公民 第1回 日本国憲法 応用編

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人権思想の発達と日本国憲法

1 1215年,イギリス国王の悪政に貴族が反抗して認めさせた文書を〔   〕という。
マグナ=カルタ
   マグナ=カルタはラテン語で「大憲章」と訳されます。イギリス政治の基礎となったものです。⇒《歴史:第9回応用編》
 
イギリスは現在でも「憲法」をもたない特殊な国で,これまでつくられてきた歴史的文書や多くの法律・判例をもとに政治がおこなわれています。その最初であり,基礎として位置づけられるのがマグナ=カルタなのです。
 1215年という年代は特に必要ないでしょうし,マグナ=カルタを直接問う問題はまずないでしょう。(少なくとも選択肢)ただしこの種の歴史的人権文書の中では突出して古いことだけは頭に入れておくこと。【時期】 
   
2 〔 ① 〕の思想家:ロックは『市民政府二論』を著して〔 ② 〕を主張し,1776年に発表されたアメリカの〔 ③ 〕にはその影響がみられる。
①イギリス  ②革命権  ③独立宣言 
   1688年,名誉革命によって国王は「権利の章典」を認めます。ここでいう権利は,イギリス国民が伝統的に所有しているとされた権利や自由のこと。それらが王によって制限されないことを(再)確認させただけです。ただしマグナ=カルタ同様,これを王に認めさせたという点で重要です。 王の権力がこれで制限されたのです。
 ロックはこの革命を正当化し,国民の権利を不当に扱う王や政府は,国民の革命権(抵抗権)によって排除されるとします。国民による国家権力の抑制です。そして名誉革命(権利の章典)とロックの思想は次のような影響を残しました。
・「王は君臨すれども統治せず」の原則
 王は政治的権能をもたないという原則が成立します。これで王は絶対王政(専制政治)のような無茶ができなくなった。
議院内閣制の成立
 ではだれが政治的権能をもち,責任を負うのか?それが首相です。そして首相は国民の代表である議会から選ばれ,議会に対して責任を負う。これが議院内閣制とよばれる制度です。日本の議院内閣制もイギリスの制度をならっているのです。
三権分立の着眼点
 次のモンテスキューは,権力分散の着眼点を,ロックの『市民政府二論』とイギリスの議院内閣制から得ました。
アメリカ独立宣言への影響
 アメリカ独立宣言の注目点は2つあります。まず「すべての人は平等に造られ,創造主(神)によって一定の譲ることができない権利を与えられ,そのなかには生命・自由および幸福追求の権利が含まれている」の部分。ここで人間には生まれながらの人権が備わっていることを宣言しています。これは自由権・平等権といった現在にも通じる基本的人権のことです。
 次に「もしどんな形の政府であってもこれらの目的(権利の保障)を破壊するものになった場合,その政府を改革しあるいは廃止して人民の安全と幸福をもたらすにもっとも適当と思われる原理に基づき,そのような形で権力を形づくる新しい政府を設けることが人民の権利である」とあります。ここにロックの革命権の影響がうかがえる。
   
3 〔 ① 〕の思想家:モンテスキューは『〔 ② 〕』を著して三権分立を説き,その思想は〔 ③ 〕の憲法で初めて実現した。 
①フランス  ②法の精神  ③アメリカ 
   イギリスの議院内閣制にヒントを得たモンテスキューは権力分散の思想を著書:『法の精神』にまとめます。 イギリスの立法・行政の二分制に対して,3つ目の司法権の分立を提案し,この案は独立したばかりのアメリカ合衆国憲法で活かされることになりました。アメリカは三権分立の思想を初めて具体化した国だったのです。(例えばイギリスには裁判所がもつ違憲立法審査権がありません)
   
4 〔 ① 〕の思想家:ルソーは『〔 ② 〕』を著して人民主権を説き,1789年のフランス〔 ③ 〕にはその影響がみられる。
①フランス  ②社会契約論  ③人権宣言 
   さぁ,これまでの人権思想の集大成となったのが,フランス人権宣言です。17条からなるこの宣言文には,ロックの革命権(2条),モンテスキューの権力分立(16条)に加え,ルソーの人民主権(3条)も加えられ,自由・平等の権利については前文にみられます。特に財産権について強調されているのが特徴で,身体・精神(思想・表現・出版)・経済の3つの自由権についてかなりの条文がさかれています。
 ここでこれまでのところをまとめておきます。マグナ=カルタは突出して早い段階のものとして一番最初に置くとして,イギリス・アメリカ・フランスの革命・人権文書・啓蒙思想の流れと相関関係をしっかり理解しておくことが大切です。⇒《歴史:第9回応用編》1つ1つ単発にならないように! 【セット】
   
