公民 第3回 内閣・裁判所 発展編

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内閣

1 閣議は〔   〕が原則である。
非公開
   非公開を原則とするのは,閣議のみです。あとはすべて公開が原則。
   
2 〔   〕が可決した場合以外でも,内閣の判断によって衆議院を解散することができる。
内閣不信任決議
   憲法【第69条】内閣不信任決議案が可決した場合,その後の内閣の手続きを定めています。「内閣不信任案の可決」は「内閣信任案の否決」でも同じです。「内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決し,又は信任の決議案を否決したときは,10日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければならない。」
 衆議院の解散は内閣のもつ権限です。その根拠となるのは,内閣不信任決議について定められた【第69条】ともう1つ【第7条】があります。【第7条】の本旨は「天皇の国事行為」ですが,その国事行為の1つに「衆議院の解散」があり,国事行為は「内閣の助言と承認」に基づくのだから,内閣は自由な「衆議院の解散」権をもつとするのです。(実際は首相が議長を務める閣議で決定されるので解散権は首相の権限といってもよい)
 このような不信任可決を前提にしない解散を「7条解散」といい,実際には不信任可決による解散より多い。そもそも議院内閣制のもとで,与党が内閣に不信任をつきつけるかというと,実際は現実味がありませんね。それでも不信任可決による衆議院の解散(69条解散)は過去に4例あります。
・1948年…吉田内閣(第二次)
 当時は国民に信を問う7条解散が可能かどうかが与野党の間で問題となっていたため,わざと与野党に不信任決議を提出させて,解散・総選挙にうって出た。いわば与野党のシナリオ通りの不信任可決だったため「馴れ合い解散」とよばれました。
・1953年…吉田内閣(第五次)
 衆議院予算委員会で首相の吉田茂が野党議員に対して「バカヤロー」と発言したことがきっかけとなって不信任決議が提出され可決。俗に「バカヤロー解散」とよばれています。
・1980年…大平内閣
 野党が提出した内閣不信任決議に与党議員多数欠席のハプニング。不信任決議は可決してしまった。とんだ「ハプニング解散」です。これだけなら笑い話ですが,実はこの欠席には自民党内の派閥争いがあった。この抗争の中での欠席で,本当の意味でのハプニングではなかった。
 本当の笑い話はここからです。ハプニングを本当にくらったのは野党の方でした。「まさか不信任が可決するとは」思ってもみなかった。だから総選挙でも準備不足,加えて選挙中の大平首相が亡くなったことで,自民党の結束力は強まり,野党は千載一遇のチャンスを逃して敗北したのです。
・1993年…宮沢内閣
 背景にはこのころの自民党の汚職事件(《第2回 発展編》)が数多く発覚し,国民の信頼を失っていたことがあります。そんな中で宮沢喜一首相は選挙制度改革を公約としていましたが,党内の意見をまとめられずに先送り。ついに野党により不信任案が提出され,解散総選挙やむを得なしに追い込まれた。「うそつき解散」(公約不履行)といいます。
 結果,自民党から造反議員が続出し,不信任は可決。総選挙までに多くの自民党議員が離党し,小政党を結成。自民党は単独過半数をとることができず,日本新党代表:細川護煕を首相とする非自民8党連立内閣が成立し,55年体制は終わりを告げました

 【第69条】であっても【第7条】であっても,内閣が衆議院を解散させる理由は,「国民の信を問うため」です。しかし信を問うのはよいとしても,必ずしも総選挙後,再び与党が与党となる保障もないし,ましてや現首相が再び次期首相として指名される保障もない。日本の首相の在任任期が短くなり易い原因がここにあります。衆議院の任期満了総選挙は戦後,日本国憲法のもとでたった1回しかない。
 また解散・総選挙のほかにも「総辞職」によって首相が交代することもあります。 与党にとって首相を交代させることで支持率の回復が見込まれるということもありますし,与党の党首が変わるとそれにともなって首相も交代する慣行があるからです。
 このように日本の首相(内閣)はころころ変わりやすい。一年以上続けば立派な内閣です。首相が変われば,政策もかわる。外交関係を築くのも大変です。どう考えても国民目線というより,与党(主に自民党)目線で解散・総選挙や総辞職がおこなわれている。
 そこで日本の政治を安定させ,もっと国民主権の目線から,首相を選ぶ首相公選制というのが主張されています。首相の任期を決め,首相は国民の直接投票で選出する。議院内閣制を残しながらアメリカ大統領制のような制度を取り入れるのです。首相は直接国民に責任を負います。もちろんこれには憲法改正が必要になるので,事実上難しい。

