地理 第3回 気候   発展編1 世界の気候

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その他の世界の気候

1.熱帯
熱帯モンスーン気候
 モンスーンとは季節風のことでした。この季節風の影響を熱帯で受ける気候です。熱帯で季節風の影響を受けるのは,東南アジア・南アジアです。夏にこれらの地域に吹く季節風は南西の季節風(冬は逆),東南アジアではインドシナ半島の西岸南アジアではインド半島の南西岸が影響をよく受ける。サバナ気候との違いは,乾季が弱いこと。インドの人たちは風のことではなく,雨季の雨そのものをモンスーンとよんでいました。
※この気候は熱帯雨林気候とサバナ気候の中間にあたります。見わけるのが非常に難しい。出題頻度は低いものの一応の基準を示しておくと。最乾月の降水量が60mm未満。ただし年間降水量が2500mmを超えている場合は最乾月降水量が0mmでもこの気候に入ります。この辺りがサバナ気候との区別がつきにくいところ。

②サバナ気候
 サバナとは熱帯雨林気候の密林に対して,疎林(まばなら)を形成し,丈の長い草原を指しました。乾季があるからですね。これが南アメリカ大陸では独特の名称がついています。
 オリノコ川流域では「リャノ」,ブラジル高原では「カンポ」,パラグアイを中心とした地域では「グランチャコ」といいます。

2.乾燥帯
①回帰線乾燥帯以外の乾燥帯
(1)内陸砂漠
 大陸の内陸深くは,緯度に関係なく乾燥帯となりやすい。これは海洋から離れれば離れるほど湿った空気が届かなくなるからです。蒸発する水分量が少ないので雲もできにくく,乾燥してしまう。ユーラシア大陸の中央アジアゴビ砂漠タクラマカン砂漠などが代表的です。
(2)山地の風下の乾燥帯
 湿気を含んだ海からの風は山地にぶつかると上昇気流となって,山地の風上側に雨を降らせます。一方山地を下るときには乾燥した風になるので,風下側は降水量が少なくなる。このようにして高緯度でも乾燥帯となった地域にアメリカのグレートプレーンズの西部(ロッキー山脈東側),アルゼンチン南部(アンデス山脈東側)が挙げれます。ともに偏西風が山脈を越えてくるので乾燥する。
(3)海流の流れ
 風とともに海流も一定のパターンをもっています。まず赤道付近は貿易風(南北半球とも東よりの風)の影響で海流は西に流れます。赤道上を西へと流れた海流は,その間に暖められ,やがて陸地にぶつかって南北へと別れます。これが暖流です。
 北上(南下)した海流は,今度は偏西風の影響で東へと流されます。東へ東へと大洋を横断した先で陸地にぶつかって,そこでまた南下(北上)する。

 このようなパターンで海流を暖流・寒流で考え直すと,暖流の代表例は,日本海流(黒潮),メキシコ湾流,北大西洋海流です。寒流は千島海流,ペルー海流(フンボルト海流),ベンゲラ海流,カナリア海流,カリフォルニア海流,ラブラドル海流です。
 このうち低緯度の大陸西岸に注目すると,ここには必ず寒流が流れている。ペルーという国がありますが,ナスカの地上絵で有名ですね。地上絵は不毛の荒野に描かれている。ペルーは緯度的には熱帯に位置する国ですが,沿岸部は乾燥帯になる。これは寒流のペルー海流の影響で沿岸部の大気は暖められず上昇気流が発生しない。そのため赤道近くでも熱帯ほど気温が上がらず,降水量も少ない。このような乾燥帯は海岸砂漠などと表現されます。


エルニーニョ現象
 上にみたように本来,東太平洋赤道付近の海水温は寒流のペルー海流のため低く保たれています。ところがなんらかの原因でこの地域の海水温が上がってしまうことがある。この現象は12月のクリスマスごろ(南半球では夏)におこることからペルーの人々は「エルニーニョ=男の子→神の子(イエス)」とよびました。ペルーの人々にとっては夏の海水温が上がることは異常気象なのです。
 この原因はよくわかっていないのですが,なんらかの原因で貿易風が弱まることがあります。平常時は貿易風によって赤道上を東から西へと海流が流れ,西太平洋に暖かい海水,東太平洋に冷たい海水という図式です。貿易風が弱まり海流の流れも弱まると太平洋中央部,東部にも暖かい海水が広がります。これまで西太平洋のインドネシアあたりで発生してした積乱雲(上昇気流)が,東よりに発生しやすくなる。つまり雨が多かったインドネシアで雨不足になり,雨が少なかったペルーで大雨が降る。地球的規模の異常気象というわけです。
 逆に東太平洋の海水温が例年よりさらに低くなることもある。これをラニーニャ現象といいます。(エルニーニョが「男の子」を意味するのに対して,ラニーニャは反対の「女の子」の意)。例年以上に貿易風の力が強まると,西太平洋に暖かい海水が集まります。そうすると積乱雲がよりいっそう発生しやすくなり,大洪水をおこしたりする。一方,東太平洋は冷たい海水の溜まり場となって低温乾燥し,海岸砂漠が拡大していきます。