5 アメリカ大統領:〔   〕は南北戦争中に「人民の,人民による,人民のための政治」と演説し,民主政治の原則を示した。 
リンカーン 
   1863年,アメリカ南北戦争中,激戦地ゲティスバーグでの演説の言葉です。リンカーンの言葉として有名ですが,実際は昔からあるフレーズの引用です。しかし時と場所と状況がこれほどピッタリとあてはまるのはなかったので,後世に語り継がれる演説として記憶に残るようになりました。
 日本国憲法の【前文】にも,この言葉の影響をみることができます。「そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって,その権威は国民に由来し,そり権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する。」 
   
6 〔 ① 〕年に制定された大日本帝国憲法は天皇が国民に与えるという形の〔 ② 〕憲法であった。
①1889  ②欽定
   欽定(きんてい)憲法とは天皇が国民に与えるという形をとる。したがって主権者は天皇です。(一応としておきます)まれに選択肢として出されることもあります。 
   
7 大日本帝国憲法では,国民には〔 ① 〕・〔 ② 〕の義務があった。
①兵役  ②納税(順不同) 
   「納税の義務」が現在の日本国憲法と共通していて,「兵役(へいえき)の義務」が異なる点ですね。【比較】だから重要。ちゃんと「兵役」と答えられるように。 
   
8 日本国憲法は国民によって定められたという形の〔   〕憲法である。
民定 
   欽定憲法の反対語。【比較】国民主権に基づいて制定された憲法。よって改正するときも国民が判断する。また改正するための条件が非常に高く,改正が困難であることから硬性憲法という特徴をもっています。(これは難) 
   
9 1979年,国連で〔   〕が採択されると,日本では1985年に男女雇用機会均等法が制定された。 
女子(女性 婦人)差別撤廃条約 
   これは男女雇用機会均等法【セット】でおぼえておきたいところです。そうすると同時に男女共同参画社会基本法とも【セット】。国内法が国際条約よりもあとになって整備された代表例です。
 女子差別撤廃条約→男女雇用機会均等法→男女共同参画社会基本法 
   
10 1989年,国連で採択された世界の子どもたちの幸せな生活を目的とした条約を〔   〕という。 
子ども(児童)の権利条約 
   ここでいう子どもとは18歳未満ということになっています。そして子どもには4つの権利がある。生きる権利・守られる権利・育つ権利・参加する権利です。
   

国民主権・平和主義

1 天皇の国事行為:〔 ① 〕の指名により内閣総理大臣を〔 ② 〕する。〔 ③ 〕の指名により最高裁判所長官を〔 ② 〕する。憲法改正,法律などを〔 ④ 〕する。国会の〔 ⑤ 〕。衆議院の〔 ⑥ 〕。国会議員選挙の〔 ⑦ 〕。〔 ⑧ 〕の任免などの認証。
①国会  ②任命  ③内閣  ④公布  ⑤召集  ⑥解散  ⑦公示  ⑧国務大臣
   天皇の国事行為はあくまでも形式的・儀式的なもので,実質的な意味をもちません。したがって実質的には国事行為の前の段階で決定したのも同然です。同然ですが,手続き上踏まなければ前に進めないのです。
 決定事項(実質的意味をもつ)   国事行為(形式的意味をもつ)
 国会   内閣総理大臣の指名  内閣総理大臣の任命 
国会  法律の制定  法律の公布(憲法改正・条約の公布)
首相  国務大臣の任免  国務大臣の認証 
内閣  最高裁判所長官の指名   最高裁判所長官の任命 
内閣  国会議員選挙期日の決定  国会議員選挙の公示 
内閣  国会の召集  国会の召集
内閣  衆議院の解散  衆議院の解散
内閣  恩赦の決定  恩赦の認証
 この中でもっともよく出るのは,内閣総理大臣と最高裁判所長官の指名・任命でしょう。ともに任命は天皇の国事行為です。次に法律,憲法改正などの公布
 一番まちがいやすいのは,国会の召集・衆議院の解散の2つでしょう。この2つは内閣の仕事と国事行為の表現が同じになっている。これらを決定するのが内閣の仕事。「よし召集(解散)するぞ!」と内閣が決めて,「では召集(解散)しましょう。」というのが天皇の仕事です。「次の中から天皇の国事行為にあたるものを選びなさい。」という問題に出くわした時,「国会の召集」も「衆議院の解散」も内閣の決定事項であるとともに天皇の国事行為でもあることをおさえておきましょう。【落とし穴】
 国会議員の選挙に対しては「公示」という言葉を使います。その他の選挙では「告示」という言葉になり,国事行為と区別しています。
 「恩赦」とは,裁判で決まった受刑者の刑罰を軽くしたり,なくしたりすることです。「赦」には「許す」という意味がある。例えば死刑囚の死刑が免除されたり,懲役の年数が減ったり。囚人が釈放されたりと,恩赦には皇室の冠婚葬祭のタイミングでおこなわれる「大赦」など様々です。決定は内閣が行います。司法権の決定を行政権がくつがえすことになりますので,さらに上位の手続きが必要になるわけです。
 その他,国事行為には栄典の授与といったものもあります。国の功労者に名誉あるご褒美をあげるというぐらいに考えて下さい。
 いずれにせよ国事行為には,内閣の助言と承認が必要であるという大前提があり,その責任も天皇にはなく内閣にあります。
   
