公民 第4回 地方自治 基礎編

公民の部屋に戻る     TOP

地方自治

1 地方自治は「〔   〕の学校」とよばれる。
民主主義
   国の政治(国政)に対して,地方の政治を地方自治といいます。国の政治の主体が「国民」にであるのに対して,地方自治では「住民」といういい方することもおさえておきましょう。自分たちの住む地域の問題を,住民が民主的に解決していくことを学べることから,「地方自治は民主主義の学校」とよばれます。【説明(理由)】
 地方自治は国政に比べて規模が小さく,住民に身近であるという点から,国では不可能な直接民主制がいくつか採用されているという点。そして身近な行政サービスというのがポイントです。キーワードは3つ。「直接選挙」,「直接請求権」,「地方財政」が地方自治でおさえるべきところです。
   
2 都道府県・市町村など地方自治を行う組織を〔   〕という。
地方公共団体(地方自治体)
   都道府県・市町村のほかに,東京都の23区も地方公共団体(特別地方公共団体)の1つで,市とほぼ同じ権限が与えられています。そのため23区の区長は住民の直接選挙で選ばれます。大阪市や名古屋市など全国の政令指定都市にある区とは異なります。
 地方公共団体の仕事には,学校の設置・管理,交通・水道・ガス・電力などの事業,廃棄物の収集・処理,道路・下水道の整備,病院や福祉施設の設置・管理,住宅の建設,警察や消防,災害復旧などなど,いちいちおぼえるのも面倒ですね。基本的にはわれわれの生活に身近な仕事と考え,逆に地方公共団体の仕事でないものの中で注意するものをおさえておきましょう。司法に関する事務,郵便に関する事務の2つ。
 司法に関する事務とは,裁判所のことです。よくまちがえるのは「地方裁判所」です。「地方」という言葉が入っているので,地方自治の仕事と勘違いし易い。司法は国の仕事の一部ですから,裁判所は国政に属する
 もう1つの郵便局ですが,郵便事業は2005年に民営化が決まってから,国の仕事ではなくなりました。それまで郵便局員は郵政省(今はない)に所属する国家公務員でした。現在は株式会社となり,郵便局員も民間の会社員です。郵便局は小学校の数より多いといわれますが,現在は民間企業です。
   
3 都道府県の首長を〔 ① 〕といい,その被選挙権は〔 ② 〕歳以上である。市町村の首長を〔 ③ 〕といい,その被選挙権は〔 ④ 〕歳以上である。また地方議会議員の被選挙権は〔 ⑤ 〕歳以上であり,すべての任期は〔 ⑥ 〕年である。
①知事  ②30  ③市町村長  ④25  ⑤25  ⑥4
   地方自治の1つ目のキーワード:「直接選挙」です。
 まずは語句の整理から,地方公共団体の責任者を首長といいます。(「くびなが」と読まない。気持ち悪いです。)都道府県と市町村ではよび名が異なっています。都道府県は「知事」(都知事・道知事・府知事・県知事),市町村は「長」だけつけて,市町村長(市長・町長・村長)です。「知事」の「知」には「治める」という意味があり,昔の中国で比較的大きな行政単位を治めるものに使っていた語句です。
 地方の議会はそのまま総称して地方議会といい,都なら都議会,県なら県議会,市なら市議会とよびます。
 議会の議員は,国会議員と同じく住民の直接選挙で選ばれますが,国会と違って一院制です。【比較】一方,国政の長である内閣総理大臣は国会議員が選出(指名)しますが,首長は地方議会議員と同じく,住民の直接選挙で選出されます。【比較・説明】
 被選挙権・任期は《図表の整理~三権分立・地方自治》で練習すればすぐにおぼえられます。
   
4 地方公共団体の組織・運営は〔   〕で定められている。
地方自治法
 
5 地方公共団体は,法律の範囲内で〔  〕を制定することができる。
条例 
   まず「条例」の「例」の字をまちがえないように。条例はその地方公共団体独自の法令です。独自ですので,一歩その地方公共団体から出ると適用されない。
 条例の制定は,首長や地方議会議員が条例案を提出し,議会で制定(過半数の賛成)されるという流れ。これは国会と内閣の関係と同じです。予算についても同じ。首長が予算案を提出し,議会で議決する。【比較】 
   
6 地方公共団体に設置されている行政委員会には,教育をあつかう〔 ① 〕,選挙事務を行う〔 ② 〕,地方公共団体の収入・支出を調査する〔 ③ 〕などがある。
①教育委員会  ②選挙管理委員会  ③監査委員
   問題は「監査委員」でしょう。これだけ「会」がつかず「監査委員会」とはよばない。「会」があるということは,その仕事を担う人が複数いる(複数の合議制)からです。監査委員は,1人で独立した行政機関としてみなすから,「会」をつけない。これとよく似たものに「検察官」というのがある。これも1人の人間であると同時に,独立した機関を指します。
   