 最後に特別会についての注意点。解散・総選挙をおこなった場合,前の内閣は特別会が開かれるまで,その職を務め,特別会で総辞職します。このタイミングをまちがわないように。また特別会は新内閣発足の国会ではありまん。あくまでも内閣総理大臣の指名選挙です。すると前の内閣が総辞職してから,新しい内閣が組閣されるまで極短期間,内閣が不在になってしまいます。それではまずいということで,その間は前の内閣が最低限の権限の中で引き続き,職務を執ります。これを職務執行内閣といいます【第71条】。細かいことですが,憲法には常会・臨時会・緊急集会という語句は出てきても特別会という語は登場しません。
   
3 各省庁には大臣を補佐する役職として〔 ① 〕と〔 ② 〕がいる。
①副大臣  ②政務官
   内閣は,内閣府,内閣総理大臣を補佐する内閣官房,そして12省庁などで構成されています。基本的には内閣府(長は内閣総理大臣)を除いて,それぞれの責任者を国務大臣といいます。国務大臣は応用編でみた12省庁の長,内閣官房の長である官房長官,そして内閣府に置かれている特命担当大臣,さらにはデジタル庁設置にともなうデジタル大臣,あわせて14人以内と決められており,すべて文民であることを条件にその過半数は国会議員でなければならない。これらすべてのポストに1人ずつ大臣を置いては14人を軽く超えてしまうので,複数のポストを1人の大臣が兼任することが多い。
 ただし現在は,復興庁(内閣総理大臣直属 東日本大震災復興関連)の復興大臣と2025年の日本国際博覧会(大阪万博)のための万博担当大臣が期限付きで設置されているので16名以内となっています。さらに必要とあればあと3名まで任命可能で,通常14+3で17名,現在は16+3で19名が国務大臣に就いています。
 また内閣府には,そのときの時代や社会を反映したさまざま問題に対処するため,特命担当大臣がおり,数を挙げればきりがありませんが,沖縄・北方対策大臣金融担当大臣消費者問題(消費者及び食品安定)担当大臣,防災担当,少子化対策担当大臣の5つは必置となっています。
 1人の大臣の仕事量が膨大となるので,大臣を補佐する役職として副大臣・(大臣)政務官というポストが置かれています。このポストは昔は事務次官といって,キャリア官僚のトップが務めていました。事実上の各省庁のトップです。大臣は事務次官の仕事にサインするだけ。国会での答弁も官僚が用意したものをひたすら読むだけ。すると官僚主導で政策が進められてしまうので,事務次官と大臣の間に,大臣の補佐役として政治家を就けることにしたのです。副大臣・政務官はともに国会議員が任命されます。

 次によく出題される外局や仕事内容をみておきましょう(《応用編》で既出のものは除く)
・宮内庁→内閣府
・消防庁,放送業務,中央選挙管理会→総務省
・検察庁→法務省
・国税庁→財務省(金融庁は内閣府)
・スポーツ庁→文部科学省
・資源エネルギー庁,特許庁→経済産業省
・海上保安庁→国土交通省(防衛省ではない)
・原子力規制委員会→環境省(経済産業省や内閣府ではない)
・警察庁→国家公安委員会
(警視庁ではない)
   
4 行政の民主化のため設けられている制度で,一般の行政機関から独立した合議制の委員会を〔   〕という。
行政委員会
   行政委員会は政府(内閣)や地方公共団体のもとに置かれている行政機関ですが,ある程度独立性をもって,中立的な立場で行政権を行使します。規則を制定する準立法的機能や訴訟を判断する準司法的機能をもっています。(ただし行政機関は終審として裁判をおこなうことができないことになっているので,訴訟があった場合は別途裁判所に訴えることができます。)
 国の行政委員会としては,内閣府に置かれている国家公安委員会公正取引委員会,環境省の原子力規制委員会,そして内閣からは完全に独立している人事院が重要です。
   
5 警察行政は,内閣府に〔 ① 〕が管理する〔 ② 〕庁と都道府県知事直轄の〔 ③ 〕が管理する警察署がある。これらの組織や任務は〔 ④ 〕に定められている。
①国家公安委員会  ②警察  ③公安委員会  ④警察法
 
