地理 第2回 地形 発展編
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山地形
※この単元に出てくる個々の地形の位置とその説明はすべて<要点整理>にまとめてあります。必要な方は<要点整理>の入手をお願いします。
1.プレートテクトニクス
みなさんは,この地球の表面がひび割れていて,いくつかの大きな岩盤で出来ていることはご存知ですね。そして岩盤はじっと動かないまま固定されているのではなく,地球内部のマントルという高熱のマグマが対流することによって動いている。これを「プレートテクトニクス理論」といいます。
この理論が出てきたのはそんな昔のことではなく,いまからちょうど100年ぐらい前,ドイツのアルフレッド=ウェゲナーが『大陸と海洋の起源』という本で「大陸移動」という言葉を口にしました。大西洋両岸のアフリカ大陸と南アメリカ大陸の海岸線(正確には大陸棚)をパズルのように合わせるとぴったりひっつくのではないか。この思いつきが「大陸移動説」の始まりだったわけです。
しかし彼の「大陸移動説」はダーウィンの「進化論」同様すぐに日の目をみることはなかったのですが,今ではこの理論は「人は猿から進化した」と同じくらい一般常識になっています。
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アルフレッド・ウェゲナー 『大陸と海洋の起源』 |
①プレートが広がると
マントルの上昇によってプレートの境界が広がっているところがあります。これが海底でみられると海嶺といいます。三大洋の中央部にみられます。大西洋の中央の海嶺は,アイスランドでは陸上でみることができます。
地面にだってある。これを地溝といいますが,大地溝帯という呼び名は,日本のフォッサマグナというところでやりました。ここではもっとデカイやつを紹介します。
アフリカ大陸に寄り添う,マダガスカル島という島がありますね。この島はもともとアフリカ大陸の一部だった。島を西にずらしていくとピッタリ合いそうですね。ピッタリ合ったと仮定して,そのまま北上するとマラウイ湖・タンガニー湖・ビクトリア湖と湖が続いています。これ実は地溝に水が溜まってできた湖なんです。さらにその溝は地上を北上すると,そのまま紅海に出ます。紅海を北上するとシナイ半島という半島があります。この半島も地面が裂けているように見えませんか。その通り,この半島で溝はスエズ運河に延びるものとヨルダン方面に延びるものの二手に分かれているのです。これがアフリカ大地溝帯です。またこの地溝は人類誕生にも一役買っています。
②プレートがぶつかると
一方でプレートが広がると,どこかでプレートどうしが押しあっているところがある。大陸プレートどうしがぶつかって,上に盛りあがってしまったところに大きな山脈ができる。ヒマラヤ山脈がそうです。インドはかつて独立した大陸でした。これがユーラシア大陸にぶつかってヒマラヤ山脈ができた。エベレストの8000mを越えたところの地層には,三葉虫やウミユリの化石が残っており,かつてそこが海底であったことを物語っています。
一方のプレートがもう1つのプレートの下にもぐり込むこともあります。海洋プレートが大陸プレートの下にもぐりこみます。このとき大陸プレートも引きずられて下に沈むのですが,時々,はじかれたように元に戻ろうとする。これがプレートが原因でおこる地震です。地震の規模は非常に大きく,大津波も伴う。東日本大震災が最も記憶に新しい。1960年のチリ沖地震も同じ理屈です。このときも日本を含めた太平洋全域に津波が襲った。東日本大震災のマグニチュードが9.0であったのに対してチリ沖地震は9.5,観測史上最大の地震でした。
プレートの沈み込みは深い溝をつくりだします。プレートの境目は海底にあるので,この溝を海溝といい,中でも深い場所を海淵といいます。また上に乗りあがった大陸プレートには大きな山脈ができます。ロッキー山脈・アンデス山脈は大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込んでできた大山脈です。
またぶつかったプレートどうしが横滑りしてずれてしまうところもある。アメリカのカリフォルニア州にあるサンアンドレアス断層というのがそれです。ここも地震頻発地帯。
③アルプス・ヒマラヤ造山帯
2つの新期造山帯はインドネシアあたりで合流していました。インドネシアは世界でもっとも島の多い国です。その数は17000以上ともいわれます。それはやはり2つの造山運動の影響を受けたからでしょう。その形もユニークです。カリマンタン島のようにデップリとした島もあれば,その東どなりに「K」の文字の形をしたスラウェシ島のような島もある。この地域から西へ辿っていきましょう。
まずはインドネシアの島々,ジャワ島・スマトラ島。このあたりも地震多発地帯として有名です。しかもマグニチュード8クラスの地震が多い。