 エルニーニョもラニーニャもこれぞという原因がはっきりしません。しかし非常に遠いところで起こった異常気象が地球的規模で相関関係があることがわかってきています。この地球的規模で異常気象の相関関係があることをテレコネクションといい,今後このような言葉も出題されるかもしれません。

②インド半島の西部と東部
 インド半島の付け根にはちょうど北回帰線が通っています。そうすると基本的には乾燥帯になりやすい地域ですね。しかしインド半島の西部と東部では気候が大きく異なります。具体的にパキスタンとバングラデシュを比べてみると,パキスタンの大半は乾燥帯で,バングラデシュは熱帯モンスーン気候です。
 この原因は季節風にあります。南アジアでは夏の季節風は南西の方角から吹きますが,パキスタンに吹く季節風がアラビア海を通ってくるのに対し,バングラデシュに吹く季節風はインド洋とベンガル湾を通過してきます。パキスタンに吹き込む季節風は水分を十分に補給できていない上に,上昇気流をつくるための山脈が北よりに遠い。一方,バングラデシュの季節風は水分をたっぷり含んでおり,陸上に上がったとたんにヒマラヤ山脈が待ち構えている。さらにベンガル湾では夏にサイクロンという熱帯低気圧が発生する。さらにバングラデシュはガンジス川下流の低地の国であるため,世界屈指の大水害発生地域となっています。

③乾燥帯の基準,気になる人は
 気候帯の区別にちゃんとした気温の基準があるんだったら,乾燥・湿潤(乾燥じゃない)にも基準があるんじゃないの?と思った人。あります。だいたいの目安は次の通り。(必ずしもというわけではありません。)
年降水量250mm未満→砂漠気候  250~500mm→ステップ気候  500mm以上→湿潤気候
高校の地理ではもう少しはっきりとさせるために乾燥限界を求めるという方法を使いますが,高校入試では必要ありません。

3.温帯
温暖冬季少雨気候
 亜熱帯という言葉を聞いたことがあるでしょ。熱帯なのか,熱帯じゃないのか,温帯なのか,温帯じゃないのか。なんとなくあいまいで騙されているような気候。その正体がこれです。
 応用編で回帰線乾燥帯と地中海性気候と西岸海洋性気候が隣同士であることを勉強しました。温暖冬季少雨気候とはサバナ気候と隣同士です。熱帯から温帯(温暖湿潤気候)への移行する地域,グラフ的には夏と冬の降水量の年較差が非常に大きいこと。といっても実際見た目の特徴は温暖湿潤気候とあまり変わらないので困ったものです。
 実際に出題歴のある都市で納得しましょう。その代表例はベトナムのハノイ。ベトナムは南北に長い国ですから南部と北部では気候帯が異なります。南部のホーチミンはサバナ気候ですが,北部の首都ハノイは温帯冬季少雨気候となります。あとホンコンも例として出題されますね。
 アフリカのマダガスカル(島)では1つの島の中に様々な気候が見られます。大きくは熱帯に属しますが,首都アンタナナリボは標高が高いため,温帯に入り,温暖冬季少雨気候が見られます。

ジェット気流
 偏西風は高度とともに強くなり,上空10kmぐらいをジェット気流といいます。冬場は特に強く,秒速100mぐらいに達することもあります。この気流に乗って飛行機が東へ進むと燃料や時間を大幅に短縮することができます。

③西岸ではないのに西岸海洋性気候
 難問中の難問です。大陸東岸にも西岸海洋気候がみられる場合がある。これは本来,大陸東岸では温暖湿潤気候になるはずが,標高などの条件によって西岸海洋性気候になってしまう場合がある。実はアフリカにも西岸海洋性気候はあるし,アメリカのアパラチア山脈地域,そしてオーストラリア南東部がそうです。しかしこのような例外的な西岸海洋性気候はめったに出題されるものではありません。唯一オーストラリア南東部だけは頭の片隅にでも置いておきましょう。(キャンベラも西岸海洋性気候です。これは超難問か?)