7 地方自治では一部の重要事項に関して,住民の〔   〕が認められている。
直接請求権
   地方自治のキーワードの2つ目,「直接請求権」です。国政との大きな違いであるため,地方自治の特徴となっている。国政レベルではできない直接民主制を実現させようとしたものです。地域の政治は住民に身近なものであり,重要事項については住民の意思を直接反映させることがふさわしいというのが趣旨です。【説明】
 方法は,請求内容について賛同者の署名を集めます。署名というのは,文字通り名前(他に生年月日やハンコなど)を書いてもらいます。署名数が地域住民の有権者の一定数集まったから,請求先に請求して,実行してもらいます。
 大きな内容としては4つ(細かく5つ)。以下の問題《8~13》まであります。これらはよく表にして載せられており,おぼえるときも表でおぼえるとよいでしょう。⇒《図表の整理~三権分立・地方自治~》おぼえるべき項目は,「請求内容」・「必要な署名数(有権者の何分の1か)」・「請求先」の3点。簡単な問題では表がそのまま出題され,空欄補充の形式。正誤問題(文)で出題されたときも,有名数・請求先を疑えば答えが出てくる。おぼえるときのポイントは,表をすべて1つずつおぼえるのではなく,いくつかまとめられるものをまとめておぼえる。
・必要な署名数
 辞めさせたいとき(解散・解職請求)→3分の1以上
 それ以外→50分の1以上
・請求先
 選挙で選ばれたものの解散・解職→選挙管理委員会
 選挙で選ばれていないものの解職→首長
   
8 条例の制定・改廃の請求は,有権者の〔 ① 〕以上の署名で〔 ② 〕に請求し,議会にはかり,過半数の賛成で成立する。
①50分の1  ②首長
 
9 監査請求は,有権者の〔 ① 〕以上の署名で〔 ② 〕に請求し,実施される。
①50分の1  ②監査委員
 
10 議会の解散請求は,有権者の〔 ① 〕以上の署名で〔 ② 〕に請求する。
①3分の1  ②選挙管理委員会
 
11 議員・首長の解職請求は,有権者の〔 ① 〕以上の署名で〔 ② 〕に請求する。
①3分の1  ②選挙管理委員会
 
12 主な公務員の解職請求は,有権者の〔 ① 〕以上の署名で〔 ② 〕に請求する。
①3分の1  ②首長 
   
13 地方財政の歳入の内訳は,〔 ① 〕・〔 ② 〕・〔 ③ 〕・〔 ④ 〕などである。
①地方税  ②地方交付税交付金  ③国庫支出金  ④地方債(順不同) 
   地方自治の3つ目のキーワード,「地方財政」です。「財政」とはお金のことですね。当然,収入と支出がある。その内訳が重要。よくグラフにして問題が出ます。
 支出からみましょう。

[グラフ:基礎4-1 日本国勢図会2024/25より 2024年度]
 支出の内訳とは,使い道のことです。グラフからわかるように使い道のほとんどが一般行政経費と給与関係費です。われわれの生活を支える行政サービスと公務員のお給料です。当然すぎて逆にグラフを使わなくてもわかる。ですので問題として出されることはあまりありません。むしろ支出が重要。こっちは必ず出ると思って下さい。

[グラフ:基礎4-2 日本国勢図会2024/25より 2024年度]
 収入の内訳には大きく4つのお金がある。地方税・地方交付税交付金・国庫支出金・地方債です。まずこの基礎編では4つの名前と意味をしっかりおさえることに専念しましょう。(問題点は《応用編》で)
 地方税は地方公共団体が国とは別に住民に課す税金です。地方公共団体自身が自ら集めてくるお金なので「自主財源」といういい方もします。 
   
14 〔 ① 〕・〔 ② 〕は国からの補助金である。〔 ① 〕は自治体間の財政格差を是正するためのもので使い道の指定はないが,〔 ② 〕は使い道を国から指定されている。
①地方交付税交付金  ②国庫支出金 
   地方交付税交付金国庫支出金は,国から交付されるお金だというところが共通点です。では違いは?一言で済ませますよ。地方交付税交付金は「使い道を指定」されずに交付されるお金。国庫支出金は「使い道を指定」されて交付されるお金。
 君たちが使うお金で考えてみましょう。将来バイトをして稼いだお金は,「自主財源」だから「地方税」にあたります。それでも足りなかったらお小遣をおうちの人からもらいます。1ヶ月いくらかはわかりませんが,このお金は1ヶ月好きに使っていいお金です(使い道指定なし)。これが地方交付税交付金です。一方で,おうちの人から,「これで参考書を買いなさい。」・「これで服や靴を買いなさい。」など使い道を決めて渡されるお金が国庫支出金です。これで「道路をつくりなさい。」ということです。
 それでも使うお金に対して,入ってくるお金が少ないとどうする? 
   
15 〔   〕は歳入を補うための地方自治体による借金である。
地方債 
   自分で集めて,国からもらって,それでも足りなければ,借金するしかない。これが地方債です。「債」は借金を意味する言葉だと思って下さい。 

応用編へ