マレー半島を北上して,ミャンマー・インドの国境となっている山脈。(パトカイ山脈とアラカン山脈。この山脈より東が仏教圏となっており,文化的境界でもある。)
そして世界の屋根と呼ばれる一帯。ヒマラヤ山脈,チベット高原,カラコルム山脈,パミール高原,ヒンズークシ山脈です。これらの標高は8000m級であることをおぼえておきましょう。
さらに西へ。カスピ海の南側にエルブールス山脈,カスピ海と黒海の間にカフカス山脈,黒海から西へカルパチア山脈がのびています。そしてアルプス山脈へ。ヨーロッパではアルプス山脈より北の山脈はすべて古期造山帯です。アルプスより南はアルプス・ヒマラヤ造山帯の一部です。イタリアのアペニン山脈,フランス・スペイン国境のピレネー山脈がそうです。
そして西の端はアフリカ大陸北部,モロッコにそびえるアトラス山脈。アルプス・ヒマラヤ造山帯の西端であるとともに,アフリカ唯一の新期造山帯でもあります。
④環太平洋造山帯
太平洋の東側からぐるっといきましょう。まずはアンデス山脈。南アメリカ大陸西部を縦断する世界最長の山脈です。よく地図帳をみてみましょう。ブラジルにはこの山脈は通っていませんね。頭の片隅にでも置いておいて下さい。
北上して中南米。メキシコ高原はそれらしいですね。目線をカリブ海に向けると小さな島々がつらなっている。インドネシアと同じように島がたくさんあるのも造山活動の影響です。そしてロッキー山脈です。また南北アメリカ大陸の高山は6000m級であることも頭に入れておきましょう。
北アメリカ大陸とユーラシア大陸との間にはアリューシャン列島があり,そこから南に下って千島列島,日本列島,台湾へと島々が連なっています。台湾の最高峰の玉山は富士山よりも高い3952mです。
さらに南へ。フィリピン,ニューギニア島ときたところで,オーストラリア大陸を避け,ニュージーランドへつながり,南極大陸を経て一周します。
⑤古期造山帯
代表例はアパラチア山脈・グレートディバイディング山脈・ウラル山脈のほかに,ペニン山脈(イギリス),スカンディナビア山脈,さらにドラケンスバーグ山脈(南アフリカ共和国),チンリン山脈(中国)ぐらいおぼえておけばよいでしょう。
2.断面図
①南アメリカ大陸(アコンカグア)
南アメリカ大陸は西側にアンデス山脈があり高くなっています。その標高は6000m級の山々が連なっています。南米最高峰のアコンカグアは6960mあります。一方東側は平地が多く,アルゼンチンあたりを通る断面図なら標高がかなり低く,ブラジル高原あたりを通るならせいぜい1000mぐらいの標高となっています。
②南アメリカ大陸(赤道)
赤道で切った断面図です。西にアンデス山脈があり,中には6000m近い山もあります。山脈の幅はそれほど広くありません。一方山脈の東側からはずっとほとんど起伏のない低地が続きます。つまりアマゾン川はほとんど標高差のない低地を大陸の西から東へと流れているのです。アマゾン源流の1つとされるペルーのイキトスという町でも標高が106m。日本では考えられないゆるやかさです。
③ヒマラヤ山脈その1
ヒマラヤ山脈からインドを斜めに横断して,アラビア海にぬける断面図です。北東方向から6000m以上の山々があり,急減に高度を下げヒンドスタン平原に出ます。そこから少し標高が高くなり,デカン高原が続きます。そしてアラビア海に面する南西端に少しだけ低い部分が見られます。
④ヒマラヤ山脈その2
中国から縦にヒマラヤを越えてベンガル湾へ,縦に切った断面図。6000m以上のヒマラヤ山脈を境に北側にチベット高原が広がり,5000m地帯となっています。さらにクンルン山脈,タクラマカン砂漠と続きます。北側のタクラマカン砂漠の標高は1000m前後。一方南はヒンドスタン平原の低地。
⑤アフリカ(赤道)
アフリカを赤道で横断した断面図。中央部から西側にはコンゴ盆地が広がっています。東側にはアフリカ大地溝帯があるので4000~5000mぐらいの盛り上がりがあります。その中にはビクトリア湖も含まれます。また赤道より少し南側にはキリマンジャロ山(5895m)があります。
その他の地形
1.水に関係する地形
①カルデラ湖
カルデラの凹地に水がたまった湖。有名なカルデラ湖は北海道に多く,屈斜路湖(カルデラとしては日本最大),支笏湖,洞爺湖,摩周湖。東北には十和田湖(青森・秋田の県境),田沢湖(秋田)がよく出ます。
②三日月湖
蛇行する河川が侵食などの影響で流路を変えたとき,かつての河道が取り残されて池や湖になったもの。石狩川が有名。
③汽水域
満潮時には海水が,干潮時には淡水が入り込み,海水と淡水が混在するところ。湖になったところは汽水湖という。宍道湖(島根),浜名湖はおぼえておきましょう。
④三角江
エスチュアリーという言い方もありますが,語句自体が問われたことはほとんどありません。三角州が河口に土砂が堆積して海に突き出て広がるのとは対照的に,河口部分が湾状に内陸にくぼんでいる地形です。水深が深いため河口やさらにその奥にも良港ができることが多く,古くから交易の要地として栄えた例が多い。長江(シャンハイ),ライン川(ロッテルダム),テムズ川(ロンドン),セーヌ川(パリ),エルベ川(ハンブルク),ガロンヌ川(ボルドー),セントローレンス川(ケベック),ラプラタ川(ブエノスアイレス),あとアマゾン川もエスチュアリー。
