公民 第4回 地方自治 応用編

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地方自治

1 地方自治の本旨とは,地方公共団体が中央政府から独立して政治をおこなう〔 ① 〕と,住民が自治体の政治に参加し運営する〔 ② 〕の2つの原則をいう。
①団体自治  ②住民自治
   地方自治の「本旨」とは,地方自治の本来の趣旨という意味です。
 「団体自治の原則」の「団体」は地方公共団体のことで,「地方の政治は地方公共団体がしっかりと運営しろ」という地方分権の基本原則です。ちなみに地方分権の反対語は中央集権
 例えば条例の制定がこれにあたります。ただし条例はあくまでも法律の範囲内で制定されるべきもので,法律が禁じていることを条例で定めることはできません。しかし逆にいうなら法律で禁じていないことは,「できる」ということでもあります。
 「住民自治の原則」とは,地方自治が住民の意思に基づいておこなわれなければならないという民主主義の基本原則をいいます。【説明】首長や議員の直接選挙,直接請求権,住民投票などが具体的な内容です。
   
2 首長と地方議会の議員は,住民の〔   〕選挙で選ばれる。
直接
   国会が「国権の最高機関」とされているのに対して,地方議会を「地方自治の最高機関」とはよびません。その理由は地方議会議員と同様に首長も住民の直接選挙で選ばれ,両方とも住民の意思を代表しているからです。【説明】首長と地方議会の関係は《発展編》でとりあげます。応用レベルの人もそれほどよく出る問題とはいえませんが,確認しておくことをおすすめします。
 また内閣総理大臣(首相)と首長の選出方法の違い【説明・比較】もよく問われるので説明できるようにしておきましょう。
   
3 地方の行政機関に勤務するものを〔   〕という。
地方公務員
   国家公務員と地方公務員では,圧倒的に地方公務員数が多く,その数は減少傾向にあることをおさえておこう!
※地方公務員数は1994年(平成6年)をピークに減少傾向にありましたが,2020年度からやや増加しています(グラフ4-2)。これは新型コロナ対応をはじめ,子育て支援(児童相談所など)の体制強化,デジタル化への対応などによる影響です。

[グラフ:応用編4-1 人事院 令和6年度]

[グラフ:応用編4-2 総務省 令和5年地方公共団体管理調査結果より]
   
4 国会がある特定の地方公共団体のみに適用される〔 ① 〕を制定するには,その地方公共団体の住民投票の〔 ② 〕の賛成が必要とされる。
①特別法  ②過半数
   「住民投票」にはいくつかの種類があります。
・憲法で定められている住民投票
 問題にある「住民投票」とは,この住民投票です。【第95条】ある特定の地方公共団体だけに適用される法律,これを「特別法」といいます。まず国会で法案を議決し,その後,総務大臣から首長に通知され,住民投票がおこなわれます。過半数の賛成で特別法は成立。憲法改正の国民投票に似いています。憲法改正は国会→国民,特別法は国会→住民【比較】
 このように重要案件の議決を,立法機関の議決を最終決定とせず,有権者の投票によって最終決定とする直接民主制の一形態をレファレンダムといいます。(これは少し難)
・法律で定められている住民投票
 地方自治法で定められた直接請求権解散・解職請求では,必要な署名数を集めて選挙管理委員会に請求し,最後は住民投票で決します。この首長・議員の解職・議会の解散請求をリコールといいます。
・条例によって定める住民投票
 地域の重要問題に対して,住民投票に関する条例を制定し,その結果に基づいて政策決定がおこなわれます。ただし前の2つの住民投票と異なり,投票結果に法的拘束力はありません。あくまで住民の意思を政治に反映させるためのものとなり(政治的拘束力),法律で決定したことをくつがえすことはできない。