2 職業軍人としての経歴をもたない人を〔 ① 〕といい,〔 ① 〕で構成される政府の指揮のもとに軍隊を置くことを〔 ② 〕という。
①文民  ②文民統制(シビリアン=コントロール)
   「文民」は「軍人」の反対語といってもよいでしょう。文民統制は軍の暴走を防ぐためのシステムです。日本は軍をもちませんから,日本に文民でない人はいないことになりますが,一応現職の自衛官は文民ではないということになっています。
   

基本的人権の尊重

1 家族に関する法律が〔 ① 〕である。戦後,日本国憲法第24条の「〔 ② 〕と〔 ③ 〕」を基本原則として改正された。
①民法  ②個人の尊厳  ③両性の本質的平等 
   平等権に関して,【第24条】では家族関係についての平等にも言及しています。夫婦関係や子の相続についてです。このことについて詳しく定めた法律が民法です。
 旧憲法下の民法では,家族の中で大きな権限をもっていたのは戸主とよばれる男性で,相続は長子が単独相続することになっていました。ここでいう長子とは事実上長男です。
 戦後,この民法が改正され,家族の中心は夫婦であり,夫婦は同等の権利・義務をもち,氏(姓)は夫婦いずれの氏を名乗ってもよい(夫婦別姓はダメ)。子どもに対する親権も夫婦が共同して持つ。相続も子の均分相続が決められています。
   
2 障がいのあるなしにかかわらず,すべての人が区別されず,なく普通の生活を送ることを〔   〕という。
ノーマライゼーション
   バリアフリーとまちがわないように。【比較】「バリアフリー」は障がい者・高齢者の生活における障壁をなくすこと。車椅子用のスペース・スロープをつくることなんかです。ノーマライゼーションとは障がいのあるなしを問題にしない社会づくりです。例えば障がい者のための施設は,障がい者と健常者を区別するための施設ですね。そんなものは必要ない。みんな同じに生活できる社会をめざすんだ。優先座席なんかも必要ない。困っている人がいれば,どこに座っていようと席を譲ってあげる。優先座席をつくっている間はノーマライゼーションとはいえないのです。
   
3 一人ひとりを大切にし,ともに助け合って生きていく社会を〔   〕という。
共生社会
   このような平等の社会を目指している中でも現在も根強く残る差別の例をしっておきましょう。アイヌ人(少数民族),被差別部落(同和問題),女性(性差別),HIV(エイズなど感染症),在日韓国人・朝鮮人(在日外国人),障がい者,その他。
 よく似た言葉に「多文化社会」という言葉があります。多文化社会は,一つの国や地域にさまざまな民族・文化が混在するようになった現状を表しているだけで,理想的な社会,目標とする社会を指す言葉ではありません。したがって「多文化社会」では,その中で「必要になること」,「気をつけなければならないこと」,「大切にしなければならないこと」は何かが問われます。異なる民族どうしが,互いの文化を認め尊重すること,つまり異文化理解が必要になるわけです。【説明】
 一方,「共生社会」は,さまざまな違いを乗り越えて,共に生活が営まれている理想的な社会を示しており,現状(現在)というよりは目標(未来)を表した言葉であることに注意しましょう。【比較】 
   
4 身体の自由に関して,刑事事件に際し,現行犯以外は〔 ① 〕が発する〔 ② 〕がなければ,逮捕されない。
①裁判官  ②令状
   憲法で述べられている自由(権)とは,平等権と同じく,道徳的に感情的に「自由だ!・平等だ!」という意味ではありません。基本的人権を保障する側が国であるとうことを前提に考えなければなりません。自由権なら,自由を奪う相手は国だと仮定して,国が国民の自由を奪わないようにするためのルールを決めているのです。
 身体の自由は,「奴隷的拘束・苦役からの自由」を基本原則として,国からの好き勝手な扱いや刑罰から人間の身体を守る権利をいいます。そこから発展して,刑事事件に関する法律の手続きについて述べられていることを理解しておきましょう。
 犯罪がおこるとします。警察が捜査します。するとやがて疑われているもの=被疑者が取り調べられます。そのとき,被疑者の逮捕には(逮捕)令状がなければなりません。また被疑者宅を調べるときは(捜査)令状がなければなりません。これが「住居の不可侵」です。すべて裁判官が発する令状が必要になるという令状主義。これが身体の自由です。
 さらに逮捕されても自白を強要されたり,暴力行為を受けることも許されません。裁判所に起訴されても被告人には弁護人をつける権利があります。また自分の不利になるような供述をしなくてもいいです(黙秘権)。これらもまた身体の自由とされます。
 このように直接「体」に関することでなくても,主に刑事事件,犯罪の処罰に関わる手続きについての権利が「身体の自由」にあてはまることだと考えましょう。
   