【例題1】次のA~Dの気候グラフにあてはまる都市をあとのア~エから選び,記号で答えなさい。

ア.東京    イ.リヤド    ウ.シドニー    エ.香港

 最低気温の判断からすべて温帯と判断できますが,Aのみ降水量がほとんどないことから乾燥帯となります。乾燥帯にあてはまるのはイのリヤド,サウジアラビアの首都です。
 実は残りのB~Dまではすべて温暖湿潤気候です。Dのみ南半球のグラフなので,シドニーであることは選択肢から判断できますが,この温暖湿潤気候も「夏に雨が多いから」とはっきり理由づけることが難しい。
シドニーの温暖湿潤気候も,ニューヨーク・ブエノスアイレス同様おぼえてしまった方が早いかも知れません。⇒《発展編2 日本海側の気候は地中海性気候?》
 BとCの違いは「最低気温」を比較して,緯度の低い香港がCと判断してもよい。あるいはCの降水量の年較差が大きいことから,Cが上で説明した温暖冬季少雨気候であると判断してもよろしい。どちらで解くかは君に任せます。
 もう1つ注目してほしいのは,リヤドと香港はほぼ同じ緯度(北回帰線)付近であること。このように降水量に大きな変化があらわれる原因が季節風にあることを理解しておきましょう。

答え:A.イ   B.ア   C.エ   D.ウ

4.冷帯
①冷帯にも
 冷帯の区別は非常に稀です。この気候帯は北半球にしかありませんが,その大部分が冷帯湿潤気候というもので,温帯の気候をそのまま寒さを厳しくした(最低気温を下げた)ものです。北アメリカは全部これですのでカナダの冷帯のすべてが範囲です。アメリカ合衆国は五大湖周辺からこの気候区に入ります。よく間違うのがシカゴ。ニューヨークは温暖湿潤気候ですが,シカゴが冷帯気候であることを頭に入れておきましょう。
 ユーラシア大陸ではロシア・シベリアの大半が冷帯湿潤気候ですが,シベリアの東部と北朝鮮は冷帯冬季少雨気候といって冬季の降水量が非常に少ない。ロシアのイルクーツクが例としてよく見ます。ちなみに北海道は冷帯湿潤気候です。

②年較差
 冷帯は気温の「年較差が大きい気候」とよく表現されます。気候帯の区別も最寒月平均気温が-3度未満であると同時に,最暖月平均気温が10度以上という2つの条件がありました。
 冷帯に限らず,気温の年較差は緯度が高いほど大きく,また内陸であるほど大きくなると頭に入れておきましょう。この考え方は日本の場合にも応用できます。

【例題2】次の地図中の各都市ににあてはまる気候グラフをア~オから選び,記号で答えなさい。


 この問題では内陸性の気候,そして気温の年較差について学んで下さい。まずは最低気温から,AとBは冷帯,Cは温帯,Dは熱帯となります。するとD=シンガポールであることはすぐに判断できます。

 次にCはどうでしょうか?Cの雨の降り方は地中海性気候によく似ています。しかし地中海性気候と判断してよいでしょうか?地図には地中海性気候に属する都市はありません。もっとも温帯に近いのはテヘランでしょう。緯度的にも回帰線乾燥帯の高緯度側とありますし,地中海性気候と判断してもおかしくありません。
 もちろんここまで考えただけでもC=テヘランと答えることができますが,テヘランは地中海性気候ではありません。ステップ気候です。グラフには一応年間降水量を入れておきました。Cの年間降水量は265㎜となっています。これを乾燥帯の降水量の基準に照らし合わせると250㎜~500㎜の範囲に入り,これはステップ気候の基準に入っていますね。これが500㎜をこえていたら地中海性気候となります。
 これはテヘランが内陸性の気候であるためです。内陸性の気候は海洋性の気候と比べて,気温の年較差が大きく,降水量が少ないという特徴をもっている。位置的には地中海性気候なんだけれども地中海性気候にしては降水量が少なくなってしまったというわけです。
 気温については陸は海より熱しやすく冷めやすいから。降水量については水蒸気を含んだ風が届きにくい。これが内陸性気候の特徴です。
 このことをA・Bの冷帯の気候グラフでも応用してみましょう。AとBの冷帯のグラフを比較すると,Aの方が気温の年較差が大きく,降水量が少ない。したがってAほど内陸に位置するのです。地図でいうとモスクワよりイルクーツクの方が内陸に位置しますね。したがってAがイルクーツク,Bがモスクワ。
 最後にEは最高気温(最暖月平均気温)が0℃と10℃の間ですから,寒帯のツンドラ気候。「気温の年較差は高緯度または内陸ほど大きい」と説明しましたが,内陸性の気候(A・C)と同様,非常に大きくなっています。降水量だけをみて,砂漠気候と考えない。なぜなら乾燥帯には最高気温(最暖月平均気温)が10℃以上,つまり寒帯ではないという絶対条件がついているからです。

答え:シンガポール D    テヘラン C    モスクワ B   イルクーツク A   バロー E

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