令が憲法違反であるかどうかを判断する違憲(立法)審査権をもっていました。裁判では憲法違反なら違憲,違反でなければ合憲と判断されます。違憲と判断されれば,事件の判決にその法律や条文は反映されません。(法律の改正・廃止は国会の仕事なので注意)
 この権限はすべての裁判所がもつ権限ですが,裁判は三審制が原則なので,違憲判断も最終的には最高裁判所の判断に委ねられます。
 ん?ちょっとまって下さい。確か民事裁判では最後の裁判が高等裁判所になることがありましたね。3解説》三審制では最後の裁判が絶対のはずです。しかしここで特別ルールが発生する。憲法判断が必要な裁判においては,その最終判断は高等裁判所にさせてはいけない。必ず最高裁判所に判断させなさい。だからこの場合,例外的に4回目が認められるのです。(特別上告)
 こうして最高裁判所は違憲審査において最終判断をおこなう裁判所=終審裁判所としての地位が与えられている。【第81条】そしてその判断は変更不能の絶対的なものであることから最高裁判所は「憲法の番人」とよばれている。【説明(理由)】まちがっても「憲法の番犬」(笑)と書かないように。
   
5 憲法第33条では,何人も,〔 ① 〕として逮捕される場合を除いては,裁判官が発する〔 ② 〕によらなければ,逮捕されないことになっている。
①現行犯  ②令状
   令状主義は「身体の自由」であったことを再確認しましょう。
   
6 〔 ① 〕が唯一の証拠であるときは,〔 ② 〕になる。
①自白  ②無罪
   被疑者・被告人には黙秘権が与えられますが,自らの意思で供述した(自白)内容は証拠としてあつかわれます。ただし被告人に不利益な証拠が自白のみの場合は有罪とされません。もちろん強要された自白に証拠能力がないことはいうまでもありません。
   
7 事件が裁判で確定したあと,裁判の重大な誤りが疑われる場合に認められる,やり直しの裁判を〔 ① 〕という。また無実の罪を〔 ② 〕という。
①再審  ②冤罪
   判決確定後に新しい証拠や裁判自体に重大な誤りがあったと判断さされば,再審を請求することができます。この再審の背景に冤罪(えん罪)があります。冤罪とは,無実でありながらも犯罪者としてあつかわれることまた有罪とされることで,いわゆる「濡れ衣」というやつです。
   
8 裁判員制度は〔 ① 〕裁判所でおこなわれる刑事裁判の第〔 ② 〕審で採用されている。
①地方  ②一
   裁判員裁判は司法制度改革の1つとして2009年から導入され裁判の方式で,裁判に国民の感覚が反映されることを期待した制度です。【説明(目的)】
 対象となる裁判は,故意の殺人,刑罰に死刑・無期懲役が予想されるような重大刑事事件です。すなわち第一審は地方裁判所での裁判となります。しかし控訴・上告審では採用されないため,裁判員裁判で出された第一審判決が,控訴審で覆ってしまうこともある。(意味ないじゃん)

基礎編へ
発展編へ