6 独占禁止法を運用するために設置された行政委員会は〔  〕である。
公正取引委員会
 
7 国家公務員の人事管理をおこなう行政委員会を〔   〕という。
人事院
 
8 〔   〕は行政機関であるが,内閣から完全に独立し,会計や決算の検査をおこなう。
会計検査院
   会計検査院は,人事院と同じく内閣から完全に独立していますが,行政委員会ではありません。内閣や人事院を含めて,国の収入と支出を検査・監視する行政機関です。よく財務省の組織と勘違いされますが,財務省を監視する組織だと思えばよい。
 会計検査院については憲法にその存在が定められています。【第90条】
   
9 〔   〕の任用にあたっては,日本国籍をもたねばならないと〔   〕法に定められているが,地方〔   〕の中には在日外国人を任用している自治体もある。
公務員
   国家公務員には原則,外国人が採用されることはありません。
   
10 議院内閣制は〔 ① 〕優位の政治形態であるが,現代では〔 ② 〕の役割が大きくなり,〔 ② 〕優位の政治になる傾向がある。 
①議会  ②内閣 
   その背景には社会保障の充実や環境政策・経済政策が重要になったことや社会が複雑化し,立法に高度な専門知識が必要になったことがあります。法律では基本的なことだけを決め,細部は政令にゆだねる「委任立法」が増加し,行政指導や許認可など行政裁量が拡大している。議員立法が減少し,内閣提出立法が増加しているのはそのためです。 
   
11 公務員が機械的・形式的に行政をおこなうことを〔   〕主義という。
官僚 
  《応用編》参照 
   
12 公的金融機関であった郵便局を民間の会社にしたことを〔   〕といい,小泉内閣のときに法案が可決した。
郵政民営化 
   日本郵政という持株会社と,日本郵便(郵便業務)・郵便局(窓口業務)・ゆうちょ銀行(郵便貯金業務)・かんぽ生命保険(生命保険業務)の4社の株式会社に分割しました。しばらくは日本郵政の株は100%国(政府)が保有する形になりましたが,2015年に日本郵政は東京株式市場に上場し,政府の保有株は3分の1程度となりました。 
   
13 民営化になじまない公共的な仕事(調査・研究・教育など)を,国の直営から離して,独立しておこなわせる法人を〔   〕という。 
独立行政法人 
   行政改革の一環として,政府各省の事業のうち,大学・病院・研究機関などを独立させて法人格をもたせ,業務の質や効率を向上させようとしたものです。かつて国営企業であった財務省の造幣事業印刷事業(紙幣の印刷),国立の大学・病院・博物館や各種調査・研究所,国際交流機関,大学入試センター試験などがそうです。
 運営費や経費は国から支給されますので,民営ではありません。中には国からの資金の交付を受けていないところもあり,独自の収入源を元に運営をおこなっています。
   
14 情報をいつでも開示して説明する責任のことを〔   〕という。 
アカウンタビリティ
   日本語では「説明責任」といいます。政府・政治家・官僚・企業など社会的影響力をもつものが,きっちりとその行動・内容・結果の説明責任を明らかするべきであるという考え方。  
   

裁判所

1 最高裁裁判官は,〔 ① 〕後初の衆議院議員総選挙に際して国民審査を受け,その後は〔 ② 〕年を経るごとに最初におこなわれる総選挙の際に再審査を受ける。
①任命  ②10
   最高裁判所裁判官の国民審査が衆議院議員選挙の際,実施されることはすでに述べました。罷免すべき裁判官に×印を記入する。投票用紙には複数名の名前(タイミングによっては1人のこともあるし,該当裁判官がいない場合もあり得る)が書かれているので,複数×をうってもかまいません。罷免を可とする票が有効票数の過半数に達した裁判官は罷免されます。(これまで罷免された裁判官はいない)長官も最高裁判所の裁判官ですので,他の裁判官と同様,国民審査の対象です。
 ただし最高裁裁判官は15人全員が同時に国民審査を受けるとは限りません。憲法【79条(第2項)】にはこのように定められています。「最高裁判所の裁判官の任命は,その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民審査に付し,その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し,その後も同様とする。」