⑤鑽井(さんせい)盆地
石油・温泉・地下水などが自然と湧き出る(自噴)盆地。この例としては世界最大の鑽井盆地である大鑽井盆地=グレートアーテジアン盆地のみ。グレートディバイディング山脈からの地下水が湧き出る。掘り抜き井戸という井戸を使って羊の放牧がおこなわれています。塩分濃度が濃いため灌漑農業には不向きです。羊は他の動物に比べてちょっとぐらいしょっぱくても大丈夫なので羊を飼っている。
⑥U字谷とV字谷
フィヨルドとリアス海岸の説明でまれに使われる言葉。フィヨルドはU字谷に,リアス海岸はV字谷に海水が浸入した入り江。氷河は面で,河川は線で谷を削るので,それぞれU字・V字と表現されます。U字の方が大きいのでフィヨルドの方が奥行きも水深も大きくなる。
・フィヨルドはノルウェーのほか,カナダやチリ南部などでみられます。
・リアス海岸は世界では語源となったスペイン北西部のほか,フランスのブルターニュ半島,クロアチア(ダルマチア式とも),エーゲ海(トルコ)などで,日本では既出のほか細かくいうと長崎の対馬,豊後水道両岸とおぼえておきましょう。
⑦ワジ
かれ川。短い雨季のときに流れた水のあとです。
⑧オアシス
砂漠の中で局地的に水が湧き出す,あるいは流れている場所です。そこには当然,植物が育ちます。
⑨珊瑚礁
オーストラリアのグレートバリアリーフぐらい知っておけばよいでしょう。日本語表記では大堡礁。堡礁とは陸から離れた沖合いに発達した珊瑚礁をいいます。
2.土に関係する地形
①ラテライト
熱帯に分布する土壌で赤みがかった色をしています。この色は酸化鉄やボーキサイト(酸化アルミニウム)が混ざっている色です。したがってボーキサイトは熱帯か,かつて熱帯であったところで多く産出されます。
②チェルノーゼム
黒土。黒海の北部ウクライナからシベリアの南部にかけて帯状に広がる黒土地帯が有名。肥沃な土壌で世界屈指の穀倉地帯です。黒海と黒土の「黒」を合わせてイメージしておくとよい。
③テラロッサ
石灰石の風化した赤褐色の土壌。果樹栽培に適しているといわれます。地中海沿岸に主に分布しています。
④テラローシャ
玄武岩などが風化した土壌で赤紫色をしています。ブラジル高原(カンポ)に分布していて,コーヒー栽培に適した土壌だといわれています。テラロッサとよくまちがえますので注意。
⑤レグール
これも玄武岩の風化土。黒色をしています。インドのデカン高原に分布していて,綿花栽培に適しています。
⑥レス
砂漠や乾燥地の土砂が風化して堆積した土壌。中国の黄河流域の黄土が特に有名。日本にも飛来する黄砂の元。
⑦土壌浸食(流出)
傾斜地がすべて一枚の田んぼや畑だと雨風の影響を受けて,土壌が低い土地へと流出します。アメリカでは大規模機械化農業をおこなった結果,肥沃な土壌が流出してしまった。そこでどうするかというと,等高線(同じ高さ)に合わせて曲がりくねってしまうけど田畑を階段状に作る。これを等高線耕作といいます。アメリカの小麦・綿花・とうもろこし地帯やアジアの棚田・段々畑などがあります。
⑧砂漠
砂漠といえば砂地が広がっているイメージですが,実は砂砂漠は砂漠といわれる地形の10%ほどです。ほとんどが岩石砂漠。
このような砂砂漠は限られた場所にしかない(サハラ砂漠) |
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ほとんどは岩石砂漠(サハラ砂漠) |
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3.世界一の地形
①最高峰
地域 |
最高峰 |
高度(m) |
山脈・国 |
アジア |
エベレスト(チョモランマ) |
8848 |
ヒマラヤ山脈 |
ヨーロッパ |
モンブラン |
4808 |
アルプス山脈 |
アフリカ |
キリマンジャロ |
5895 |
タンザニア |
北アメリカ |
マッキンリー(デナリ) |
6194 |
アメリカ(アラスカ) |
南アメリカ |
アコンカグア |
6960 |
アンデス山脈 |
日本 |
富士山 |
3776 |
山梨県・静岡県 |
北岳 |
3193 |
山梨県 |
②河川
世界 |
日本 |
長さ |
流域面積 |
長さ |
流域面積 |
ナイル |
アマゾン |
信濃 |
利根 |
アマゾン |
コンゴ |
利根 |
石狩 |
長江 |
ナイル |
石狩 |
信濃 |
③湖・島
世界の湖 |
日本の湖 |
世界の島 |
カスピ海 |
琵琶湖 |
グリーンランド |
スペリオル湖 |
霞ヶ浦 |
ニューギニア島 |
ビクトリア湖 |
サロマ湖 |
カリマンタン島 |
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