 いずれの住民投票も過半数の賛成で決定されます。
   
5 地方財政の自主財源である〔   〕は,歳入の半分にも達しない。
地方税
   《基礎編》でみたように,地方財政の収入(歳入)には地方税・地方交付税交付金・国庫支出金・地方債の大きく4つがありました。
 地方税は自主財源ともよばれ,各地方公共団体が独自に集めることができるお金です。しかしこの自主財源は,地方財政全体の3~4割ほどしかなく,国からの依存財源に多くを頼っている。このような「団体自治の原則」から大きくかけ離れた地方自治の現状を「三割自治」といいます。【説明】
 地方交付税交付金は,地方公共団体間の財政格差をなくすために国から使い道を指定されずに交付されるお金です。したがって一般には歳入に占める地方税の割合が低い地方公共団体ほど,地方交付税交付金の割合が高くなります。逆に地方税が多く集まるところほど,割合は低くなる。東京都は都道府県で唯一交付を受けていない不交付団体です。
 また東京ほど大都市ではないのに不交付団体となっているところもあります。例を挙げると,北海道柏村,青森県六ヶ所村,福島県大熊町・広野町,茨城県東海村,新潟県刈羽村,佐賀県玄海町などです。これらはすべて町か村ですね。それ以外に共通点はないでしょうか?そう原子力関連施設があるところです。これらの町村には法律によってまた異なるお金が交付されてるのです。
 国庫支出金も国からの交付金でした。地方公共団体の仕事には,福祉や教育などの住民サービスや警察などの治安維持といった固有の事務のほかに,国から任された委任事務があります。国が委地方に委託する事業について,使い道を指定し,分担金・助成金として支出するお金です。国の委任事務の多さが「三割自治」を招いているともいわれます。
 地方債は財政収入を補うための借入金(借金)でした。「債」は「借金」を意味する言葉。発行には,都道府県は国(総務大臣)との,市町村は都道府県知事との事前協議が必要となっています。地方債も国債と同様累積残高は伸びる一方です。
   
6 地方公共団体が国と対等な立場で独自性をもって政治をおこなうことを〔 ① 〕といい,2000年に制定された〔 ② 〕では,国と地方公共団体の関係は上下の関係から対等の関係に改められた。
①地方分権  ②地方分権一括法
   《5》でみたように,「三割自治」には,国と地方との,そしてお金と仕事量とのいびつな関係がありました。地方には国から委任された仕事がたくさんあり,固有の仕事を圧迫している。国はお金を出して地方に仕事をさせているという関係です。国が上,地方が下の主従関係といってもよいでしょう。
 しかし国もこのままではいられなくなってきました。慢性的な財政赤字です。このまま地方にたくさんのお金を出していては,国の赤字も膨らんでいく。このままでは国・地方共倒れになってしまうかもしれない。
 そこで地方への委任事務を減らし,地方に対する財政支出も減らす。そして地方には国のもつ権限や財源を譲ってあげる。地方にはできるだけ固有の自治事務(団体自治)に専念してもらって,国と地方との関係を対等にしていこう。またその中で国の規制が歯止めになるようなことがあっては,地方も困るだろうから,できるだけ規制も緩和していく(構造改革特区など)。
 このような動きを地方分権といい,これらのことを包括的に定めた法律を地方分権一括法といいます。近年は「三割自治」から「四割自治」ぐらいに改善されてきましたが,財政状況が苦しいことにはかわりありません。
 また国と地方が一体となった改革には,「市町村合併」というのもあります。1999年からはじまる「平成の大合併」とよばれる近年の市町村の統廃合では,3200以上あった市町村が1700程度(2016年)に減少しました。

[グラフ:応用編4-3 総務省 市町村合併資料より]
 国としてこれを進めていく理由は,できるだけ地方交付税交付金などの交付金を減らしたい。そのためには地方公共団体の経済力強化が必要で,そのための広域化を進めたい。一方地方の思惑には,財政規模が大きくなること,効率的な行政サービスが実施できること,人件費などコスト削減につながることなどがありました。【説明】構想としては市町村だけでなく,都道府県も広域化して「道州制」(アメリカの州のようなもの)を導入してはどうかという提言もあります。
   
7  透明な行政がおこなわれるために,市民が行政を監視する制度を〔   〕制度という。
オンブズマン(オンブズパーソン) 
   行政監視制度:オンブズマンは,国政でもとりあげましたが,導入が早かったのは地方自治においてです。条例で最初に制度化したのは神奈川県川崎市の市民オンブズマン条例でした(1990年)。オンブズマン発祥の地:スウェーデンでは19世紀のはじめには確立していたので,川崎市ですら早いとはいいがたい。 

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