 ある最高裁裁判官A氏を例にとってみましょう。この裁判官が1994年に任命されたとします。A氏の最初の国民審査は「任命後はじめておこなわれる衆議院議員総選挙の際」です。その選挙は1996年の総選挙ですので,このときに最初の国民審査です。そして次の国民審査は,最初の国民審査「後10年を経過した後初めておこなわれる衆議院議員総選挙」です。総選挙は1996年・2000年・2003年・2005年・2009年におこなわれていますので,10年が経過した後初めておこなわれた総選挙は2009年。このときに2度目の国民審査を受ける。最後に「その後も同様とする」とあるので,これを繰り返すわけです。今A氏を例にとりましたが,その裁判官が任命されたのがいつかによって,それぞれ国民審査のタイミングが異なるのです。
 最高裁判所裁判官は,下級裁判所裁判官と同様,心身の故障・弾劾裁判によって罷免されるほか,国民審査によって罷免されることがありますが,任期はありません。ただし定年はあって70歳です。ちなみに最高裁裁判官は司法試験に合格していない人でもなれます。
   
2 下級裁判所の裁判官の任期は〔 ① 〕年だが,再任されることができる。また裁判官はすべて定期に相当額の〔 ② 〕を受け,在任中は〔 ③ 〕されない。
①10  ②歳費  ③罷免
   一方,下級裁判所裁判官は国民審査がない代わりに任期があります10年ですが,そのまま再任されることが多い。定年は簡易裁判所が70歳,その他は65歳となっています。
   
3 弾劾裁判所は例外として軍法会議など〔 ① 〕の設置は禁止されている。また裁判官が心身の故障で職務をとることができないと裁定するなど,裁判官の免職と懲戒を決定するために開かれる裁判を〔 ② 〕という。
①特別裁判所  ②分限裁判
   特別裁判所は,明治憲法下で定められていました。軍隊内に設置された軍法会議,皇室問題をあつかう皇室裁判所,行政訴訟をあつかう行政裁判所です。軍法会議は当然,軍の規定に背いたものを裁く裁判。皇室裁判所は皇室間の民事訴訟を裁く裁判。行政裁判所は行政機関相手の行政訴訟を裁きます。現憲法下では,弾劾裁判所を除くこれらの特別裁判所は一切禁止されている。
 軍法会議は軍人が軍人を裁く裁判です。皇室裁判には,枢密院や宮内省などが関わった。行政裁判所は行政権が司法権を行使するので,行政側に有利な裁判がおこなわれるのが目にみえている。つまり特別裁判所は,本来司法権を行使する裁判所から独立して設置されている点(「司法権の独立」),公正な裁判がおこなわれにくい点で禁止されているのです。
 現在日本には軍隊がないので,軍法会議はありえません。皇室については天皇以外は民事・刑事訴訟が仮にあっても普通の裁判所で対応します。(天皇陛下におかれましては,「象徴」ということを鑑みて,刑事・民事とも訴訟の対象にならないことになっています。)行政裁判は,民事訴訟の1つとして,行政訴訟法にのっとって裁判がおこなわれます。
 また裁判官が心身の故障で職務遂行不能だと判断する裁判分限裁判といいます。
   
4 訴訟の手続きや裁判所の規則については〔   〕が定める。
最高裁判所
   司法権の独立から,裁判所内の規則については最高裁判所が定めることができます(規則制定権)。【第77条】「国会は唯一の立法機関【第41条】」の例外にあたります。また最高裁判所は下級裁判所の裁判官指名権(任命は内閣)をもち,司法機関の管理・監督権をもちます
 これらの最高裁判所の権限はあくまでも裁判所内の人事・運営・監督のことであり,個々の裁判を指揮したり,指導したり,監督したりすることではありません。裁判所相互の間でもやはり司法権の独立は生きているのです。
   
5 〔   〕は,具体的な訴訟があった場合にのみ行使される。
違憲(立法)審査権
   裁判所に違憲(立法)審査権を認めるのは,厳格な権力分立をとっているアメリカの制度の影響です。早くから立憲主義をとっているイギリスにはそもそも成文憲法がないのに加えて,議会中心主義がとられているため,違憲立法審査の制度がありません。(制度上ないのであって,慣習としては存在する)
 日本の場合,いきなり「ある法律が制定されました。この法律が憲法違反かどうか判断してください。」というわけではありません。いきなり法律の憲法判断が可能な国もあります。その場合は普通の裁判所から独立した憲法裁判所という特別な裁判所を設けています。ドイツやイタリアなどのヨーロッパ主要国がそうです。日本はアメリカの制度と同様,具体的な訴訟の中で,解決に憲法判断が必要な場合に行使されます。(付随的違憲審査権)
 例えば最高裁が違憲判決を出した「薬事法距離制限事件」では,薬事法が定める薬局の開業規正のため,広島県から開局不許可処分を受けた原告が,行政処分取消請求で広島県を提訴します。裁判所はこの裁判の解決には,開業規正を設けている薬事法が憲法の「営業の自由」に反しているとしてこの薬事法に違憲判決を出すことで,原告の請求を認めたのです。
 では違憲判決が出された法律(法令)はどのようにあつかわれるのか?具体的な訴訟において違憲審査権が行使されたので,その訴訟においてのみ,該当の法律(法令)や条文の適用が排除されます。そして最高裁判所(=違憲審査の終審裁判所)が違憲判決を出した法律(法令)は改正または廃止するように国会や内閣に対応を求めます。問題に「法律を無効にできる」とあれば×です。法律の制定・改廃はあくまでも国会(立法権)の仕事であったことを思い出しましょう。
   