5 精神の自由に関して,国家や公権力が表現物や言論を検査することを〔 ① 〕といい,〔 ② 〕の自由に反するとして憲法で禁止されている。
①検閲  ②表現
   精神の自由も,国家が国民の精神的自由を侵さないように国に対して禁じていることが述べられています。【第21条】では検閲の禁止と通信の秘密について定めています。検閲とは,政府が出版物,放送,新聞などの内容を公表前にチェックして,「これは政府を批判しているな」と判断したとき発表を禁止する行為です。
 表現の自由は民主政治の重要な支えですから,他人の人権を侵さない限り(公共の福祉に反しない限り),国家が保障しなければならない自由です。
   
6 生存権として「健康で文化的な最低限度の生活」を国民を保障するため,〔   〕が制定されている。
生活保護法
   生活保護法に基づいて,生活保護費が支給されるわけですが,生活保護基準と生存権の関係が争われたのが,朝日訴訟というもので,よく例に出されます。1967年,岡山で肺結核療養中の朝日茂さんが,月額600円の生活保護給付金では生活ができないとして,給付金の増額を求めました。厚生大臣(当時)の定めた生活保護基準は【第25条】に違反するとして訴えたのです。
 結果,最高裁までいきましたが,裁判途中で朝日さんが亡くなったので,訴訟は途中で終了しましたが,生活保護基準の改善に大きな影響を与えました。⇒《公民:第1回発展編》
   
7 〔   〕権は請求権の具体的な権利の1つで,国や地方の機関に対して希望・苦情・救済を要求する権利である。
請願
   基本的人権を守るために参政権請求権があります。もし人権を守らない政治家や公務員がいたとしましょう。その人をやめさせる力が国民になければ,人権を守ることができません。請求権も同じです。国の人権無視・軽視によって国民が不利益を得た場合,改善や救済を求めるのも当然の権利というわけです。
 請求権と請願権はよく似た言葉なので,よくまちがえる。【落とし穴】まずは大きな基本的人権の1つとして請求権があり,その中に請願権があると理解しておいて下さい。⇒《公民:第1回発展編》
   
8 環境権の1つで,建築物のの日当たりを確保する権利を〔   〕という。
日照権
   例えば,近隣の高層マンション建設によって日当たりが悪くなることが予想されたら,建設の中止や損害賠償を請求できるという権利です。
   
9 開発にあたって事前に環境への影響を調査することが事業者に義務付けられている。これを〔   〕という。
環境アセスメント
   これも環境権の1つ。
 
10 行政機関が保有する情報を広く開示する制度を〔   〕制度といい,多くの地方公共団体で条例化され,1999年には〔   〕法が制定された。
情報公開
   知る権利の1つ。知る権利は国や地方公共団体を監視し,その不正をなくすための権利です。【説明】情報公開制度は長く法律化できずにいました。そのため地方公共団体が定める条例が先行していたのですが,現在は情報公開法も制定されています。「まだ制定されていない。」という文は誤文です。
   
11 国民の知る権利を保障する一方で,個人情報を慎重に守ることを目的として〔   〕が制定された。
個人情報保護法
   プライバシーの権利の例です。プライバシーの権利(保護)については,インターネットと関連して【説明】問題がよく出されます。「インターネットの普及により,情報発信の際に注意すべきことは何か?」といった問題。「プライバシーの侵害にならないようにする。」が模範解答。プライバシーは「保護」に対して「侵害」という語句を使えるようにすること。
   
12 医療に関しては,治療を受ける患者のために十分な説明にもとづく同意が必要である。これを〔   〕という。
インフォームド=コンセント 
   新しい権利の自己決定権の1つです。「インフォームド」は「情報が与えられた」,「コンセント」は「同意」を意味します。病気の診断や治療について主治医以外の意見をきく「セカンドオピニオン」とまちがえないように。【比較】 
   
13 臓器移植に関する法律にのっとって,臓器提供の意思を記入した〔   〕が発行されている。
ドナーカード(臓器提供意志カード) 
   これも自己決定権の例。 

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