6 民事裁判では,当事者同士が話し合って,互いに譲歩し,争いをやめることに合意することがある。これを〔   〕という。
和解
   民事裁判では,早期解決を図るため,裁判所の判決が出る前に当事者同士で合意にいたることがあります。当事者同士(弁護人・代理人を含む)である場合を「和解」,第三者(裁判官・調停委員)を交えての場合を「調停」といいます。調停での解決は,裁判をおこなったときの判決と同じく法的拘束力があります。
   
7 〔   〕裁判は,行政によって権利を侵害されたものが,国や地方公共団体などを被告として訴えるものである。
行政
   行政裁判(行政訴訟)は明治憲法下では,行政が司法権を行使する行政裁判所が裁判することをいいましたが,現在は裁判所が裁判をおこないます。民事裁判の一類型とされています。訴訟相手が個人ではなく,行政機関だと考えればよい。
   
8 刑事裁判において被告人が弁護人をつける費用がない場合,国は国費で〔   〕をつける義務がある。
国選弁護人
   
9 刑事裁判では〔 ① 〕主義を原則として,法の定めなく刑罰を科せられない。また同一刑事事件について確定した判決がある場合には,その事件について再度の審理を許さない。これを〔 ② 〕の原則という。
①罪刑法定  ②一事不再理
  刑事裁判の原則
罪刑法定主義【第31条】
 犯罪と刑罰はあらかじめ法律によって定められていなければならない。そのときに法律の中で犯罪と刑罰が定められていないと処罰されないということ。逆にいえば後からできた法律で,過去の犯罪を裁けないということでもあります。
一事不再理の原則【第39条】
 同じ犯罪について,重ねて刑事責任を問うことを禁止しています。二重処罰の禁止ともいいます。
推定無罪の原則【第31条】
 裁判にかけられる被疑者や被告人は,有罪が確定するまで無罪としてあつかわれるというもの。「疑わしきは罰せず」といういい方もします。
   
10 裁判の再審請求は,〔 ① 〕・〔 ② 〕にそれぞれ定められている。
①刑事訴訟法  ②民事訴訟法(順不同)
   裁判を進めていく上で,守らなければ成らない手順や手続きについて定めた法律を訴訟法といいます。刑事裁判では刑事訴訟法,民事裁判では民事訴訟法,民事裁判の一つでも行政裁判の場合は行政事件訴訟法といいます。もちろん再審の場合も,その要件とともにそれぞれの訴訟法に定められています。 
   
11 〔   〕では,未成年は刑事裁判の手続き上で特別の保護を受ける。
少年法
   未成年者の犯罪に対しては少年法が適用されます。少年法において未成年者はいきなり刑事裁判にかけて刑事処分を下すのではなく,少年院送りなど保護更正を目的とする処置を下すことになっています。判断するのが家庭裁判所です。
 14歳以上の未成年者には刑事責任があるとされ,犯罪内容によっては家庭裁判所の判断で検察に送られることもあります。ただし刑罰は成年より減刑されますが,18歳以上の場合は成年と同じ刑が課されます。
   
12 日本において死刑執行の最終判断をおこなうのは〔 ① 〕大臣である。死刑の執行に際しては,拘置所関係者のほか,〔 ② 〕が立ちあう。また日本は〔 ③ 〕条約を批准していない。 
①法務  ②検察官  ③死刑廃止 
   日本において死刑判決は,永山基準とよばれる死刑適用基準が用いられます。(事件の性質・残虐性・動機・社会的影響など)
 死刑判決を受けた死刑囚は死刑の執行までの間,刑務所に収監されるわけですが,いつ死刑になるかはわかりません。最終執行命令を出すのは法務大臣の仕事で,判決後6ヶ月以内に法務大臣がサインして執行されることになっています。2010年に死刑執行施設(東京拘置所)の内部がはじめて報道機関に公開されたことが話題になりました。 
   
13 裁判員裁判では,裁判官〔 ① 〕人と裁判員〔 ② 〕人が一緒に,地方裁判所で裁判をおこない,裁判員には〔 ③ 〕義務がある。
①3  ②6  ③守秘
   国民に身近な司法,裁判の効率化などを目指して,現在,司法制度改革が進められています。裁判に国民感情を取り入れる裁判員制度は,その代表例です。
 一般の人々が裁判に直接参加し,裁判官とは別に事実認定をおこなう制度を陪審制度といい,アメリカなどでは刑事・民事両方で実施され,陪審員が有罪・無罪の判決を出します。日本では刑事裁判の第一審で,量刑まで決定するということはすでに学びました。
 裁判員は有権者の中から選ばれますが,当面裁判員は18歳以上ではなく,20歳以上ということになっています。国政に携わるもの(国会議員・国務大臣,法律の専門家(弁護士・裁判官・検察官),そして警察官・自衛官は裁判員になることができません。また裁判員に選ばれたら,よほどの理由がない限り辞退することはできません。(高齢・重病・出産・介護養育・経済上重大な不利益など)
 裁判は裁判官3人と裁判員6人の構成でおこないます。審理(法定での話し合い)のあと,評議に入ります。有罪・無罪について全員一致しなかった場合,多数決をとります(評決)が,このとき多数の中に裁判官1人以上が入っていることが必要となります。
 以上の過程でもって,最後に裁判官が被告人に判決をいい渡し,裁判員の任務は完了?いえいえ裁判の内容については,一生秘密を守る(守秘義務)義務があります。なかなか重いね。

 裁判員制度は刑事事件を裁く側に国民を参加させる制度ですが,訴える側(検察側)にも一般国民が参加できるようにもなりました。犯罪被害者です。
 犯罪被害者保護・支援に関して日本は欧米に比べてかなり遅れています。刑事裁判において犯罪被害者はこれまで,事件当事者であるにもかかわらず,証人として採用されるか,傍聴席で裁判を見守るしかありませんでした。しかし司法制度改革によって,被害者や遺族が求刑て意見を述べたり,被告人に質問したりなど刑事裁判に参加することができるようになりました。(被害者参加制度) 重大事件の第一審でのみ採用されている裁判員裁判とは異なり,被害者参加制度はすべての刑事裁判で適用されています。
14 裁判では写真撮影やビデオ録画は〔   〕されている。
禁止
   その一方で,刑事司法改革の一環として,裁判員裁判対象事件の取調べ全過程に対して録音録画が義務付けられました。「取調べの可視化」です。密室での不利な供述の強要などによる冤罪防止が目的ですが,可視化の対象となる裁判員裁判対象事件が全事件のわずか3%にすぎないので,果たして冤罪防止に効果があるか疑問です。
   
15 検察官が起訴すべき事件を起訴しないことがおこらないようにするため,国民の代表者が不起訴処分の適否を審査する会を〔   〕という。
検察審査会
   検察官が被疑者を不起訴処分にしたとき,その決定に不服がある場合には,検察審査会というところに申し立てすることができます。検察官をチェックする機関といってもいいわけですが,構成するのは裁判員制度の裁判員と同じで,一般国民(有権者)から選ばれた人です。
 司法制度改革によって,同じ事件で2回続けて「起訴相当(起訴すべき)」と検察審査会が判断したときは,必ず起訴しなければならないことになりました。
   
16 裁判官,検察官,弁護士を養成するために設立された学校を〔   〕という。
法科大学院 
   日本は欧米に比べて法曹(弁護士・裁判官・検察官)の数が少ないといわれています。

[グラフ:発展編3-1 日本弁護士連合会より作成 2023年]
 アメリカは訴訟社会といわれ,法曹数(法律に携わる者)や弁護士数の対人口比がダントツに多い。お風呂に入れた猫を乾かすため,猫を電子レンジに入れた飼い主が,「電子レンジの取り扱い説明書に猫を入れて乾かすなと書いていなかった」として家電メーカーを訴えたという笑い話があるほどアメリカでは訴訟が多い。日本も来たるべき訴訟社会に備えて,裁判の迅速化や身近な司法を実現するため【説明(目的)】,法曹の数を増やそうという司法制度改革が実施されました。その一環として法科大学院の設置があります。法曹になるための司法試験を受けるための法律専門学校です。

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